事業承継|親族内承継をスムーズに進めるための具体的な進め方と落とし穴
事業承継、特に親族内承継は、企業の存続と発展を左右する重要な経営課題です。多くの経営者が抱えるこの課題、実は適切な進め方を知らないために、事業の縮小や最悪の場合は廃業に繋がるケースも少なくありません。この記事では、親族内承継をスムーズに進めるための具体的なステップと、起こりうる落とし穴とその対策を分かりやすく解説します。
後継者決定、経営の引継ぎ、株式・事業の譲渡、税務・法律問題への対応など、承継プロセス全体を網羅。さらに、日本政策金融公庫や中小企業庁といった公的機関の支援制度もご紹介します。この記事を読むことで、親族内承継の全体像を把握し、円滑な承継を実現するための具体的な行動計画を立てることができます。事業の安定的な成長と発展を次世代へ繋ぐための、確かな道筋を見つけることができるでしょう。
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編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。
- 目次
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1. 親族内承継とは何か
1.1 親族内承継のメリット・デメリット
1.2 親族内承継の種類
2. 事業承継の進め方 親族内承継編
2.1 準備段階
2.2 実行段階
2.3 承継後
3. 親族内承継における落とし穴と対策
3.1 感情的な対立
3.2 経営方針の相違
3.3 後継者育成の不足
3.4 資金調達の難航
3.5 税務・法律問題
4. 親族内承継をスムーズに進めるためのポイント
4.1 早期の準備
4.2 円滑なコミュニケーション
4.3 専門家への相談
5. 事業承継に関する支援制度
5.1 日本政策金融公庫の支援
5.2 中小企業庁の支援施策
5.3 各都道府県の支援制度
6. まとめ
1. 親族内承継とは何か
親族内承継とは、文字通り、経営者の親族、つまり血縁関係にある人に会社の経営権や事業を承継させることです。後継者不足が社会問題となっている中で、中小企業の事業承継においては、この親族内承継が最も一般的な方法となっています。具体的には、子供や兄弟姉妹、甥姪など、経営者の血縁者に事業を譲り渡し、経営の継続を図ることを指します。
親族内承継は、単に経営権を譲るだけでなく、企業文化や経営理念、技術やノウハウなども含めて、次世代に引き継いでいくことを意味します。これにより、長年培ってきた企業の価値を守り、持続的な発展を目指していくことが可能となります。
【関連】中小企業向け事業承継コンサルティング|M&A、親族内承継など最適な方法をご提案1.1 親族内承継のメリット・デメリット
親族内承継には、メリットとデメリットの両面があります。承継を検討する際には、両方を理解した上で、自社にとって最適な方法を選択することが重要です。
1.1.1 メリット
経営理念や企業文化を維持しやすい | |
従業員との信頼関係を維持しやすい | |
後継者育成に時間をかけることができる | |
承継コストを抑えられる可能性がある | |
経営に関する情報をスムーズに共有できる |
1.1.2 デメリット
親族間の感情的な対立が生じる可能性がある | |
後継者候補の能力不足による経営悪化のリスク | |
経営のマンネリ化、硬直化に陥る可能性がある | |
後継者へのプレッシャーが大きくなる可能性がある | |
事業の革新や変化に対応しづらい場合がある |
1.2 親族内承継の種類
親族内承継は、会社の形態によって、その手続きや方法が異なります。大きく分けて、同族会社への承継と個人事業主の承継の2種類があります。
1.2.1 同族会社への承継
株式会社などの同族会社の場合、株式の譲渡によって承継が行われます。後継者に株式を贈与または売買することで、経営権を移譲します。この際、相続税や贈与税の対策が重要となります。
方法 | 概要 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
贈与 | 後継者に株式を無償で譲渡 | 後継者の負担が少ない | 多額の贈与税が発生する可能性がある |
売買 | 後継者が株式を購入 | 贈与税がかからない | 後継者の資金負担が大きい |
1.2.2 個人事業主の承継
