経営再建のための資金調達【最新事例と活用できる制度】
業績悪化に直面し、経営再建を迫られている経営者の方々にとって、資金調達は不可欠な要素です。しかし、資金調達の方法は多岐にわたり、どの方法が自社にとって最適なのか判断に迷うことも多いでしょう。この記事では、経営再建を成功に導くための資金調達方法を網羅的に解説します。
銀行融資、政府系金融機関、補助金・助成金、ベンチャーキャピタル、エンジェル投資家など、様々な資金調達方法のメリット・デメリットを比較検討し、企業の状況に合わせた最適な選択を支援します。さらに、中小企業再生支援協議会や事業再生ADRといった活用できる制度も紹介することで、資金調達戦略の幅を広げます。
製造業や小売業など、具体的な最新事例も交えて解説することで、読者の理解を深めます。この記事を読むことで、経営再建に必要な資金を効果的に調達するための具体的な方法と、成功への道筋を理解することができます。
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編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建などを10年経験。3か月の経営支援サポートで、9か月後には赤字の会社を1億円の利益を計上させるなどの実績を多数持つ専門家。
1. 経営再建を迫られる原因と資金調達の必要性
企業が経営再建を迫られる原因は多岐に渡り、その背後には様々な要因が複雑に絡み合っています。業績の悪化は、多くの場合、単一の要因ではなく、複数の問題が同時発生、あるいは連鎖的に起こることによって深刻化します。だからこそ、早期に兆候を見極め、適切な対策を講じることが重要です。そして、その対策の多くは資金調達と密接に関係しています。
【関連】事業再生のための資金調達【成功事例から学ぶ実践ガイド】1.1 業績悪化の兆候を見極める
業績悪化の兆候は、財務指標の悪化だけでなく、非財務的な側面にも現れます。これらの兆候を早期に察知し、迅速な対応をすることで、経営再建の成功確率を高めることができます。
財務指標の悪化としては、売上高の減少、粗利益率の低下、営業利益の減少、経常利益の減少、最終利益の減少、債務超過などが挙げられます。これらの指標は、企業の収益性や財務の健全性を示す重要な指標であり、悪化傾向にある場合は注意が必要です。
非財務指標の悪化としては、従業員のモチベーション低下、顧客離れ、取引先の減少、市場シェアの低下、製品・サービスの品質低下などが挙げられます。これらの指標は、企業の将来的な業績に大きな影響を与えるため、軽視することはできません。
区分 | 財務指標 | 非財務指標 |
---|---|---|
収益性 | 売上高減少、粗利益率低下、営業利益減少 | 顧客離れ、市場シェア低下 |
安全性 | 債務超過、流動比率低下 | 取引先の減少 |
成長性 | 売上高成長率の鈍化 | 製品・サービスの品質低下 |
その他 | 在庫増加、不良債権増加 | 従業員のモチベーション低下 |
1.2 資金調達なしでの再建は困難か
多くの場合、経営再建には資金調達が必要不可欠です。なぜなら、業績悪化によって資金繰りが逼迫している状況下では、事業の立て直しに必要な投資や、債務の返済などが困難になるからです。資金調達によって、これらの課題を解決し、再建への道筋をつけることができます。
資金調達なしで再建が可能なケースとしては、軽微な業績悪化で、かつ、自己資金が十分にある場合などが考えられます。しかし、このようなケースは稀であり、ほとんどの場合、資金調達が必要となります。
資金調達の必要性が高いケースとしては、設備投資が必要な場合、新規事業への進出が必要な場合、債務超過の状態にある場合、金融機関からの借入金の返済が滞っている場合などが挙げられます。これらのケースでは、資金調達なしでの再建は非常に困難です。
資金調達は、単に資金繰りを改善するだけでなく、事業の再構築、新たな成長戦略への投資、企業価値の向上など、経営再建の様々な局面で重要な役割を果たします。そのため、経営再建を成功させるためには、適切な資金調達方法を選択し、実行することが不可欠です。
2. 経営再建における資金調達の目的
