会社売却前の経営再建で得られる3つのメリット|高値売却の秘訣

会社売却前の経営再建で得られる3つのメリット|高値売却の秘訣

会社売却を検討している経営者の方にとって、高値で売却を実現することは大きな目標です。しかし、業績不振や財務状況の悪化など、会社の現状によっては思うような価格で売却できない可能性があります。そこで重要となるのが、売却前の経営再建です。

この記事では、会社売却前に経営再建を行うことで得られる3つのメリット、売却価格の向上、売却交渉の優位性確保、スムーズな売却プロセスについて解説します。さらに、高値売却を実現するためのポイントとして、専門家への相談、早期の着手、実態に即した計画の重要性についても詳しく説明します。

この記事を読むことで、会社売却前の経営再建の必要性と、具体的な進め方、そして高値売却を実現するための戦略を理解することができます。適切な経営再建によって、会社の価値を高め、より有利な条件で売却を実現しましょう。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。



1. 会社売却前の経営再建とは

会社売却を成功させ、最大限の価値を引き出すためには、売却前の経営再建が重要な役割を果たします。経営再建とは、会社の財務状況、事業構造、組織体制などを改善し、企業価値を高めるための取り組みです。売却前に適切な経営再建を行うことで、買い手企業にとって魅力的な投資対象となり、高値売却やスムーズな売却プロセスを実現できる可能性が高まります。単に赤字企業の黒字化を目指すだけでなく、将来的な成長性や収益性を高めることで、企業の持続的な発展にも繋がります。


1.1 経営再建の目的

会社売却前の経営再建の目的は、大きく分けて以下の3つに集約されます。

売却価格の向上財務状況や事業の収益性を改善することで、企業価値を高め、より高い価格での売却を実現します。
売却交渉の優位性確保健全な財務状況や明確な事業計画は、買い手企業との交渉力を高め、有利な条件での売却を可能にします。
スムーズな売却プロセスの実現デューデリジェンスや事業引継ぎをスムーズに進めることで、売却プロセス全体の効率化とリスク軽減に繋がります。

1.2 経営再建の手法

経営再建の手法は、企業の現状や課題によって異なりますが、一般的には以下の3つの側面からのアプローチが重要です。

1.2.1 財務状況の改善

財務状況の改善は、経営再建の基盤となる重要な要素です。具体的には、以下の手法が挙げられます。

不良資産の売却保有資産の見直しを行い、収益性に乏しい資産や遊休資産を売却することで、財務体質の改善を図ります。例えば、使用していない土地や建物の売却、売掛金の回収などが挙げられます。
コスト削減固定費や変動費の削減に取り組み、収益性を向上させます。例えば、不要な経費の削減、在庫管理の効率化、人件費の最適化などが挙げられます。
資金調達事業に必要な資金を調達し、財務基盤を強化します。銀行融資、ベンチャーキャピタルからの出資、クラウドファンディングなどが資金調達の手段として考えられます。
債務整理過剰な負債を整理し、財務負担を軽減します。リスケジュール、債務放棄、デット・エクイティ・スワップなどが債務整理の手法として挙げられます。
1.2.2 事業構造の改革

事業構造の改革は、企業の収益性や成長性を高めるための重要な取り組みです。具体的には、以下の手法が挙げられます。

事業の選択と集中収益性の高い事業に資源を集中投下し、競争力を強化します。一方で、収益性の低い事業や将来性のない事業からは撤退することも重要です。
新規事業の開発新たな市場や顧客ニーズに対応した新規事業を開発し、将来的な成長性を確保します。市場調査、顧客分析、技術開発などが新規事業開発において重要となります。
業務プロセスの改善業務プロセスを見直し、効率化や自動化を推進することで、生産性向上とコスト削減を図ります。業務フローの分析、ITシステムの導入、アウトソーシングなどが有効な手段となります。
M&A(合併・買収)他社との合併や買収を通じて、事業規模の拡大やシナジー効果の創出を目指します。デューデリジェンス、PMI(Post Merger Integration)などがM&Aにおいて重要なプロセスとなります。
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1.2.3 組織体制の強化

