休眠会社をM&Aで譲渡・買収するメリット・デメリットとは?

休眠会社をM&Aで譲渡・買収するメリット・デメリットとは?

休眠会社をM&Aで譲渡・買収しようと考えていますか? このページでは、休眠会社M&Aのメリット・デメリット、手続き、注意点、税務・法務まで網羅的に解説します。休眠会社とは何か、解散・清算との違い、放置のリスクといった基本的な情報から、譲渡・買収それぞれのメリット・デメリットを具体的に示し、意思決定をサポート。

売却益の獲得や会社維持コストの削減といったメリットだけでなく、譲渡価格の低さや過去の負債リスクといったデメリットも明確化することで、M&Aを成功に導くための判断材料を提供します。さらに、M&Aの具体的な手続き、デューデリジェンスの重要性、税務・法務上の注意点についても詳しく解説。

帝国データバンクや東京商工リサーチといった信用調査機関の活用方法にも触れ、安心してM&Aを進められるよう、必要な情報を網羅しています。この記事を読めば、休眠会社M&Aに関する疑問を解消し、最適な選択をするための知識を身につけることができます。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。



1. 休眠会社とは

休眠会社とは、設立後、事業活動を停止し、実質的に活動していない会社のことを指します。会社の登記は抹消されておらず、法律上は存続している状態です。具体的には、売上がなく、取引も行っていない状態が継続している会社が該当します。ただし、法的な定義は明確に定められておらず、税務申告や決算公告などの法定義務は継続して履行する必要があります。


1.1 休眠会社と解散・清算との違い

休眠会社は、事業活動を行っていないものの、法人格は維持されています。一方で、解散とは、会社を法的に消滅させる手続きのことで、清算とは、解散した会社の財産を整理し、債権者への弁済や株主への分配を行う手続きのことです。休眠会社は、将来的に事業を再開することも可能ですが、解散・清算後は会社が消滅するため、再開はできません。

項目 休眠会社 解散・清算
法人格 存続 消滅
事業活動 停止 停止
法定義務 あり(税務申告など) 清算手続きが必要
事業再開 可能 不可能

1.2 休眠会社を放置するリスク

休眠会社を放置すると、様々なリスクが発生します。例えば、毎年発生する税務申告や決算公告などの法定義務を怠ると、過料や延滞税が課される可能性があります。また、休眠会社であっても、役員変更登記などの必要が生じた場合、対応を怠ると過料の対象となります。さらに、過去の取引や契約に基づく訴訟リスクや、予期せぬ負債が発覚するリスクも存在します。また、代表者個人が死亡した場合、相続手続きが複雑化する可能性もあります。

法定義務の不履行による過料・延滞税
役員変更登記等の不履行による過料
訴訟リスク
予期せぬ負債発覚リスク
代表者死亡時の相続手続きの複雑化
信用情報の低下

2. 休眠会社をM&Aで譲渡するメリット・デメリット

休眠会社をM&Aで譲渡する際には、メリットだけでなくデメリットも存在します。譲渡を検討する際には、両方を理解した上で判断することが重要です。


2.1 休眠会社譲渡のメリット

休眠会社を譲渡することによる主なメリットは以下の通りです。

2.1.1 売却益を得られる

休眠会社であっても、M&Aによる譲渡によって売却益を得られる可能性があります。特に、法人格としての歴史が長い会社や、希少な許認可を取得済みの会社などは、買収希望企業にとって魅力的であり、高値で売却できる可能性があります。売却益は、新たな事業への投資や株主への配当などに活用できます。

2.1.2 会社維持コストの削減

休眠会社であっても、維持には一定のコストがかかります。例えば、法人住民税や登記費用、会計処理費用などが挙げられます。M&Aで譲渡することで、これらの維持コストを削減することができます。

2.1.3 社会的責任の回避

休眠会社を放置しておくと、法令違反や社会的責任の追及などのリスクがあります。M&Aで譲渡することで、これらのリスクを回避することができます。

メリット 詳細
売却益の獲得 休眠会社でも、事業内容や保有資産、許認可によっては売却益が期待できます。
会社維持コストの削減 法人住民税、決算・申告費用など、休眠会社であっても発生する維持コストを削減できます。
社会的責任の回避 休眠会社を放置することによるコンプライアンスリスクや社会的責任問題を回避できます。
事業承継問題の解決 後継者不在の場合、休眠会社をM&Aで譲渡することで事業承継問題を解決できます。

