スモールM&Aで資金調達|種類とメリット・デメリットを徹底解説

スモールM&Aで資金調達|種類とメリット・デメリットを徹底解説

スモールM&Aによる資金調達は、事業承継や成長戦略において有力な選択肢となり得ますが、その仕組みやメリット・デメリットを正しく理解することが重要です。この記事では、スモールM&Aの定義や通常のM&Aとの違いから、資金調達におけるメリット・デメリット、そして具体的な種類までを網羅的に解説します。

これを読めば、スモールM&Aによる資金調達があなたの企業にとって最適な選択肢なのかどうかを判断するための材料が得られます。資金調達の多様な選択肢を検討する中で、スモールM&Aという手法を理解し、事業成長の新たな可能性を見出しましょう。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。



1. スモールM&Aとは

スモールM&Aとは、比較的小規模な企業の合併・買収(M&A)を指します。一般的には、買収対象企業の売上高や従業員数が少ない、あるいは取引金額が小さいM&Aのことを指し、具体的な金額や人数の定義は明確に定まっているわけではありません。中小企業の事業承継や、大企業の新規事業参入、競合他社の買収など、様々な目的で行われます。

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1.1 スモールM&Aの定義と規模

明確な定義はありませんが、一般的には取引金額が数億円から数十億円程度のM&AをスモールM&Aと呼ぶことが多いです。買収対象企業の従業員数が数十名程度、あるいは売上高が数億円から数十億円程度のケースが多いです。近年、後継者不足や事業承継問題を抱える中小企業が増加しており、その解決策としてスモールM&Aが注目を集めています。

また、大企業が新規事業に参入する手段としても、スモールM&Aが活用されるケースが増えています。ニッチな市場で高いシェアを持つ中小企業を買収することで、大企業は時間とコストをかけずに新規事業を立ち上げることができます。さらに、競合他社を買収することで、市場シェアを拡大し、競争力を強化する目的でもスモールM&Aが行われています。

規模の目安 取引金額 従業員数 売上高
マイクロM&A 数千万円〜1億円程度 数名〜10名程度 数千万円〜1億円程度
スモールM&A 1億円〜数十億円程度 10名〜数十名程度 数億円〜数十億円程度

これらの規模はあくまでも目安であり、業界や市場環境によって異なる場合があります。例えば、IT業界では、高い技術力を持つベンチャー企業が数億円規模で買収されるケースも珍しくありません。一方で、製造業では、工場や設備などの資産価値が高いため、数十億円規模のM&Aが一般的です。また、近年では、M&A仲介プラットフォームの登場により、数千万円規模のマイクロM&Aも増加傾向にあります。

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1.2 通常のM&Aとの違い

通常のM&Aと比較して、スモールM&Aは、取引金額が小さく、手続きも簡素化されている場合が多いです。デューデリジェンスの範囲も限定的になり、買収後の統合プロセスも比較的スムーズに進められる傾向があります。

また、通常のM&Aでは投資銀行などの仲介機関が関与することが多いですが、スモールM&Aでは、M&A仲介会社や弁護士、税理士などが関与することが一般的です。以下に、通常のM&AとスモールM&Aの違いをまとめました。

項目 通常のM&A スモールM&A
取引金額 数十億円〜数百億円以上 数億円〜数十億円程度
対象企業 大企業、上場企業 中小企業、非上場企業
手続き 複雑 比較的簡素
デューデリジェンス 広範囲 限定的
仲介機関 投資銀行など M&A仲介会社、弁護士、税理士など

ただし、スモールM&Aだからといって必ずしも手続きが簡単でリスクが低いとは限りません。買収対象企業の財務状況や事業内容をしっかりと調査し、適切な価格で買収することが重要です。また、買収後の統合プロセスも綿密に計画し、実行することで、シナジー効果を最大化し、企業価値の向上につなげることが重要です。

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2. スモールM&Aで資金調達するメリット

スモールM&Aによる資金調達は、従来の資金調達方法とは異なるメリットを持つ魅力的な選択肢です。ここでは、スモールM&Aによる資金調達のメリットを詳しく解説します。