個人事業主の場合は、事業用資産の譲渡や事業の引継ぎによって承継が行われます。後継者が事業を円滑に引き継げるよう、取引先への挨拶や従業員への説明などを丁寧に行うことが重要です。また、廃業手続きなども必要に応じて行います。
承継内容 | 概要 | 注意点 |
---|---|---|
事業用資産の譲渡 | 事業に必要な資産を後継者に譲渡 | 譲渡所得税が発生する可能性がある |
事業の引継ぎ | 取引先や従業員への引継ぎ | 円滑な引継ぎのために事前の準備が重要 |
2. 事業承継の進め方 親族内承継編
親族内承継をスムーズに進めるためには、綿密な計画と段階的な実行が不可欠です。大きく分けて、準備段階、実行段階、承継後の3つの段階に分けて進めていきます。
【関連】事業承継の進め方ガイド|後継者と考える引継ぎ、コスト対策まで徹底解説!2.1 準備段階
準備段階では、現状分析から始まり、後継者決定、事業承継計画の作成を行います。この段階でしっかりと土台を築くことが、スムーズな承継の成功を左右する重要なポイントとなります。
【関連】事業承継の進め方ガイド|後継者と考える引継ぎ、コスト対策まで徹底解説!2.1.1 現状分析
まずは、会社の現状を客観的に把握する必要があります。財務状況、事業内容、市場環境、競合他社の状況、強み・弱みなどを分析し、経営課題を明確化します。SWOT分析などを活用すると効果的です。また、自社の企業理念や社風、従業員の状況なども把握しておきましょう。
2.1.2 後継者決定
後継者は、経営能力、人望、事業への熱意などを総合的に判断して決定します。親族内承継の場合、感情的な問題も発生しやすいため、親族会議などを開催し、他の親族の理解と協力を得ることが重要です。後継者候補の育成状況も確認し、必要な研修や教育の機会を提供することも検討しましょう。後継者候補が複数いる場合は、それぞれの候補者と個別に面談を行い、意思確認を行うことも重要です。
2.1.3 事業承継計画の作成
現状分析と後継者決定を踏まえ、具体的な事業承継計画を作成します。計画には、承継のスケジュール、経営権の移行方法、株式や事業の譲渡方法、後継者育成計画、財産承継計画、資金調達計画などを盛り込みます。事業承継計画は、関係者間で共有し、定期的に見直しを行うことが大切です。また、税理士や弁護士などの専門家のアドバイスを受けることで、より精度の高い計画を策定することができます。計画書には、リスク対策や緊急時の対応についても記載しておきましょう。
2.2 実行段階
実行段階では、計画に基づき、経営の引継ぎ、株式・事業の譲渡、関係機関への手続きなどを行います。この段階では、計画通りに進まない場合も想定し、柔軟な対応が必要です。
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後継者が円滑に経営を引き継げるよう、段階的に権限と責任を委譲していくことが重要です。現経営者は、メンターとして後継者をサポートし、経営ノウハウや人脈などを伝承していきます。後継者は、従業員との信頼関係を構築し、リーダーシップを発揮していく必要があります。引継ぎ期間中は、現経営者と後継者が共同で経営を行う体制を構築し、スムーズな移行を図ることが重要です。
2.2.2 株式・事業の譲渡
株式や事業の譲渡は、税務や法律の専門家と連携し、適切な方法で行う必要があります。親族間での譲渡の場合、贈与税や相続税の課税関係にも注意が必要です。株式譲渡の方法としては、売買、贈与、相続などがあります。事業譲渡の場合は、譲渡対象となる資産や負債を明確にする必要があります。
2.2.3 関係機関への手続き
株式・事業の譲渡に伴い、税務署、法務局、金融機関などへの手続きが必要となります。必要な書類を事前に準備し、手続き漏れがないように注意しましょう。手続きの内容は、譲渡方法や事業形態によって異なります。
2.3 承継後
承継後も、後継者へのサポートや事業の成長・発展に向けた取り組みが重要です。承継はゴールではなく、新たなスタートです。
2.3.1 後継者へのサポート
現経営者は、後継者が必要とするサポートを提供し続けます。経営に関する相談に乗ったり、人脈を紹介したりするなど、後継者が自立して経営を担えるように支援します。定期的な面談や経営会議などを開催し、後継者の状況を把握することも重要です。
2.3.2 事業の成長・発展