組織体制の強化は、経営再建を推進し、持続的な成長を実現するための重要な要素です。

人材育成従業員のスキルアップや能力開発を促進し、組織全体の競争力を高めます。研修制度の導入、資格取得支援、キャリアパス設計などが人材育成において重要となります。
人事制度改革成果主義の導入や評価制度の見直しなど、従業員のモチベーション向上やパフォーマンス向上に繋がる人事制度を構築します。
組織構造改革事業戦略に合わせた最適な組織構造を構築し、意思決定の迅速化や業務効率の向上を図ります。例えば、事業部制の導入、フラット型組織への移行などが挙げられます。
コーポレートガバナンスの強化コンプライアンス体制の整備や内部統制システムの構築など、企業の透明性や信頼性を高めるための取り組みを行います。内部監査の実施、リスク管理体制の構築などが重要となります。

これらの手法を効果的に組み合わせ、企業の現状に合わせた最適な経営再建計画を策定することが重要です。また、計画の実行にあたっては、外部の専門家を活用することも有効な手段となります。


2. 会社売却前 経営再建のメリット1 -売却価格の向上

会社売却を検討する際、経営再建を実施することで売却価格を向上させることができる大きなメリットがあります。適切な経営再建は、企業価値を適正に評価させ、買い手側の安心感を高める効果をもたらします。


2.1 適正価格での評価

経営再建によって財務状況が改善され、収益性が向上すると、企業価値が上昇し、売却価格も高くなります。赤字経営や債務超過の状態では、買い手は低い価格での買収を提示する可能性が高くなります。しかし、経営再建によってこれらの問題が解消されれば、適正な価格での評価を受けやすくなります。

例えば、不採算事業の整理やコスト削減によって収益性が改善されれば、将来のキャッシュフローへの期待値が高まり、企業価値が向上します。また、財務体質の強化によって、企業の安定性と成長性が高まり、買い手にとっての魅力が増すため、より高い価格での売却が期待できます。

具体的には、以下の指標が改善することで、企業価値の向上に繋がります。

指標 改善による効果
売上高 事業の成長性を示し、将来の収益増加への期待を高めます。
営業利益 本業の収益性を示し、企業の競争力をアピールできます。
経常利益 企業の持続的な収益力を示し、安定性をアピールできます。
純利益 最終的な収益性を示し、株主への配当原資となります。
ROA(総資産利益率) 資産の効率的な運用を示し、経営効率の高さをアピールできます。
ROE(自己資本利益率) 自己資本の効率的な運用を示し、株主への還元力をアピールできます。
自己資本比率 財務の健全性を示し、企業の安定性をアピールできます。
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2.2 買い手側の安心感

経営再建は、買い手側の安心感を高める効果もあります。デューデリジェンスの過程で、財務状況や事業内容の透明性が高く、リスクが少ないと判断されれば、買い手は安心して買収に踏み切ることができます。逆に、経営状況に問題があると、買い手は買収後に追加投資が必要になる可能性や、事業継続に不安を感じ、買収価格を低く抑えようとしたり、買収自体を断念する可能性もあります。経営再建によって、これらのリスクを軽減し、買い手にとっての魅力的な投資対象となることで、売却価格の向上に繋がります。

例えば、内部統制システムの構築やコンプライアンス体制の強化は、企業のガバナンスの向上を示し、買い手にとっての安心材料となります。また、事業計画の明確化や将来展望の提示は、企業の成長性への期待を高め、買収後のシナジー効果を期待させることができます。これらの要素が、買い手の安心感に繋がり、結果として売却価格の向上に貢献します。


3. 会社売却前 経営再建のメリット2- 売却交渉の優位性確保

会社売却において、交渉を有利に進めることは、高値売却を実現する上で非常に重要です。経営再建によって企業価値が向上すると、売却交渉における優位性を確保できる可能性が高まります。具体的には、交渉力の向上と有利な条件での売却が期待できます。


3.1 交渉力の向上

経営再建によって財務状況や事業の収益性が改善されると、買い手企業からの評価が高まり、売却価格の交渉において有利な立場に立つことができます。健全な財務状況は、企業の将来性や安定性を示す重要な指標となるため、買い手は安心して投資できるという安心感を得られます。その結果、売却価格の引き上げ交渉がしやすくなり、希望額に近い価格での売却を実現できる可能性が高まります。

