企業再生・事業再生・PMI違いを分かりやすく解説。M&A後に行うにはどれが最適?

企業再生・事業再生・PMI違いを分かりやすく解説。M&A後に行うにはどれが最適?

「企業再生」「事業再生」「PMI」の違いって、言葉は似ているけど実は全くの別物。それぞれの手法や目的を理解せずにM&A後の経営戦略を立てると、せっかくのM&Aが失敗に終わってしまう可能性も。

この記事では、それぞれの違いを解説し、M&A後の状況に最適な戦略を分かりやすく解説します。あなたの会社がM&Aを成功に導くためのヒントが、きっと見つかるはずです。

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1. 企業再生とは? 1.1 企業再生の目的

企業再生とは、業績が悪化、経営危機に陥っている企業を、様々な手段を用いて立て直し再び収益を上げられる状態に戻すことを指します。

その目的は、単に企業の倒産を回避することだけではありません。企業再生を通じて企業は再び成長軌道に乗ることができ、雇用を維持し社会に貢献することができます。


1.2 企業再生の手法

企業再生の手法には、大きく分けて「法的整理」「私的整理」の二つがあります。

法的整理

法的整理は、裁判所の手続きを通じて債務の減額や返済猶予などの法的保護を受けながら、事業の再建を図る方法です。法的整理には、主に以下の3つの種類があります。

種類 内容 メリット デメリット
会社更生法 裁判所の監督の下、事業の再建計画を策定し債権者の同意を得て事業の継続を図る手続き。 事業の継続が前提となるため、従業員の雇用や取引先の維持を図りやすい。 手続きが複雑で時間がかかり、裁判所の監督を受けるため、経営の自由度が制限される。
民事再生法 裁判所の監督の下、事業の再建計画を策定し債権者の同意を得て債務の減額や返済猶予を受け、事業の再生を図る手続き。 会社更生法と比較して、手続きが簡便で、費用も抑えられる。 債権者の同意が得られない場合、再生手続きが開始されないことがある。
破産法 事業の継続が困難な場合に、会社の資産を売却し債権者に配当する手続き。 債務の負担から解放される。 会社は解散し、従業員は解雇される。
私的整理

私的整理は、裁判所を通さずに債権者との交渉によって、債務の減額や返済猶予などの合意を得て事業の再建を図る方法です。私的整理には、主に以下の3つの種類があります。

種類 内容 メリット デメリット
リスケジュール 債権者に対して、既存の借入金の返済期間の延長や返済額の減額を交渉する。 法的整理と比較して、手続きが簡便で費用も抑えられる。また、経営者の交代を伴わずに再建を進めることができる。 債権者全員の同意が必要となるため、合意形成が難しい場合がある。
デット・エクイティ・スワップ(DES) 債権者に対して、既存の借入金を株式に転換してもらうことで債務を削減する。 債務の負担を大幅に削減することができる。 既存株主の持ち株比率が低下する。
事業譲渡 収益性の低い事業を他の会社に売却することで、経営資源をコア事業に集中させる。 不採算事業を切り離すことで、経営の効率化を図ることができる。 売却する事業によっては、従業員の解雇が必要となる場合がある。

企業再生は企業の経営状況や再建計画の内容によって、最適な手法が異なります。そのため、専門家のアドバイスを受けながら、慎重に進めることが重要です。


2. 事業再生とは?

事業再生とは企業全体の再生ではなく、事業単位で収益力改善や将来性の回復などを行い、企業価値の向上を図る取り組みです。


2.1 事業再生の目的

事業再生の目的は、企業を清算することなく事業を継続・成長させることです。具体的には、以下の様な目的が挙げられます。

収益性の向上
財務体質の改善
企業価値の向上
雇用の維持

これらの目的を達成するために、事業再生では事業の選択と集中・コスト削減・業務効率化など、様々な手法が用いられます。


2.2 事業再生の手法

事業再生の手法には、大きく分けて以下の3つがあります。

事業の選択と集中

収益性の低い事業や将来性が見込めない事業から撤退し、収益性の高い事業や成長が見込める事業に経営資源を集中させることで、企業全体の収益力向上を図ります。具体的には、以下の様な方法があります。