後継者は、変化する市場環境に適応し、新たな事業展開に挑戦していく必要があります。従業員の意見を取り入れ、社内改革を進めるなど、企業価値を高めるための施策を積極的に実行することが重要です。また、外部の専門家やコンサルタントの活用も有効です。
段階 | 内容 | ポイント |
---|---|---|
準備段階 | 現状分析、後継者決定、事業承継計画の作成 | 客観的な分析、親族の理解、専門家の活用 |
実行段階 | 経営の引継ぎ、株式・事業の譲渡、関係機関への手続き | 段階的な引継ぎ、適切な譲渡方法、手続き漏れへの注意 |
承継後 | 後継者へのサポート、事業の成長・発展 | 継続的なサポート、新たな挑戦 |
3. 親族内承継における落とし穴と対策
親族内承継は、外部からの干渉を受けにくい、後継者への信頼感が高いなどのメリットがある一方で、特有の落とし穴も存在します。事前にこれらの落とし穴を理解し、適切な対策を講じることで、スムーズな事業承継を実現できるでしょう。
3.1 感情的な対立
親族間であるがゆえに、感情的な対立が生じやすいのが親族内承継の特徴です。後継者選定や経営方針、財産分与などを巡り、親族間で意見が衝突する可能性があります。特に、兄弟姉妹間での確執や、親と子の世代間ギャップによる価値観の相違は、深刻な問題に発展することもあります。
3.1.1 対策
感情的な対立を避けるためには、早期からのコミュニケーションが重要です。後継者選定のプロセスを透明化し、親族間で十分な話し合いの場を設けることで、相互理解を深めることができます。また、第三者である専門家(弁護士、税理士、事業承継コンサルタントなど)を交えて話し合いを進めることで、客観的な視点を取り入れ、感情的な対立を抑制することができます。
3.2 経営方針の相違
先代経営者と後継者候補の間で、経営方針に対する考え方が異なる場合、事業承継後に経営が不安定になる可能性があります。先代は長年の経験に基づいた経営方針を持っている一方で、後継者は新しい視点や革新的なアイデアを持っている場合があります。これらの違いが、対立や混乱を生む可能性があります。
3.2.1 対策
後継者は、先代の経営理念や事業の強みを理解し、尊重することが重要です。同時に、先代は後継者の新しい発想やビジョンを積極的に受け入れる姿勢を持つべきです。事業承継前に、経営方針について十分に話し合い、相互理解を深めることが重要です。また、後継者は、先代の指導を受けながら、徐々に経営の主導権を握っていくことで、スムーズな移行を実現できます。
3.3 後継者育成の不足
後継者が事業を承継するために必要な知識、スキル、経験が不足している場合、事業承継後に経営が行き詰まる可能性があります。特に、経営に関する知識や、業界特有のノウハウ、従業員とのコミュニケーション能力などは、事業を円滑に運営するために不可欠です。
3.3.1 対策
後継者育成は、事業承継を成功させるための重要な要素です。早期から後継者を社内外の研修に参加させたり、経営に参画させたりすることで、実践的な経験を積ませる必要があります。また、メンター制度を導入し、経験豊富な社員から指導を受ける機会を設けることも有効です。さらに、経営学や会計学などの専門知識を学ぶための外部機関の講座を受講させることも検討しましょう。
3.4 資金調達の難航
事業承継には、株式の譲渡や相続税の納付など、多額の資金が必要となる場合があります。しかし、金融機関からの融資が難航したり、自己資金が不足したりすることで、事業承継が滞ってしまう可能性があります。
3.4.1 対策
事業承継に必要な資金を確保するために、早期から資金計画を立て、金融機関との交渉を進める必要があります。日本政策金融公庫や信用保証協会などの公的金融機関の融資制度を活用することも検討しましょう。また、株式の譲渡方法や相続税の納税方法を工夫することで、資金負担を軽減することも可能です。事業承継税制の活用も検討し、専門家(税理士、金融機関担当者など)に相談しながら、最適な資金調達方法を選択することが重要です。
3.5 税務・法律問題
事業承継には、相続税、贈与税、株式譲渡など、複雑な税務・法律問題が絡んできます。これらの問題に適切に対処しなければ、思わぬ損失を被る可能性があります。また、親族間での株式の譲渡や相続においては、法律に則った手続きが必要となります。
3.5.1 対策
