事業売却のデューデリジェンス完全攻略ガイド!成功の秘訣と失敗事例
事業売却を検討中ですか?デューデリジェンスは、売却成功の鍵を握る重要なプロセスです。本記事では、デューデリジェンスの定義・目的・種類から、財務・法務・事業・人事デューデリジェンスにおける具体的なチェックポイント、そして成功の秘訣や失敗事例までを網羅的に解説します。
M&Aにおけるデューデリジェンスで何を確認すべきか分からない、スムーズな事業売却を実現したい、といった悩みを抱えている経営者や担当者の方必見です。この記事を読めば、デューデリジェンス全体像を理解し、潜在的なリスクを回避、売却プロセスを円滑に進めるための具体的なノウハウを習得できます。事業売却を成功に導くための準備として、ぜひお役立てください。
「事業売却の専門家のアドバイスをもらいM&Aしたい」という経営者からも数多くのご相談をいただいています。M&Aを成功に導くはじめの一歩は無料のオンライン相談から。お気軽にご相談ください。
365日開催オンライン個別相談会
編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建などを10年経験。3か月の経営支援サポートで、9か月後には赤字の会社を1億円の利益を計上させるなどの実績を多数持つ専門家。
1. 事業売却におけるデューデリジェンスとは
事業売却におけるデューデリジェンスとは、買収を検討している企業が、対象企業の財務状況、法務状況、事業内容、人事状況など、あらゆる側面を詳細に調査するプロセスです。買収価格の決定、契約条件の交渉、買収後の経営戦略策定などに不可欠な情報収集活動であり、買収の成否を大きく左右する重要なプロセスと言えます。
1.1 デューデリジェンスの定義と目的
デューデリジェンスは、直訳すると「然るべき注意」を意味します。事業売却の文脈では、買収対象企業の価値やリスクを客観的に評価し、潜在的な問題点を明らかにすることを目的とした調査活動です。
買収側にとっては、投資判断に必要な情報を収集し、リスクを最小限に抑えるための重要なプロセスです。売却側にとっては、企業価値を適切に評価してもらい、スムーズな売却を実現するために必要な準備を行う機会となります。
デューデリジェンスの主な目的は下記の通りです。
買収価格の算定根拠を明確にする | |
潜在的なリスクや問題点を発見する | |
買収後の統合プロセスを円滑に進めるための情報を収集する | |
売買契約書の内容を精査し、交渉材料とする |
1.2 デューデリジェンスの種類
デューデリジェンスは、調査対象領域によっていくつかの種類に分類されます。主な種類は以下の通りです。
種類 | 内容 |
---|---|
財務デューデリジェンス | 財務諸表、会計処理、税務申告などを精査し、企業の収益性、安全性、成長性を分析します。過去の財務実績に基づいて将来のキャッシュフローを予測し、適正な買収価格を算定するための重要な情報源となります。 |
法務デューデリジェンス | 契約書、許認可、訴訟リスク、法令遵守状況などを調査し、潜在的な法的リスクを洗い出します。買収後の法的トラブルを未然に防ぐために不可欠なプロセスです。 |
事業デューデリジェンス | 事業計画、市場環境、競合状況、顧客基盤、サプライチェーンなどを分析し、事業の持続可能性や成長性を評価します。買収後の事業戦略策定に役立つ情報を提供します。例えば、PEST分析、5フォース分析といったフレームワークを用いて分析を行う場合もあります。 |
人事デューデリジェンス | 従業員のスキル、経験、人事制度、退職リスクなどを調査し、人材面での課題やリスクを明らかにします。優秀な人材の確保、円滑な組織統合を実現するために重要な情報となります。また、労務問題の有無、退職金債務なども重要な調査項目です。 |
これらのデューデリジェンスは、それぞれ独立して行われることもありますが、相互に関連しているため、総合的に判断することが重要です。例えば、事業デューデリジェンスで将来の成長性が高いと判断されても、財務デューデリジェンスで大きな負債が発見された場合、買収価格に影響を与える可能性があります。また、M&Aアドバイザー、会計事務所、法律事務所といった専門家を活用することで、より精度の高いデューデリジェンスを実施することが可能です。
