第三者割当増資でM&Aを実現!事業承継に最適なスキームとそのメリットとは?
「事業承継の選択肢としてM&Aを考えているけど、具体的な方法がわからない」「第三者割当増資ってよく聞くけど、事業承継とどう関係があるの?」そんな悩みをお持ちの経営者の方へ。
この記事では、第三者割当増資を活用したM&Aによる事業承継について、そのスキームやメリット、注意点をわかりやすく解説します。事業承継を成功に導くためのヒントが満載なので、ぜひ最後まで読んでみてください。
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編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。
- 目次
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1. 第三者割当増資とは
1.1 株式発行による資金調達
1.2 第三者割当増資の仕組み
2. M&Aにおける第三者割当増資の活用
2.1 事業承継という選択肢
2.2 M&Aと第三者割当増資
3. 第三者割当増資による事業承継のスキーム
3.1 株式譲渡と第三者割当増資を組み合わせたスキーム
3.2 段階的な事業承継
4. 第三者割当増資による事業承継のメリット
4.1 後継者問題の解決
4.2 資金調達による事業成長
4.3 経営ノウハウの継承
4.4 従業員の雇用維持
4.5 円滑な事業承継
5. 第三者割当増資による事業承継の注意点
5.1 経営権の希薄化
5.2 株価の評価
5.3 デューデリジェンス
5.4 その他
6. まとめ
1. 第三者割当増資とは
第三者割当増資とは、企業が資金調達を行う方法の一つで、特定の第三者に対して新たに株式を発行し、その対価として資金を調達する手法です。この章では、株式発行による資金調達の種類と、第三者割当増資の仕組みについて詳しく解説します。
1.1 株式発行による資金調達
企業が資金調達を行う際、大きく分けて「負債」と「資本」の2つの方法があります。銀行などから融資を受ける場合は負債となり、返済義務が発生します。一方、株式を発行して資金調達する場合は資本となり、返済義務はありません。株式発行による資金調達は、さらに以下の3つの種類に分類されます。
種類 | 対象投資家 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
公募増資 | 不特定多数の投資家 | - 巨額の資金調達が可能 - 企業の知名度向上 |
- 手続きが複雑で時間と費用がかかる - 株主の構成が変化する可能性 |
PO(公募・売出し) | 不特定多数の投資家 | - 公募増資と同様 - 既存株主は保有株を売却し資金を得られる |
- 公募増資と同様 - 株式の需給関係によっては株価が下落する可能性 |
第三者割当増資 | 特定の第三者 | - 比較的簡易な手続きで実施可能 - 発行条件を自由に設定できる - 経営の安定化を図りやすい |
- 既存株主の株式価値が希薄化する可能性 - 発行価格によっては、有利な条件で株式を取得される可能性 |
1.2 第三者割当増資の仕組み
第三者割当増資では、企業は既存株主ではなく、特定の第三者に対して新たに株式を発行します。この第三者には、取引先や事業会社、ベンチャーキャピタル、金融機関、個人投資家などが含まれます。
発行する株式の種類や数は、企業の資金ニーズや経営戦略によって決定されます。第三者は、企業の将来性や成長性を評価し、株式の割当を受けることで、企業の事業に参画することができます。
第三者割当増資は、従来の銀行融資に比べて、以下の様なメリットがあるため、近年、資金調達の手法として注目されています。
1.2.1 手続きが比較的簡易銀行融資のように、担保や保証人を立てる必要がなく、手続きが比較的簡易であるため、スピーディーな資金調達が可能となります。これは、成長期の企業や、事業再生中の企業にとって大きなメリットとなります。
資金調達の自由度が高い発行する株式の種類や数、発行価格などを自由に設定できるため、企業のニーズに合わせた資金調達が可能となります。また、将来の株式公開(IPO)を前提とした資金調達など、多様な資金調達ニーズに対応することができます。
経営の安定化第三者割当増資は、単なる資金調達だけでなく、事業提携や資本提携など、企業の成長戦略を推進するための手段としても活用することができます。また、経営に参画してくれる第三者を迎えることで、経営の安定化や事業の成長を期待することができます。