不採算事業の売却
子会社の整理・統合
新規事業への進出
コスト削減

固定費・変動費を含めたあらゆるコストを見直し無駄なコストを削減することで、収益性を改善します。具体的には、以下の様な方法があります。

人員削減
賃金カット
取引先の見直し
オフィスの賃料交渉
業務効率化

業務プロセスを見直し、無駄な作業を削減したりIT化を進めることで、業務効率を向上させコスト削減や生産性向上を目指します。具体的には、以下の様な方法があります。

業務の標準化
ITシステムの導入
従業員のスキルアップ

これらの手法を組み合わせることで、より効果的に事業再生を進めることができます。どの手法が最適かは、企業の置かれている状況や事業内容によって異なります。専門家のアドバイスを受けながら、適切な手法を選択することが重要です。


3. PMIとは?

PMIとは、「Post Merger Integration」の略称で、日本語では「合併後統合」と訳されます。M&A(企業合併・買収)後の統合プロセス全体を指し、企業文化や組織・人事制度・システム・社内ルールなど、あらゆる面を調整・統合しシナジー効果の創出と統合後の企業価値の最大化を目指す経営活動です。


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3.1 PMIの目的

PMIの目的は、M&Aによって設定した目標を達成し、統合によるシナジー効果を最大限に引き出すことです。具体的には、以下のような目的が挙げられます。

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1統合後の新組織体制の構築
2企業文化や価値観の融合
3重複する業務や組織の整理・統合によるコスト削減
4顧客基盤や販売チャネルの統合による売上拡大
5技術やノウハウの共有によるイノベーションの創出

3.2 PMIのプロセス

PMIのプロセスは、一般的に以下の3つの段階に分けられます。

PMIの準備段階

M&Aの契約締結後、統合完了までの期間に行う準備段階です。この段階では、統合後のビジョンや戦略を策定し、PMI計画を立案します。

また、統合に伴うリスクや課題を洗い出し、対応策を検討します。さらに、従業員へのコミュニケーションを図り、統合に対する理解と協力を得ることが重要です。

統合後のビジョン・戦略策定
PMI計画の立案
統合準備チームの発足
デューデリジェンスの実施
リスクと課題の特定と対応策検討
従業員へのコミュニケーション計画策定
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PMIの実行段階

M&A成立後、実際に統合業務を遂行していく段階です。この段階では、準備段階で策定した計画に基づき、人事制度や給与システム・ITシステムなどの統合を進めます。

また、従業員への研修や異文化理解を促進するためのプログラムを実施し、スムーズな統合を支援します。

新組織体制への移行
人事制度・給与システムの統合
ITシステムの統合
業務プロセス・フローの統合
従業員への研修・トレーニング
異文化理解の促進
統合進捗状況のモニタリングと評価
PMIの統合後の段階

統合が完了した後、新体制が安定的に運営されるように、継続的な改善活動を行います。この段階では、統合後の業績評価や課題の抽出を行い、必要に応じて改善策を講じます。また、従業員の定着やエンゲージメント向上に向けた取り組みも重要です。

統合後の業績評価
課題の抽出と改善策の実施
従業員の定着促進
シナジー効果の最大化に向けた取り組み
PMIの成功事例の共有
3.3 PMIにおける課題と成功要因

PMIは複雑で困難なプロセスであり、様々な課題が存在します。PMIを成功させるためには、以下のポイントを踏まえることが重要です。


PMIの課題
課題 詳細
文化の違い 合併する企業間で企業文化や価値観・経営方針などに違いがあると、統合がスムーズに進まない可能性があります。
コミュニケーション不足 統合プロセスや今後の見通しについて、従業員に対して十分な情報提供やコミュニケーションが行われないと不安や混乱が生じ、従業員のモチベーション低下離職に繋がる可能性があります。
システム統合の遅延 異なるシステムを統合する際に予想以上の時間やコストがかかったり、トラブルが発生したりする可能性があります。
優秀な人材の流出 統合による組織変更や人事異動などにより、優秀な人材が会社を去ってしまうことがあります。