2. デューデリジェンスのプロセス
事業売却におけるデューデリジェンスのプロセスは、大きく分けて準備段階、実行段階、報告段階の3つの段階に分けることができます。それぞれの段階における詳細な内容と重要なポイントを以下に解説します。
2.1 準備段階
デューデリジェンスをスムーズに進めるためには、事前の準備が不可欠です。この段階では、売却側の企業は必要な情報を整理し、デューデリジェンスチームを編成します。買収側の企業は、デューデリジェンスの目的と範囲を明確にし、適切な専門家を選定します。準備段階における具体的なタスクは以下の通りです。
売却側 | 買収側 |
---|---|
データルームの準備(物理的または仮想的なデータルームに関連資料を保管) | デューデリジェンスチームの編成(財務、法務、事業、人事などの専門家を選定) |
開示資料の作成(財務諸表、契約書、事業計画など) | デューデリジェンス計画の策定(調査範囲、スケジュール、予算などを決定) |
デューデリジェンス対応チームの編成(各部門の担当者を選定) | 質問リストの作成(売却側に確認したい事項をリスト化) |
秘密保持契約の締結 | 秘密保持契約の締結 |
特に、秘密保持契約の締結は、この段階で非常に重要です。売却側の企業にとって、経営情報などの機密情報の漏洩は大きなリスクとなります。秘密保持契約を締結することで、買収側が取得した情報の適切な取り扱いを担保し、情報漏洩のリスクを軽減することができます。
2.2 実行段階
準備段階が完了したら、いよいよデューデリジェンスの実行段階に入ります。この段階では、買収側の企業は、売却側から提供された情報に基づいて、詳細な調査を行います。具体的には、財務状況、法務状況、事業状況、人事状況などを多角的に分析し、企業価値を評価します。実行段階における主な活動は以下の通りです。
データルームのレビュー | 売却側が準備したデータルームにアクセスし、資料を確認します。必要に応じて、追加資料の提出を依頼します。 |
---|---|
質問への回答 | 買収側からの質問に対して、売却側は迅速かつ正確に回答します。不明点があれば、積極的に質問し、相互理解を深めることが重要です。 |
経営陣へのインタビュー | 買収側は、売却側の経営陣にインタビューを行い、事業戦略や将来展望などを確認します。経営陣との面談を通して、企業文化や経営理念なども把握します。 |
現場視察 | 必要に応じて、工場やオフィスなどの現場を視察し、事業の実態を把握します。現場視察を通して、設備の状況や従業員のモチベーションなども確認できます。 |
この段階では、買収側と売却側が緊密に連携し、円滑な情報交換を行うことが重要です。疑問点や不明点があれば、速やかに解決することで、デューデリジェンスを効率的に進めることができます。
2.3 報告段階
実行段階が完了したら、買収側の企業は、デューデリジェンスの結果をまとめた報告書を作成します。報告書には、調査結果の概要、企業価値の評価、リスクの分析などが記載されます。この報告書に基づいて、買収側は最終的な投資判断を行います。報告段階における具体的なタスクは以下の通りです。
デューデリジェンス報告書の作成 | 調査結果を詳細に分析し、報告書にまとめます。報告書には、財務、法務、事業、人事など、各分野の専門家による見解が記載されます。 |
---|---|
買収条件の交渉 | デューデリジェンスの結果を踏まえ、買収価格や契約条件などを交渉します。買収側と売却側が合意に至れば、最終的な契約を締結します。 |
最終投資判断 | デューデリジェンスの結果と交渉結果を総合的に判断し、最終的な投資判断を行います。投資判断には、リスクとリターンのバランスを考慮することが重要です。 |
この段階では、デューデリジェンスの結果を正確に分析し、適切な投資判断を行うことが重要です。また、買収側と売却側が誠実に交渉を行い、双方にとって納得のいく契約を締結することが、事業売却の成功につながります。
