PMI(Post Merger Integration)業務に役立つ実践ツールとは?【後編】

PMI(Post Merger Integration)業務に役立つ実践ツールとは?【後編】

この記事は、【前編】【前編】に分かれて掲載している、「PMI(Post Merger Integration)業務に役立つ実践ツールとは?【後編】」となります。

PMIを効率的に進めるためのツールやその評価を掲載しています。PMIを自社で実施する企業の方は、こちらの【後編】だけではなく、【前編】からご覧いただくことで、より全体像をつかみやすくなるかもしれません。

また、前編には一般的なツールではなく、PMIの専門家の独自ツールについても説明しています。是非、そちらの記事もご確認ください。

【※注意事項】この記事で紹介している各種サービスの内容は、この記事を作成日の段階での情報となります。変更される場合もありますので、各サービスサイトにてご確認ください。

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PMI(Post Merger Integration)業務に役立つ実践ツールとは?【前編】
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1. 組織文化統合に役立つツール M&A後、異なる企業文化を持つ組織が1つになるためには、共通の価値観や行動規範を築き、一体感を醸成していくことが重要です。
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組織文化統合を促進するためには、コミュニケーションを活性化し、相互理解を深めるための様々なツールを活用していくことが有効です。
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1.1 社内SNS 社内SNSは、従来の掲示板やメールに比べて、リアルタイムな情報共有を可能にするツールです。社員同士のコミュニケーションを活性化し、部署や役職を超えた横断的なつながりを生み出す効果も期待できます。

また、経営層からのメッセージ発信や、社員からの意見・提案を収集する場としても活用できます。

メリットデメリット
  • 情報共有のスピードアップ
  • コミュニケーションの活性化
  • 組織全体の透明性向上
  • 炎上対策などのリスク管理が必要
  • 情報過多になる可能性

主な社内SNSツール
ChatworkChatworkは、国内で開発されたビジネスチャットツールです。シンプルなインターフェースで使いやすく、メッセージの既読確認やタスク管理などの機能も充実しています。社内SNSとしての機能も備えており、グループチャットやファイル共有などが可能です。
Workplace from MetaMeta Workplace は、Facebookのインターフェースをベースにした社内SNSです。Facebookの使い慣れた操作感で利用できるため、導入しやすいというメリットがあります。グループ機能、イベント機能、ライブ配信機能など、社内コミュニケーションを活性化する様々な機能が備わっています。
Microsoft TeamsMicrosoft Teams は、チャット、ビデオ会議、ファイル共有などを統合したコミュニケーションプラットフォームです。社内SNSとしての機能も充実しており、チームやプロジェクト、テーマごとにチャンネルを作成し、情報共有やコミュニケーションを行うことができます。

1.2 eラーニングシステム eラーニングシステムは、インターネットを通じて時間や場所を問わずに学習できるシステムです。M&A後の組織文化統合においては、統合後の企業理念や行動規範、ビジョンなどを共有するための教育研修に活用できます。また、各組織の業務プロセスや専門知識を共有するための研修にも有効です。

メリットデメリット
  • 時間と場所を選ばずに学習可能
  • 学習進捗の把握が容易
  • コスト削減
  • 学習意欲の維持が難しい場合がある
  • システム導入・運用コスト

主なeラーニングシステム
SchooSchooは、株式会社Schooが提供する法人向けオンライン研修サービスです。8,500本以上のビジネススキルや教養に関する動画教材を視聴することができます。
Google ClassroomGoogle Classroom は、Googleが提供する無料のオンライン学習プラットフォームです。課題の作成・配布、採点、フィードバックなどの機能が備わっており、オンラインでの学習指導に役立ちます。
Moodle LMSMoodle LMSは、オープンソースのLMS(学習管理システム)です。世界中の教育機関や企業で広く利用されており、豊富な機能とカスタマイズ性の高さが特徴です。