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PMIの成功要因
成功要因 詳細
明確なビジョンと戦略 統合後の企業像や事業戦略を明確に示すことで、従業員が目指す方向性を共有し、統合プロセスへの意識統一を図ることができます。
綿密な計画と準備 統合プロセス全体を可視化し、各段階における具体的なスケジュールや担当者を明確にすることで混乱を防ぎ、スムーズな統合を進めることができます。
積極的なコミュニケーション 統合に関する情報発信や意見交換の場を設けることで、従業員の不安や疑問を解消し、統合への理解と協力を得ることが重要です。
優秀な人材の確保と育成 統合を成功に導くためには役員やPMI担当者がリーダーシップを発揮し、プロジェクトを推進できる人材や、専門知識やスキルを持った人材を確保し、育成することが重要です。
文化の融合 企業文化や価値観の融合を促進するために合同研修や交流イベントなどを実施し、相互理解を深めることが重要です。

PMIは、M&A後の企業価値向上に不可欠なプロセスです。綿密な計画と準備、そして積極的なコミュニケーションと文化の融合を促進することで、統合によるシナジー効果を最大限に引き出し、企業の成長につなげることが重要です。


4. M&A後に行うべきは?それぞれのケースと最適な選択

M&Aは、企業成長の有効な手段ですが、その後の統合プロセスを適切に行わなければ、期待した成果を得られない可能性があります。

M&A後の統合には、企業再生・事業再生・PMIなど様々な選択肢があり、それぞれの状況に合わせて最適な戦略を選択することが重要です。


4.1 企業価値が著しく低下している場合

企業価値が著しく低下している場合は、抜本的な改革が必要となるため、企業再生を検討する必要があります。法的整理・私的整理など、状況に応じた対応が必要です。


4.2 事業の収益性が低い場合

特定の事業の収益性が低い場合は、事業再生によって、その事業の収益力強化を図る必要があります。事業の選択と集中、・コスト削減・業務効率化などに取り組みます。

事業の選択と集中
収益性の高い事業に経営資源を集中する
収益性の低い事業を売却または撤退する
コスト削減
固定費の見直し
調達コストの削減
業務効率化
業務プロセスの見直し
ITシステムの導入

4.3 企業合併後の統合をスムーズに進めたい場合

企業合併後の統合をスムーズに進めシナジー効果を最大化するためには、綿密な計画に基づいたPMIの実施が不可欠です。PMIは、統合プロセス全体を管理し、円滑な統合を実現します。

段階 内容
PMIの準備段階
  • PMI計画の策定
  • 統合後の組織体制の設計
  • 統合によるリスクと課題の洗い出し
PMIの実行段階
  • 組織の統合
  • システムの統合
  • 人事制度の統合
  • 企業文化の融合
PMIの統合後の段階
  • 統合効果の測定
  • 課題への対応
  • 新たな企業文化の醸成

M&A後の統合は、企業の成長にとって非常に重要なプロセスです。それぞれの状況に合わせて、最適な戦略を選択し、計画的に実行していくことが成功の鍵となります。


5. まとめ

企業再生・事業再生・PMIは、いずれも企業の成長や改善を目的とした手法ですが、それぞれ異なるアプローチと目的を持っています。企業再生は、経営危機に陥った企業を立て直すための抜本的な改革を指し、法的整理や私的整理といった手法を用いる場合もあります。

一方、事業再生は、企業全体の立て直しではなく、収益性の低い事業の改善や、成長が見込める事業への集中などを目的とします。PMIは、M&A後、買収側と買収された側の企業文化や事業を統合し、シナジー効果を最大化するためのプロセスです。

M&A後の統合を成功させるには、それぞれの状況に合わせて、最適な手法を選択することが重要です。企業価値の向上、事業の収益性改善、円滑な統合など、目指すゴールによって、企業再生、事業再生、PMIを使い分ける必要があると言えるでしょう。



編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったPMIのエキスパート。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。

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