3. 事業売却デューデリジェンスのチェックポイント
事業売却におけるデューデリジェンスでは、様々な観点から対象企業の現状を把握し、潜在的なリスクや将来性を評価します。ここでは、主要なデューデリジェンス項目におけるチェックポイントを詳細に解説します。これらのポイントは、買収後のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな事業統合を実現するために非常に重要です。
3.1 財務デューデリジェンスのチェックポイント
財務デューデリジェンスは、対象企業の財務状況を詳細に分析し、その健全性や収益性を評価するプロセスです。主なチェックポイントは以下となります。
【関連】財務デューデリジェンスの目的・内容・進め方を初心者にもわかりやすく解説!3.1.1 売上高と利益の推移
過去3~5年間の売上高と利益の推移を分析し、成長性や収益性を評価します。季節変動や一時的な要因による変動も考慮し、持続的な収益力を見極めることが重要です。例えば、特定の顧客への依存度が高い場合、その顧客の動向が業績に大きな影響を与える可能性があります。また、売上原価や販管費の推移も確認し、利益率の変動要因を分析します。異常値や不自然な変動があれば、その背景を詳しく調査する必要があります。
3.1.2 資産と負債の状況貸借対照表を分析し、資産と負債の状況を把握します。流動資産と流動負債の比率、固定資産の内容、債務の構成などを確認し、財務の安定性を評価します。特に、不良債権や簿外債務の有無、担保の状況、リース債務の条件などを詳細に確認する必要があります。また、棚卸資産の評価方法や固定資産の減価償却方法も確認し、会計処理の妥当性を判断します。
3.1.3 キャッシュフローの状況キャッシュフロー計算書を分析し、営業活動、投資活動、財務活動によるキャッシュフローの状況を把握します。安定したキャッシュフローを生み出しているか、資金繰りに問題がないかなどを確認します。特に、営業活動によるキャッシュフローが黒字であるか、設備投資に過剰な資金を投入していないか、債務返済能力に問題がないかなどを重点的に確認します。自由キャッシュフローの推移も重要な指標となります。
3.2 法務デューデリジェンスのチェックポイント
法務デューデリジェンスは、対象企業の法令遵守状況や契約関係などを調査し、潜在的な法的リスクを洗い出すプロセスです。主なチェックポイントは以下となります。
【関連】法務デューデリジェンスとは?目的・確認事項・進め方【初心者向け】3.2.1 契約書の確認
重要な契約書(取引契約、雇用契約、ライセンス契約など)の内容を確認し、不利な条項や潜在的な紛争リスクがないかなどを調査します。例えば、契約期間、契約解除条件、損害賠償条項などを詳細に確認する必要があります。また、契約書の有効性や履行状況も確認します。
3.2.2 法令遵守状況独占禁止法、労働基準法、環境関連法など、関連法令の遵守状況を確認します。違反行為や潜在的な違反リスクがないかなどを調査します。過去に行政処分を受けたことがあるか、訴訟を抱えているかなども確認します。コンプライアンス体制の整備状況も重要なチェックポイントです。
3.2.3 知的財産権特許権、商標権、著作権などの知的財産権の有無や有効性を確認します。権利侵害リスクや権利行使上の問題がないかなどを調査します。ライセンス契約の状況や、知的財産権の管理体制も確認します。
3.3 事業デューデリジェンスのチェックポイント
事業デューデリジェンスは、対象企業の事業内容や市場環境などを分析し、将来性や競争力を評価するプロセスです。主なチェックポイントは以下となります。
【関連】ビジネスデューデリジェンスの目的・確認事項・進め方とは?【初心者向け】3.3.1 事業計画の妥当性
対象企業の事業計画の内容を確認し、その実現可能性や収益性などを評価します。市場の成長性、競争環境、経営戦略などを考慮し、事業計画の妥当性を判断します。目標設定の根拠や、リスクへの対応策なども確認します。
