SES事業の事業売却を成功させるための完全ガイド【M&Aのプロが徹底解説】

SES事業の事業売却を成功させるための完全ガイド【M&Aのプロが徹底解説】

SES事業の売却を検討している経営者様、事業責任者様、必見です。本記事では、SES事業売却の現状からメリット・デメリット、高く売却するためのポイント、具体的な手順、注意点まで、M&Aのプロが徹底解説します。市場の動向や成功・失敗事例を知ることで、売却を成功に導くための戦略を構築できます。

資金調達、事業拡大、経営資源の集中といった売却メリットを最大化し、従業員の雇用問題や顧客離脱といったデメリットを最小限に抑える方法を具体的に示します。

さらに、財務状況の改善や優良な顧客基盤の構築など、事業価値を高めるための施策も網羅。事業売却に強いM&Aアドバイザーの選定基準や、デューデリジェンス、秘密保持契約といった重要なプロセスについても詳しく解説することで、スムーズかつ有利な売却を実現するための完全ガイドを提供します。この記事を読み終える頃には、SES事業売却に関する不安が解消され、自信を持って売却プロセスを進めることができるでしょう。

【無料】事業売却のオンライン無料相談会
「事業売却の専門家のアドバイスをもらいM&Aしたい」という経営者からも数多くのご相談をいただいています。M&Aを成功に導くはじめの一歩は無料のオンライン相談から。お気軽にご相談ください。

365日開催オンライン個別相談会

編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建などを10年経験。3か月の経営支援サポートで、9か月後には赤字の会社を1億円の利益を計上させるなどの実績を多数持つ専門家。



1. SES事業売却の現状

SES事業を取り巻く市場環境は、近年大きな変化を見せています。IT人材の需要増加、働き方改革の推進、そしてコロナ禍によるDX推進の加速など、様々な要因が複雑に絡み合い、SES事業を取り巻くM&A市場も活況を呈しています。本項では、SES事業売却を取り巻く現状、成功事例と失敗事例、そして今後の展望について詳しく解説します。

【関連】SES事業の売却は専門家にお任せ!IT分野でのスムーズなM&Aを

1.1 SES事業売却を取り巻く市場環境

IT人材の不足は深刻化しており、企業は優秀なエンジニアの確保に奔走しています。この状況下で、安定した顧客基盤と優秀なエンジニアを抱えるSES事業は、買収対象として魅力的な存在となっています。特に、ニッチな技術領域に特化したSES事業や、特定業界に強みを持つSES事業は、高値で売却される傾向にあります。

一方で、労働集約型のビジネスモデルであるSES事業は、人材流出リスクや法規制の変化といった課題も抱えています。これらの要因が、SES事業の売却価格やM&A成立の可否に大きく影響します。

また、働き方改革関連法の施行により、SES事業を取り巻く法規制も厳格化しています。偽装請負や長時間労働といった問題への対策が強化され、コンプライアンス遵守の重要性が増しています。このため、健全な経営体制とコンプライアンス意識の高さが、SES事業売却において重要な評価ポイントとなっています。

さらに、コロナ禍によって多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しており、IT投資は増加傾向にあります。この流れはSES事業への需要をさらに高めており、M&A市場におけるSES事業の価値を押し上げています。

【関連】SES事業の会社売却(M&A)基礎知識|成功の秘訣と手続きの流れを徹底解説

1.2 SES事業売却の成功事例と失敗事例

SES事業売却の成功事例としては、ニッチな技術領域に特化した中小規模のSES企業が、大手IT企業に高値で買収されたケースが挙げられます。また、特定業界に強みを持つSES企業が、同業他社に買収され、シナジー効果を発揮した事例も存在します。これらの成功事例に共通するのは、明確な事業戦略と強固な顧客基盤、そして優秀な人材の確保です。

一方、失敗事例としては、財務状況の悪化やコンプライアンス違反が発覚し、売却交渉が破談になったケースが挙げられます。また、買収後に企業文化の clashes が発生し、従業員の離職や顧客の離脱につながった事例も少なくありません。これらの失敗事例から学ぶべきは、事前の綿密な準備と適切な情報開示、そして買収後のシナジー効果を最大化するための戦略策定の重要性です。

