みなし配当とは?非上場株式譲渡の税務リスクを回避するための完全ガイド
非上場株式の譲渡は、思わぬ税務リスクを孕んでいることをご存知でしょうか?特に「みなし配当」は、譲渡価格が低すぎる場合に適用され、本来の譲渡所得よりも高い税率で課税される可能性があります。つまり、売却益が出たにも関わらず、手元に残るお金が想定よりも少なくなる可能性があるのです。
本記事では、みなし配当の仕組みや計算方法、非上場株式譲渡において発生する税務リスク、そしてそのリスクを回避するための具体的な対策まで、網羅的に解説します。これを読めば、非上場株式の譲渡を検討する際に、税務上の不利を被ることなく、スムーズかつ安全に進めるための知識を得ることができます。みなし配当の課税リスクを理解し、適切な対策を講じることで、想定外の税負担を回避し、あなたの大切な資産を守りましょう。
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編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・事業再生などを10年経験。3か月の経営支援サポートで、9か月後には赤字の会社を1億円の利益を計上させるなどの実績を多数持つ専門家。
- 目次
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1. みなし配当の概要
1.1 みなし配当とは
1.2 みなし配当になるケース
2. 非上場株式譲渡におけるみなし配当の税務リスク
2.1 譲渡所得と配当所得の税率の違い
2.2 みなし配当課税による二重課税のリスク
2.3 税務調査における注意点
3. 非上場株式譲渡でみなし配当と認定されるケース
3.1 低額譲渡によるみなし配当
3.2 特定の株主への譲渡
3.3 過去の配当状況
3.4 会社業績の向上と譲渡時期の関係
3.5 株主優待との関係
3.6 自己株式の取得との関係
3.7 みなし配当と認定されるケースのまとめ
4. みなし配当 課税を回避するための対策
4.1 適正な時価の算定
4.2 配当政策の検討
4.3 税理士への相談
5. 非上場株式譲渡に関するその他の税務上の注意点
5.1 贈与税
5.2 相続税
5.3 税理士への相談
6. まとめ
1. みなし配当の概要
非上場株式の譲渡においては、「みなし配当」という概念を理解することが非常に重要です。みなし配当とは、法律上は配当として扱われていないものの、実質的に配当と同様の効果を持つものとして税法上、配当とみなされるものを指します。
これは、株主が会社から経済的な利益を受けているにもかかわらず、形式的に配当として処理されていない場合に適用されます。非上場株式の譲渡において、このみなし配当が発生すると、予期せぬ税負担が生じる可能性があるため、注意が必要です。
1.1 みなし配当とは
みなし配当とは、会社法上の配当手続きを経ずに株主が会社から利益の分配を受けた場合に、税法上、配当とみなされる制度です。これは、株主への利益分配が適正な税負担を伴うように設計されています。具体的には、法人税法第21条、所得税法第19条に規定されています。
これらの規定は、株主が会社から経済的な利益を受けているにもかかわらず、配当として処理されていない場合に、その利益を配当とみなして課税するものです。この制度によって、株主は配当所得として所得税を、会社は源泉所得税を納付する義務が生じます。
1.2 みなし配当になるケース
みなし配当と認定されるケースは多岐にわたります。代表的なものとしては、非上場株式の低額譲渡、自己株式の取得、株主優待などが挙げられます。これらのケース以外にも、会社が株主に対して経済的な利益を提供した場合には、みなし配当に該当する可能性があります。
注意が必要なのは、これらの行為が必ずしもみなし配当と認定されるわけではないということです。個々の状況に応じて判断されるため、専門家への相談が重要となります。
1.2.1 非上場株式の譲渡とみなし配当
非上場株式の譲渡において、譲渡価格が時価よりも著しく低い場合、その差額がみなし配当として扱われることがあります。これは、低額で譲渡することで、実質的に会社から利益の分配を受けているとみなされるためです。例えば、時価100万円の株式を50万円で譲渡した場合、50万円がみなし配当とみなされる可能性があります。
この時価の算定方法は、類似会社比較法、DCF法、純資産価額法などがあり、それぞれの状況に応じて適切な方法を選択する必要があります。特に、親族や特定の関係者への譲渡においては、税務当局から厳しく scrutiny されやすい傾向があります。
1.2.2 みなし配当の計算方法
みなし配当の計算方法は、状況によって異なります。非上場株式の低額譲渡の場合、時価と譲渡価格の差額がみなし配当となります。時価の算定は複雑であり、税務上の専門知識が必要です。以下は一般的な計算式と例です。