経営再建において資金調達は、単に資金不足を補うためだけに行うのではありません。企業の再生と将来の成長を確実なものとするために、明確な目的意識を持って行う必要があります。資金調達の目的は、大きく分けて短期的な資金繰り改善と中長期的な成長戦略への投資の2つに分類できます。
2.1 短期的な資金繰り改善
経営再建を迫られる企業は、多くの場合、資金繰りが悪化している状況にあります。そのため、まずは目先の支払いに対応するための資金調達が必要不可欠です。具体的には、従業員の給与、仕入代金の支払い、借入金の返済など、事業継続のために必要最低限の資金を確保することが目的となります。
短期的な資金繰り改善のための資金調達は、スピードが重視されます。迅速に資金を調達することで、事業の継続性を確保し、倒産リスクを回避することが重要です。資金調達方法としては、リスケジュール、つなぎ融資、ファクタリングなどが検討されます。
資金調達方法 | 概要 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
リスケジュール | 既存の借入金の返済条件を変更する | 新たな借入が必要ない | 金融機関の同意が必要 |
つなぎ融資 | 一時的な資金不足を補うための短期融資 | 短期間で資金調達が可能 | 金利が高め |
ファクタリング | 売掛債権を売却して資金化する | 審査が比較的緩やか | 手数料が発生する |
2.2 中長期的な成長戦略への投資
経営再建は、一時的な危機を乗り越えるだけでなく、将来の成長を見据えて行う必要があります。そのため、中長期的な成長戦略に基づいた投資のための資金調達も重要です。具体的には、新規事業への投資、設備投資、人材育成、研究開発など、企業の競争力強化につながる投資を行うことが目的となります。これらの投資は、企業の収益力向上や新たな市場開拓に繋がり、持続的な成長を可能にします。
中長期的な成長戦略への投資のための資金調達は、将来の収益性を重視して行う必要があります。投資によって得られるリターンが、資金調達コストを上回るように計画することが重要です。資金調達方法としては、株式発行、社債発行、事業再生ファンドなどが検討されます。
資金調達方法 | 概要 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
株式発行 | 新たな株式を発行して資金を調達する | 返済義務がない | 株式の希薄化が起こる |
社債発行 | 社債を発行して資金を調達する | 株式の希薄化がない | 返済義務がある |
事業再生ファンド | 事業再生を専門とするファンドから資金を調達する | 経営支援を受けられる | 経営の自由度が制限される場合がある |
短期的な資金繰り改善と中長期的な成長戦略への投資は、どちらか一方ではなく、バランスよく行うことが重要です。目先の危機対応に追われるだけでなく、将来の成長を見据えた投資を行うことで、真の経営再建を実現することができます。
3. 経営再建のための資金調達方法
経営再建を成功させるためには、適切な資金調達方法を選択することが不可欠です。企業の置かれた状況、必要な資金の規模、返済能力などを考慮し、最適な方法を選びましょう。
3.1 金融機関からの融資
金融機関からの融資は、経営再建における資金調達方法として、依然として主要な選択肢の一つです。融資の種類や審査基準などを理解し、自社に最適な融資を選択することが重要です。
3.1.1 銀行融資銀行融資は、最も一般的な資金調達方法です。運転資金や設備資金など、様々な用途で利用できます。ただし、厳しい審査基準をクリアする必要があります。返済能力の証明、事業計画の妥当性、担保の提供などが求められます。プロパー融資、コミットメントライン、シンジケートローンなど、様々な形態があります。
3.1.2 政府系金融機関の融資政府系金融機関は、政策的に中小企業の支援を行っており、民間の金融機関よりも低利で融資を受けられる可能性があります。日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などが代表的な機関です。経営改善計画の提出が求められる場合が多く、融資実行までの期間が比較的長い傾向があります。
3.2 補助金・助成金の活用
