【M&A専門家解説】資金調達の方法・種類とは?|最適な選択肢を徹底解説

【M&A専門家解説】資金調達の方法・種類とは?|最適な選択肢を徹底解説

M&Aを成功させるには、適切な資金調達方法の選択が不可欠です。自己資金、デットファイナンス、エクイティファイナンスといった主要な資金調達方法に加え、LBOやMBOの特徴やメリット・デメリットを理解することで、最適な資金調達戦略を立案できます。

この記事では、M&Aにおける資金調達の重要性から、成功のポイントまで専門家が徹底解説します。

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1. M&Aにおける資金調達の重要性
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M&Aを成功させるには、適切な戦略に基づいた事業計画の策定、必要なデューデリジェンスの実施、そしてその後のPMI(Post Merger Integration:買収後統合プロセス)が不可欠です。しかし、M&Aのプロセスにおいて、もう一つ非常に重要な要素が存在します。それが「資金調達」です。
M&Aは多額の資金を必要とするケースがほとんどです。買収対象企業の規模や業種、そして買収スキームによっては、数十億円、数百億円規模の資金が必要となることもあります。もし、必要な資金を適切なタイミングで調達できない場合、M&Aの実行自体が難しくなる可能性があります。

たとえ、魅力的な買収案件であっても、資金調達の目処が立たなければ、そのチャンスを逃してしまうことになりかねません。

M&Aの検討に入る前に、自社にあった資金調達方法を検討・理解しておくようにしましょう。

1.1 資金調達がM&Aに与える影響 資金調達は、M&Aの成否を左右するだけでなく、以下のような様々な側面に影響を与えます。

買収可能な企業規模
資金調達力によって、買収可能な企業規模が大きく変わります。自己資金のみでは小規模な企業しか買収できない場合でも、外部からの資金調達を活用することで、より大きな企業を買収できる可能性が広がります。

買収交渉における優位性
資金調達の目処が立っている状態であれば、売主企業に対して買収意思の強さや迅速な取引実行が可能であることをアピールできます。これは、買収交渉を有利に進める上で大きな強みとなります。

買収後の事業展開
M&A後の事業統合や新規事業展開には、多額の資金が必要となるケースがあります。事前に十分な資金を確保しておくことで、買収後の事業をスムーズに進め、シナジー効果を最大化できる可能性が高まります。

1.2 最適な資金調達方法の検討 M&Aにおける資金調達方法は、企業の財務状況や買収の目的、スキームなどによって最適なものが異なります。そのため、それぞれの方法の特徴やメリット・デメリットを理解した上で、専門家のアドバイスを受けながら、自社の状況に最適な資金調達方法を検討することが重要です。

2. 資金調達方法の種類と特徴 2.1 自己資金 自己資金とは、企業が内部留保や自己資本など、自らの力で調達した資金のことです。M&Aにおいて自己資金を利用するメリットは、主に以下の点が挙げられます。

金利や手数料が発生しないため、資金調達コストを抑えられる
外部からの干渉を受けずに、経営の自由度を維持できる
迅速な意思決定が可能になる
一方で、自己資金のみでM&Aを行う場合、以下のようなデメリットも存在します。

調達できる資金規模が限られるため、大型のM&Aが難しい場合がある
自己資金比率が低下することで、財務体質が悪化する可能性がある

2.2 デットファイナンス デットファイナンスとは、銀行や金融機関などから融資を受けて資金調達する方法です。M&Aにおいては、買収資金や運転資金などを調達するために利用されます。大きく分けて、銀行融資と社債発行の2つの方法があります。

銀行融資
銀行から融資を受ける方法です。企業の信用力や事業計画などを基に、融資の可否や金利、返済期間などが決定されます。銀行融資は、一般的に金利が低く、資金調達の期間も柔軟に対応できるというメリットがあります。一方で、担保や保証人が必要となる場合があり、手続きが煩雑な点がデメリットとして挙げられます。

社債発行
投資家に対して社債を発行し、資金を調達する方法です。銀行融資と比較して多額の資金を調達できる可能性がありますが、金利は高くなる傾向があります。また、社債発行には、格付け機関による審査や、金融庁への届出など、複雑な手続きが必要となります。