2. 具体的なツール紹介
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PMI業務を円滑に進めるためには、適切なツールの活用が欠かせません。情報共有、タスク管理、コミュニケーションといった様々な側面をサポートするツールを導入することで、統合プロセスを効率化し、社員間の連携を強化することができます。
ここでは、PMIにおいて特に有用なツールをいくつかご紹介します。

2.1 Chatwork Chatworkは、ビジネスシーンで活用される国産のチャットツールです。シンプルながらも充実した機能を備えており、円滑なコミュニケーションを実現します。

Chatworkの特徴 シンプルなインターフェース 直感的に操作できるため、ITスキルに自信がない社員でもすぐに使いこなすことができます。

グループチャット機能 部門やプロジェクトごとにグループを作成し、複数人で情報共有や意見交換を行うことができます。統合プロセスにおける情報伝達のスピードアップに貢献します。

ファイル共有機能 資料や議事録などを簡単に共有できます。バージョン管理機能もあるため、最新版の管理も容易です。

Chatworkは、無料プランでも十分な機能を利用できますが、有料プランにアップグレードすることで、より多くの機能やストレージ容量を利用できるようになります。料金体系や機能の詳細については、Chatwork公式サイトをご覧ください。

2.2 Slack Slackは、世界中の企業で利用されているビジネスチャットツールです。多様な機能と外部サービスとの連携が強みです。

Slackの特徴 チャンネル機能 テーマやプロジェクトごとにチャンネルを作成し、情報を整理できます。関係者だけがアクセスできるプライベートチャンネルも作成可能です。

豊富な外部サービス連携 Google Calendar、Trello、Dropboxなど、多くの外部サービスと連携できます。業務効率化に大きく貢献します。

高度な検索機能 過去のメッセージやファイルを簡単に検索できます。必要な情報をすぐに見つけることが可能です。

Slackは、無料プランと有料プランがあります。無料プランでは、メッセージ数やファイル容量に制限がありますが、基本的な機能は利用できます。有料プランでは、より多くの機能やストレージ容量を利用できます。料金体系や機能の詳細については、Slack公式サイトをご覧ください。

2.3 Microsoft Teams Microsoft Teamsは、Microsoft 365に含まれるコミュニケーションツールです。チャット、ビデオ会議、ファイル共有など、多岐にわたる機能を統合的に利用できます。

Microsoft Teamsの特徴 多機能なコミュニケーション チャット、ビデオ会議、オンライン通話など、様々な方法でコミュニケーションを取ることができます。統合プロセスにおける円滑な情報共有を促進します。

Microsoft 365との連携 Word、Excel、PowerPointなどのMicrosoft 365アプリとシームレスに連携できます。統合後の業務プロセスを効率化できます。

高度なセキュリティ Microsoftの堅牢なセキュリティ対策により、安心して利用できます。機密性の高い情報も安全に共有できます。

Microsoft Teamsは、Microsoft 365のプランに含まれています。Microsoft 365の料金体系や機能の詳細については、Microsoft 365公式サイトをご覧ください。

2.4 Google Workspace Google Workspaceは、Googleが提供するクラウド型のグループウェアです。Gmail、Google ドライブ、Google Meetなど、様々なサービスを統合的に利用できます。

Google Workspaceの特徴 リアルタイム共同編集 ドキュメント・スプレッドシート・スライドなどを複数人で同時に編集できます。統合後の業務プロセスにおける共同作業を効率化します。

大容量ストレージ Google ドライブに大容量のファイルを保存できます。統合に伴う膨大なデータも安全に保管できます。

モバイル対応 スマートフォンやタブレットからも利用できます。場所を選ばずに業務を行うことができます。

Google Workspaceは、有料サービスです。料金プランは、ユーザー数やストレージ容量によって異なります。料金体系や機能の詳細については、Google Workspace公式サイトをご覧ください。