項目 | 内容 |
---|---|
みなし配当額 | 時価 - 譲渡価格 |
例:時価100万円、譲渡価格50万円の場合 | 100万円 - 50万円 = 50万円 |
この50万円がみなし配当となり、譲渡所得に加えて配当所得としても課税対象となります。そのため、二重課税のリスクが生じる可能性があります。また、自己株式の取得の場合も、取得価格と時価の差額がみなし配当となる可能性があります。株主優待の場合、優待の内容に応じて時価を評価し、みなし配当額が計算されます。これらの計算は複雑であり、税務の専門家である税理士に相談することが推奨されます。
2. 非上場株式譲渡におけるみなし配当の税務リスク
非上場株式の譲渡において、みなし配当と認定されると、売却益が譲渡所得ではなく配当所得として課税される可能性があります。これは、税負担の増加や二重課税のリスクにつながるため、注意が必要です。以下、具体的な税務リスクについて解説します。
2.1 譲渡所得と配当所得の税率の違い
譲渡所得と配当所得では、税率が異なります。一般的に、譲渡所得は分離課税で20.315%(所得税15.315%、住民税5%)ですが、配当所得は総合課税となり、所得金額に応じて最大45%(所得税・住民税合算)になる可能性があります。譲渡益が大きければ大きいほど、この税率の差は大きな負担となります。特に、高額所得者にとっては、みなし配当と認定されることで、税負担が大幅に増加するリスクがあります。
所得の種類 | 課税方法 | 税率(所得税・住民税合算) |
---|---|---|
譲渡所得 | 分離課税 | 20.315% |
配当所得 | 総合課税 | 最大45% |
2.2 みなし配当課税による二重課税のリスク
非上場株式を譲渡した場合、譲渡益に対して譲渡所得税が課税されます。しかし、みなし配当と認定されると、既に譲渡益に課税されているにもかかわらず、配当所得としても課税されることになります。これがいわゆる「二重課税」のリスクです。例えば、低廉な価格で譲渡した場合、その差額がみなし配当とみなされ、譲渡所得に加えて配当所得としても課税される可能性があります。これは、納税者にとって大きな不利益となるため、十分に注意する必要があります。
【関連】会社売却における税金対策|中小企業のM&Aで注意するポイントとは?2.3 税務調査における注意点
税務調査において、非上場株式の譲渡価格は特に厳しく scrutiny されます。税務当局は、譲渡価格が不当に低いと判断した場合、みなし配当を認定する可能性があります。そのため、譲渡価格を決定する際には、客観的な根拠に基づいて適正な時価を算定することが重要です。
例えば、類似会社比較法やDCF法などを用いて、第三者も納得できるような価格設定を行う必要があります。また、譲渡契約書などの関連書類を適切に保管しておくことも重要です。税務調査で指摘を受けた際に、適切な説明ができなければ、みなし配当と認定されるリスクが高まります。
特に、親族間や関連会社間での譲渡は、税務当局からより厳しい scrutiny を受ける傾向があります。市場価格よりも低い価格で譲渡した場合、贈与とみなされる可能性もあるため、注意が必要です。税務調査のリスクを軽減するためには、事前に税理士に相談し、適切な対策を講じておくことが重要です。
3. 非上場株式譲渡でみなし配当と認定されるケース
非上場株式の譲渡において、みなし配当と認定されるケースは多岐に渡ります。税務リスクを回避するためにも、どのような場合にみなし配当とみなされるのかを理解しておくことが重要です。ここでは、代表的なケースを詳しく解説します。
3.1 低額譲渡によるみなし配当
非上場株式を時価よりも低い価格で譲渡した場合、その差額がみなし配当として扱われる可能性があります。特に、親族間や特定の取引先など、特殊な関係にある者への譲渡は注意が必要です。税務当局は、このような低額譲渡を、実質的な利益の分配とみなす傾向があります。
3.1.1 時価の算定方法
時価の算定は、会社の規模や業種、財務状況など様々な要素を考慮して行われます。一般的には、類似会社比較法、DCF法、純資産法などが用いられます。適切な時価算定を行うためには、専門家である税理士等のアドバイスを受けることが重要です。
【関連】M&Aで企業価値評価(バリュエーション)3つの算定方法3.2 特定の株主への譲渡
特定の株主、例えば会社の役員や主要株主に対してのみ、有利な条件で株式を譲渡した場合も、みなし配当と認定される可能性があります。これは、他の株主に対する利益の分配が不公平になるためです。公平性を担保するためにも、譲渡条件はすべての株主に対して均等であるべきです。
3.3 過去の配当状況