事例 成功要因/失敗要因 ポイント
A社(成功事例) AI開発に特化した技術力、大手企業との取引実績 ニッチな技術領域への特化、優良顧客基盤の構築
B社(成功事例) 金融業界に特化したノウハウ、高いコンサルティング能力 特定業界への特化、付加価値の高いサービス提供
C社(失敗事例) 不透明な財務状況、コンプライアンス違反 健全な経営体制の構築、コンプライアンス遵守の徹底
D社(失敗事例) 買収後の企業文化の clashes 、従業員とのコミュニケーション不足 企業文化の融合、従業員への適切な情報開示

今後のSES事業売却市場は、IT人材の需要増加やDX推進を背景に、さらに活況を呈すると予想されます。しかし、法規制の厳格化や競争の激化といった課題も存在するため、売却を検討する企業は、市場動向を的確に把握し、戦略的なM&Aを推進していく必要があります。特に、事業の強み・弱みを客観的に分析し、適切な売却戦略を策定することが、成功の鍵となります。


2. SES事業売却のメリット・デメリット

SES事業の売却は、経営戦略上の大きな転換点となる可能性を秘めています。売却によって得られるメリットは多岐にわたりますが、同時にデメリットも存在します。適切な判断を下すためには、メリットとデメリットの両方を理解し、自社の状況に照らし合わせて慎重に検討することが重要です。


2.1 SES事業売却によるメリット

SES事業の売却によって得られる主なメリットは以下の通りです。

2.1.1 資金調達

事業売却によってまとまった資金を調達することができます。この資金は、新規事業への投資、既存事業の強化、負債の返済など、様々な用途に活用できます。例えば、AI開発やDX推進といった成長分野への投資を行うことで、企業の競争力強化を図ることが可能です。また、M&Aによる事業拡大のための資金としても活用できます。

【関連】【M&A専門家解説】資金調達の方法・種類とは?|最適な選択肢を徹底解説
2.1.2 事業拡大

売却先企業の経営資源を活用することで、事業を拡大できる可能性があります。売却先企業が持つ顧客基盤、販売チャネル、技術力などを活用することで、自社だけでは実現困難な規模での事業展開が可能になります。例えば、全国展開を目指す地方企業が、全国に拠点を持つ大手企業に事業を売却することで、迅速な事業拡大を実現できる可能性があります。

2.1.3 経営資源の集中

SES事業を売却することで、経営資源をコア事業に集中させることができます。SES事業に割いていた人員、資金、時間をコア事業に投入することで、コア事業の成長を加速させることが期待できます。例えば、SES事業から撤退し、パッケージソフトウェア開発に経営資源を集中することで、市場シェアの拡大を目指すことができます。


2.2 SES事業売却によるデメリット

SES事業の売却には、メリットだけでなくデメリットも存在します。主なデメリットは以下の通りです。

2.2.1 従業員の雇用問題

事業売却に伴い、従業員の雇用が不安定になる可能性があります。売却先企業の経営方針によっては、人員削減や雇用条件の変更が行われる可能性があるため、従業員の不安やモチベーション低下に繋がる可能性があります。適切な雇用確保対策や丁寧な説明が不可欠です。

2.2.2 顧客の離脱

事業売却によって、既存顧客が離脱するリスクがあります。売却先企業のサービス内容や企業文化に不安を感じた顧客が、競合他社に乗り換える可能性があります。顧客との信頼関係を維持し、円滑な事業移行を進めることが重要です。既存顧客への丁寧な説明や、売却先企業との連携による継続的なサービス提供体制の構築が重要となります。

2.2.3 企業文化の喪失

長年培ってきた企業文化が失われる可能性があります。売却先企業の企業文化との衝突や統合過程における混乱により、独自の企業文化が失われ、従業員の帰属意識の低下やモチベーションの低下に繋がる可能性があります。企業文化の維持・継承についても、売却先企業と事前に協議しておくことが重要です。

メリット デメリット
資金調達(新規事業投資、既存事業強化、負債返済など) 従業員の雇用問題(人員削減、雇用条件変更など)
事業拡大(顧客基盤、販売チャネル、技術力の活用) 顧客の離脱(サービス内容、企業文化への不安)
経営資源の集中(コア事業への人員・資金・時間の投入) 企業文化の喪失(売却先企業との文化衝突、統合過程の混乱)