2.5 Backlog Backlogは、ヌーラボが提供するプロジェクト管理ツールです。タスク管理、Wiki、Gitなどを統合的に管理できます。

Backlogの特徴 ガントチャート プロジェクトの進捗状況を視覚化できます。統合プロセス全体の進捗管理に役立ちます。

課題管理 統合プロセスで発生する課題を管理できます。課題の進捗状況や担当者を一元管理できます。

バージョン管理 ファイルのバージョンを管理できます。誤操作によるデータ消失を防ぎます。

Backlogは、無料プランと有料プランがあります。無料プランでは、プロジェクト数やストレージ容量に制限がありますが、基本的な機能は利用できます。有料プランでは、より多くの機能やストレージ容量を利用できます。料金体系や機能の詳細については、Backlog公式サイトをご覧ください。

3. ツール選定のポイント
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PMIを成功に導くためには、自社の課題やニーズに合致したツールを選定することが重要です。ツール選定の際には、以下のポイントを考慮しましょう。

3.1 費用対効果 ツールの導入費用だけでなく運用コストや教育コストも考慮して、費用対効果を評価する必要があります。無料プランや低価格なプランを提供しているツールもありますが、機能が限定されている場合もあるため注意が必要です。

3.2 使いやすさ 社員がスムーズにツールを利用できるよう、インターフェースがわかりやすく操作が簡単なツールを選ぶことが重要です。導入前に無料トライアルを利用して、使い勝手を確認することをおすすめします。

3.3 セキュリティ 機密性の高い情報を取り扱うPMI業務においては、セキュリティ対策が万全なツールを選ぶことが重要です。アクセス権限の設定やデータの暗号化など、セキュリティ機能が充実しているか確認しましょう。

3.4 拡張性 将来的な事業規模の拡大や業務内容の変化に対応できるよう、拡張性の高いツールを選ぶことが重要です。ユーザー数やストレージ容量を追加できるか、外部サービスとの連携が可能かなど、確認しておきましょう。

4. 導入事例 ここでは、PMIにおけるツール導入の成功事例を2つご紹介します。

4.1 事例1:製造業A社 A社は、国内競合企業との合併に伴い、PMIを推進するにあたり、情報共有の遅延やコミュニケーション不足が課題となっていました。

そこで、Chatworkを導入し、部門やプロジェクトごとにグループチャットを作成することで、情報共有のスピードアップとスムーズなコミュニケーションを実現しました。

また、ファイル共有機能を活用することで、資料の版管理を徹底し情報の一元管理を実現しました。その結果、PMIプロセスを効率化し、統合後のシナジー創出を加速させることができました。

4.2 事例2:IT企業B社 B社は、海外企業の買収に伴い、PMIを推進するにあたり、プロジェクト管理の複雑化や進捗管理の属人化が課題となっていました。

そこで、Backlogを導入し、タスク管理、Wiki、Gitを統合的に管理することで、プロジェクトの進捗状況を可視化し、チーム全体で情報共有できる体制を構築しました。

また、ガントチャート機能を活用することで、タスクの依存関係を明確化し、クリティカルパスの把握を容易にしました。その結果、PMIプロセスを効率化し、統合後の事業成長を促進することができました。

5. ツール選定のポイント
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PMIにおいて適切なITツールを選定することは、業務効率化、コスト削減、従業員の満足度向上など、さまざまな面で成功を左右する重要な要素となります。
数多くのツールが市場に溢れる中、自社のPMIプロセスに最適なものを選択するには、以下のポイントを踏まえて総合的に判断する必要があります。

5.1 費用対効果 ツール導入による費用対効果は、最も重要な選定基準の一つです。初期費用だけでなく、ランニングコスト、保守費用、トレーニング費用なども含めた総費用を算出し、導入によって期待できる効果と比較検討する必要があります。

例えば、ツールの導入によって業務時間がどれだけ削減できるのか、コミュニケーションコストがどれくらい削減できるのかなどを定量的に把握することで、費用対効果をより明確に判断することができます。また、無料トライアルやフリープランを提供しているツールも多いので、実際に試用してみてから本格導入を検討するのも有効な手段です。