【関連】会社売却を事業計画で有利に進める!作成手順と成功ポイント|M&A準備の必須知識3.3.2 市場分析
対象企業が属する市場の規模、成長性、競争状況などを分析します。市場の魅力度や、対象企業の市場シェア、競争優位性などを評価します。 PEST分析や5フォース分析などを活用し、市場環境を多角的に分析します。
3.3.3 競合分析主要な競合企業の事業内容、強み、弱みなどを分析します。対象企業の競争力や、競争優位性を評価します。競合企業の戦略や、市場シェアの推移なども確認します。
3.4 人事デューデリジェンスのチェックポイント
人事デューデリジェンスは、対象企業の人事制度や従業員の状況などを調査し、潜在的なリスクや課題を洗い出すプロセスです。主なチェックポイントは以下となります。
3.4.1 従業員のスキルと経験従業員のスキル、経験、資格などを確認し、事業運営に必要な人材が確保されているか、人材の質に問題がないかなどを評価します。キーパーソンの存在や、後継者育成の状況なども確認します。従業員の年齢構成や、離職率なども重要な指標となります。
3.4.2 人事制度賃金制度、評価制度、昇進制度など、人事制度の内容を確認し、その妥当性や公平性を評価します。労働基準法などの関連法令に適合しているか、従業員のモチベーションに悪影響を与えないかなどを確認します。退職金制度や福利厚生制度の内容も確認します。
3.4.3 退職リスクキーパーソンの退職リスクや、従業員の大量離職リスクなどを評価します。退職リスクが高い場合、事業継続性に影響を与える可能性があります。退職理由や、離職率の推移なども確認します。競合企業への転職リスクなども考慮する必要があります。
4. デューデリジェンスにおける成功の秘訣
事業売却におけるデューデリジェンスを成功させるためには、綿密な準備と戦略的なアプローチが不可欠です。売却側、買収側双方にとって、デューデリジェンスは取引の成否を左右する重要なプロセスです。ここでは、デューデリジェンスを成功に導くための秘訣を、専門家との連携、早期の準備、情報開示の重要性の3つの観点から解説します。
4.1 専門家との連携
デューデリジェンスは専門性の高いプロセスであり、財務、法務、税務、事業など多岐にわたる分野の専門知識が求められます。自社だけで全てをカバーしようとせず、経験豊富な専門家と連携することで、スムーズかつ効率的なデューデリジェンスの実施が可能になります。
4.1.1 適切な専門家の選定M&Aアドバイザー、公認会計士、弁護士、税理士など、それぞれの分野に精通した専門家を選定することが重要です。実績や専門分野、費用などを比較検討し、自社のニーズに合った専門家を選びましょう。例えば、過去に類似のM&A案件を成功させた実績を持つアドバイザーや、特定の業界に精通した専門家を選ぶことで、より効果的なアドバイスを受けることができます。また、複数の専門家とチームを組むことで、多角的な視点からの分析が可能になります。
4.1.2 専門家との密なコミュニケーション専門家との密なコミュニケーションも成功の秘訣です。デューデリジェンスの目的やスケジュール、自社の状況などを明確に伝え、疑問点があれば積極的に質問しましょう。また、専門家からの報告やアドバイスを迅速に理解し、必要な対応を取ることで、デューデリジェンスをスムーズに進めることができます。例えば、定期的なミーティングを設定し、進捗状況や課題を共有することで、相互理解を深め、効率的な連携体制を構築することができます。
4.2 早期の準備
デューデリジェンスは、準備段階から既に始まっていると言えます。早期の準備によって、スムーズな売却プロセスを実現し、より有利な条件で取引を成立させる可能性を高めることができます。
4.2.1 データルームの準備買収候補者への情報提供をスムーズに行うために、財務情報、契約書、事業計画書など、必要な書類を整理し、データルームを準備しておきましょう。オンラインデータルームを活用することで、安全かつ効率的な情報共有が可能です。アクセス権限の設定やログ管理機能などを活用し、情報セキュリティにも配慮しましょう。