上記以外にも、事業売却には様々なメリットとデメリットが存在します。自社の状況や売却条件などを総合的に考慮し、最適な判断を下すことが重要です。M&Aアドバイザーなどの専門家の意見を聞きながら、慎重に進めることをおすすめします。


3. SES事業を高く売却するためのポイント

SES事業の売却価格を最大化するためには、綿密な準備と戦略が不可欠です。市場の動向を理解し、自社の強みを最大限にアピールすることで、買い手にとって魅力的な投資対象となるよう努めましょう。ここでは、SES事業を高く売却するための重要なポイントを解説します。

【関連】事業売却でSES事業を最大限に評価してもらう方法|M&Aのプロが教える高額売却の秘訣

3.1 財務状況の改善

健全な財務状況は、事業売却において非常に重要です。買い手は、安定した収益性と将来的な成長性を持つ企業を求めています。財務諸表を精査し、収益性、キャッシュフロー、負債比率などを改善することで、事業価値を高めることができます。

3.1.1 具体的な施策
不要なコストの削減
売掛金の回収期間の短縮
在庫管理の最適化
適切な会計処理による利益率の向上

3.2 優良な顧客基盤の構築

長期的な契約を結んでいる優良な顧客基盤は、事業の安定性を示す重要な指標です。顧客との良好な関係を維持し、新規顧客の開拓にも力を入れることで、事業価値を高めることができます。顧客の属性や取引実績を詳細にまとめた資料を作成しておくことも重要です。

3.2.1 顧客基盤の評価ポイント
主要顧客の取引年数と取引規模
顧客の業種分布と将来性
顧客満足度と継続率
新規顧客獲得のための戦略と実績

3.3 優秀なエンジニアの確保

SES事業において、優秀なエンジニアは最も重要な資産です。エンジニアのスキルや経験、保有資格などを明確に示し、人材の質の高さをアピールすることで、事業価値を高めることができます。また、エンジニアの定着率を高めるための取り組みも重要です。

3.3.1 エンジニアの評価ポイント
項目 内容
スキルセット Java、Python、C++などのプログラミング言語、AWS、Azureなどのクラウド技術、プロジェクトマネジメントスキルなど
経験年数 各エンジニアの経験年数と担当プロジェクトの実績
保有資格 情報処理技術者試験、ベンダー資格など
定着率 過去数年間のエンジニアの定着率

3.4 事業売却に強いM&Aアドバイザーの選定

M&Aアドバイザーは、事業売却のプロセスをスムーズに進めるための重要なパートナーです。経験豊富なアドバイザーを選定することで、適切な売却戦略の立案、買い手候補の選定、価格交渉などを有利に進めることができます。複数のアドバイザーを比較検討し、自社に最適なパートナーを選びましょう。例えば、日本M&Aセンター、レコフ、ストライクといったM&A仲介会社は実績も豊富です。

3.4.1 M&Aアドバイザー選定のポイント
SES事業の売却実績
買い手候補ネットワーク
交渉力と専門知識
料金体系とサービス内容

これらのポイントを踏まえ、事業の魅力を最大限に引き出し、買い手にとって魅力的な投資対象となるよう準備することで、SES事業の高額売却を実現できる可能性が高まります。

【関連】事業売却のアドバイザー費用・手数料を徹底比較!最適な専門家を見つける

4. SES事業売却の手順

SES事業の売却は、複雑なプロセスであり、綿密な計画と準備が必要です。大きく分けて、準備段階、交渉段階、契約・クロージング段階の3つのステップで進みます。


4.1 準備段階

売却活動をスムーズに進めるための土台作りを行う重要な段階です。主なタスクは以下の通りです。

4.1.1 事業価値の算定

まずは、自社のSES事業がどれくらいの価値があるのかを把握する必要があります。事業価値の算定方法はいくつかありますが、一般的なのはDCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)や類似会社比較法です。これらの手法を用いて、将来のキャッシュフローや類似企業の市場価値などを参考に算出します。

M&Aアドバイザーに相談することで、より精緻な算定が可能です。事業規模、収益性、成長性、顧客基盤の質、エンジニアのスキルレベルなど、様々な要素が価値に影響します。正確な事業価値を把握することで、売却交渉を有利に進めることができます。

4.1.2 売却対象の明確化

売却する事業の範囲を明確に定義します。事業の一部のみを売却するのか、それとも事業全体を売却するのかを決定します。また、契約社員や正社員といった従業員の処遇、顧客との契約、設備、知的財産権など、売却対象に含める項目を具体的にリストアップし、整理しておくことが重要です。