5.2 使いやすさ どんなに高機能なツールでも、使い方が複雑で分かりにくければ従業員の負担が増大し、定着が進まないリスクがあります。特に、PMIは短期間で集中的に進める必要があるため、直感的で操作しやすいツールを選ぶことが重要です。

そのため、デモ版や無料トライアルを利用して、実際にツールを操作してみることをおすすめします。また、従業員からのフィードバックを収集し、使い勝手に関する意見を積極的に反映することも重要です。

5.3 セキュリティ PMIでは、合併前の両社の機密情報や顧客情報を扱うケースが多いため、セキュリティ対策の堅牢性は非常に重要です。ツール選定の際には、アクセス権限の設定、データの暗号化、マルウェア対策など、セキュリティに関する機能が充実しているかどうかも重要なチェックポイントとなります。

特に、クラウドサービスを利用する場合は、データの保管場所やセキュリティ基準などを事前に確認する必要があります。

また、ISO27001やISMSなどの情報セキュリティに関する国際規格を取得しているツールであれば、一定水準以上のセキュリティレベルを担保していると判断できます。

5.4 拡張性 企業規模や事業内容の変化に合わせて、柔軟にシステムを拡張できるかも重要なポイントです。例えば、将来的にユーザー数が増加した場合や、新たな機能を追加する必要が生じた場合でも、スムーズに対応できるツールを選ぶことが大切です。

そのため、ツールのアーキテクチャや将来的な機能拡張のロードマップなどを事前に確認しておく必要があります。また、API連携が可能なツールであれば、他のシステムとの連携も容易になり、柔軟性の高いシステム構築が可能になります。

5.5 サポート体制 ツール導入後も、円滑に運用していくためには、ベンダーのサポート体制が充実しているかどうかも重要な選定基準となります。

特に、初めてツールを導入する場合は、導入時の設定サポートや操作方法に関する問い合わせなど、手厚いサポートがあると安心です。また、日本語でのサポート対応や、電話やメールでの問い合わせ窓口の有無なども確認しておきましょう。

ポイント詳細
費用対効果 初期費用・ランニングコスト・導入効果を比較検討する。無料トライアルやフリープランの活用も有効。
使いやすさ 直感的で操作しやすいUI・分かりやすい操作マニュアル・従業員からのフィードバック収集が重要。
セキュリティ アクセス権限管理、データ暗号化、マルウェア対策、ISO27001などのセキュリティ規格取得状況を確認。
拡張性 ユーザー数増加、機能追加、API連携など、将来的な変化に対応できる柔軟性を備えているか確認。
サポート体制 導入サポート、操作方法に関する問い合わせ窓口、日本語対応、電話・メールサポートの有無を確認。

これらのポイントを踏まえ、自社のPMIプロセスに最適なITツールを選定することで、PMIを成功に導くことができます。なお、ITツールの選定は、あくまで手段の一つであり、目的を達成するための最適な手段を選択することが重要です。

6. 導入事例 6.1 事例1:製造業A社 7.1.1 課題 製造業A社は競争激化に対応するため、海外の同業企業B社を買収しました。しかし、PMIの過程で、以下のような課題に直面しました。

文化や言語の異なるB社とのコミュニケーション不足
業務プロセスやシステムの統合の遅延
統合による従業員のモチベーション低下

解決策 A社はこれらの課題を解決するために、以下のようなツールを導入しました。

ツール目的効果
Microsoft Teams コミュニケーション円滑化、情報共有の迅速化
  • B社とのコミュニケーションが活性化し、相互理解が深まった
  • リアルタイムの情報共有により、意思決定のスピードが向上した
SAP ERP 業務プロセスとシステムの統合
  • 統合システムにより、業務効率が大幅に向上した
  • データの一元管理により、経営の可視性が向上した
eラーニングシステム(Udemy Business) 統合後の新組織・新制度に関する教育・B社の企業文化や価値観に関する学習機会の提供
  • 従業員のスキルアップと意識改革が進み、統合後の組織へのスムーズな適応を促進
  • B社の企業文化への理解が深まり、一体感の醸成に貢献