また、事業構造改革や組織体制の強化によって、企業の競争力や成長性が向上した場合も、交渉力を高める上でプラスに働きます。市場における優位性や将来的な収益拡大の可能性を示すことで、買い手はより高い価格を提示するインセンティブを持つようになります。さらに、複数の買い手候補が現れた場合、競争原理が働き、より有利な条件で売却できる可能性も高まります。

3.1.1 財務基盤の強化がもたらす交渉力

財務基盤の強化は、売却交渉において強力な武器となります。例えば、自己資本比率の向上や有利子負債の削減は、企業の財務健全性を示す指標として、買い手からの信頼獲得に繋がります。また、安定したキャッシュフローを生み出す事業構造は、将来的な収益性を担保するものとして、買い手の投資意欲を高めます。これらの要素が揃うことで、売却価格の交渉における主導権を握りやすくなります。


3.2 有利な条件での売却

経営再建によって企業価値が向上すると、売却価格だけでなく、その他の条件についても有利な交渉を進めることができます。例えば、従業員の雇用維持や事業継続性など、売却後の経営に関する条件についても、買い手企業とより対等な立場で交渉を進めることが可能になります。また、売却後の経営への関与や株式の一部保有など、売却後のシナリオについても、自社の希望を反映させやすくなります。

3.2.1 有利な条件の具体例
条件 経営再建の効果
売却価格 適正価格、場合によってはプレミアム価格での売却
支払条件 一括払い、分割払いなど、柔軟な条件交渉
従業員の雇用維持 雇用維持の確約、一定期間の雇用保証
事業継続性 既存事業の継続、新規事業への投資
売却後の経営への関与 アドバイザーとしての参加、取締役会への参画

このように、経営再建は、売却交渉における優位性を高め、有利な条件での売却を実現するための重要なステップとなります。売却を検討している企業は、早期に経営再建に着手し、企業価値の向上に努めることが重要です。具体的には、M&Aアドバイザーや会計士、税理士などの専門家のアドバイスを受けながら、実態に即した再建計画を策定し、実行していくことが不可欠です。

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4. 会社売却前 経営再建のメリット3 スムーズな売却プロセス

会社売却において、スムーズな売却プロセスは時間とコストの節約に直結し、売却活動全体の成功を大きく左右します。経営再建によって、このスムーズな売却プロセスを実現できる点が大きなメリットとなります。


4.1 デューデリジェンスへの対応

デューデリジェンスは、買収希望企業が売却対象企業の価値を詳細に評価するプロセスです。財務状況、法務状況、事業状況など多岐にわたる調査が行われます。事前の経営再建によって、これらの調査にスムーズに対応できる体制が整い、売却プロセスを円滑に進めることができます。

具体的には、以下の点がスムーズなデューデリジェンスにつながります。

経営再建による効果 デューデリジェンスへの影響
正確な財務情報の整備 迅速かつ正確な情報提供が可能になり、買収希望企業の信頼獲得につながる
不必要な資産の売却・負債の圧縮 財務状況の透明性が高まり、評価額の低下リスクを軽減
コンプライアンス体制の強化 法務リスクの低減をアピールし、買収希望企業の安心感につながる
事業計画の明確化 将来の収益性に対する信頼感を高め、売却価格への好影響

経営再建が不十分な場合、デューデリジェンスで問題点が発覚し、売却価格の減額や最悪の場合、売却自体が破談になる可能性もあります。事前に経営再建に取り組むことで、このようなリスクを回避し、スムーズな売却プロセスを実現できます。

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4.2 事業引継ぎの効率化

事業引継ぎは、売却後の事業の継続性を確保するために非常に重要なプロセスです。経営再建によって、事業の標準化やドキュメント化が進み、円滑な事業引継ぎを実現できます。結果として、買収後の統合プロセス(PMI)をスムーズに進めることが可能となり、買収希望企業にとって大きなメリットとなります。

具体的には、以下の点が効率的な事業引継ぎにつながります。

経営再建による効果 事業引継ぎへの影響
業務プロセスの標準化・文書化 買収希望企業が事業内容を理解しやすくなり、引継ぎ期間の短縮に繋がる
組織体制の明確化 担当者・責任範囲が明確になり、スムーズな引継ぎが可能となる
システムの刷新・効率化 システムに関する情報の提供がスムーズになり、統合プロセスを加速
従業員の教育・研修 従業員のスキル向上により、売却後の事業継続性を高め、買収希望企業の評価向上

