経営承継円滑化法と事業承継税制のメリットを徹底解説!【経営者必見】

経営承継円滑化法と事業承継税制のメリットを徹底解説!【経営者必見】

「経営承継円滑化法」と「事業承継税制」って言葉は聞くけど、実際どんなメリットがあるの? この記事では、そんな疑問を持つ経営者の方向けに、それぞれの制度の概要から具体的なメリット、活用事例までを分かりやすく解説します。

特に、後継者へのスムーズな事業承継、相続税・贈与税の負担軽減に関心のある方は必見です。実際に活用して成功している企業の事例も紹介しますので、ぜひ最後まで読んで、自社の事業承継計画に役立ててください。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。



1. 経営承継円滑化法と事業承継税制とは?

「経営承継円滑化法」と「事業承継税制」は、どちらも日本の企業の円滑な事業承継を支援するための制度です。しかし、その内容や目的は異なります。ここでは、それぞれの概要や目的、メリットについて詳しく解説していきます。


1.1 経営承継円滑化法の概要

「経営承継円滑化法」は、正式名称を「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」といい、2008年に施行されました。この法律は、後継者への円滑な事業承継を促進するために、様々な支援措置を講じることを目的としています。

1.1.1 経営承継円滑化法の目的

経営承継円滑化法の主な目的は以下の通りです。

後継者への円滑な事業承継の促進
中小企業の廃業による経済の停滞の防止
雇用の維持・創出

日本は少子高齢化が進み、多くの企業で後継者不足が深刻化しています。経営者が高齢化し、後継者が決まらないまま廃業してしまうケースも少なくありません。このような状況を改善し、円滑な事業承継を促進することで、日本経済の活性化、雇用の維持・創出を目指しています。

1.1.2 経営承継円滑化法の内容

経営承継円滑化法では、後継者への円滑な事業承継を支援するために、以下の内容が定められています。

事業承継計画の策定支援
金融支援(日本政策金融公庫などによる低利融資)
専門家による相談・指導

これらの支援措置を活用することで、後継者は円滑に事業を承継しやすくなるだけでなく、事業承継後の経営を安定させるためのサポートも受けられます。


1.2 事業承継税制の概要

「事業承継税制」は、後継者が先代経営者から事業を承継する際に発生する相続税や贈与税の納税負担を軽減する制度です。この制度を利用することで、後継者は多額の税金を支払うことなく、スムーズに事業を承継することができます。

1.2.1 事業承継税制の目的

事業承継税制の主な目的は以下の通りです。

相続税・贈与税の納税負担軽減による円滑な事業承継の促進
雇用の維持・創出
企業の競争力維持・強化

多額の相続税や贈与税の支払いは、後継者にとって大きな負担となり、事業の継続を断念せざるを得ないケースも少なくありません。事業承継税制によって納税負担を軽減することで、円滑な事業承継を促進し、雇用や企業の競争力を守ることを目的としています。

1.2.2 事業承継税制の内容

事業承継税制には、大きく分けて「一般事業承継税制」と「特例事業承継税制」の2種類があります。

1.2.2.1 一般事業承継税制

一般事業承継税制は、一定の要件を満たす場合に、相続税や贈与税の納税を猶予する制度です。納税猶予の対象となる財産や要件は以下の通りです。

対象財産 要件
株式 後継者が取得した日から5年間、会社の経営に携わることなど
事業用資産(土地、建物、機械など) 後継者が取得した日から5年間、事業を継続することなど
1.2.2.2 特例事業承継税制

特例事業承継税制は、一定の要件を満たす場合に、相続税や贈与税の納税を免除する制度です。納税免除の対象となる財産や要件は以下の通りです。

対象財産 要件
株式 後継者が取得した日から10年間、会社の経営に携わることなど
事業用資産(土地、建物、機械など) 後継者が取得した日から10年間、事業を継続することなど

これらの制度を利用することで、後継者は多額の税金を支払うことなく、スムーズに事業を承継することができます。


2. 経営承継円滑化法を利用するメリット

経営承継円滑化法を利用することで、主に次のようなメリットがあります。


2.1 後継者への株式の円滑な移転

後継者に株式を承継させる際、贈与税や相続税の負担が大きな課題となります。経営承継円滑化法を活用すると、一定の条件を満たすことで、これらの税負担を軽減することができます。

2.1.1 納税猶予制度の活用

経営承継円滑化法では、後継者が先代経営者から株式を贈与や相続によって取得する際に、贈与税や相続税の納税を猶予する制度があります。この制度を利用することで、後継者は多額の資金を一度に用意することなく、事業を円滑に承継することができます。

制度 対象 内容
贈与税の納税猶予 後継者 先代経営者から贈与により株式を取得した際に、贈与税の納税を猶予
相続税の納税猶予 後継者 先代経営者から相続により株式を取得した際に、相続税の納税を猶予
2.1.2 株価抑制スキームの活用