結果 これらのツール導入により、A社はB社との統合を成功させ、シナジー効果を生み出すことができました。コミュニケーションの改善、業務プロセスの効率化、従業員のモチベーション向上など、多岐にわたる成果が得られました。

特に、Microsoft Teamsによるコミュニケーションの円滑化は、その後の統合プロセス全体をスムーズに進める上で大きく貢献しました。

また、Udemy Businessによるeラーニングは、統合後の新しい組織文化や業務プロセスを従業員に理解させ、スムーズな適応を促す上で効果的でした。統合後の業績向上にも大きく貢献し、PMIの成功事例として業界で高く評価されています。

この事例は、PMIにおける適切なツール導入の重要性を示すとともに、統合プロセスにおける課題を克服し、成功を収めるための具体的な方法を示唆しています。

6.2 事例2:IT企業B社 課題 IT企業B社は、新規事業分野への進出を加速させるため、ベンチャー企業C社を買収しました。しかし、PMIの過程で、以下のような課題に直面しました。

企業文化や価値観の異なるC社との融合
重複する業務やシステムの整理
買収による従業員の不安の払拭

解決策 B社はこれらの課題を解決するために、以下のようなツールを導入しました。

ツール目的効果
Slack コミュニケーションの活性化、部門を超えた情報共有
  • オープンなコミュニケーションを促進し、C社の企業文化への理解を深める
  • 迅速な情報共有により、意思決定のスピードと透明性を向上
Salesforce Sales Cloud 顧客データ統合による営業活動の効率化
  • 顧客データの一元管理により、営業活動の効率化と顧客満足度向上を実現
  • 重複する営業活動の削減など、統合によるシナジー効果を発揮
社内SNS(Workplace by Meta) 全従業員への情報発信、自由な意見交換の場の提供
  • 経営陣からのメッセージを直接発信することで、従業員の不安を軽減
  • C社の従業員も参加しやすいオープンなコミュニケーションを促進し、一体感を醸成

結果 これらのツール導入により、B社はC社との統合を成功させ、新規事業を軌道に乗せることができました。企業文化の融合、業務効率の向上、従業員満足度の向上など、多岐にわたる成果が得られました。

特に、Slackによるオープンなコミュニケーションは、企業文化の異なるC社との融合をスムーズに進める上で大きく貢献しました。また、Workplace by Metaによる社内SNSは、経営陣と従業員間の距離を縮め、透明性の高い情報公開を実現することで、買収による従業員の不安を払拭する効果がありました。

この事例は、PMIにおける適切なツール導入が、企業文化の異なる企業同士の統合を成功させる上で重要な役割を果たすことを示しています。

7. PMIで失敗したら
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PMIは、M&A後の企業価値向上を実現するために非常に重要なプロセスですが、その道のりは決して平坦ではありません。
さまざまな困難や予期せぬ問題が発生する可能性があり、場合によってはPMIの失敗に繋がるケースも少なくありません。PMIが失敗すると、期待していたシナジー効果が得られないだけでなく、企業価値の低下・従業員のモチベーション低下・顧客の離反など、深刻な事態を招く可能性があります。

M&A・PMIに失敗したら...