これらの準備が整っていることで、買収希望企業は安心して事業を引き継ぐことができ、売却プロセス全体がスムーズに進みます。また、事業の継続性が高まることで、従業員の雇用維持にも繋がり、社会的責任を果たすことにも繋がります。


5. 会社売却前の経営再建で高値売却を実現するためのポイント

会社売却を成功させ、高値売却を実現するためには、事前の経営再建が不可欠です。売却活動が本格化する前に、以下のポイントを踏まえて、綿密な準備を行いましょう。


5.1 専門家への相談

経営再建や会社売却は専門性の高い分野です。経験豊富な専門家に相談することで、売却プロセスをスムーズに進め、高値売却の可能性を高めることができます。特に、以下の専門家の活用が効果的です。

5.1.1 M&Aアドバイザーの活用

M&Aアドバイザーは、売却戦略の立案、買い手候補の探索、交渉、デューデリジェンス対応、クロージングまで、売却プロセス全体をサポートします。市場の動向や適切な売却価格の算定、潜在的なリスクの洗い出しなど、専門的な知識と経験に基づいたアドバイスを受けることで、売却を成功に導くことができます。

5.1.2 会計士・税理士の活用

会計士・税理士は、財務デューデリジェンスへの対応や、税務リスクの軽減、最適な売却スキームの構築など、財務・税務面から売却をサポートします。正確な財務情報の提供や税務上の問題点の解決は、買い手側の信頼獲得に繋がり、高値売却に貢献します。


5.2 早期の着手

経営再建には時間を要します。売却を検討し始めたら、できるだけ早く着手することが重要です。早期に着手することで、財務状況や事業構造の改善に十分な時間を確保でき、余裕を持った売却活動が可能になります。また、予期せぬ問題が発生した場合でも、対応する時間を確保できるため、売却プロセスへの影響を最小限に抑えることができます。少なくとも売却希望時期の1年以上前から準備を始めると良いでしょう。


5.3 実態に即した計画

経営再建計画は、現状の実態を正確に把握した上で策定する必要があります。過度に楽観的な計画や、実現不可能な計画は、売却プロセスにおいて買い手側の不信感を招き、売却価格の低下や交渉の決裂に繋がる可能性があります。財務状況、事業の収益性、市場環境などを客観的に分析し、実現可能な計画を立てることが重要です。

具体的には、SWOT分析などを活用し、自社の強み・弱み・機会・脅威を分析することで、実態に即した計画を策定することができます。また、策定した計画は定期的に見直し、必要に応じて修正していく柔軟性も必要です。計画の実行状況をモニタリングし、進捗状況に合わせて軌道修正を行うことで、計画の精度を高め、高値売却を実現する可能性を高めることができます。

ポイント 詳細 効果
専門家への相談 M&Aアドバイザー、会計士、税理士など、専門家の知見を活用 売却戦略の最適化、リスク管理、交渉力強化
早期の着手 売却決定後、速やかに経営再建に着手 財務改善、事業構造改革、組織体制強化に十分な時間を確保
実態に即した計画 現状分析に基づき、実現可能な計画を策定 買い手側の信頼獲得、売却価格の向上

6. まとめ

会社売却を成功させるためには、事前の経営再建が非常に重要です。この記事では、会社売却前の経営再建によって得られる3つのメリット、すなわち「売却価格の向上」「売却交渉の優位性確保」「スムーズな売却プロセス」について解説しました。

経営再建によって財務状況や事業構造が改善されれば、企業価値が向上し、買い手にとって魅力的な投資対象となります。結果として、売却価格の向上や有利な条件での売却につながるのです。

また、デューデリジェンスや事業引継ぎといった売却プロセスもスムーズに進めることができます。綿密な準備と適切な対応によって、売却プロセスにおける時間やコストを削減し、早期の売却を実現できるでしょう。高値売却を実現するためには、M&Aアドバイザーや会計士・税理士などの専門家への相談、早期の着手、実態に即した計画の策定が不可欠です。

これらのポイントを押さえ、適切な経営再建を行うことで、会社売却を成功に導くことができるでしょう。売却を検討している経営者は、ぜひ本記事を参考に、早期の経営再建に着手することをおすすめします。

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