PMIのKGI・KPI設定から実行支援まで徹底解説!

PMIのKGI・KPI設定から実行支援まで徹底解説!

M&Aを実施したものの、PMI(Post Merger Integration:合併後統合プロセス)になかなか成果が出ないとお悩みではありませんか? 本記事では、PMIを成功に導くKPI・KGI設定の重要性を解説し、設定のポイントを事例とともに分かりやすく紹介します。

設定方法だけでなく、目標達成のための具体的な行動計画策定や実行支援体制構築の重要性についても理解することで、M&A後のシナジー効果最大化を実現しましょう。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。



1. M&AにおけるKGIとは? KPIとの違いを理解する

M&Aを成功させるには、その後の統合プロセス(PMI)が非常に重要となります。そして、PMIを計画的に進め、着実に成果を上げるためには、KGIとKPIを適切に設定することが欠かせません。ここでは、M&AにおけるKGIとKPIの基本的な定義から、その違い、設定のポイントまで詳しく解説していきます。


1.1 KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)とは

KGIとは、「Key Goal Indicator」の略称で、日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。M&Aを通して最終的に達成したい目標を具体的に数値化したものであり、企業全体の成長戦略や経営目標と密接に結びついていることが重要です。

KGIは、企業の経営層がM&Aの成功を判断する上で最も重要な指標となるため、設定の際には、その目標値が企業価値向上にどのように貢献するのかを明確にする必要があります。例えば、「売上高○○億円達成」「営業利益率○○%向上」といったように、具体的かつ測定可能な形で設定することが求められます。


1.2 KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)とは

KPIとは、「Key Performance Indicator」の略称で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。KGIで設定した目標を達成するために、具体的な行動目標やプロセスを数値化したものを指します。KPIは、日々の業務レベルで達成すべき目標を明確にすることで、進捗状況を把握し、問題があれば早期に改善策を講じることを目的としています。

KPIの設定においては、KGIとの関連性を明確にすることが重要です。例えば、「売上高○○億円達成」というKGIに対して、「新規顧客獲得数○○件」「顧客単価○○円向上」といったKPIを設定することで、目標達成に向けた具体的な行動指針が明確になります。


1.3 KGIとKPIの違い

KGIとKPIはどちらも目標達成のための指標ですが、その役割や設定レベルが異なります。以下の表に、KGIとKPIの違いをまとめました。

項目 KGI KPI
定義 最終的な目標を数値化したもの 目標達成のための行動目標・プロセスを数値化したもの
役割 M&Aの成功を判断する基準 日々の業務における進捗管理と改善
設定レベル 経営層が設定する企業全体の目標 部門や担当者レベルで設定する具体的な行動目標
売上高○○億円達成
営業利益率○○%向上
新規顧客獲得数○○件
顧客単価○○円向上
ウェブサイトアクセス数○○%増加

KGIとKPIを適切に設定し、相互に連携させることで、M&A後の統合プロセスをスムーズに進め、シナジー効果の最大化を目指します。


2. PMIにおけるKGI設定の3つのポイント

PMIにおけるKGI設定は、M&A後の統合プロセスを成功に導くための羅針盤となる重要なプロセスです。KGIは、統合によって最終的に何を達成したいのか、その目標を具体的に示すものです。設定の際には、以下の3つのポイントを意識することが重要です。これらのポイントを踏まえることで、企業はM&Aの目的を達成し、統合プロセスを円滑に進めることができます。

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2.1 具体的な数値目標と達成時期を明確にする

KGIは、M&Aの成功を測る上で具体的な指標となる必要があるため、数値目標と達成時期を明確に設定することが重要です。例えば、「売上高を3年後に20%増加させる」「コストを1年以内に15%削減する」といったように、具体的な数値と期限を定めることで、進捗状況を客観的に評価することができます。達成時期は、短期、中期、長期など、目標の性質に応じて適切に設定する必要があります。

数値目標を設定する際は、現状分析に基づいた現実的な目標を設定することが重要です。過去のデータや業界のベンチマークなどを参考にしながら、達成可能な範囲でチャレンジングな目標を設定することで、統合プロセスにおけるモチベーション維持にもつながります。

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2.2 M&Aの目的と整合性を取る

KGIは、M&Aの目的と整合性が取れている必要があります。M&Aの目的が「市場シェアの拡大」であれば、KGIは「売上高の増加」や「新規顧客獲得数の増加」といった指標を設定する必要があります。もし、KGIがM&Aの目的とずれていれば、統合プロセスは迷走し、期待した成果を得ることが難しくなります。

M&Aの目的とKGIを整合させるためには、M&Aの目的を明確に定義し、その目的を達成するために必要な要素を洗い出すことが重要です。例えば、市場シェアの拡大を目的とする場合、ターゲット顧客層の拡大、販売チャネルの拡大、製品ラインナップの拡充など、様々な要素が考えられます。これらの要素を考慮しながら、KGIとして設定すべき具体的な指標を検討していく必要があります。