2.3 エクイティファイナンス エクイティファイナンスとは、株式の発行などを通じて、投資家から資金を調達する方法です。M&Aにおいては、買収資金や成長資金などを調達するために利用されます。大きく分けて、株式発行、ベンチャーキャピタル、プライベートエクイティの3つの方法があります。

株式発行
株式を新たに発行し、投資家に売却することで資金を調達する方法です。株式発行による資金調達は、返済の義務がないため、財務リスクを抑えられるというメリットがあります。一方で、株式の希薄化や、株主が増加することによる経営への影響などが懸念されます。

ベンチャーキャピタル
高い成長が見込める未上場企業に対して、出資を行う投資会社のことです。ベンチャーキャピタルは、資金提供だけでなく、経営サポートや人材紹介など、事業成長に必要な支援も行います。ベンチャーキャピタルから出資を受けるためには、明確な事業計画と、高い成長性が必要です。

プライベートエクイティ
未上場企業や、上場企業の非公開化などを目的として、株式投資を行う投資ファンドのことです。プライベートエクイティは、投資先企業の経営に深く関与し、企業価値向上を目指します。プライベートエクイティから出資を受けるためには、明確な成長戦略と、優秀な経営陣が必要です。

2.4 LBO (レバレッジド・バイアウト) LBOとは、買収対象企業の資産を担保に、金融機関などから融資を受けて買収資金を調達する方法です。少ない自己資金で、大型のM&Aを実行できる点が特徴です。LBOは、主にプライベートエクイティ(PE)ファンドによって実行されます。

LBOの特徴
買収対象企業の資産を担保に融資を受けるため、多額の資金調達が可能
買収後の企業価値向上により、投資回収を目指す
高い財務レバレッジをかけるため、成功すれば高い収益が期待できる一方、失敗すれば多額の負債を抱えるリスクもある

LBOのメリット・デメリット
メリットデメリット
少ない自己資金で大型買収が可能 高い負債比率による財務リスク
経営の自由度が高い 短期間での収益改善が求められる
株式公開によるイグジットの可能性 金融機関との交渉が複雑

2.5 MBO (マネジメント・バイアウト) MBOとは、経営陣が自社の株式を買い取ることで、会社を非公開化する手法です。事業承継や、敵対的買収からの防衛などを目的として行われます。MBOでは、経営陣が自ら株主となるため、経営の独立性を維持できるというメリットがあります。

MBOの特徴
経営陣が自ら株主となることで、経営の独立性を維持
従業員の雇用維持や、企業文化の継承を目的とする場合もある
資金調達には、LBOと同様に、金融機関からの融資や、プライベートエクイティファンドからの出資などが利用される

MBOのメリット・デメリット
メリットデメリット
経営の独立性維持 資金調達の難しさ
従業員の雇用維持 経営陣への負担増加
企業文化の継承 情報公開の制限

3. LBOとMBOの違い LBOとMBOは、どちらも買収者が企業の株式を取得する手法ですが、その目的や主体が異なります。主な違いは以下の点が挙げられます。

LBOMBO
主体 外部の投資ファンドや経営陣の一部 既存の経営陣
目的 企業価値向上による投資回収 経営の独立性維持、事業承継
資金調達 レバレッジ(借入)を大きく活用 自己資金、金融機関からの融資、プライベートエクイティなど
LBOは、主に外部の投資ファンドが、買収対象企業の将来性を見込んで実行します。一方、MBOは、既存の経営陣が、自らの手で会社を経営していくために実行します。

LBOでは、レバレッジ(借入)を大きく活用して資金調達を行うことが一般的ですが、MBOでは、自己資金や金融機関からの融資など、様々な方法で資金調達を行います。

4. M&Aにおける資金調達成功のポイント M&Aにおける資金調達を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

1. 明確な事業計画 M&Aによって何を実現したいのか、具体的な事業計画を策定することが重要です。事業計画は、投資家や金融機関に対して、M&Aの必要性や将来性を理解してもらうための重要な資料となります。

2. 適切な資金調達方法の選択 M&Aの規模や目的、企業の財務状況などに応じて、最適な資金調達方法を選択する必要があります。自己資金、デットファイナンス、エクイティファイナンスなど、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、最適な方法を検討しましょう。

3. 専門家との連携 M&Aは、複雑な手続きや専門知識が必要となるため、M&Aアドバイザーや弁護士、税理士などの専門家と連携することが不可欠です。専門家のサポートを受けることで、スムーズかつ円滑にM&Aを進めることができます。

