事業売却プロセス|準備から成約までの流れと費用を徹底解説!
事業売却を検討し始めたものの、具体的なプロセスや費用、注意点がよく分からず不安を感じていませんか? この記事では、事業売却の準備段階からクロージング、その後の注意点まで、全体の流れを分かりやすく解説します。事業売却の大まかな流れ、必要な期間、そしてM&Aアドバイザーや仲介会社との連携の重要性についても理解することができます。
また、財務諸表の準備や事業価値の算定、デューデリジェンス、最終契約といった重要なステップについても詳細に説明。さらに、仲介手数料、弁護士費用、税理士費用など、事業売却にかかる費用についても具体的に解説することで、想定外の出費を防ぐための知識を身につけることができます。
事業売却は、経営者の人生における大きな転換点となる重要な決断です。この記事を読むことで、売却プロセス全体を理解し、スムーズかつ成功裏に事業売却を進めるための準備を整えることができるでしょう。安心して売却を進めるために、ぜひ最後までお読みください。
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編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建などを10年経験。3か月の経営支援サポートで、9か月後には赤字の会社を1億円の利益を計上させるなどの実績を多数持つ専門家。
1. 事業売却プロセスの全体像
事業売却は、経営者にとって人生における大きな転換点となる重要な決断です。準備不足のまま売却を進めると、希望額での売却が難しくなったり、予期せぬトラブルに巻き込まれたりする可能性があります。この章では、事業売却の大まかな流れと、売却にかかる期間について解説します。全体像を把握することで、スムーズかつ成功裡に事業売却を進めるための第一歩を踏み出しましょう。
1.1 事業売却の大まかな流れ
事業売却は、大きく分けて以下の7つのステップで進みます。それぞれのステップで何を行うのか、事前に理解しておくことが重要です。
準備段階 | 事業売却の目的を明確化し、必要な書類や情報を整理します。財務状況の確認と改善、事業価値の算定、そして仲介業者の選定を行います。この段階での綿密な準備が、後の交渉をスムーズに進める鍵となります。 |
---|---|
ノンネームシートの作成と開示 | 買い手候補に会社概要や財務情報を匿名で開示するための資料、ノンネームシートを作成します。会社の概要、事業内容、財務状況などの基本情報を記載し、買い手候補の興味を引くように作成することが重要です。 |
買い手候補の選定 | ノンネームシートを基に、事業への関心を示した複数の買い手候補の中から、条件や相性などを考慮して最適な相手を選定します。自社の将来像と合致する相手を選ぶことが重要です。 |
デューデリジェンス | 買い手候補が、会社の財務状況、法務状況、事業状況などを詳細に調査します。この過程で、隠れたリスクや問題点が明らかになることもあります。透明性のある情報開示が求められます。 |
最終交渉 | デューデリジェンスの結果を踏まえ、売却価格や契約条件などについて最終的な交渉を行います。双方が納得できる条件で合意形成を目指します。 |
契約締結 | 交渉が成立したら、正式な売買契約を締結します。契約内容を慎重に確認し、不明点があれば専門家に相談することが重要です。 |
クロージングと事業の引継ぎ | 売買契約に基づき、事業の所有権を買い手に移転します。従業員や顧客への適切な引継ぎを行い、事業の継続性を確保することが重要です。 |
1.2 事業売却にかかる期間
事業売却にかかる期間は、事業規模や業種、売却の状況などによって大きく異なります。一般的には、準備段階からクロージングまで、6ヶ月から1年程度かかることが多いです。ただし、複雑な取引や予期せぬ問題が発生した場合、さらに長期間を要することもあります。
規模・状況 | 期間の目安 |
---|---|
小規模事業、シンプルな取引 | 6ヶ月~9ヶ月 |
中規模事業、一般的な取引 | 9ヶ月~12ヶ月 |
大規模事業、複雑な取引 | 1年以上 |
早期の売却を希望する場合でも、綿密な準備期間を設けることが重要です。焦って売却を進めると、希望額での売却が難しくなる可能性があります。余裕を持ったスケジュールを立て、適切なタイミングで売却を進めるようにしましょう。また、M&Aアドバイザーを活用することで、売却プロセスを効率化し、期間短縮を図ることも可能です。
2. 事業売却の準備段階
事業売却を成功させるためには、綿密な準備が不可欠です。準備段階での作業の質が、売却価格や成約までの期間に大きく影響します。この章では、事業売却の準備段階で必要な作業について詳しく解説します。
2.1 必要な書類の準備
事業売却には様々な書類が必要となります。事前に準備することで、売却プロセスをスムーズに進めることができます。