2. M&Aにおける第三者割当増資の活用
企業成長や事業承継において、M&A(合併・買収)は重要な戦略の一つとなっています。そして、そのM&Aを成功させるための手法として、第三者割当増資が注目されています。ここでは、事業承継という選択肢と、M&Aにおける第三者割当増資の役割について詳しく解説していきます。
2.1 事業承継という選択肢
企業の未来を考える上で、避けて通れないのが「事業承継」の問題です。これまで経営を牽引してきたオーナー経営者が、どのようにして次の世代へバトンを渡していくのか、スムーズな事業の継続をどのように実現するのか、多くの企業が頭を悩ませています。後継者不在、経営環境の変化、競争の激化など、事業承継を取り巻く課題は山積しており、早急な対策が求められています。
事業承継には、大きく分けて「親族内承継」「従業員への承継」「M&Aによる事業承継」の3つの選択肢があります。
選択肢 | メリット | デメリット |
---|---|---|
親族内承継 | 経営理念や社風を維持しやすい | 後継者への負担が大きい、後継者が見つからない場合がある |
従業員への承継 | 社内事情に精通している、従業員のモチベーション向上 | 経営能力不足のリスク、資金調達の課題 |
M&Aによる事業承継 | 後継者問題の解決、経営資源の補完、事業の早期再生 | 企業文化の融合、従業員の雇用維持、買収コスト |
それぞれの選択肢にはメリット・デメリットがあり、自社の状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。中でも、近年注目を集めているのが「M&Aによる事業承継」です。後継者不足の解決だけでなく、新たな経営資源の獲得や事業の成長など、多くのメリットが見込めることから、M&Aを選択肢に入れる企業が増加しています。
2.2 M&Aと第三者割当増資
M&Aを実施する際、買収資金の調達方法として「株式交換」「株式移転」「現金による取得」など、様々な方法が存在します。その中でも、第三者割当増資は、買収資金の調達と同時に、経営体制の強化や事業シナジーの創出などのメリットを享受できることから、M&Aにおいて有効な手段として活用されています。
2.2.1 第三者割当増資によるM&Aのメリット
買収資金の調達 | 新たな資金調達を行うことなく、株式の発行のみで買収資金を調達できます。 |
---|---|
経営基盤の強化 | 買収先の経営ノウハウや人材を獲得することで、自社の経営基盤を強化できます。 |
事業シナジーの創出 | 事業内容が近い企業を買収することで、相乗効果による売上拡大やコスト削減などが期待できます。 |
時間的効率 | 他の資金調達方法と比較して、短期間で手続きを完了できるケースが多いです。 |
第三者割当増資は、買収側、被買収側双方にとってメリットのある資金調達方法と言えます。ただし、発行する株式の数によっては、既存株主の株式価値が希薄化する可能性もあるため、慎重に進める必要があります。
M&Aの手法としては、買収企業が被買収企業の株式の全てを取得する「完全子会社型M&A」と、被買収企業の株式の一部を取得し、経営に参画する「資本提携型M&A」の二つがあります。第三者割当増資は、特に資本提携型M&Aにおいて、被買収企業の経営 independence をある程度担保しながら、資金提供や経営支援を行うことができるため、円滑な事業承継を促進する効果も期待できます。
3. 第三者割当増資による事業承継のスキーム
後継者不足などで、会社の将来が不安...そんな経営者の方にとって、第三者割当増資を活用したM&Aによる事業承継は、有効な選択肢の一つです。ここでは、その具体的なスキームをご紹介します。
3.1 株式譲渡と第三者割当増資を組み合わせたスキーム
最も一般的なのは、株式譲渡と第三者割当増資を組み合わせたスキームです。後継者候補となる会社(譲受会社)に対して、現経営者が保有する株式の一部を譲渡します。
さらに、譲受会社が新たに発行する株式を現経営者が引き受ける形で、第三者割当増資を行います。このスキームのメリットは、現経営者が株式譲渡による資金を得ながら、第三者割当増資を通じて、譲受会社との資本関係を構築し、経営への関与を継続できる点です。
段階 | 内容 |
---|---|
1段階 | 現経営者が株式の一部を譲受会社に譲渡 |