4.2.2 想定問答集の作成買収候補者から想定される質問と回答をまとめた想定問答集を作成しておくと、デューデリジェンス中の質疑応答をスムーズに進めることができます。過去の類似案件の経験を踏まえ、想定されるリスクや課題についても事前に検討し、対応策を準備しておくことが重要です。
準備項目 | 内容 | メリット |
---|---|---|
財務情報の整理 | 過去3~5期分の財務諸表、試算表などを整備 | 財務状況の透明性を確保し、買収候補者の信頼獲得 |
契約書の確認 | 重要な契約書の有効性、内容などを確認 | 潜在的なリスクを早期に発見し、対策を講じる |
事業計画の策定 | 将来の事業計画、成長戦略などを明確化 | 企業価値を適切に評価してもらい、交渉を有利に進める |
4.3 情報開示の重要性
デューデリジェンスにおける情報開示は、売却プロセスを円滑に進める上で非常に重要です。適切な情報開示は、買収候補者の信頼獲得に繋がり、取引成立の可能性を高めます。逆に、情報開示が不十分であったり、虚偽の情報が含まれていた場合は、取引が破談になるだけでなく、法的責任を問われる可能性もあります。
4.3.1 正確で網羅的な情報開示買収候補者に対して、正確かつ網羅的な情報を提供することが重要です。財務状況、事業内容、法令遵守状況など、企業価値に影響を与える可能性のある情報は全て開示する必要があります。隠蔽や虚偽の報告は、後々大きな問題に発展する可能性があるため、絶対に避けなければなりません。また、情報開示の範囲や方法について、事前に専門家と相談し、適切な対応を検討しましょう。
4.3.2 迅速な情報提供買収候補者からの情報提供要請には、迅速に対応することが重要です。迅速な対応は、買収候補者からの信頼獲得に繋がり、スムーズな取引プロセスに貢献します。また、情報提供が遅れると、買収候補者が不安を感じ、取引への意欲を削ぐ可能性があります。そのため、情報提供体制を事前に整備し、迅速な対応を心掛けましょう。
これらの秘訣を踏まえ、デューデリジェンスを成功させ、事業売却をスムーズに進めましょう。
5. デューデリジェンスの失敗事例と対策
デューデリジェンスは事業売却を成功させるための重要なプロセスですが、適切に行われなければ、売却価格の低下や最悪の場合、取引中止につながる可能性があります。ここでは、デューデリジェンスで起こりうる失敗事例とその対策について詳しく解説します。
5.1 情報開示の不足による失敗
売却側が十分な情報を提供しなかったために、買収側が事業の実態を正確に把握できず、評価額の減額や取引中止に至るケースは少なくありません。例えば、過去の訴訟履歴や環境問題に関する情報、主要顧客の離反リスクなどを隠蔽した場合、後々大きな問題に発展する可能性があります。
5.1.1 対策:透明性の高い情報開示売却側としては、ネガティブな情報も含め、事業に関する情報を可能な限り開示することが重要です。あらかじめ想定される質問事項への回答を準備しておく、データルームを整備するなどして、スムーズな情報提供に努めましょう。弁護士や会計士などの専門家のアドバイスを受けながら、適切な情報開示を行うことが重要です。
5.2 デューデリジェンス期間の不足による失敗
デューデリジェンスに十分な時間を確保できなかった場合、買収側が事業を適切に評価できず、不当に低い価格での売却や、後々に問題が発覚して訴訟に発展するリスクがあります。特に、複雑な事業構造や多くの関係会社を持つ企業の場合、デューデリジェンスに時間を要することが想定されます。
5.2.1 対策:適切なスケジューリング売却側と買収側で事前にデューデリジェンスの期間やスケジュールを綿密に協議し、合意形成を図ることが重要です。余裕を持ったスケジュールを策定し、必要に応じて期間を延長する柔軟性も持っておきましょう。また、データルームを早期に開設し、必要な資料を事前に準備しておくことで、デューデリジェンス期間を有効活用できます。
5.3 専門家選定の失敗
デューデリジェンスは専門性の高いプロセスであるため、経験豊富な専門家のサポートが不可欠です。適切な専門家を選定できなかった場合、重要なリスクを見落とす可能性があり、結果として売却価格の低下や取引中止につながる可能性があります。例えば、M&Aに精通していない弁護士や会計士を選定した場合、適切なアドバイスを受けられない可能性があります。