定款 | |
登記簿謄本 | |
株主名簿 | |
直近数期分の決算書(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書) | |
事業計画書 | |
従業員に関する資料(雇用契約書、就業規則など) | |
主要取引先との契約書 | |
知的財産権に関する書類 | |
不動産賃貸借契約書(該当する場合) |
これらの書類は、買い手候補が企業の価値を評価する際の重要な資料となります。正確で最新の情報を準備しておくことが重要です。
2.2 財務状況の確認と改善
買い手は、企業の財務状況を詳細に調べます。財務状況が健全であるほど、高い評価を得られる可能性が高まります。売却前に財務状況を確認し、改善できる部分は改善しておきましょう。
収益性の向上 | 不要なコストを削減し、売上を伸ばす施策を検討します。 |
---|---|
債務の削減 | 過剰な負債は企業価値を下げる要因となります。可能な限り返済を進めておくことが重要です。 |
キャッシュフローの改善 | 安定したキャッシュフローは、企業の健全性を示す重要な指標です。滞留債権の回収など、キャッシュフロー改善策を実施しましょう。 |
在庫管理の最適化 | 過剰在庫は不良資産となる可能性があります。適切な在庫管理を行い、在庫回転率を向上させましょう。 |
これらの改善策は、短期間で効果が出るものばかりではありません。売却を検討し始めた段階から、計画的に取り組むことが重要です。
2.3 事業価値の算定方法
事業価値の算定は、売却価格を決める上で非常に重要です。適切な算定方法を選択し、自社の事業価値を正しく把握しましょう。
算定方法 | 概要 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
DCF法(割引キャッシュフロー法) | 将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて算出する方法 | 将来の成長性を反映できる | 将来予測が難しい |
類似会社比較法 | 類似の上場企業の株価倍率などを参考に算出する方法 | 客観的な評価が可能 | 完全に一致する類似企業を見つけるのが難しい |
純資産法 | 会社の純資産(資産-負債)を元に算出する方法 | 算定が容易 | 将来の収益性を反映できない |
これらの算定方法にはそれぞれメリット・デメリットがあります。複数の方法で算定し、総合的に判断することが重要です。また、M&Aアドバイザーなどの専門家に相談することも有効です。
【関連】M&Aで企業価値評価(バリュエーション)3つの算定方法2.4 仲介業者選定のポイント
仲介業者は、買い手候補の探索、交渉、契約締結まで、事業売却プロセス全体をサポートする重要な役割を担います。適切な仲介業者を選定することは、事業売却の成否に大きく影響します。
実績と経験 | 事業売却の実績が豊富で、経験豊富な担当者がいるかを確認しましょう。特に、自社と同じ業種や規模の企業の売却実績がある業者が望ましいです。 |
---|---|
ネットワーク | 幅広いネットワークを持つ業者であれば、より多くの買い手候補にアプローチできます。 |
手数料体系 | 手数料体系は業者によって異なります。事前に確認し、納得できる業者を選びましょう。 |
担当者との相性 | 事業売却は長期にわたるプロセスです。担当者との信頼関係が重要となるため、相性を確認することも大切です。 |
守秘義務 | 情報漏洩を防ぐため、守秘義務契約を締結してくれる業者を選びましょう。 |
複数の仲介業者を比較検討し、自社にとって最適な業者を選定しましょう。面談を通して、業者の expertise や提案内容を確認することが重要です。また、日本M&Aセンター、ストライク、レコフといったM&A仲介会社も選択肢として検討できます。
【関連】事業売却のアドバイザー費用・手数料を徹底比較!最適な専門家を見つける3. 事業売却の交渉段階
事業売却の準備が整ったら、いよいよ買い手候補との交渉段階に入ります。この段階は、事業売却プロセスの中でも特に重要なフェーズであり、最終的な売却価格や条件が決定されます。丁寧かつ戦略的な交渉を進めることで、売主にとって有利な条件での売却を実現できる可能性が高まります。
3.1 ノンネームシートの作成と開示
ノンネームシートとは、売却対象事業の概要を匿名で記載した資料です。買い手候補は、ノンネームシートの内容を確認することで、事業への投資判断の初期段階における検討材料とします。ノンネームシートには、事業内容、財務状況、従業員数、市場シェアなどの基本情報が記載されます。個人情報や企業秘密など、非公開情報が含まれないよう注意が必要です。ノンネームシートを作成する目的は、買い手候補の関心を高め、秘密保持契約を締結した上で、より詳細な情報を開示するための準備段階とすることです。