5. 最適な資金調達方法の選択 最適な資金調達方法は、企業の状況やM&Aの目的によって異なります。以下の要素を総合的に判断し、最適な方法を選択する必要があります。

M&Aの規模
M&Aの目的
企業の財務状況
経営の自由度
リスク許容度
資金調達方法の選択は、M&Aの成否を大きく左右する重要な要素です。専門家のアドバイスを受け、リスクやメリット・デメリットを理解して慎重に検討しましょう。

6. LBOとMBOを比較 LBOとMBOは、いずれも企業買収の手法として用いられますが、その資金調達方法や買収主体、目的などに違いがあります。以下の表と解説で詳しく比較して見ていきましょう。

LBO (Leveraged Buyout)MBO (Management Buyout)
買収主体 投資ファンドや金融機関など外部の投資家 買収対象企業の経営陣
資金調達の特徴 買収対象企業の資産や将来のキャッシュフローを担保に、銀行や投資ファンドから多額の借入を行う「レバレッジ」を効かせた資金調達 自己資金に加え、金融機関からの融資やベンチャーキャピタルからの出資など、外部資金も活用
買収目的 投資リターンを得ることを目的とする。数年後に株式上場(IPO)や企業売却(Exit)を行い、投資資金を回収 経営陣による独立経営、事業承継、企業再生など
メリット LBOのメリット
  • 買収資金が少額で済むため、多額の投資が難しい場合でも大型買収が可能
  • レバレッジ効果により、投資効率を高めることができる
MBOのメリット
  • 経営陣が主体となるため、事業への理解が深く、スムーズな事業承継や経営改革が可能
  • 従業員の雇用維持や企業文化の継承を図りやすい
デメリット LBOのデメリット
  • 多額の借入による金利負担が大きいため、業績悪化時に経営を圧迫する可能性がある
  • 投資ファンドの意向が強く反映され、経営の自由度が制限される場合がある
MBOのデメリット
  • 経営陣が資金調達に奔走することで、経営に集中できない可能性がある
  • 外部からの資本導入が少ないため、成長資金の調達が難しい場合がある
LBOとMBOは、それぞれ特徴や目的が異なるため、企業の状況や経営戦略に合わせて適切な手法を選択することが重要です。M&A専門家や金融機関などの専門家に相談し、最適な方法を検討しましょう。

7. M&Aにおける資金調達成功のポイント M&Aを成功させるには、適切な資金調達計画と実行が不可欠です。ここでは、M&Aにおける資金調達を成功させるためのポイントを紹介します。

7.1 デューデリジェンスの徹底 M&Aにおける資金調達は、買収対象企業の価値を正確に評価することから始まります。そのため、財務状況、法務状況、事業内容など、多岐にわたるデューデリジェンスを徹底的に行い、リスクを洗い出すことが重要です。デューデリジェンスの精度が、資金調達の成否を大きく左右します。

7.2 資金調達方法の多角的な検討 M&Aの規模や目的・買収対象企業の状況によって、最適な資金調達方法は異なります。自己資金、銀行融資、エクイティファイナンス、LBOなど、それぞれのメリット・デメリットを理解し、状況に応じて組み合わせるなど、多角的な検討が必要です。

資金調達方法メリットデメリット
自己資金
  • 調達コストが低い
  • 経営の自由度が高い
  • 調達資金が限られる
  • 財務リスクが増加する
銀行融資
  • 比較的低コストで調達できる
  • 資金調達の期間が短い
  • 担保や保証が必要となる場合がある
  • 返済負担が生じる
エクイティファイナンス
  • 返済義務がない
  • 資金調達力が高い
  • 株式の希薄化が起こる
  • 経営への影響力が増す
LBO
  • 自己資金が少なくても大型買収が可能
  • レバレッジ効果により、投資効率が高い
  • 負債比率が高くなるため、財務リスクが高い
  • 複雑なスキーム構築が必要

7.3 資金調達先の選定 資金調達元によって、金利、融資期間、審査基準などが異なります。自社の状況や資金ニーズに合った金融機関や投資ファンドを選定することが重要です。実績やノウハウが豊富な金融機関を選ぶことも、資金調達を成功させるポイントです。