2.2 休眠会社譲渡のデメリット

休眠会社を譲渡することによる主なデメリットは以下の通りです。

2.2.1 譲渡価格が低い可能性

休眠会社は事業活動を行っていないため、収益性や将来性が評価されにくく、譲渡価格が低くなる可能性があります。特に、負債を抱えている場合や、許認可の有効期限が近い場合は、さらに価格が下がる可能性があります。市場の状況や買収企業のニーズによって価格は変動するため、事前にM&Aアドバイザーに相談し、適切な価格を把握しておくことが重要です。

2.2.2 過去の負債リスク

休眠会社であっても、過去の負債が潜在的に存在する可能性があります。M&Aによる譲渡前に、徹底的なデューデリジェンスを行い、負債の有無や規模を明確にする必要があります。負債が発見された場合、譲渡価格への影響や、譲渡後の責任分担について、買収企業と慎重に交渉する必要があります。場合によっては、譲渡前に負債を処理する必要が生じることもあります。

2.2.3 譲渡手続きの手間

休眠会社のM&Aには、通常の会社譲渡と同様に、デューデリジェンス、契約交渉、株式譲渡などの手続きが必要です。これらの手続きには専門的な知識と時間が必要となるため、M&Aアドバイザーなどの専門家のサポートを受けることが重要です。手続きの複雑さや所要時間は、会社の規模や状況によって異なります。

デメリット 詳細
譲渡価格が低い可能性 事業活動を行っていないため、評価額が低くなる傾向があります。
過去の負債リスク 潜在的な負債が発覚した場合、売却主に責任が問われる可能性があります。
譲渡手続きの手間 デューデリジェンス、契約交渉、株主総会など、複雑な手続きが必要です。
情報開示の必要性 買収希望企業に対して、会社の財務状況や事業内容などの情報を開示する必要があります。

3. 休眠会社をM&Aで買収するメリット・デメリット

休眠会社を買収することは、新規事業を立ち上げる場合や既存事業を拡大する場合に、様々なメリットをもたらします。一方で、潜在的なリスクも存在するため、メリット・デメリットを理解した上で、慎重な判断が必要です。


3.1 休眠会社買収のメリット

休眠会社買収には、主に以下のようなメリットがあります。

3.1.1 事業開始までの時間短縮

新規に会社を設立する場合、手続きや許認可の取得などに時間を要します。休眠会社を買収することで、これらの手続きを省略し、速やかに事業を開始できます。会社設立登記にかかる数週間から数ヶ月を節約できるため、ビジネスチャンスを逃さずに済みます。

3.1.2 会社設立コストの削減

会社設立には、登録免許税や定款認証費用などのコストが発生します。休眠会社を買収すれば、これらのコストを削減できます。また、設立に伴う事務手続きの手間も省けるため、人的リソースの節約にも繋がります。

3.1.3 既存の信用・取引先の活用

休眠会社には、過去の事業活動を通じて築かれた信用や取引先が存在する場合があります。これらを活用することで、新規事業の立ち上げをスムーズに進めたり、既存事業の拡大を加速させたりすることが可能です。例えば、既に取引のある金融機関から融資を受けやすくなる、既存の顧客基盤を活用できるなどのメリットが期待できます。

3.1.4 許認可の承継

事業によっては、特定の許認可が必要となる場合があります。休眠会社が既に必要な許認可を取得している場合、買収することで許認可の承継が可能となり、新規に取得する手間と時間を大幅に削減できます。例えば、建設業許可、宅建業免許、古物商許可など、取得に時間と費用がかかる許認可を承継できる可能性があります。

メリット 内容 具体例
事業開始までの時間短縮 会社設立手続きを省略 登記にかかる数週間~数ヶ月を短縮
会社設立コストの削減 登録免許税、定款認証費用等を節約 数万円~数十万円のコスト削減
既存の信用・取引先の活用 過去の事業活動で築かれた信用を活用 金融機関からの融資、既存顧客基盤の活用
許認可の承継 既に取得済みの許認可を活用 建設業許可、宅建業免許、古物商許可など

3.2 休眠会社買収のデメリット

休眠会社買収には、メリットだけでなく、以下のようなデメリットも存在します。事前にしっかりと確認しておくことが重要です。

3.2.1 過去の負債リスク

休眠会社には、潜在的な負債が隠れている可能性があります。買収前に徹底的なデューデリジェンスを行い、負債の有無や規模を正確に把握することが不可欠です。想定外の負債が発覚した場合、事業計画に大きな影響を与える可能性があります。