5.3.1 対策:実績と専門性を重視した選定M&Aに豊富な実績と専門知識を持つ弁護士、会計士、税理士などの専門家チームを編成することが重要です。複数の候補から実績や専門性、費用などを比較検討し、自社の事業内容に最適な専門家を選定しましょう。また、専門家とのコミュニケーションを密に取り、疑問点や不明点を解消していくことも大切です。事前に専門家との面談を行い、相性や信頼性を確認することも有効です。
5.4 その他の失敗事例と対策
失敗事例 | 対策 |
---|---|
買収側の意図を理解しないままデューデリジェンスを進めてしまい、不要な情報提供や対応に時間を費やしてしまった。 |
事前に買収側の投資方針や戦略を理解し、デューデリジェンスの目的を明確にする。買収側とのコミュニケーションを密に取り、疑問点や不明点を解消する。 |
デューデリジェンス中に発覚した問題点への対応が遅れ、買収側の不信感を招いてしまった。 |
問題点の発覚時には迅速かつ誠実に対応し、状況を逐次買収側に報告する。必要に応じて専門家の協力を得て、適切な解決策を提示する。 |
内部統制が不十分で、デューデリジェンスに必要な資料が散逸していた。 |
日頃から適切な内部統制体制を構築し、資料の管理を徹底する。データルームを活用し、デューデリジェンスに必要な資料を一元管理する。 |
従業員への説明不足により、情報漏洩や風評被害が発生した。 |
デューデリジェンスの目的や進捗状況について、従業員に適切に説明する。守秘義務契約を締結するなど、情報管理体制を強化する。 |
これらの失敗事例を参考に、デューデリジェンスを適切に進めることで、事業売却を成功に導くことができます。万が一、想定外の事態が発生した場合でも、専門家と連携し、冷静かつ迅速に対応することが重要です。
【関連】事業売却のアドバイザー費用・手数料を徹底比較!最適な専門家を見つける6. まとめ
事業売却におけるデューデリジェンスは、売却価格の決定や契約条件の交渉に大きな影響を与える重要なプロセスです。本記事では、デューデリジェンスの定義・目的・種類から、プロセス、チェックポイント、成功の秘訣、そして失敗事例とその対策までを網羅的に解説しました。
デューデリジェンスを成功させるためには、財務、法務、事業、人事といった多岐にわたる領域を綿密に調査する必要があります。売上高や利益の推移といった財務状況はもちろんのこと、契約書の確認や法令遵守状況といった法務面、事業計画の妥当性や市場・競合分析といった事業面、そして従業員のスキルや人事制度といった人事面まで、あらゆる側面から対象企業の実態を把握することが重要です。
デューデリジェンスをスムーズに進めるためには、専門家との連携が不可欠です。弁護士や公認会計士といった専門家の知見を活用することで、潜在的なリスクを早期に発見し、適切な対策を講じることができます。また、早期の準備も成功の秘訣です。
必要な資料を事前に整理しておくことで、デューデリジェンス期間を短縮し、売却プロセス全体の効率化を図ることができます。さらに、買い手への適切な情報開示も重要です。情報開示が不足していると、買い手の不信感を招き、取引が破談に及ぶ可能性もあります。逆に、適切な情報開示を行うことで、買い手の信頼を獲得し、スムーズな取引を実現できるでしょう。
失敗事例からも学ぶことは多くあります。情報開示の不足、デューデリジェンス期間の不足、専門家選定の失敗といった事例は、いずれも事前の準備や計画の甘さが原因です。これらの失敗を避けるためには、デューデリジェンスの重要性を十分に理解し、綿密な計画を立て、専門家のサポートを受けながら慎重に進めることが重要です。
デューデリジェンスを成功させることで、売却価格の最大化やリスクの最小化を実現し、事業売却を成功裏に完了できる可能性が高まります。本記事が、事業売却を検討している経営者の方々にとって、デューデリジェンスを理解し、適切な準備を行うための一助となれば幸いです。