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2.3 シナジー効果を最大化する目標設定

M&Aにおいては、シナジー効果を最大化することが重要です。シナジー効果とは、企業結合によって、個々の企業の単純合計を超える効果を生み出すことを指します。KGIは、このシナジー効果を最大限に引き出すように設定する必要があります。例えば、「両社の技術を融合させた新製品の開発」や「販売網の相互活用による顧客基盤の拡大」といったシナジー効果を具体的に数値化した目標を設定することで、統合の効果を最大化することができます。

シナジー効果を最大化するKGIを設定するためには、事前に両社の強みと弱みを分析し、シナジー創出の可能性を具体的に検討する必要があります。例えば、両社の技術を融合することでどのような革新的な製品やサービスが生まれるのか、販売網の相互活用によってどの程度の顧客獲得が見込めるのかなどを、具体的なデータに基づいて分析する必要があります。その上で、シナジー効果を定量化し、KGIとして設定することで、統合効果の最大化を図ることができます。

ポイント 詳細
具体的な数値目標と達成時期を明確にする KGIは測定可能なものでなければなりません。売上高の増加、顧客満足度の向上、新製品の開発など、具体的な数値目標を設定し、いつまでに達成するのかを明確にしましょう。
M&Aの目的と整合性を取る KGIは、M&Aの目的を達成するために設定する必要があります。M&Aの目的が「市場シェアの拡大」であれば、KGIは「売上高の増加」や「新規顧客獲得数の増加」といった指標を設定する必要があります。
シナジー効果を最大化する目標設定 M&Aにおいては、シナジー効果を最大化することが重要です。KGIは、このシナジー効果を最大限に引き出すように設定する必要があります。例えば、「両社の技術を融合させた新製品の開発」や「販売網の相互活用による顧客基盤の拡大」といったシナジー効果を具体的に数値化した目標を設定することで、統合の効果を最大化することができます。
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3. PMIにおけるKPI設定の4つのポイント

PMIを成功に導くためには、適切なKPIを設定し、進捗を管理することが重要です。ここでは、PMIにおけるKPI設定の4つのポイントを解説します。

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3.1 KGIとの関連性を明確にするKPIツリーを作成

KPIを設定する前に、まずKGI(重要目標達成指標)を明確にする必要があります。KGIは、M&Aによって最終的に達成したい目標を数値化したものです。KPIは、このKGIを達成するために設定する、より具体的な行動目標となります。

KGIとKPIの関係性を明確にするために、KPIツリーを作成します。KPIツリーは、KGIを頂点とし、それを達成するためのKPIを階層的に示した図です。それぞれのKPIが、上位のKPIや最終的なKGIにどのように貢献するかを可視化することで、KPI設定の精度を高めることができます。

例えば、「売上高の向上」をKGIとする場合、その下の階層には「新規顧客獲得数」「既存顧客へのアップセル・クロスセル率」「顧客単価」といったKPIを設定することができます。さらに、「新規顧客獲得数」の下には、「ウェブサイトへのアクセス数」「資料請求数」「商談件数」といった、より具体的な行動指標をKPIとして設定していくことが考えられます。


3.2 定量化可能な指標を選択する

KPIとして設定する指標は、必ず定量化可能なものでなければなりません。定量化できない指標では、進捗を正確に測定することができず、PDCAサイクルを効果的に回すことができなくなるためです。

例えば、「顧客満足度向上」といった定性的な指標をKPIに設定する場合、「顧客満足度調査での5段階評価の平均点を4.0以上にする」「顧客からのクレーム件数を前年比で10%削減する」といった具体的な数値目標を設定する必要があります。


3.3 現状把握と目標値を設定する

KPIを設定する際には、現状を把握した上で、達成可能な目標値を設定することが重要です。現状を把握せずに目標値を設定してしまうと、非現実的な目標になったり、逆に低すぎる目標を設定してしまい、十分な成果を上げることができなくなる可能性があります。

現状把握には、過去のデータや競合企業のベンチマークなどを活用します。目標値は、現状とKGIを考慮した上で、挑戦的かつ達成可能な水準に設定する必要があります。

目標値を設定する際には、SMARTの法則を意識すると良いでしょう。SMARTとは、以下の5つの要素の頭文字をとったものです。

Specific(具体的)
Measurable(測定可能)
Achievable(達成可能)
Relevant(関連性)
Time-bound(期限)

これらの要素を満たすように目標値を設定することで、より効果的なKPI設定が可能になります。


3.4 定期的な進捗管理と見直し

KPIを設定したら、定期的に進捗状況をモニタリングし、必要に応じてKPIの見直しや改善を行うことが重要です。PMIは、状況が変化しやすいプロセスであるため、当初設定したKPIが適切でなくなる可能性もあるからです。

進捗管理には、ダッシュボードなどを活用し、KPIの達成状況をリアルタイムで把握できるようにすると良いでしょう。もしKPIの進捗が遅れている場合は、その原因を分析し、改善策を講じる必要があります。場合によっては、KPI自体を見直す必要もあるでしょう。

KPIの進捗状況や見直しの結果については、関係者間で共有し、常に共通認識を持つことが重要です。そのため、定例会議などを開催し、情報共有や意見交換を積極的に行うようにしましょう。