2.1 事業拡大のための資金調達

スモールM&Aは、事業拡大のための資金調達手段として有効です。銀行融資のように返済義務が生じないため、財務状況への負担を軽減しながら、M&Aで得た資金を新たな設備投資や人材採用、マーケティング活動などに充てることができます。特に、ベンチャー企業や中小企業にとって、迅速な事業拡大を目指す上で強力なツールとなります。

2.1.1 新たな市場への進出

既存事業とは異なる市場に参入している企業を買収することで、新たな顧客層を獲得し、事業ポートフォリオを多様化できます。例えば、地方で事業を展開している企業が、都市部で事業展開している企業を買収することで、地理的な事業拡大を図ることができます。また、オンライン販売に特化した企業が、実店舗を持つ企業を買収することで、販売チャネルを拡大することも可能です。

2.1.2 競合他社の買収

競合他社を買収することで、市場シェアを拡大し、競争優位性を高めることができます。同時に、競合他社が持つ技術やノウハウ、顧客基盤などを吸収することで、自社の事業強化を図ることも可能です。例えば、地域密着型のスーパーマーケットが競合店を買収することで、地域におけるシェアを拡大し、価格交渉力を高めることができます。

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2.2 後継者不足の解消

中小企業において、後継者不足は深刻な問題です。スモールM&Aは、後継者問題の解決策としても有効です。事業を売却することで、経営者は事業承継を円滑に進めることができ、従業員の雇用も守ることができます。また、買収企業にとっては、既存の事業基盤や顧客基盤、従業員を獲得できるため、事業拡大のスピードを加速させることができます。

2.2.1 円滑な事業承継

後継者が見つからない場合、スモールM&Aによって事業を売却することで、創業者や経営者は円滑に事業承継を進めることができます。特に、長年培ってきた顧客基盤や従業員の雇用を守りたいと考えている経営者にとっては、M&Aは有力な選択肢となります。

2.2.2 従業員の雇用維持

事業を清算するのではなく、M&Aによって事業を承継することで、従業員の雇用を維持することができます。これは、地域経済への貢献にもつながります。


2.3 経営資源の獲得

スモールM&Aを通じて、技術、ノウハウ、人材、顧客基盤、ブランド力など、自社にはない経営資源を獲得することができます。これにより、自社の弱点を補完し、競争力を強化することが可能です。例えば、優れた技術を持つスタートアップ企業を買収することで、自社の製品開発力を強化したり、新たな市場に参入したりすることができます。

2.3.1 技術・ノウハウの取得

他社が持つ独自の技術やノウハウを獲得することで、自社の研究開発コストを削減し、製品やサービスの質を向上させることができます。例えば、AI技術を持つ企業を買収することで、自社のサービスにAIを導入し、付加価値を高めることができます。

2.3.2 優秀な人材の確保

買収対象企業に所属する優秀な人材を獲得することで、自社の組織力を強化することができます。特に、専門性の高い人材やマネジメント人材の確保は、企業の成長にとって重要です。

2.3.3 顧客基盤の拡大

買収対象企業が持つ顧客基盤を獲得することで、自社の売上拡大に繋げることができます。例えば、特定の顧客層に強い企業を買収することで、新たな顧客セグメントへのアプローチが可能になります。


2.4 シナジー効果による企業価値向上

スモールM&Aによって、買収企業と被買収企業の事業を統合することで、シナジー効果を生み出し、企業価値を向上させることができます。コスト削減や売上増加など、相乗効果によって得られるメリットは多岐にわたります。

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2.4.1 コスト削減

重複する部門や機能を統合することで、管理コストや人件費などを削減できます。例えば、両社の物流部門を統合することで、輸送コストを削減することができます。

2.4.2 売上増加

買収企業の販売網を活用して被買収企業の製品を販売したり、被買収企業の顧客基盤に買収企業の製品を販売したりすることで、売上増加を図ることができます。

メリット 内容 具体例
事業拡大のための資金調達 返済義務のない資金で事業拡大を加速 新製品開発、新規事業への投資
後継者不足の解消 円滑な事業承継と従業員の雇用維持 後継者不在の老舗企業の買収
経営資源の獲得 技術、ノウハウ、人材などを取得 特許技術を持つ企業の買収
シナジー効果による企業価値向上 コスト削減、売上増加など 販売網の統合による効率化