7.1 PMI失敗の要因 PMIの失敗には、さまざまな要因が考えられますが、主なものとしては下記のような点が挙げられます。

事前の準備不足

PMIは、M&A契約締結後すぐに開始することが重要ですが、十分な準備期間を設けずに開始してしまうケースや、そもそもPMIの重要性を理解していないケースも見られます。PMIのプロセス、必要なリソース、スケジュールなどを事前に明確化しておくことが重要です。

コミュニケーション不足

PMIは、買収企業と被買収企業、経営層と従業員など、さまざまなステークホルダーとの間で、密接なコミュニケーションを取ることが不可欠です。しかし、コミュニケーション不足により、誤解や不信感が生まれ、PMIがスムーズに進まないことがあります。そのため、定期的な情報共有や意見交換の場を設けるなど、積極的にコミュニケーションを取るための取り組みが重要です。

文化の違い

企業文化の異なる2つの企業が統合する場合、価値観や仕事の進め方の違いなどから、衝突や摩擦が生じることがあります。文化の違いを理解し、相互に尊重し合うことが重要です。従業員研修などを通して、統合後の企業文化を浸透させていくことも必要です。

優秀な人材の流出

M&Aに伴い、組織変更や雇用条件の変更などが発生するため、優秀な人材が流出してしまうことがあります。人材流出は、企業の競争力低下に直結するため、人材を引き留めるための対策を講じる必要があります。例えば、従業員の不安を解消するための説明会の実施や、従業員のキャリアパスに対するサポートなどが考えられます。

システム統合の遅延

異なるシステムを統合することは、技術的に困難な場合があり、予想以上の時間とコストがかかることがあります。システム統合の遅延は、業務効率の低下やコスト増加に繋がり、PMI全体の遅延にも繋がります。事前に綿密な計画を立て、十分なテスト期間を確保することが重要です。

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7.2 PMI失敗による影響 PMIが失敗すると、企業は以下のような影響を受ける可能性があります。

1.財務的な損失 PMIの失敗は、シナジー効果の未達、売上減少、コスト増加などに繋がり、企業に財務的な損失をもたらします。場合によっては、のれんの減損処理が必要となるケースもあります。

2.ブランドイメージの低下 PMIの失敗が顧客や取引先に知られることで、企業のブランドイメージが低下する可能性があります。ブランドイメージの低下は、顧客離れや新規顧客獲得の阻害に繋がりかねません。

3.従業員のモチベーション低下 PMIの失敗により、将来への不安や組織への不信感が高まり、従業員のモチベーションが低下する可能性があります。従業員のモチベーション低下は、生産性低下や離職に繋がり、企業の競争力に影響を与える可能性があります。

7.3 PMI失敗を防ぐために PMIの失敗を防ぐためには、以下のような点に注意することが重要です。

段階具体的な対策
事前準備
  • PMIの目的、目標を明確にする
  • PMIの責任者、担当者を決定する
  • PMIのスケジュール、予算を策定する
  • 統合後の組織構造、業務プロセスを設計する
  • リスクの洗い出しと対策を検討する
実行段階
  • コミュニケーションを密にする
  • 従業員への説明会などを実施し、不安解消に努める
  • 文化の違いを理解し、相互に尊重し合う
  • 進捗状況を定期的にモニタリングし、必要に応じて計画を見直す
  • 問題が発生した場合は、迅速に対応する
統合後
  • 統合後の企業文化を浸透させる
  • 従業員の定着を図る
  • PMIの成果を評価し、今後の教訓とする
PMIは、企業にとって大きな挑戦ですが、適切な準備と実行により成功に導くことができます。失敗から学び、将来のM&Aを成功させるために経験を生かしていくことが重要です。

8. まとめ PMI(Post Merger Integration)は、M&A後の企業統合を成功させるための重要なプロセスです。本記事では、PMI業務における課題を解決し、円滑な統合を支援する様々なツールを紹介しました。

情報共有、業務プロセス統合、組織文化統合など、それぞれのフェーズに適したツールを導入することで、統合プロセスを効率化し、シナジー効果の最大化を目指せます。

ツール選定の際には、費用対効果、使いやすさ、セキュリティ、拡張性などを考慮し、自社の状況に最適なものを選ぶことが重要です。


編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったPMIのエキスパート。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。

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