税務・法律問題については、税理士や弁護士などの専門家に相談することが不可欠です。専門家のアドバイスを受けることで、税負担の軽減や、法律に則った手続きを行うことができます。また、事業承継に関する最新の税制や法律を理解し、適切な対策を講じることも重要です。下記に相談可能な専門家と、主な相談内容をまとめました。
専門家 | 主な相談内容 |
---|---|
税理士 | 相続税・贈与税の試算と節税対策、事業承継税制の活用、株式評価 |
弁護士 | 遺言書作成、相続手続き、親族間の紛争解決、会社法に関する相談 |
事業承継コンサルタント | 事業承継計画の策定支援、後継者育成支援、関係機関との調整 |
これらの落とし穴を理解し、適切な対策を講じることで、親族内承継をスムーズに進めることができます。早期の準備と円滑なコミュニケーション、そして専門家への相談を心がけましょう。
4. 親族内承継をスムーズに進めるためのポイント
親族内承継を成功させるためには、事前の綿密な準備と円滑なコミュニケーション、そして専門家によるサポートが不可欠です。準備不足や感情的な対立、後継者育成の遅れなどが事業承継を困難にする落とし穴となる可能性があります。これらのポイントを踏まえ、スムーズな事業承継を実現するための具体的な方法を解説します。
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事業承継は、後継者の選定から経営の引継ぎ、株式や事業の譲渡、関係機関への手続きなど、多岐にわたるプロセスを経て完了します。そのため、1年や2年で完了するものではなく、5年、10年、あるいはそれ以上の長期的な視点で計画的に進める必要があります。早期の準備に着手することで、想定外の事態にも対応できる余裕が生まれ、承継プロセスを円滑に進めることができます。
4.1.1 承継時期の決定
承継の時期は、経営者の年齢や健康状態、後継者の準備状況、事業の状況などを総合的に考慮して決定します。明確な時期を設定することで、関係者間で共通の認識を持つことができ、計画的な準備を進めることができます。60歳を一つの目安とする場合もありますが、状況に応じて柔軟に対応することが重要です。
4.1.2 情報収集と共有
事業承継に関する情報は、書籍、インターネット、セミナーなど様々な方法で入手できます。日本政策金融公庫や中小企業庁、各都道府県の中小企業支援センターなども、事業承継に関する相談窓口や支援制度を提供しています。これらの情報を積極的に活用し、関係者間で共有することで、スムーズな承継を実現するための知識と理解を深めることができます。
4.2 円滑なコミュニケーション
親族内承継においては、円滑なコミュニケーションが非常に重要です。経営者、後継者、親族、従業員など、関係者全員が納得のいく形で承継を進めるためには、それぞれの立場や考え方を理解し、尊重し合うことが大切です。そのためには、日頃から積極的に対話を重ね、相互の理解を深めておく必要があります。
4.2.1 家族会議の開催
事業承継に関する事項は、家族会議を通して話し合うことが効果的です。議題を事前に明確にしておくことで、建設的な議論を進めることができます。また、会議の記録を残しておくことで、後々のトラブル防止にも繋がります。頻度としては、月1回、あるいは四半期に1回など、状況に応じて適切な頻度を設定することが重要です。
4.2.2 従業員への説明
事業承継は、従業員にとっても大きな変化です。承継プロセスや今後の経営方針について、従業員に丁寧に説明することで、不安や混乱を解消し、円滑な承継を実現することができます。説明会の実施や社内報の活用など、様々な方法で情報伝達を行うことが重要です。
4.3 専門家への相談
事業承継は、税務、法律、経営など、専門的な知識が必要となる場面が多くあります。そのため、税理士、弁護士、事業承継コンサルタントなどの専門家に相談することで、適切なアドバイスを受け、スムーズな承継を実現することができます。
専門家 | 役割 | 相談内容例 |
---|---|---|
税理士 | 税務・会計に関するアドバイス | 相続税・贈与税対策、株価評価、事業承継税制の活用 |
弁護士 | 法律に関するアドバイス | 会社法、相続法に関する手続き、遺言書作成、紛争解決 |
事業承継コンサルタント | 事業承継全体のサポート | 承継計画策定、後継者育成、経営改善、関係機関との調整 |