3. スモールM&Aで資金調達するデメリット

スモールM&Aによる資金調達は、メリットだけでなくデメリットも存在します。安易に進めると、資金繰りの悪化や事業の停滞を招く可能性もあるため、事前にデメリットを理解し、適切な対策を講じる必要があります。主なデメリットは以下の通りです。


3.1 買収価格の交渉の難しさ

スモールM&Aでは、対象企業の価値評価が難しいケースが多く、適正な買収価格の決定が困難になる場合があります。特に、非上場企業の場合、財務情報が限定的であることや、事業の将来性に対する評価が難しいことから、売手と買手の間で価格交渉が難航する可能性があります。また、M&Aアドバイザーの助言を得ることで、客観的な評価に基づいた価格交渉を進めることができますが、アドバイザー費用も考慮する必要があります。


3.2 PMI(買収後統合)の困難さ

PMI(Post Merger Integration)とは、M&A成立後に買収企業と被買収企業の経営資源や組織、文化などを統合するプロセスです。スモールM&AにおいてもPMIは重要ですが、経営資源が限られている中で、円滑な統合を進めることは容易ではありません。

特に、企業文化や従業員の意識の統合がうまくいかないと、生産性の低下や従業員の離職につながる可能性があります。PMIを成功させるためには、統合計画を綿密に作成し、従業員への丁寧な説明やコミュニケーションを徹底することが重要です。文化の違いを理解し、双方の企業の良い点を融合させる努力も必要です。

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3.2.1 人事制度の統合

給与体系や評価制度など、人事制度の統合は従業員のモチベーションに大きく影響します。統合前に双方の制度を比較分析し、公平性と透明性を確保した制度設計を行う必要があります。また、制度変更に伴う従業員への説明会などを実施し、不安や不満を解消することが重要です。

3.2.2 システムの統合

異なるシステムを利用している場合、システムの統合は大きな課題となります。統合にかかるコストや期間を事前に見積もり、段階的な統合計画を立てることが重要です。また、システム統合による業務への影響を最小限に抑えるための対策も必要です。


3.3 文化の違いによる摩擦

企業文化の違いは、PMIにおける大きな障壁となります。例えば、意思決定のプロセスやコミュニケーションスタイル、評価基準などが異なる場合、従業員同士の摩擦や連携不足が生じる可能性があります。文化の違いによる摩擦を軽減するためには、相互理解を深めるための研修や交流会などを実施することが有効です。

また、経営陣が率先して文化融合の重要性を訴え、新しい企業文化の醸成に努める必要があります。風土の違いを乗り越え、シナジー効果を発揮できる組織を作るためには、時間と労力を惜しまないことが重要です。


3.4 デューデリジェンスのコスト負担

デューデリジェンスとは、M&A対象企業の財務状況、法務状況、事業状況などを調査するプロセスです。スモールM&Aにおいてもデューデリジェンスは不可欠ですが、専門家(弁護士、会計士、税理士など)に依頼する費用は、買収企業にとって大きな負担となる可能性があります。

デューデリジェンスの費用対効果を考慮し、調査範囲や調査方法を適切に設定することが重要です。また、弁護士や会計士など、複数の専門家と連携することで、多角的な視点から調査を行い、リスクを最小限に抑えることができます。

項目 内容 対策
買収価格の交渉 対象企業の価値評価が難しく、適正価格の決定が困難 M&Aアドバイザーの活用、財務デューデリジェンスの徹底
PMI(買収後統合) 経営資源の不足、文化の違いによる摩擦 統合計画の策定、従業員への丁寧な説明、文化融合への取り組み
文化の違い 意思決定プロセス、コミュニケーションスタイルの相違 相互理解を深める研修、経営陣による文化融合の推進
デューデリジェンス 専門家への依頼費用が負担 費用対効果を考慮した調査範囲の設定、複数の専門家との連携