3.2 買い手候補との交渉
ノンネームシートを精査した買い手候補から、より詳細な情報提供を求める連絡が入ります。この段階で、秘密保持契約を締結し、事業概要書などの機密性の高い情報を提供します。買い手候補は、提供された情報を元に、事業のデューデリジェンス(詳細な調査)を実施します。デューデリジェンスの結果を踏まえ、買い手候補は買収価格や条件を提示してきます。売主は、提示された条件を元に、買い手候補と交渉を進めます。
複数の買い手候補がいる場合は、並行して交渉を進めることで、より有利な条件での売却を目指します。価格だけでなく、経営権の移行方法、従業員の雇用継続、事業の継続性など、様々な条件を考慮しながら交渉を進めることが重要です。この段階では、M&Aアドバイザーなどの専門家のサポートを受けることで、スムーズかつ効果的な交渉を進めることが期待できます。
3.3 デューデリジェンスへの対応
デューデリジェンスとは、買い手候補が事業の価値やリスクを評価するために実施する詳細な調査のことです。財務、法務、事業、人事など、多岐にわたる分野で調査が行われます。売主は、買い手候補からのデューデリジェンスのリクエストに迅速かつ正確に対応する必要があります。必要な資料をスムーズに提供することで、買い手候補の信頼獲得に繋がり、円滑な交渉に進むことが期待できます。
デューデリジェンスで想定される項目は以下の通りです。
分野 | 内容 |
---|---|
財務デューデリジェンス | 財務諸表の正確性、収益性、資産負債の状況などを調査 |
法務デューデリジェンス | 契約書の確認、法令遵守状況、訴訟リスクなどを調査 |
事業デューデリジェンス | 事業計画、市場環境、競合状況、事業リスクなどを調査 |
人事デューデリジェンス | 従業員の雇用状況、人事制度、労務リスクなどを調査 |
デューデリジェンスの結果、想定外の課題やリスクが発見される場合もあります。売主は、事前に想定されるリスクを洗い出し、対応策を検討しておくことが重要です。また、デューデリジェンスのプロセスを通じて、買い手候補との信頼関係を構築することも重要です。
【関連】M&Aで失敗しないデューデリジェンス!目的・種類・費用は?【前編】3.4 最終契約に向けての条件交渉
デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な契約条件の交渉を行います。買収価格、支払い方法、経営権の移行方法、従業員の雇用継続、事業の継続性など、様々な条件について、双方が合意できるまで交渉を続けます。この段階では、弁護士やM&Aアドバイザーなどの専門家のサポートを受けながら、綿密な交渉を進めることが重要です。
特に、買収価格の決定は、事業売却プロセスにおける最重要事項の一つです。事業の価値を適切に評価し、売主にとって納得のいく価格で売却できるよう、交渉戦略を立てる必要があります。また、契約書の内容についても、専門家のアドバイスを受けながら、慎重に確認することが重要です。
契約締結後にトラブルが発生しないよう、曖昧な表現を避け、明確な条項を盛り込むようにします。最終契約に向けての条件交渉は、事業売却の成否を左右する重要な段階です。十分な準備と戦略的な交渉によって、売主にとって有利な条件での売却を実現しましょう。
4. 事業売却の契約・クロージング
事業売却プロセスにおける最終段階である契約・クロージングは、これまでの準備と交渉の集大成です。売買契約書の締結と事業の円滑な引継ぎは、売却を成功させるための最後の重要なステップとなります。綿密な確認と適切な手続きを行うことで、売却後のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな事業移行を実現しましょう。
4.1 契約書の内容確認と締結
最終契約書は、事業売却におけるすべての合意事項を網羅した重要な書類です。内容に誤りや不明点があると、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。そのため、契約締結前に弁護士などの専門家と共に内容を徹底的に確認することが不可欠です。特に以下の項目は重点的に確認しましょう。
売買価格と支払い方法 | 金額、支払い時期、分割払いの有無、手形や小切手の利用など |
---|---|
対象事業の範囲 | 資産、負債、契約、従業員など、具体的に何が含まれるのか |
表明保証条項 | 売主が買い手に対して行う事業に関する事実の表明と保証の内容 |
解除条件 | 契約を解除できる条件とその場合の手続き |
競業避止義務 | 売主が一定期間、同業種で競合する事業を行わない義務 |
秘密保持義務 | 取引に関する情報の秘密保持義務 |
契約違反時の責任 | 違反した場合の損害賠償など |