これらの専門家は、それぞれの専門分野における知識と経験を活かし、事業承継を成功に導くためのサポートを提供します。それぞれの専門家の役割を理解し、適切な相談先を選ぶことが重要です。また、複数の専門家と連携することで、より comprehensive なサポートを受けることができます。
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事業承継は、中小企業の存続と発展にとって重要な課題です。円滑な事業承継を支援するため、国や地方自治体など様々な機関が支援制度を設けています。これらの制度を有効に活用することで、事業承継に伴う負担を軽減し、スムーズな移行を実現することが可能となります。
5.1 日本政策金融公庫の支援
日本政策金融公庫は、事業承継を支援するための様々な融資制度を提供しています。これらの融資制度は、後継者への株式譲渡資金や事業承継に伴う設備投資資金など、幅広い用途に利用できます。
5.1.1 経営承継円滑化融資
後継者による株式取得資金や設備資金などを融資する制度です。事業承継計画の策定が融資の要件となっており、計画的な事業承継をサポートします。
5.1.2 新事業承継円滑化保証制度
民間の金融機関を通して融資を受ける際に、日本政策金融公庫が保証を行う制度です。保証料の負担が軽減されるため、資金調達が容易になります。
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中小企業庁は、事業承継を総合的に支援するための様々な施策を展開しています。補助金や税制優遇措置など、事業承継を多角的にサポートする制度が用意されています。
5.2.1 事業承継補助金
事業承継に要する費用の一部を補助する制度です。専門家への相談費用や研修費用などが補助対象となります。後継者育成のための研修や、事業承継計画策定のための専門家活用など、様々な用途に利用できます。
5.2.2 事業承継税制
後継者が先代経営者から株式などを贈与または相続した場合に、税負担を軽減する制度です。円滑な事業承継を促進し、雇用の維持を図ることを目的としています。
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都道府県レベルでも、独自の事業承継支援制度が設けられています。これらの制度は、地域の実情に合わせたきめ細やかな支援を提供しています。
都道府県独自の補助金や融資制度、専門家派遣事業など、多岐にわたる支援策が存在します。具体的な内容については、各都道府県の担当部署に問い合わせることで詳細な情報を入手できます。
支援内容 | 支援機関(例) | 備考 |
---|---|---|
事業承継補助金 | 東京都中小企業振興公社 | 都内の中小企業を対象とした補助金 |
専門家派遣事業 | 大阪府商工会議所 | 事業承継に関する専門家の派遣 |
融資制度 | 愛知県信用保証協会 | 事業承継のための融資に対する保証 |
セミナー・相談会 | 福岡県中小企業団体中央会 | 事業承継に関するセミナーや個別相談会 |
上記以外にも、地域金融機関による独自の融資制度や、商工会議所などによる相談窓口の設置など、様々な支援策が用意されています。積極的に情報を収集し、自社に最適な支援制度を活用することが、円滑な事業承継を実現する鍵となります。
6. まとめ
親族内事業承継は、メリットも多い一方で、感情的な対立や経営方針の相違、後継者育成の不足、資金調達、税務・法律問題といった落とし穴が存在します。これらの問題を未然に防ぎ、スムーズな事業承継を実現するためには、事前の準備と円滑なコミュニケーション、そして専門家への相談が不可欠です。
本記事では、親族内事業承継の進め方を準備段階、実行段階、承継後の3つの段階に分け、それぞれの段階で必要な手続きや注意点、そして起こりうる問題とその対策を解説しました。現状分析から始まり、後継者決定、事業承継計画の作成、経営の引継ぎ、株式・事業の譲渡、関係機関への手続き、後継者へのサポート、事業の成長・発展まで、一連の流れを把握することで、承継プロセスを明確にイメージできるはずです。
また、日本政策金融公庫や中小企業庁、各都道府県が提供する支援制度も紹介しました。これらの制度を活用することで、資金調達や経営ノウハウの習得など、様々な面でサポートを受けることができます。親族内事業承継は、企業の存続と発展を左右する重要な経営課題です。早期の準備と適切な対応によって、円滑な承継を実現し、将来の成長へと繋げましょう。