過去に配当実績が少ない、または全くない会社において、株式譲渡が行われた場合、譲渡価額の一部または全部がみなし配当とみなされる可能性があります。これは、株式譲渡が実質的な配当の代替手段として利用されていると判断されるためです。過去の配当状況も考慮に入れ、総合的に判断する必要があります。
3.4 会社業績の向上と譲渡時期の関係
会社業績が大幅に向上した直後に株式譲渡が行われた場合、業績向上分を反映した価値の上昇部分がみなし配当とみなされる可能性があります。これは、業績向上による利益を、配当ではなく株式譲渡という形で享受していると判断されるためです。譲渡時期と業績の関係性についても注意が必要です。
3.5 株主優待との関係
株主優待制度が充実している会社において、株式譲渡が行われた場合、株主優待の価値も考慮に入れてみなし配当が計算される可能性があります。高額な株主優待は、実質的な利益の分配とみなされることがあるためです。株主優待の内容と価値も、みなし配当の判断材料となります。
3.6 自己株式の取得との関係
会社が自己株式を取得する際に、特定の株主から高値で買い取る場合、その高値で購入した部分がみなし配当とみなされることがあります。これは、特定の株主に不当に利益を供与していると判断されるためです。自己株式の取得価格も適正な範囲内である必要があります。
3.7 みなし配当と認定されるケースのまとめ
以下に、みなし配当と認定されるケースをまとめた表を示します。
ケース | 説明 |
---|---|
低額譲渡 | 時価より低い価格での譲渡 |
特定株主への譲渡 | 特定の株主への有利な条件での譲渡 |
過去の配当状況 | 配当実績が少ない、または全くない会社での譲渡 |
会社業績向上と譲渡時期 | 業績向上直後の譲渡 |
株主優待との関係 | 高額な株主優待を有する会社での譲渡 |
自己株式の取得との関係 | 特定株主から高値で自己株式を取得 |
これらのケース以外にも、様々な要因を総合的に判断して、みなし配当が認定されるかどうかが決まります。非上場株式の譲渡を検討する際は、事前に税理士等の専門家に相談し、適切な対策を講じることを強くお勧めします。
4. みなし配当 課税を回避するための対策
非上場株式の譲渡において、みなし配当課税は大きな税務リスクとなります。この課税を回避するためには、事前の対策が重要です。主な対策は以下のとおりです。
4.1 適正な時価の算定
みなし配当は、譲渡価格が時価よりも低い場合に発生する可能性が高くなります。そのため、適正な時価を算定することが非常に重要です。時価の算定方法はいくつかありますが、代表的な方法として、類似会社比較法、DCF法、純資産価額法などが挙げられます。これらの方法を適切に使い分け、客観的な時価を算定することで、みなし配当課税のリスクを低減できます。
4.1.1 類似会社比較法
類似会社比較法は、上場している類似企業の株価や財務指標を参考に、対象会社の株価を算定する方法です。類似企業の選定や財務指標の調整が重要になります。
4.1.2 DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)
DCF法は、将来のキャッシュ・フローを現在価値に割り引いて、企業価値を算定する方法です。将来のキャッシュ・フローの予測が重要になります。
4.1.3 純資産価額法
純資産価額法は、会社の純資産(資産から負債を差し引いた金額)を基に株価を算定する方法です。非上場企業の場合、資産の評価方法が重要になります。
これらの算定方法に加え、第三者機関による株価算定を依頼することも有効な手段です。客観的な評価を得ることで、税務調査においても有利な根拠となります。
【関連】PBR(株価純資産倍率)とは?PERの違いを徹底比較!M&Aで失敗しないための企業価値評価の注意点4.2 配当政策の検討
過去の配当実績や、今後の配当計画も時価に影響を与える可能性があります。適切な配当政策を策定し、実行することで、時価を適切に維持・向上させ、みなし配当課税のリスクを軽減できます。具体的には、安定的な配当実績を積み重ねることが重要です。また、配当原資が十分にあるかどうかも重要な検討事項です。
4.3 税理士への相談
非上場株式の譲渡は、複雑な税務処理を伴います。税理士に相談することで、みなし配当課税のリスクを事前に把握し、適切な対策を講じることができます。譲渡価格の妥当性、時価の算定方法、配当政策、必要な書類の準備など、専門家のアドバイスを受けることで、税務リスクを最小限に抑えることができます。また、税務調査への対応についてもサポートを受けることができます。
対策 | 内容 | メリット |
---|---|---|
適正な時価の算定 | 類似会社比較法、DCF法、純資産価額法などを用いて、客観的な時価を算定する。第三者機関の評価も有効。 | 譲渡価格の妥当性を証明し、みなし配当課税のリスクを低減。 |
