事業売却の期間を短縮する方法|M&Aのプロが教える準備と流れ

事業売却の期間を短縮する方法|M&Aのプロが教える準備と流れ

事業売却を検討している経営者の方にとって、売却期間は大きな関心事です。売却期間が長引けば、それだけ経営資源が拘束され、機会損失にも繋がります。この記事では、事業売却にかかる期間の目安と、その期間を左右する要因、そして何よりも重要な期間短縮のための具体的な方法を、M&Aのプロの視点から解説します。

事業規模や売却方法による期間の違い、財務状況の整理や事業計画の策定といった準備、そして譲渡先選定から最終契約までの各ステップにおける期間短縮のポイントを理解することで、スムーズかつスピーディーな事業売却を実現するための道筋が見えてきます。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建などを10年経験。3か月の経営支援サポートで、9か月後には赤字の会社を1億円の利益を計上させるなどの実績を多数持つ専門家。



1. 事業売却にかかる期間

事業売却にかかる期間は、事業規模、売却方法、会社の財務状況、事業の魅力、買い手側の状況、売却側の準備など、様々な要因によって大きく変動します。一般的には、数ヶ月から1年以上かかるケースが多いです。短ければ3ヶ月程度で完了することもありますが、複雑な取引や大規模な事業売却の場合は、2年以上かかる場合もあります。早期の売却を目指すためには、事前の綿密な準備が不可欠です。


1.1 事業規模による期間の違い

事業規模が大きくなるほど、デューデリジェンスや契約交渉に時間を要するため、売却期間は長くなる傾向にあります。また、ステークホルダーの数も増えるため、調整に時間を要するケースも多くなります。

1.1.1 中小企業の事業売却期間

中小企業の事業売却は、比較的小規模な取引となるため、大企業に比べて売却期間は短くなる傾向にあります。一般的には、6ヶ月から1年程度で完了するケースが多いです。ただし、財務状況が複雑であったり、特殊な事業内容であったりする場合は、1年以上かかる場合もあります。後継者不在や業績悪化など、売却を急ぐ理由がある場合は、期間が短縮されることもあります。

1.1.2 大企業の事業売却期間

大企業の事業売却は、複雑な取引となることが多く、デューデリジェンスや契約交渉に時間を要するため、売却期間は長くなる傾向にあります。

一般的には、1年から2年以上かかるケースが多いです。M&Aアドバイザーなどの専門家を活用することで、売却期間の短縮を図ることができます。また、事業の切り出しや再編など、事前の準備をしっかりと行うことで、売却プロセスをスムーズに進めることができます。


1.2 売却方法による期間の違い

売却方法は、事業売却期間に大きな影響を与えます。仲介会社を利用する場合は、専門家のサポートを受けられるため、売却期間を短縮できる可能性があります。一方で、譲渡先を自ら探す場合は、時間と労力がかかるため、売却期間が長くなる傾向にあります。

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1.2.1 仲介会社を通じた売却

M&Aアドバイザーのような仲介会社を通じた売却は、専門家のノウハウやネットワークを活用できるため、売却期間の短縮につながる可能性があります。買い手候補の探索、価格交渉、デューデリジェンス、契約締結まで、一貫したサポートを受けられます。

また、複数の買い手候補との交渉を同時に行うことで、競争原理を働かせ、より有利な条件で売却できる可能性も高まります。ただし、仲介手数料が発生するため、売却価格から差し引かれることを考慮する必要があります。

1.2.2 譲渡先を自ら探す場合

譲渡先を自ら探す場合は、仲介手数料は発生しませんが、時間と労力がかかるため、売却期間が長くなる傾向にあります。買い手候補の探索、価格交渉、デューデリジェンス、契約締結まで、すべて自力で行う必要があるため、専門的な知識や経験が求められます。また、情報漏洩のリスクや、交渉が難航する可能性も考慮する必要があります。信頼できる弁護士や会計士などの専門家と相談しながら進めることが重要です。

売却方法 メリット デメリット 期間
仲介会社を通じた売却 専門家のサポート、売却期間の短縮、有利な条件での売却 仲介手数料の発生 6ヶ月〜1年程度
譲渡先を自ら探す場合 仲介手数料不要 時間と労力の負担、専門知識が必要、情報漏洩リスク 1年以上