4.1.3 ノンネーム資料の作成

買い手候補企業に開示するためのノンネーム資料を作成します。ノンネーム資料とは、企業名や具体的な事業内容を伏せた状態で作成する資料で、買い手候補企業の興味を引きつつ、秘密保持の観点からも重要な役割を果たします。事業概要、財務状況、顧客情報、従業員情報などを記載し、事業の魅力や強みをアピールする内容とします。機密情報の漏洩を防ぐため、必要最低限の情報に絞り、注意深く作成する必要があります。


4.2 交渉段階

準備段階で作成したノンネーム資料をもとに、買い手候補と交渉を進めます。

4.2.1 買い手候補の選定

ノンネーム資料を提示した企業の中から、条件や相性などが合致する買い手候補を選定します。財務状況の健全性、事業シナジー、企業文化など、様々な観点から総合的に判断することが重要です。M&Aアドバイザーを活用することで、より多くの候補企業の中から最適な相手を選定することができます。

4.2.2 デューデリジェンス

買い手候補企業によるデューデリジェンス(買収監査)が行われます。財務状況、法務状況、事業状況など、多岐にわたる調査が行われ、企業価値の精査やリスクの洗い出しが行われます。スムーズなデューデリジェンス対応のため、事前に必要な資料を準備し、質問への回答を迅速に行うことが重要です。

【関連】M&Aで失敗しないデューデリジェンス!目的・種類・費用は?【前編】
4.2.3 条件交渉

デューデリジェンスの結果を踏まえ、売却価格、契約条件、クロージング時期などについて交渉を行います。双方が納得できる条件を目指し、M&Aアドバイザーのサポートを受けながら、慎重に進めることが重要です。譲渡価格だけでなく、従業員の雇用維持、顧客への影響なども考慮に入れ、交渉を進める必要があります。


4.3 契約・クロージング段階

最終的な契約締結と事業譲渡を行います。

4.3.1 最終契約の締結

交渉が成立したら、最終契約書を締結します。契約内容に誤りがないか、M&Aアドバイザーや弁護士に確認してもらい、慎重に確認することが重要です。契約書には、売却価格、譲渡対象、クロージング日、表明保証、誓約事項など、詳細な内容が記載されます。

4.3.2 事業譲渡の実行

契約に基づき、事業の譲渡を実行します。従業員、顧客、資産などの移転手続きを行い、最終的な決済を行います。事業譲渡後も、一定期間はスムーズな事業移行のためのサポートを行う必要がある場合もあります。円滑な事業譲渡のため、事前に綿密な計画を立て、関係者への周知徹底を行うことが重要です。

段階 内容 ポイント
準備段階 事業価値算定、売却対象明確化、ノンネーム資料作成 正確な事業価値算定、売却対象の明確な定義、魅力的なノンネーム資料作成
交渉段階 買い手候補選定、デューデリジェンス、条件交渉 最適な買い手候補選定、スムーズなデューデリジェンス対応、双方納得のいく条件交渉
契約・クロージング段階 最終契約締結、事業譲渡実行 契約内容の綿密な確認、円滑な事業譲渡手続き

上記の手順を踏むことで、SES事業の売却を成功に導く可能性を高めることができます。ただし、M&Aは複雑なプロセスであるため、専門家であるM&Aアドバイザーの支援を受けることが重要です。経験豊富なアドバイザーに相談することで、適切なアドバイスやサポートを受け、リスクを最小限に抑えながら、売却プロセスをスムーズに進めることができます。


5. SES事業売却における注意点

SES事業の売却は、経営にとって重要な決断です。成功させるためには、様々な注意点に配慮する必要があります。ここでは、SES事業売却における重要な注意点について詳しく解説します。


5.1 秘密保持契約の締結

事業売却に関する情報は、会社の機密情報です。情報漏洩は、会社の信用を失墜させ、事業売却に悪影響を及ぼす可能性があります。買い手候補との交渉開始前に、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)を締結し、情報の機密性を保持することが不可欠です。NDAには、守秘義務の範囲、違反した場合の罰則などを明確に記載する必要があります。また、NDAの内容について、弁護士などの専門家に相談することも重要です。


5.2 従業員への適切な情報開示

事業売却は、従業員の雇用にも大きな影響を与えます。従業員の不安や動揺を最小限に抑えるためには、適切なタイミングで、正確な情報を丁寧に開示することが重要です。情報開示のタイミングや内容、方法については、慎重に検討する必要があります。

売却の事実だけでなく、売却後の雇用条件、事業の方向性などについても、具体的に説明する必要があります。また、従業員からの質問や相談に真摯に対応することも重要です。従業員代表との面談や説明会などを開催し、双方向のコミュニケーションを図ることで、従業員の理解と協力を得られるように努めましょう。

【関連】M&Aを従業員に公表するタイミング|説明する内容と最適な時期とは?