配当政策の検討 | 安定的な配当実績を積み重ね、配当原資を確保する。 | 時価の維持・向上に繋がり、みなし配当課税のリスクを軽減。 |
税理士への相談 | 譲渡価格、時価算定、配当政策、必要書類などについて専門家のアドバイスを受ける。 | 税務リスクの把握と適切な対策、税務調査への対応が可能。 |
これらの対策を総合的に行うことで、非上場株式の譲渡におけるみなし配当課税のリスクを効果的に回避できます。特に、税務の専門家である税理士への相談は、早期の段階で行うことが重要です。専門家の知見を活用し、適切な対策を講じることで、スムーズな株式譲渡を実現できるでしょう。
5. 非上場株式譲渡に関するその他の税務上の注意点
非上場株式の譲渡は、みなし配当以外にも様々な税務上の注意点があります。譲渡所得だけでなく、贈与税や相続税についても考慮する必要があります。これらの税務リスクを理解し、適切な対策を講じることで、将来的なトラブルを未然に防ぐことが可能です。
5.1 贈与税
非上場株式を時価よりも低い価格で譲渡した場合、その差額は贈与とみなされ、贈与税の課税対象となる可能性があります。特に親族間での譲渡は注意が必要です。贈与税は受贈者の負担となりますが、譲渡価格が低すぎる場合には、譲渡者に贈与税が課税されることもあります。
5.1.1 贈与税の計算方法
贈与税は、暦年課税と相続時精算課税の2つの制度があります。暦年課税は毎年1月1日から12月31日までの贈与を対象とし、基礎控除額(年間110万円)を超える部分に課税されます。相続時精算課税は、20歳以上の推定相続人に対する贈与を対象とし、贈与時に一度だけ課税され、将来の相続時に加算されます。非上場株式の贈与については、どちらの制度を選択するべきか、個々の状況に応じて慎重に検討する必要があります。
5.1.2 贈与税の注意点
非上場株式の評価額は、株式の性質、規模、事業の内容、財産の状況など様々な要素を考慮して算定されます。評価方法によっては、時価よりも高くなる場合もあります。そのため、贈与前に税理士に相談し、適切な評価額を算定することが重要です。
5.2 相続税
非上場株式を保有したまま死亡した場合、その株式は相続財産となり、相続税の課税対象となります。相続税は、相続開始時の時価で評価されます。
5.2.1 相続税の計算方法
相続税は、相続財産の総額から基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いた金額に課税されます。非上場株式の評価額は、贈与税と同様に、様々な要素を考慮して算定されます。
5.2.2 相続税の注意点
非上場株式を相続した場合、相続税の納税資金を確保するために、株式を売却しなければならない場合があります。しかし、非上場株式は換金性が低いため、売却が困難な場合もあります。そのため、生前に事業承継対策を検討しておくことが重要です。
5.2.3 納税猶予制度
制度名 | 概要 | 要件 |
---|---|---|
事業承継円滑化法による納税猶予 | 一定の要件を満たす非上場株式の相続税の納税を猶予する制度 | 後継者が事業を承継すること等 |
物納 | 相続税を現金ではなく、相続財産で納付する制度 | 物納が認められる財産であること等 |
上記のように、事業承継を円滑に進めるための納税猶予制度や、物納制度なども存在します。これらの制度を活用することで、相続税の負担を軽減できる可能性があります。ただし、それぞれの制度には適用要件があるため、事前に詳細を確認しておく必要があります。
5.3 税理士への相談
非上場株式の譲渡、贈与、相続は、複雑な税務上の問題が絡むため、税理士に相談することを強くお勧めします。税理士は、個々の状況に応じて適切なアドバイスを提供し、税務リスクを最小限に抑えるための対策を提案してくれます。
6. まとめ
非上場株式の譲渡は、みなし配当という税務リスクを伴う可能性があります。譲渡価格が時価よりも低い場合、差額が配当とみなされ、所得税に加えて配当所得にかかる税金が課される可能性があります。これは、譲渡所得と配当所得で税率が異なるため、想定外の税負担につながる可能性があります。また、税務調査の対象となる可能性も高いため、注意が必要です。
みなし配当課税を回避するためには、適正な時価の算定が重要です。株式評価の専門家である税理士に相談し、第三者機関による評価などを活用することで、客観的な時価を把握しましょう。また、会社の配当政策も影響するため、事前に検討しておくことが重要です。
みなし配当以外にも、贈与税や相続税など、非上場株式の譲渡には様々な税務上の注意点があります。専門家への相談を適切に行うことで、不要な税務リスクを回避し、スムーズな株式譲渡を実現することができるでしょう。