2. 事業売却期間を左右する要因

事業売却にかかる期間は、様々な要因によって大きく変動します。売却活動を始める前に、これらの要因を理解し、適切な対策を講じることで、売却期間の短縮を図ることが可能です。主な要因は以下の通りです。


2.1 会社の財務状況

会社の財務状況は、事業売却期間に大きな影響を与えます。健全な財務状況は、買い手にとって魅力的であり、デューデリジェンスのプロセスもスムーズに進みます。逆に、財務状況に問題がある場合は、買い手探しに時間がかかったり、評価額が低くなったり、最悪の場合、売却自体が難航する可能性があります。

2.1.1 財務指標の重要性

売上高、営業利益、経常利益、純利益といった主要な財務指標は、会社の収益性を示す重要な指標です。これらの指標が安定的に推移していることは、買い手にとって安心材料となります。また、自己資本比率や負債比率といった安全性に関する指標も、会社の財務健全性を判断する上で重要な要素となります。

2.1.2 過去の業績と将来の予測

過去の業績は、会社の安定性や成長性を示す指標となります。また、将来の事業計画や収益予測も、買い手にとって重要な判断材料となります。実現可能性の高い事業計画を提示することで、買い手の信頼を得ることが重要です。


2.2 事業の魅力

事業の魅力は、買い手にとっての投資価値を決定づける重要な要素です。市場の成長性、競争優位性、収益性、将来性など、様々な要素が事業の魅力を構成します。魅力的な事業は、買い手の関心を集めやすく、売却期間の短縮につながります。

2.2.1 市場の成長性

事業が属する市場の成長性は、将来的な収益拡大の可能性を示す重要な指標です。成長市場にある事業は、買い手にとって魅力的であり、高値で売却できる可能性が高まります。

2.2.2 競争優位性

他社にはない独自の技術やノウハウ、ブランド力、顧客基盤などは、競争優位性を築き、持続的な収益を確保するために重要です。強い競争優位性を持つ事業は、買い手にとって魅力的であり、売却期間の短縮につながります。

2.2.3 収益性と将来性

高い収益性と将来的な成長性は、買い手にとって重要な投資判断基準となります。安定した収益基盤と成長ポテンシャルを持つ事業は、高値で売却できる可能性が高まります。


2.3 買い手側の状況

買い手側の状況も、事業売却期間に影響を与えます。買い手の財務状況、買収目的、意思決定プロセスなどは、交渉期間や最終的な合意に影響を及ぼす可能性があります。

2.3.1 買い手の財務状況

買い手の財務状況が良好であれば、迅速な買収手続きが可能となります。逆に、資金調達に時間がかかる場合、売却期間が長引く可能性があります。

2.3.2 買収目的

買い手の買収目的によっても、事業売却期間は変動します。シナジー効果を重視する買い手は、デューデリジェンスを綿密に行う傾向があり、売却期間が長くなる可能性があります。一方、事業の早期拡大を目指す買い手は、迅速な買収を希望する傾向があります。

2.3.3 意思決定プロセス

買い手の社内における意思決定プロセスも、売却期間に影響を与えます。意思決定に時間がかかる組織の場合、売却期間が長引く可能性があります。

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2.4 売却側の準備

売却側の準備も、事業売却期間を左右する重要な要因です。必要な書類の準備、財務状況の整理、事業計画の策定など、事前の準備が整っていれば、売却プロセスをスムーズに進めることができます。

2.4.1 財務デューデリジェンスの準備

財務デューデリジェンスでスムーズに情報開示ができるように、必要な財務情報を整理しておきましょう。過去の財務諸表、税務申告書、契約書などを事前に準備しておくことで、デューデリジェンス期間を短縮することができます。

2.4.2 法務デューデリジェンスの準備

法務デューデリジェンスで問題が発生しないように、法務関連の書類を整理しておきましょう。定款、登記簿謄本、契約書、許認可証などを事前に準備しておくことが重要です。

2.4.3 事業デューデリジェンスの準備

事業デューデリジェンスで事業の魅力を効果的にアピールするために、事業計画書、市場調査資料、競合分析資料などを準備しておきましょう。将来の成長性や競争優位性を明確に示すことで、買い手の投資意欲を高めることができます。