5.3 事業売却後の事業継続性

事業売却後も、顧客へのサービス提供を継続し、事業の安定性を維持することが重要です。そのためには、事業譲渡契約において、事業継続性に関する条項を明確に定める必要があります。例えば、既存の顧客との契約の引継ぎ、従業員の雇用維持、事業運営に必要な資産の譲渡などについて、具体的な条件を定める必要があります。

また、事業売却後も一定期間、売却側が事業運営に協力する体制を構築することも重要です。スムーズな事業の引継ぎを実現するために、売却側と買収側が緊密に連携し、協力していくことが求められます。


5.4 競業避止義務

売却後、一定期間、売却側が同じ業種で事業を展開することを制限する競業避止義務契約を締結することが一般的です。競業避止義務の範囲(地域、期間、業種など)や違反した場合の罰則などを明確に定めることが重要です。競業避止義務契約の内容は、事業の特性や市場環境などを考慮して、慎重に決定する必要があります。


5.5 契約内容の精査

事業譲渡契約書は、事業売却における重要な法的文書です。契約内容を理解しないまま署名することは、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。契約書には、売買価格、譲渡対象資産、譲渡日、表明保証、競業避止義務、契約解除条項など、様々な条項が含まれています。これらの条項について、弁護士などの専門家に相談し、内容を精査することが不可欠です。特に、表明保証条項は、売却側の責任範囲を明確にする重要な条項であり、注意深く確認する必要があります。


5.6 デューデリジェンスへの対応

デューデリジェンスは、買収側が事業の価値やリスクを評価するために行う調査です。財務、法務、事業、人事など、多岐にわたる分野で調査が行われます。売却側としては、デューデリジェンスにスムーズに対応するために、必要な資料を事前に準備しておくことが重要です。

また、買収側の質問に対して、正確かつ迅速に回答することも重要です。デューデリジェンスの結果によっては、売買価格が変更されたり、契約が解除されたりする可能性もあるため、適切な対応が必要です。以下の表は、デューデリジェンスで特に注意すべき点をまとめたものです。

分野 注意点
財務 正確な財務諸表の提出、過去の会計処理に関する説明、不正会計の有無
法務 契約書の確認、訴訟の有無、コンプライアンス体制
事業 事業計画、競合状況、市場動向、主要顧客との関係
人事 従業員のスキル、雇用契約、労務問題

これらの注意点に留意し、専門家のアドバイスを受けながら、事業売却を成功に導きましょう。


6. まとめ

SES事業の売却は、資金調達、事業拡大、経営資源の集中といったメリットがある一方、従業員の雇用問題、顧客の離脱、企業文化の喪失といったデメリットも存在します。高値売却を実現するためには、財務状況の改善、優良な顧客基盤の構築、優秀なエンジニアの確保、そして事業売却に強いM&Aアドバイザーの選定が重要です。

売却手順は、準備、交渉、契約・クロージングの3段階に分かれており、それぞれ綿密な準備と対応が必要です。特に、準備段階における事業価値の算定、売却対象の明確化、ノンネーム資料の作成は、その後の交渉をスムーズに進める上で不可欠です。交渉段階では、買い手候補の選定、デューデリジェンス、条件交渉を慎重に行い、自社にとって有利な条件を引き出すことが重要となります。

契約・クロージング段階では、最終契約の締結、事業譲渡の実行を行い、売却プロセスを完了させます。事業売却を成功させるためには、秘密保持契約の締結、従業員への適切な情報開示、事業売却後の事業継続性にも配慮する必要があります。これらのポイントを踏まえ、M&Aアドバイザーを活用しながら、計画的に事業売却を進めることで、成功の可能性を高めることができるでしょう。

メニュー