4. PMIにおけるKGI・KPI設定事例

ここでは、具体的なKGI別に、PMIにおけるKPI設定の例を3つ紹介します。設定の視点を掴み、自社のPMIにおけるKGI・KPI設定に役立ててください。


4.1 売上目標達成をKGIとした場合のKPI設定例

M&Aの目的が、企業規模の拡大や市場シェアの獲得といった場合、売上目標達成をKGIとするケースが多いでしょう。この場合、KPIには、売上目標達成に直結するような、より具体的な指標を設定する必要があります。例えば、以下のようなものが考えられます。

KGI KPI 目標値(例) 計測頻度(例)
売上高:10億円(年間) 新規顧客獲得数 100社 毎月
既存顧客売上高 6億円 毎月
客単価 1,000万円 毎月
成約率 20% 毎月
主要製品Aの売上高 4億円 毎月

上記はあくまで一例であり、企業の状況や業界、M&Aの目的などによって、設定すべきKPIは異なります。重要なのは、KGIである売上目標達成との関連性を明確にした上で、適切なKPIを設定することです。

4.1.1 ポイント

売上目標を達成するために、新規顧客獲得、既存顧客への深耕、商品・サービスの拡販など、どのような戦略で取り組むのかを明確にする。
戦略に基づき、どの指標をKPIとして設定する必要があるかを検討する。例えば、新規顧客獲得に注力する場合には、新規顧客獲得数や成約率などをKPIとすることが考えられる。
KPIの目標値は、過去のデータや市場動向などを踏まえて、現実的かつ挑戦的な値を設定する。

4.2 コスト削減をKGIとした場合のKPI設定例

M&Aによって経営の効率化を図り、コスト削減を目指する場合、コスト削減額をKGIとするケースが考えられます。この場合、KPIには、どの費用項目をどの程度削減するのかを具体的に示す指標を設定する必要があります。例えば、以下のようなものが考えられます。

KGI KPI 目標値(例) 計測頻度(例)
コスト削減額:1億円(年間) 人件費 3,000万円削減 四半期ごと
販売管理費 2,000万円削減 四半期ごと
製造原価 5,000万円削減 四半期ごと
システム関連費用 1,000万円削減 四半期ごと

上記のように、コスト削減をKGIとする場合は、特にKPIの設定が重要となります。なぜなら、KPIが明確でなければ、具体的なコスト削減策を立案することが難しくなるからです。

4.2.1 ポイント

コスト構造を分析し、どの費用項目に削減の余地があるのかを把握する。例えば、人件費、賃料、広告宣伝費、物流費など、項目別に分析する。
費用項目ごとに、具体的な削減目標値と達成時期を設定する。目標値は、過去のデータや業界のベンチマークなどを参考に、現実的な範囲で設定する。
コスト削減の進捗状況を定期的にモニタリングし、必要に応じて対策を講じる。例えば、目標達成が遅れている場合は、原因を分析し、改善策を検討する。

4.3 新規顧客獲得をKGIとした場合のKPI設定例

M&Aによって新規事業に進出したり、新たな顧客層を獲得したりする場合、新規顧客獲得数をKGIとするケースがあります。この場合、KPIには、マーケティング活動や営業活動の成果を測る指標を設定する必要があります。例えば、以下のようなものが考えられます。

KGI KPI 目標値(例) 計測頻度(例)
新規顧客獲得数:1,000社(年間) ウェブサイトへのアクセス数 10,000件/月 毎月
資料請求件数 500件/月 毎月
セミナー参加者数 100名/回 開催ごと
営業訪問件数 200件/月 毎月
成約率 10% 毎月

新規顧客獲得をKGIとする場合は、顧客獲得のプロセスを可視化し、各プロセスにおけるKPIを設定することが重要です。ウェブサイトへのアクセスから資料請求、セミナー参加、営業訪問、成約といった一連の流れの中で、どのプロセスに課題があるのかを把握し、改善策を講じることで、効率的に新規顧客を獲得していくことができます。

4.3.1 ポイント

ターゲットとする顧客層を明確にする。例えば、年齢、性別、職業、興味関心などでセグメントする。
ターゲット顧客層へのリーチ方法を検討する。例えば、オンライン広告、SNSマーケティング、展示会出展、ダイレクトメールなど、適切な方法を選択する。
顧客獲得コスト(CPA)を意識する。費用対効果の高い方法で新規顧客を獲得できるよう、KPIを設定し、進捗を管理する。

これらの事例を参考に、自社のPMIにおけるKGI・KPIを設定し、目標達成を目指しましょう。


5. まとめ

M&Aを成功に導くには、PMIにおけるKGI・KPIの設定が非常に重要です。KGIはM&Aの目的を達成するための具体的な目標を、KPIはその目標達成度合いを測るための指標を指します。設定する際には、数値目標や達成時期を明確にするだけでなく、M&Aの目的との整合性やシナジー効果の最大化を意識することが重要です。本記事で紹介した事例を参考に、自社のM&A戦略に最適なKGI・KPIを設定し、PMIを成功させましょう。

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