後継者が株式を取得する際の負担を軽減するために、株価を抑制するスキームも用意されています。これにより、後継者はより少ない資金で株式を取得することが可能となります。

スキーム 内容
種類株式発行による株価抑制 議決権を制限した種類株式を発行することで、後継者が取得しやすい価格に抑える
事業承継補助金制度の活用 事業承継計画の策定や専門家への相談費用などに対して、国や地方自治体から補助金を受けることができる制度

2.2 事業の安定化と成長

円滑な事業承継は、企業の安定化と成長にも大きく貢献します。後継者が安心して事業を引き継ぐことができる環境を整えることで、長期的な視点に立った経営が可能となり、企業価値の向上につながります。

2.2.1 事業承継計画の策定

経営承継円滑化法では、事業承継計画の策定を促進しています。計画を策定することで、後継者への経営ノウハウの伝承や従業員の不安解消などが図られ、円滑な事業承継を実現することができます。

2.2.2 金融機関からの融資を受けやすく

事業承継計画を策定し、経営承継円滑化法に基づく認定を受けることで、金融機関からの融資を受けやすくなるというメリットもあります。これは、金融機関にとって、事業承継計画が策定されている企業は、経営の透明性が高く、将来性があると判断されるためです。

2.2.3 従業員の雇用維持

円滑な事業承継は、従業員の雇用維持にもつながります。後継者がスムーズに事業を引き継ぐことで、雇用が守られ、従業員のモチベーション向上にもつながります。また、事業承継を機に、新しい事業展開や雇用創出の可能性も広がります。


3. 事業承継税制を利用するメリット

事業承継税制を利用する主なメリットは以下の2点です。


3.1 相続税・贈与税の納税負担軽減

事業承継税制の最大のメリットは、相続税や贈与税の納税負担を大幅に軽減できる点にあります。具体的には、以下の2つの特例があります。

贈与税の納税猶予と免除

後継者が経営承継のために先代経営者から株式を贈与された場合、贈与税の納税が猶予されます。さらに、一定の要件を満たせば、猶予された贈与税が免除されます。この特例により、後継者は多額の資金を用意することなく、株式を取得することができます。

相続税の納税猶予と免除

先代経営者から後継者へ株式が相続された場合、相続税の納税が猶予されます。また、贈与税と同様に、一定の要件を満たせば、猶予された相続税が免除されます。この制度により、後継者は多額の相続税を支払うことなく、事業を承継することができます。

特例 対象 内容
贈与税の納税猶予と免除 後継者 経営承継のための株式贈与を受けた場合、贈与税の納税が猶予され、一定の要件を満たせば免除されます。
相続税の納税猶予と免除 後継者 先代経営者から株式を相続した場合、相続税の納税が猶予され、一定の要件を満たせば免除されます。

3.2 後継者への円滑な事業承継

事業承継税制は、単に税負担を軽減するだけでなく、円滑な事業承継を促進する効果も期待できます。具体的には、次のようなメリットがあります。

後継者への事業承継の準備期間の確保

事業承継税制を利用することで、後継者は先代経営者から事業を引き継ぐための十分な準備期間を確保することができます。後継者は、事業承継税制の適用要件を満たすために、経営計画の作成や従業員への周知など、事前に準備を進める必要があります。この準備期間を通じて、後継者は経営者としてのスキルや経験を積み重ね、円滑な事業承継を実現することができます。

事業の継続性の確保

事業承継税制の利用により、後継者は事業の継続性を確保しやすくなります。事業承継税制の適用を受けるためには、後継者は事業を一定期間継続することが求められます。この制度によって、事業の継続が促され、雇用や地域経済の維持にも貢献することができます。


4. 経営承継円滑化法と事業承継税制の活用事例

経営承継円滑化法と事業承継税制は、様々な業種の中小企業で活用されています。ここでは、具体的な活用事例を通して、これらの制度がどのように活用され、どのようなメリットをもたらすのかを見ていきましょう。


4.1 製造業における事例
4.1.1 金属加工業を営むA社のケース
会社概要
所在地東京都
従業員数30名
事業内容金属部品の製造・加工
課題後継者である社長の息子は、先代から引き継いだ借入金の負担を懸念し、事業承継に消極的
導入した制度と活用方法
経営承継円滑化法に基づく「経営改善計画」を策定し、金融機関からの借入金のリスケジュールを実施
事業承継税制を活用し、後継者への株式贈与時の贈与税の納税猶予制度を利用
結果と効果
後継者の借入金負担が軽減され、事業承継を円滑に進めることができた
経営改善計画の策定により、経営の効率化が進み、収益力も向上した
4.1.2 食品メーカーB社のケース
会社概要
所在地北海道
従業員数100名
事業内容水産加工品の製造・販売
課題後継者となる予定の社長の娘婿が、業界経験がないため、円滑な事業承継に不安
導入した制度と活用方法
経営承継円滑化法に基づく「事業承継計画」を策定し、後継者への教育訓練計画を具体的に明記
外部専門家をアドバイザーとして招き、事業承継計画の策定や後継者教育を支援
結果と効果
後継者は、事業承継計画に基づいた計画的な教育訓練を受けることで、事業に必要な知識や経験を習得
従業員も後継者の育成計画を共有することで、円滑な事業承継を支援する体制が整った