7.4 事業計画との整合性 資金調達は、M&A後の事業計画と整合性が取れている必要があります。買収後の事業計画を実現するために、必要な資金を明確にし、無理のない返済計画を立てることが重要です。また、買収後のシナジー効果を最大限に発揮できるような資金調達計画を策定することが大切です。

7.5 情報開示と透明性の確保 資金調達元に対しては、企業情報やM&Aに関する情報を正確かつタイムリーに開示する必要があります。透明性の高い情報開示は、資金調達元の信頼獲得につながり、円滑な資金調達を促進します。また、金融機関との良好な関係構築にも役立ちます。

7.6 専門家を活用 M&Aにおける資金調達は、複雑な手続きや専門知識が必要となる場合が少なくありません。金融機関、M&Aアドバイザー、弁護士、税理士などの専門家の知見を活用することで、資金調達をスムーズに進めることができます。専門家のサポートを受けることで、リスクを最小限に抑え、最適な資金調達を実現できる可能性が高まります。

8. 最適な資金調達方法の選択 M&Aにおける資金調達は、その規模やスキーム、買収後の事業計画などによって最適な方法が異なります。企業は、それぞれの資金調達方法の特徴やメリット・デメリットを理解した上で、自社の状況に最適な方法を選択する必要があります。

8.1 資金調達方法選択のポイント
M&Aの目的および規模
買収対象企業の財務状況
自社の財務状況(資金繰り、信用力など)
買収後の事業計画
リスク許容度
市場環境(金利、株式市場の動向など)

8.2 資金調達方法の組み合わせ 複数の資金調達方法を組み合わせることで、より柔軟に資金を調達できる場合もあります。例えば、自己資金とデットファイナンスを組み合わせたり、デットファイナンスとエクイティファイナンスを組み合わせたりするケースなどが考えられます。

8.3 専門家への相談 最適な資金調達方法を選択するためには、M&Aやファイナンスの専門家である、金融機関やM&Aアドバイザリー会社などに相談することが重要です。専門家は、豊富な知識と経験に基づいて、企業の状況に応じたアドバイスを提供してくれます。

8.4 主要な資金調達方法の比較 主な資金調達方法の特徴を以下の表にまとめました。それぞれのメリット・デメリット、向いているケースなどを考慮して、自社にとって最適な方法を選択しましょう。

資金調達方法メリットデメリット向いているケース
自己資金
  • 調達コストが低い
  • 経営の自由度が高い
  • 調達可能な資金規模が限られる
  • 資金繰りが悪化する可能性がある
  • M&Aの規模が小さい
  • 財務状況が健全
銀行融資
  • 比較的低金利で資金調達が可能
  • 返済計画が立てやすい
  • 担保や保証が必要となる場合がある
  • 審査が厳格
  • 信用力が高い企業
  • 安定した収益が見込めるM&A
株式発行
  • 多額の資金調達が可能
  • 返済義務がない
  • 株式の希薄化が生じる
  • 株主への配当が必要
  • 成長が見込める企業
  • 将来的な資金需要が高いM&A
LBO
  • 自己資金が少なくてもM&Aが可能
  • レバレッジ効果により、高い投資リターンが見込める
  • 負債比率が高くなるため、財務リスクが増大する
  • 資金繰りが厳しくなる可能性がある
  • キャッシュフローが安定している企業の買収
  • 買収後にコスト削減などによる収益改善が見込めるケース
MBO
  • 経営陣の意思を反映したM&Aが可能
  • 従業員のモチベーション向上に繋がる可能性がある
  • 資金調達が難しい場合がある
  • 経営陣の負担が大きくなる
  • 事業承継
  • 経営の独立性確保
資金調達の方法は、企業の置かれている状況やM&Aの目的によって適切なものが異なります。そのため、安易に選択するのではなく、専門家の意見を聞きながら、慎重に検討することが重要です。

9. まとめ M&Aにおける資金調達は、その後の事業展開や企業成長を大きく左右する重要な要素です。 自己資金、デットファイナンス、エクイティファイナンス、LBO、MBOなど、資金調達の方法は多岐にわたります。

それぞれの方法にはメリット・デメリットがあり、企業の財務状況やM&Aの目的、将来展望などを考慮した上で、最適な方法を選択する必要があります。 専門家のアドバイスを受けるなど、慎重に進めることがM&A成功の鍵となります。


編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったPMIのスペシャリスト。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。

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