要因 期間短縮のための対策
会社の財務状況 財務諸表の整備、債務整理、収益性の改善
事業の魅力 競争優位性の強化、市場シェアの拡大、成長戦略の明確化
買い手側の状況 適切なターゲティング、迅速な対応、柔軟な交渉
売却側の準備 必要な書類の準備、財務状況の整理、事業計画の策定
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3. 事業売却の期間を短縮するための準備

事業売却をスムーズに進め、期間を短縮するためには、事前の準備が不可欠です。売却活動が本格化する前に、以下の3つのポイントに重点を置いて準備を進めましょう。


3.1 財務状況の整理

買い手は、ターゲット企業の財務状況を詳細に調べます。財務状況が健全であることは、事業売却を成功させるための重要な要素です。透明性が高く、信頼できる財務情報を提供することで、買い手の安心感を高め、デューデリジェンスのプロセスを円滑に進めることができます。

3.1.1 正確な決算書のpreparation

過去3期分の決算書を、税理士や公認会計士の確認を受けた上で作成・整理しましょう。監査済みの決算書があれば、さらに信頼性を高めることができます。必要に応じて、月次決算書や試算表なども準備しておきましょう。これらの書類は、会社の業績を正確に反映している必要があります。不明瞭な点や疑問点があれば、事前に専門家に相談し、解消しておくことが重要です。

3.1.2 過去の不正取引の解消

過去の不正取引やコンプライアンス違反が発覚した場合、事業売却に大きな支障をきたす可能性があります。事前にこれらの問題を洗い出し、適切な対応策を講じておくことが重要です。弁護士やコンサルタントなどの専門家の協力を得ながら、問題解決に向けて取り組むことが推奨されます。


3.2 事業計画の策定

将来の成長性を見せる明確な事業計画は、買い手にとって重要な判断材料となります。実現可能な目標を設定し、具体的な戦略を示すことで、事業の将来性と収益性をアピールしましょう。

3.2.1 将来の成長性のアピール

市場の成長性や競争優位性、将来の収益予測などを明確に示すことで、買い手の投資意欲を高めることができます。市場調査データや競合分析などを活用し、客観的な根拠に基づいた事業計画を策定しましょう。また、新規事業展開やM&Aなど、将来的な成長戦略についても具体的に説明することが重要です。

3.2.2 実現可能な目標設定

目標は具体的かつ数値化し、実現可能性が高い範囲で設定することが重要です。売上高、利益率、市場シェアなどの主要な業績指標について、具体的な目標値を設定し、その達成に向けた戦略を明確に示しましょう。過度に楽観的な目標設定は、買い手の信頼を失う可能性があります。


3.3 必要な書類の準備

事業売却には、多岐にわたる書類が必要となります。事前に必要な書類をリストアップし、漏れなく準備することで、売却プロセスをスムーズに進めることができます。

3.3.1 定款、登記簿謄本など

会社の基本的な情報が記載されている定款や登記簿謄本は、必ず準備しておきましょう。これらの書類は、会社の法的状態を確認するために必要です。最新の情報に更新されていることを確認し、必要に応じて原本も用意しておきましょう。

3.3.2 事業計画書、財務諸表など

事業計画書や財務諸表は、買い手が事業価値を評価する上で重要な資料となります。正確で分かりやすい資料を作成することで、買い手の理解を深め、スムーズな交渉につなげることができます。

書類の種類 内容 備考
定款 会社の目的、事業内容、組織に関する基本的なルール 最新版を用意
登記簿謄本 会社の登記情報(商号、本店所在地、資本金など) 発行日から3ヶ月以内のもの
株主名簿 株主の氏名、住所、保有株式数 最新版を用意
事業計画書 事業の概要、市場分析、競合分析、将来の成長戦略 具体的な数値データに基づいて作成
財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書) 会社の財務状況 過去3期分を用意
税務申告書 法人税、消費税などの納税状況 過去3期分を用意

これらの準備をしっかりと行うことで、事業売却をスムーズに進め、期間を短縮することができます。また、専門家であるM&Aアドバイザーや弁護士、税理士などの協力を得ることで、より効率的に準備を進めることができます。早めの準備と専門家との連携が、事業売却の成功への鍵となります。