2段階 | 譲受会社が第三者割当増資を実施し、現経営者が新株を引き受け |
3.1.1 メリット
現経営者は株式譲渡益を得られる | |
譲受会社は、既存事業のノウハウや顧客基盤をスムーズに継承できる | |
現経営者は、一定期間、経営に関与し、後継者を育成できる |
3.1.2 事例
例えば、老舗和菓子店の経営者が、後継者不足に悩んでいたとします。そこで、事業拡大を目指す食品メーカーに、株式の一部を譲渡し、同時に、食品メーカーからの第三者割当増資を受け入れることで、事業承継を実現しました。このスキームにより、老舗和菓子店は、資金調達と販路拡大の機会を得て、事業の継続と発展を実現しました。
3.2 段階的な事業承継
事業承継を一度に行うのではなく、段階的に進めるスキームもあります。まず、譲受会社に対して、少数の株式を譲渡し、その後、数年かけて、段階的に株式譲渡を進めていく方法です。このスキームのメリットは、現経営者と譲受会社が、時間をかけて、相互理解を深め、信頼関係を構築できる点です。
段階 | 内容 |
---|---|
1段階 | 現経営者が株式の一部を譲受会社に譲渡 |
2段階 | 譲受会社が事業に参加し、現経営者と共同で経営にあたる |
3段階 | 数年後、残りの株式を譲渡し、事業承継を完了 |
3.2.1 メリット
現経営者は、経営の主導権を維持しながら、徐々に事業承継を進めることができる | |
譲受会社は、時間をかけて、事業内容や企業文化を理解し、スムーズな事業承継を実現できる |
3.2.2 事例
例えば、地域密着型の建設会社の経営者が、後継者育成のために、従業員に株式の一部を譲渡し、同時に、従業員を対象とした第三者割当増資を実施しました。その後、数年かけて、段階的に株式譲渡を進め、最終的に、従業員に事業承継しました。このスキームにより、建設会社は、円滑な事業承継と従業員のモチベーション向上を実現しました。
これらのスキームはあくまで一例です。事業承継の方法は、企業の規模や業種、経営者の意向などによって異なります。専門家のアドバイスを受けながら、最適なスキームを検討していくことが重要です。
4. 第三者割当増資による事業承継のメリット
第三者割当増資による事業承継には、従来の事業承継方法にはない様々なメリットが存在します。ここでは、主なメリットとして下記の5つを詳しく解説していきます。
4.1 後継者問題の解決
従来の事業承継では、経営者の親族や従業員の中から後継者を選定することが一般的でした。しかし、適切な後継者が見つからない場合や、後継者となることを親族が望まないケースも少なくありません。
第三者割当増資による事業承継では、後継者問題を抱える企業が、経営能力のある第三者に株式を譲渡することで、円滑な事業承継を実現できるメリットがあります。
親族に経営を押し付けることなく、事業を存続できる | |
従業員の雇用を守りながら、事業を継続できる | |
外部の専門的な知見を取り入れることで、経営の近代化・活性化を図れる |
4.2 資金調達による事業成長
第三者割当増資では、新たな株主となる第三者から資金を調達できます。この資金は、事業拡大のための設備投資や、新規事業の立ち上げ、人材育成など、将来に向けた投資に活用することが可能です。
従来の事業承継では、後継者への株式譲渡に伴い、多額の相続税が発生するケースもありましたが、第三者割当増資であれば、資金調達と同時に株式を譲渡するため、相続税対策としても有効です。
事業拡大や新規事業展開など、成長戦略を積極的に推進できる | |
財務基盤の強化により、企業価値を高め、競争力を強化できる |
4.3 経営ノウハウの継承
第三者割当増資によって、事業承継と同時に、外部から経験豊富な経営者や専門家を受け入れることができます。これにより、従来の経営者のノウハウや技術を継承しながら、新たな経営戦略や事業展開を進めることが可能となります。後継者となる第三者は、豊富な経験や実績を持つ場合が多く、事業の成長を加速させるための新たな視点や戦略を提供してくれるでしょう。
今まで培ってきた技術やノウハウを継承しつつ、新たな経営手法を導入できる | |
経営の効率化や組織体制の強化など、企業体質の改善を図り、持続的な成長を実現できる |
4.4 従業員の雇用維持