契約書の内容に納得したら、売主と買い手が署名捺印を行い、正式に契約が締結されます。契約書の原本は売主と買い手がそれぞれ保管します。
4.2 クロージングと事業の引継ぎ
契約締結後、クロージングが行われ、事業の所有権が売主から買い手に移転します。クロージングでは、売買代金の支払い、事業用資産の引渡し、従業員の移籍手続きなどが行われます。スムーズな事業引継ぎのために、事前に綿密な計画を立て、関係者との連携を密にすることが重要です。以下に、主な引継ぎ事項をまとめました。
引継ぎ事項 | 内容 | 注意点 |
---|---|---|
事業用資産の引渡し | 不動産、設備、在庫、知的財産権など | 引渡し時期、方法、責任の所在などを明確にする |
従業員の移籍 | 雇用契約の承継、給与・待遇の変更、説明会の実施など | 労働法に則った適切な手続きを行う |
顧客情報の引継ぎ | 顧客データの移行、顧客への連絡など | 個人情報保護法を遵守する |
取引先への連絡 | 事業売却の通知、取引継続の確認など | 取引関係への影響を最小限にする |
許認可の承継 | 事業に必要な許認可の移転手続き | 手続きに時間を要する場合があるため、事前に確認する |
クロージング後も、一定期間は売主が買い手をサポートするケースが多く見られます。これは、事業の円滑な移行を支援し、買い手の事業運営を軌道に乗せるための重要な役割を果たします。具体的には、従業員への研修、顧客への継続的なサービス提供、取引先との関係維持などが挙げられます。スムーズな事業引継ぎは、売却後のトラブル防止だけでなく、買い手の事業の成功にも繋がるため、売主と買い手の双方にとって重要なプロセスです。
5. 事業売却にかかる費用
事業売却にかかる費用は、売却金額や取引の複雑さ、仲介業者の有無などによって大きく変動します。主な費用項目と、それぞれの内訳、相場について詳しく解説します。
【関連】会社売却の費用とその内訳|中小企業のM&A成功の虎の巻5.1 仲介手数料
M&A仲介会社に依頼する場合、成功報酬として仲介手数料が発生します。一般的には、レーマン方式と呼ばれる計算方法が用いられます。
5.1.1 レーマン方式とはレーマン方式は、売却価格に応じて段階的に手数料率が変化する方式です。売却価格が高いほど、手数料率は低くなります。
売却価格 | 手数料率 |
---|---|
1億円以下 | 5% |
1億円超~5億円以下 | 4% + (1億円を超える部分×3%) |
5億円超~10億円以下 | 16% + (5億円を超える部分×2%) |
10億円超 | 26% + (10億円を超える部分×1%) |
ただし、これはあくまで一般的な目安であり、M&A仲介会社によって手数料率や計算方法は異なる場合があります。事前にしっかりと確認することが重要です。
5.2 弁護士費用
弁護士費用は、契約書の作成・レビュー、デューデリジェンスへの対応、交渉のサポートなど、法的な手続きに必要な費用です。複雑な取引になればなるほど、費用は高額になる傾向があります。
5.2.1 弁護士費用の内訳着手金 | 契約時に支払う費用 |
---|---|
報酬金 | 成功報酬として支払う費用 |
実費 | 交通費、通信費、印紙代など |
弁護士費用は、案件の規模や難易度によって異なりますが、数十万円から数百万円程度かかる場合が多いです。事前に弁護士と費用についてしっかりと相談しておくことが重要です。
5.3 税理士費用
税理士費用は、事業売却に伴う税務申告、税務アドバイスなどにかかる費用です。事業売却によって発生する税金は複雑なため、税理士に相談することで、節税対策などを検討することができます。
5.3.1 税理士費用の内訳相談料 | 税務相談にかかる費用 |
---|---|
申告書作成費用 | 税務申告書の作成にかかる費用 |
その他 | 税務調査対応などにかかる費用 |
税理士費用も、案件の規模や難易度によって異なりますが、数十万円程度かかる場合が多いです。
5.4 その他費用
その他費用として、以下のような費用が発生する可能性があります。
財務デューデリジェンス費用 | 買い手側が実施する財務デューデリジェンスにかかる費用。売手側が負担する場合もあります。 |
---|---|
バリュエーション費用 | 事業価値を算定するために、専門家に依頼する場合の費用。 |
従業員への説明会費用 | 事業売却について従業員に説明するための費用。 |
登記費用 | 事業譲渡契約に基づく登記にかかる費用。 |
これらの費用も、個々の状況によって大きく変動するため、事前に見積もりを取得し、全体的な費用を把握しておくことが重要です。事業売却は大きな取引であり、多額の費用が発生する可能性があります。専門家と相談しながら、綿密な計画を立て、スムーズな売却プロセスを実現することが大切です。
6. 事業売却プロセスにおける注意点