3.2.2 デューデリジェンスの重要性

休眠会社の状態を正確に把握するためには、デューデリジェンスが非常に重要です。財務状況、法務状況、事業状況などを詳細に調査し、潜在的なリスクを洗い出す必要があります。デューデリジェンスには専門的な知識が必要となるため、弁護士や公認会計士などの専門家に依頼することが推奨されます。費用はかかりますが、後々のトラブルを回避するために必要な投資と言えるでしょう。

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3.2.3 買収価格の交渉

休眠会社の買収価格は、会社の状況や市場環境によって大きく変動します。売手との価格交渉は、M&Aプロセスにおいて重要な要素となります。適切な価格で買収するためには、市場調査や企業価値評価などの専門的な知識が必要となります。M&Aアドバイザーを活用することで、より有利な条件で交渉を進めることができます。

デメリット 内容 対策
過去の負債リスク 潜在的な負債の存在 徹底的なデューデリジェンスの実施
デューデリジェンスの重要性 専門的な知識が必要 弁護士、公認会計士等への依頼
買収価格の交渉 適正価格の判断が難しい 市場調査、企業価値評価、M&Aアドバイザーの活用
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4. 休眠会社M&Aの具体的な手続きと注意点

休眠会社M&Aは、通常の会社M&Aと比較して手続きが簡素化される場合もありますが、綿密な準備と適切な手続きが不可欠です。スムーズなM&Aを実現するために、具体的な手続きと注意点を以下にまとめました。


4.1 M&Aアドバイザーの活用

休眠会社M&Aにおいても、M&Aアドバイザーの活用は大きなメリットをもたらします。M&Aアドバイザーは、専門的な知識と経験に基づき、以下のようなサポートを提供します。

適切な譲渡価格・買収価格の算定
最適なM&Aスキームの提案
デューデリジェンスの支援
契約交渉のサポート
関係各所との調整(弁護士、税理士、公認会計士など)

特に、休眠会社M&Aは過去の負債やコンプライアンスリスクなどが潜んでいる可能性があるため、専門家による客観的なアドバイスを受けることが重要です。

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4.2 デューデリジェンス

デューデリジェンスは、M&Aにおける重要なプロセスであり、対象会社の財務状況、法務状況、事業状況などを詳細に調査することを指します。休眠会社の場合でも、過去の事業活動や負債の有無、許認可の状況などを確認する必要があります。主な調査項目は以下の通りです。

財務デューデリジェンス貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等の財務諸表の分析、債務状況、資産評価など
法務デューデリジェンス定款、株主名簿、契約書、訴訟履歴などの確認、コンプライアンス体制の確認など
税務デューデリジェンス税務申告状況、未納税金の有無、税務リスクの評価など

デューデリジェンスの結果に基づき、買収価格の調整や契約条件の変更などを検討します。デューデリジェンスを怠ると、M&A後に予期せぬ問題が発生するリスクが高まるため、慎重に進める必要があります。

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4.3 契約交渉

デューデリジェンスの結果を踏まえ、譲渡側と買収側で契約交渉を行います。主な交渉項目は以下の通りです。

譲渡価格/買収価格
譲渡株式数/買収株式数
譲渡日/買収日
表明保証条項
契約解除条項
競業避止義務

契約交渉は、双方の利益をバランスさせながら、Win-Winの関係を築けるよう進めることが重要です。弁護士などの専門家のサポートを受けながら、契約内容を綿密に確認しましょう。


4.4 株式譲渡

最終的な契約締結後、株式譲渡の手続きを行います。株式譲渡の手続きは、以下のようになります。

手続き 内容 注意点
株式譲渡契約書の作成・締結 譲渡価格、譲渡株式数、譲渡日などの条件を明記した契約書を作成し、譲渡側と買収側が署名・捺印する。 契約内容に不明点がないか、専門家に確認してもらうことが重要。
株主名簿の書き換え 会社の株主名簿を書き換え、新しい株主を登録する。 法務局への変更登記が必要。
譲渡代金の支払い 買収側から譲渡側へ譲渡代金を支払う。 支払方法や支払期日を明確にしておく。
取締役の変更登記 必要に応じて、会社の代表取締役などの役員を変更する。 法務局への変更登記が必要。