4.2 小売業における事例
4.2.1 老舗書店C店のケース
会社概要
所在地京都府
従業員数10名
事業内容書籍・文具の販売
課題後継者不足により、長年地域に愛されてきた書店の存続が危ぶまれていた
導入した制度と活用方法
第三者承継を検討し、M&A仲介会社に相談
経営承継円滑化法に基づく「事業承継補助金」を活用し、M&Aにかかる費用の一部を補助
結果と効果
事業を引き継ぐことに意欲的な企業とマッチングし、事業の継続が可能となった
事業承継補助金により、M&Aにかかる費用負担を軽減できた
4.2.2 地域密着型スーパーD店のケース
会社概要
所在地千葉県
従業員数食料品・日用品の販売
事業内容食料品・日用品の販売
課題後継者である社長の息子は、IT化が遅れていることに危機感を抱いていた
導入した制度と活用方法
事業承継税制を活用し、後継者への株式贈与時の贈与税の納税猶予制度を利用
納税猶予措置によって得られた資金を元に、POSシステムの導入やオンラインストアを開設するなど、IT化を推進
結果と効果
IT化による業務効率化や顧客満足度の向上を実現
事業承継税制の活用により、後継者は資金調達の不安なく、経営改革に取り組むことができた

5. 専門家への相談の重要性

経営承継円滑化法や事業承継税制は、複雑な制度設計がなされています。そのため、自社の状況に最適な活用方法を検討するためには、専門家への相談が欠かせません。

専門家は、豊富な知識と経験に基づいて、以下の様なサポートを提供します。


5.1 専門家によるサポート内容
5.1.1 1. 個別ケースに最適なプランの提案

企業の規模や業種、経営状況、後継者の状況などは企業ごとに大きく異なります。専門家は、これらの要素を総合的に分析し、最適な事業承継プランを提案します。

例えば、事業承継税制の特例の種類(特例承継株式等の取得による相続税の納税猶予や贈与税の納税猶予・軽減など)の選択、利用要件の確認、必要な手続きのアドバイスなどを行います。

5.1.2 2. 各種手続きのサポート

事業承継の手続きは、複雑で煩雑なものも少なくありません。専門家は、必要な書類の作成支援や関係機関への提出代行などを行い、円滑な手続きをサポートします。

例えば、事業承継計画の策定支援、金融機関との交渉支援、税務申告書の作成支援などを行います。

5.1.3 3. 法律や税務の最新情報の提供

経営承継円滑化法や事業承継税制は、法律や税制の改正によって内容が変わる可能性があります。専門家は、常に最新の情報を把握しており、企業に対してタイムリーなアドバイスを提供します。

セミナーや個別相談などを通して、最新の法改正情報や実務対応などをわかりやすく解説します。


5.2 専門家を選ぶ際のポイント

専門家には、税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士などがいます。それぞれの専門分野が異なるため、目的に合った専門家を選ぶことが重要です。

専門家を選ぶ際には、以下の様な点に注意しましょう。

事業承継に関する豊富な知識と経験を持っているか
自社の業種や規模に精通しているか
コミュニケーションを密に取り、信頼関係を築けるか
料金体系が明確であるか
専門家 得意分野
税理士 税務申告、税務相談、事業承継税制の活用支援
公認会計士 財務デューデリジェンス、企業価値評価、事業計画策定支援
弁護士 会社法務、契約書作成、紛争解決、遺言書作成
中小企業診断士 経営診断、事業計画策定、補助金申請支援

複数の専門家に相談し、比較検討することも有効です。専門家への相談は、事業承継を成功させるために非常に重要です。早めに専門家に相談し、万全の準備を進めましょう。


6. まとめ

今回は、経営承継円滑化法と事業承継税制の概要とメリット、活用事例について解説しました。これらの制度は、後継者への円滑な事業承継を支援し、企業の永続的な発展をサポートするものです。

事業承継税制を利用することで、相続税や贈与税の納税負担を軽減できるため、後継者は資金繰りの不安を軽減し、事業に専念することができます。

また、経営承継円滑化法を活用することで、後継者への株式の円滑な移転が可能となり、事業の安定化と成長を促進することができます。これらの制度を活用し、専門家のアドバイスを受けることで、スムーズな事業承継を実現できる可能性が高まります。

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