事業売却は、経営者にとって重要な決断であり、複雑なプロセスを伴います。成功裏に売却を完了し、売却後もスムーズな事業運営を継続するためには、様々な注意点に留意する必要があります。ここでは、事業売却プロセスにおける重要な注意点について詳しく解説します。
6.1 秘密保持の重要性
事業売却の情報が外部に漏洩すると、従業員の不安や顧客の離反、競合他社による妨害など、事業に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、売却活動中は情報管理を徹底し、秘密保持契約(NDA)を締結するなどして、情報の漏洩を防ぐことが重要です。特に、以下の情報については厳重な管理が必要です。
売却の検討・交渉に関する情報 | |
財務情報、顧客情報、技術情報などの機密情報 | |
従業員に関する情報 |
情報漏洩のリスクを最小限に抑えるためには、以下の対策を講じることが有効です。
売却に関わる情報を共有する相手を限定する | |
NDAを締結する | |
データの保管場所やアクセス権限を適切に管理する | |
従業員への周知徹底を行う |
6.2 従業員への対応
事業売却は、従業員にとって大きな不安材料となる可能性があります。売却後の雇用継続や待遇の変化などについて、適切な情報提供とコミュニケーションを行うことが重要です。従業員の不安を取り除き、モチベーションを維持することで、事業の安定的な運営を確保することができます。
6.2.1 適切な情報提供とコミュニケーションの重要性従業員への対応においては、以下の点に留意する必要があります。
売却の事実や今後の見通しについて、正確かつ迅速に情報を提供する | |
従業員の質問や concerns に真摯に耳を傾け、丁寧に対応する | |
経営陣と従業員間の信頼関係を構築し、不安の解消に努める |
6.3 事業売却後のリスク
事業売却後にも、様々なリスクが存在します。例えば、買収後の経営方針の変更や、想定外の負債の発見、顧客の離反などが挙げられます。これらのリスクを事前に予測し、対策を講じることで、売却後のトラブルを回避し、スムーズな事業移行を実現することができます。
6.3.1 想定されるリスクと対策リスク | 内容 | 対策 |
---|---|---|
経営方針の変更 | 買収後に、事業の方向性や経営方針が変更される可能性があります。 | 売却契約において、一定期間の経営方針の維持を確約する条項を盛り込むなど、事前に対策を講じることが重要です。 |
想定外の負債の発見 | デューデリジェンスで発見されなかった負債が、売却後に発覚する可能性があります。 | 売却契約において、瑕疵担保条項を盛り込むなど、リスクを軽減するための対策を講じることが重要です。 |
顧客の離反 | 事業売却によって、顧客が不安を感じて離反する可能性があります。 | 顧客への丁寧な説明や、アフターサービスの充実など、顧客の信頼維持に努めることが重要です。 |
従業員の退職 | 事業売却によって、従業員が将来に不安を感じて退職する可能性があります。 | 従業員への丁寧な説明や、雇用条件の維持・改善など、従業員の不安解消に努めることが重要です。 |
訴訟リスク | 売却契約に関連して、訴訟が発生する可能性があります。 | 弁護士などの専門家と連携し、適切な法的アドバイスを受けることが重要です。 |
これらの注意点に留意し、専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることで、事業売却を成功に導くことができます。事業売却は、企業の成長戦略において重要な選択肢の一つです。綿密な準備と適切な対応によって、企業価値の最大化を目指しましょう。
7. まとめ
事業売却は、経営者にとって人生における大きな転機の一つです。準備からクロージングまで、複雑なプロセスと多くの関係者が関わります。この記事では、事業売却の大まかな流れから、準備、交渉、契約、クロージング、そして費用や注意点までを網羅的に解説しました。
事業売却を成功させるためには、事前の準備が何よりも重要です。必要な書類を整え、財務状況を把握し、適切な事業価値を算定することで、売却活動をスムーズに進めることができます。また、信頼できる仲介業者を選定することも成功の鍵となります。M&Aアドバイザリー会社や事業承継を専門とするコンサルティング会社など、実績と経験を持つ専門家のサポートを受けることで、より有利な条件で売却できる可能性が高まります。
交渉段階では、秘密保持契約を締結し、買い手候補との信頼関係を構築しながら、デューデリジェンスや条件交渉を進めていきます。最終契約に至るまでには、粘り強い交渉と、専門家による的確なアドバイスが不可欠です。事業売却は、単なる金銭の授受だけでなく、従業員や顧客、そして事業そのものの未来を左右する重要な決断です。この記事が、事業売却を検討する経営者の皆様にとって、少しでも役立つ情報となれば幸いです。