これらの手続きが完了することで、休眠会社M&Aは正式に成立します。手続きには、法務局への登記申請や税務署への届出など、複雑な手続きも含まれます。専門家のサポートを受けながら、確実な手続きを進めるようにしましょう。

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5. 休眠会社M&Aに関する税務と法務

休眠会社M&Aを行う際には、税務と法務の両面で注意すべき点がいくつかあります。事前にこれらの点を理解し、適切な対策を講じることで、M&Aをスムーズに進め、後々のトラブルを回避することができます。


5.1 税務上の注意点

休眠会社M&Aにおける税務上の注意点は、譲渡側と買収側でそれぞれ異なります。譲渡側は売却益に対する課税、買収側は取得価格の償却などが主なポイントとなります。

5.1.1 譲渡側の税務

譲渡側にとって最も重要なのは、株式譲渡益に対する課税です。譲渡益は、譲渡価格から取得価格と譲渡費用を差し引いた金額で計算されます。この譲渡益に対して、個人の場合は所得税、法人の場合は法人税が課税されます。

5.1.2 買収側の税務

買収側にとって重要なのは、取得した休眠会社の資産の評価と償却です。取得価格を適切に資産に配分し、それぞれの資産の耐用年数に応じて償却していく必要があります。また、のれんの償却についても考慮が必要です。

項目譲渡側買収側
株式譲渡益課税対象-
資産の評価-重要
のれんの償却-検討が必要
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5.1.3 税務デューデリジェンスの重要性

M&A前に税務デューデリジェンスを実施することで、過去の税務申告や会計処理に問題がないかを確認し、潜在的な税務リスクを洗い出すことができます。これにより、M&A後の予期せぬ税務負担を避けることができます。税理士などの専門家への相談が推奨されます。

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5.2 法務上の注意点

休眠会社M&Aにおいては、法務上の手続きも重要です。適切な手続きを行わないと、M&Aが無効になる可能性もあります。

5.2.1 譲渡契約書の作成

譲渡側と買収側の間で、譲渡価格、譲渡条件、表明保証、契約解除条項などを定めた譲渡契約書を作成する必要があります。契約内容が複雑なため、弁護士などの専門家のサポートを受けることが重要です。

5.2.2 株主総会の承認

会社法上、株式譲渡には株主総会の承認が必要となる場合があります。定款で定められている場合や、特定の株主への譲渡制限がある場合は、株主総会の承認を得る必要があります。

5.2.3 登記変更手続き

株式譲渡が完了したら、会社の代表取締役や本店所在地などの変更を法務局に届け出る必要があります。登記変更手続きが完了することで、M&Aが正式に完了します。

5.2.4 法務デューデリジェンス

法務デューデリジェンスでは、休眠会社の定款、株主名簿、登記簿などを確認し、法務上の問題点がないかを確認します。過去の訴訟履歴や契約上のリスクなども調査することで、M&A後のトラブルを未前に防ぐことができます。弁護士などの専門家への相談が不可欠です。

項目内容
譲渡契約書譲渡価格、譲渡条件などを規定
株主総会承認会社法上の必要性
登記変更手続き法務局への届け出
法務デューデリジェンス潜在的なリスクの洗い出し

休眠会社M&Aにおける税務・法務は複雑であり、専門家によるサポートが不可欠です。M&Aアドバイザー、税理士、弁護士などの専門家と連携し、適切な手続きを進めることで、M&Aを成功に導くことができます。

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6. まとめ

休眠会社をM&Aで譲渡・買収することは、譲渡側にとっては会社維持コストの削減や売却益の獲得、買収側にとっては事業開始までの時間短縮や会社設立コストの削減といったメリットがあります。一方で、譲渡側には譲渡価格が低い可能性や過去の負債リスク、買収側にはデューデリジェンスの重要性や過去の負債リスクといったデメリットも存在します。

M&Aを成功させるためには、メリット・デメリットを十分に理解し、M&Aアドバイザーを活用するなど専門家のサポートを受けながら、デューデリジェンスや契約交渉を慎重に進めることが重要です。税務や法務についても事前に確認し、手続きを進めることで、不要なトラブルを回避し、スムーズなM&Aを実現できるでしょう。

休眠会社M&Aは、適切な手続きと注意点を踏まえることで、譲渡側と買収側の双方にとってメリットのある選択肢となり得ます。本記事が、休眠会社M&Aを検討する際の参考になれば幸いです。

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