4. 事業売却の流れと各ステップの期間短縮方法

事業売却は、複数のステップを経て完了します。各ステップにおける期間短縮のポイントを理解し、スムーズな売却を実現しましょう。


4.1 譲渡先の選定

譲渡先選定は、事業売却の成否を大きく左右する重要なステップです。適切な譲渡先を選定することで、売却期間の短縮だけでなく、より有利な条件での売却も期待できます。

4.1.1 適切なターゲティング

時間と労力を無駄にしないためには、自社事業とのシナジー効果が見込める企業や、事業拡大意欲のある企業など、適切なターゲットを絞り込むことが重要です。業界動向や競合他社のM&A事例などを参考に、潜在的な買い手候補をリストアップしましょう。M&Aアドバイザーを活用することで、より精度の高いターゲティングが可能です。

4.1.2 迅速な対応

買い手候補からの問い合わせには迅速に対応しましょう。レスポンスの遅れは、買い手側の熱意を冷ましてしまう可能性があります。あらかじめ想定される質問への回答を準備しておく、専任の担当者を置くなど、迅速な対応体制を整えておくことが重要です。

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4.2 基本合意

基本合意とは、売却価格や主要な取引条件などについて、売主と買主の間で合意を形成するステップです。この段階での交渉をスムーズに進めることが、売却期間全体の短縮に繋がります。

4.2.1 条件交渉のポイント

売却価格だけでなく、従業員の雇用維持、事業の継続性など、自社にとって重要な条件を明確にして交渉に臨みましょう。譲れない条件と妥協できる条件を事前に整理しておくことが重要です。また、法務や税務の専門家と連携し、不利な条件を避けるようにしましょう。

4.2.2 迅速な意思決定

交渉が長引くと、買い手側のモチベーションが低下する可能性があります。迅速な意思決定を心がけ、交渉を効率的に進めましょう。社内での意思決定プロセスを明確化しておく、必要な情報を事前に共有しておくなど、迅速な意思決定のための体制を整備することが重要です。


4.3 デューデリジェンス(DD)

デューデリジェンスとは、買い手側が、買収対象企業の財務状況、法務状況、事業状況などを詳細に調査するプロセスです。このステップでスムーズに情報開示を行うことが、売却期間の短縮に不可欠です。

4.3.1 スムーズな情報開示

買い手側が求める情報を迅速かつ正確に提供することで、デューデリジェンス期間を短縮できます。事前に想定される質問リストを作成し、必要な資料を整理しておきましょう。データルームを設けるなど、効率的な情報提供手段を検討することも有効です。

4.3.2 専門家との連携

弁護士、会計士、税理士などの専門家と連携し、デューデリジェンスをスムーズに進めましょう。専門家は、法務、財務、税務などの専門的な視点から、潜在的なリスクを洗い出し、適切なアドバイスを提供してくれます。また、専門家の関与は、買い手側からの信頼感向上にも繋がります。

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4.4 最終契約

デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な契約条件を確定し、契約を締結します。このステップでも、迅速かつ正確な対応が求められます。

4.4.1 契約内容の綿密な確認

契約書の内容は、専門家と共に綿密に確認し、不明点や疑問点があれば必ず解消しましょう。契約締結後にトラブルが発生することを防ぐためにも、重要なステップです。

4.4.2 迅速な締結

最終契約の締結は、売却プロセスの最終段階です。迅速な締結により、売却期間全体を短縮することができます。関係者間の調整をスムーズに行い、締結までのスケジュールを明確にしておくことが重要です。

ステップ 期間短縮のポイント
譲渡先の選定 適切なターゲティング、迅速な対応
基本合意 条件交渉のポイント、迅速な意思決定
デューデリジェンス スムーズな情報開示、専門家との連携
最終契約 契約内容の綿密な確認、迅速な締結

5. まとめ

事業売却の期間は、事業規模や売却方法、会社の財務状況、事業の魅力、買い手側の状況、そして何よりも売却側の準備によって大きく左右されます。準備が不足していると、売却期間が長期化し、その間に市場環境が悪化したり、買い手候補が離脱するリスクが高まります。

この記事では、事業売却期間を短縮するためのポイントとして、財務状況の整理、事業計画の策定、必要書類の準備を挙げました。これらの準備をしっかりと行うことで、デューデリジェンスや契約交渉もスムーズに進み、売却期間の短縮に繋がります。早期の売却を実現するためには、事前の綿密な準備と専門家との連携が不可欠です。

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