これらのデメリットを理解した上で、M&Aアドバイザーなどの専門家の支援を受けながら、慎重に進めることが、スモールM&Aによる資金調達を成功させる鍵となります。

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4. スモールM&Aによる資金調達の種類

スモールM&Aによる資金調達を実現する方法は、主に株式譲渡、事業譲渡、合併の3つの種類があります。それぞれの手法には特徴があり、売却側の企業の状況やニーズによって最適な方法を選択することが重要です。以下で、それぞれの資金調達の種類について詳しく解説します。


4.1 株式譲渡

株式譲渡とは、会社の株式を売却することで資金調達を行う方法です。スモールM&Aにおいては、株式の全部、もしくは一部を譲渡することで、経営権の移転を伴う場合と伴わない場合があります。この手法は、比較的手続きが簡便で、迅速に資金調達を実現できることがメリットです。また、売却側企業は、譲渡後も事業を継続できる可能性があります。

4.1.1 株式譲渡のメリット
手続きが比較的簡便
迅速な資金調達が可能
事業継続の可能性がある
4.1.2 株式譲渡のデメリット
少数株主との関係性への配慮が必要
簿外債務など隠れた負債のリスク

4.2 事業譲渡

事業譲渡とは、会社の事業の一部または全部を他の会社に譲渡することで資金調達を行う方法です。譲渡対象となる事業の資産、負債、契約、従業員などを特定し、包括的に譲渡します。この手法は、売却側企業が特定の事業のみを売却したい場合に有効です。また、不要な負債やリスクを限定できるメリットがあります。反面、事業を切り離すための手続きが複雑になる場合もあります。

4.2.1 事業譲渡のメリット
特定事業の売却が可能
不要な負債やリスクの限定
4.2.2 事業譲渡のデメリット
手続きが複雑になる場合がある
譲渡対象事業の切り分けが必要

4.3 合併

合併とは、2つ以上の会社が1つの会社に統合されることで資金調達を行う方法です。スモールM&Aにおいては、吸収合併と新設合併の2種類があります。吸収合併は、既存の一方の会社が他方の会社を吸収する形で統合される方法で、新設合併は、2つ以上の会社が新しく設立する会社に統合される方法です。合併は、経営基盤の強化やシナジー効果の創出を目的とする場合に有効です。ただし、手続きが複雑で時間を要することがあります。

4.3.1 合併の種類
種類 説明
吸収合併 既存企業Aが既存企業Bを吸収し、企業Aのみが残る
新設合併 既存企業Aと既存企業Bが合併し、新しい企業Cが設立される
4.3.2 合併のメリット
経営基盤の強化
シナジー効果の創出
4.3.3 合併のデメリット
手続きが複雑
時間を要する
文化の違いによる統合の難しさ

それぞれの資金調達の種類には、メリット・デメリットがあります。自社の状況やニーズに合わせて、最適な方法を選択することが重要です。M&Aアドバイザーなどの専門家に相談することで、より適切な判断ができます。デューデリジェンスやPMI(買収後統合)も重要な要素となるため、事前にしっかりと準備を行いましょう。資金調達だけでなく、事業承継を目的としたスモールM&Aも増加傾向にあり、中小企業にとって重要な選択肢となっています。

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5. まとめ

スモールM&Aは、資金調達の一つの手段として、事業拡大や後継者不足の解消など、様々なメリットがあります。特に、中小企業にとっては、大規模な資金調達よりも現実的な選択肢となり得ます。株式譲渡、事業譲渡、合併など、M&Aの手法も複数存在し、それぞれの状況に合わせた選択が可能です。

しかし、買収価格の交渉やPMIの難しさといったデメリットも存在します。デューデリジェンスやPMIを適切に行うことで、これらのリスクを軽減し、M&Aを成功に導くことができるでしょう。最終的には、自社の状況や目標に最適な資金調達方法を選択することが重要です。

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