企業にとって従業員は大切な財産です。第三者割当増資による事業承継では、事業の継続性を重視するため、従業員の雇用を維持できる可能性が高まります。従来の事業承継では、後継者不足や事業縮小によって、従業員の解雇を余儀なくされるケースも少なくありませんでした。しかし、第三者割当増資であれば、新たな経営資源の投入により、事業の成長を図り、雇用を守りながら、従業員と共に成長を目指すことができます。
従業員の雇用を守り、地域経済への貢献を継続できる | |
従業員のモチベーション向上や人材の定着化を促進できる |
4.5 円滑な事業承継
第三者割当増資は、株式譲渡による事業承継と比較して、手続きが比較的簡素であり、短期間で事業承継を完了できるというメリットがあります。従来の事業承継では、後継者への株式譲渡や相続に関する複雑な手続きや、多額の費用が発生するケースもありました。しかし、第三者割当増資であれば、専門家のサポートを得ながら、スムーズかつスピーディーに事業承継を進めることができます。
時間や労力を軽減し、事業承継に集中できる | |
後継者探しや承継手続きに時間を要さず、事業の空白期間を最小限に抑えられる |
5. 第三者割当増資による事業承継の注意点
第三者割当増資による事業承継は、多くのメリットがある一方で、注意すべき点も存在します。事前にこれらの注意点を理解しておくことで、後々のトラブルを回避し、スムーズな事業承継を実現できる可能性が高まります。
5.1 経営権の希薄化
第三者割当増資を実施すると、新たな株主が増加するため、既存株主の持ち株比率が低下し、経営権の希薄化が起こる可能性があります。特に、過半数の株式を第三者に割り当てた場合、経営権が移転してしまう可能性も考えられます。
5.1.1 対策
議決権比率を考慮した第三者割当増資を行う | |
種類株式を発行し、経営権に影響を与えないようにする | |
株主間契約を締結し、経営権の保護について定めておく |
5.2 株価の評価
第三者割当増資では、適正な株価で株式を発行する必要があります。株価が割高になると、既存株主の利益を害することになり、逆に割安になると、会社に損失を与える可能性があります。株価評価は専門性の高い分野であるため、客観的な立場から適正な評価を行うことが重要です。
5.2.1 株価評価の方法
DCF法(割引キャッシュフロー法) | |
類似会社比較法 | |
純資産法 |
5.2.2 対策
専門家である会計士や税理士に株価評価を依頼する | |
複数の評価機関から評価額を取得し、比較検討する |
5.3 デューデリジェンス
デューデリジェンスとは、企業の価値やリスクを調査することです。第三者割当増資を受ける際には、投資家側からデューデリジェンスを要求されることがあります。デューデリジェンスでは、会社の財務状況や法務状況、事業内容などが詳細に調査されます。
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5.3.1 デューデリジェンスの対象
財務デューデリジェンス | |
法務デューデリジェンス | |
事業デューデリジェンス |
5.3.2 対策
事前にデューデリジェンスの準備を進めておく | |
専門家である弁護士や会計士に相談する | |
透明性の高い経営を心がけ、適切な情報開示を行う |
5.4 その他
第三者割当増資は、既存の株主総会決議が必要となる場合があります。また、株主総会の招集手続きや議決権の算定など、会社法上の手続きを遵守する必要があります。 | |
第三者割当増資に関する情報は、金融商品取引法上の重要事実にあたる可能性があります。重要事実にあたる場合には、適時開示規則に従って、適切な情報開示を行う必要があります。 |
第三者割当増資による事業承継は、綿密な計画と準備が必要です。上記のような注意点を含め、専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが重要です。
6. まとめ
第三者割当増資は、事業承継における有力な選択肢の一つです。後継者への株式譲渡と組み合わせることで、円滑な事業承継と経営の若返りを実現できます。また、事業承継と同時に資金調達が可能になるため、事業拡大や新たな挑戦も実現しやすくなります。
さらに、株式譲渡による経営権の移行を段階的に行うことで、後継者は経験を積みながら経営を引き継ぐことができます。ただし、第三者割当増資による事業承継には、経営権の希薄化や株価評価、デューデリジェンスなど、注意すべき点も存在します。専門家のアドバイスを受けながら、自社の状況に最適なスキームを検討することが重要です。