補助金・助成金は、返済不要な資金であるため、経営再建において非常に有効な資金調達方法となります。国や地方自治体など、様々な機関が提供しており、それぞれの要件を満たす必要があります。採択率が低い場合も多く、事前の綿密な準備が必要です。
3.2.1 経営改善計画策定支援事業経営改善計画策定支援事業は、中小企業が専門家の支援を受けて経営改善計画を策定する際に、その費用の一部を補助する制度です。計画策定の負担軽減につながります。
3.2.2 ものづくり補助金ものづくり補助金は、中小企業が革新的な製品やサービスを開発・生産するための設備投資等を支援する制度です。生産性向上や競争力強化を図ることができます。
3.3 投資家からの資金調達
投資家からの資金調達は、株式や社債の発行を通じて資金を調達する方法です。返済義務がない場合もありますが、経営権の一部を譲渡する可能性があります。成長性が見込まれる企業にとって有効な手段です。
3.3.1 ベンチャーキャピタルベンチャーキャピタルは、高い成長性を持つ未上場企業に投資を行う投資会社です。資金提供だけでなく、経営に関するアドバイスや人材紹介などのサポートも期待できます。
3.3.2 エンジェル投資家エンジェル投資家は、創業初期の企業に対して、自己資金で投資を行う個人投資家です。資金提供だけでなく、経営経験や人脈などを活かした支援を行う場合もあります。
【関連】【M&A専門家解説】資金調達の方法・種類とは?|最適な選択肢を徹底解説3.4 事業再生ADR
事業再生ADRは、裁判所を通さずに、弁護士や公認会計士などの専門家の仲介のもと、債権者と債務者が合意形成を目指す手続きです。法的拘束力のある合意を形成することで、事業の継続を図ります。
3.5 私的整理
私的整理は、裁判所を介さずに、債権者と債務者が直接交渉を行い、債務の減免や返済猶予などの合意を形成する手続きです。迅速な解決が期待できますが、すべての債権者の同意が必要となります。
【関連】経営再建と私的整理、その決定的な違いとは?4. 資金調達方法の選び方
最適な資金調達方法は、企業の置かれた状況、必要な資金の規模、返済能力、経営者のリスク許容度などによって異なります。以下の表を参考に、自社に最適な方法を選択しましょう。
資金調達方法 | メリット | デメリット | 適している状況 |
---|---|---|---|
銀行融資 | 比較的容易に利用可能 | 審査が厳しく、担保が必要な場合も | 安定した収益があり、返済能力が高い企業 |
政府系金融機関 | 低利で融資を受けられる可能性 | 審査に時間がかかる | 政策的に支援対象となる事業を行う企業 |
補助金・助成金 | 返済不要 | 採択率が低く、申請手続きが複雑 | 特定の要件を満たす事業を行う企業 |
投資家からの資金調達 | 返済義務がない場合も | 経営権の一部を譲渡する可能性 | 高い成長性が見込まれる企業 |
事業再生ADR | 法的拘束力のある合意形成が可能 | すべての債権者の同意が必要 | 事業継続の可能性がある企業 |
私的整理 | 迅速な解決が可能 | すべての債権者の同意が必要 | 早期の解決が必要な企業 |
5. 資金調達方法の選び方
経営再建を成功させるためには、企業の現状や再建計画に適した資金調達方法を選択することが不可欠です。それぞれの資金調達方法にはメリット・デメリットがあり、適切な選択が再建の成否を大きく左右します。ここでは、企業の状況に合わせた資金調達方法の選び方と、各方法のメリット・デメリットを詳しく解説します。
5.1 企業の状況に合わせた最適な選択
資金調達方法を選ぶ際には、以下の要素を総合的に考慮する必要があります。
経営状況 | 現在の財務状況、収益性、将来のキャッシュフロー予測などを正確に把握する必要があります。 |
---|---|
再建計画 | 再建計画の内容、必要な資金の規模、資金の使途などを明確にする必要があります。 |
調達可能額 | それぞれの資金調達方法で調達可能な金額を把握し、必要な資金を確保できる方法を選択する必要があります。 |
調達コスト | 金利、手数料、保証料などを考慮し、総コストを比較検討する必要があります。また、株式による調達の場合は、将来の株式価値の希薄化も考慮に入れる必要があります。 |
調達スピード | 資金調達のスピードも重要な要素です。緊急性の高い場合は、迅速に資金調達できる方法を選択する必要があります。 |
経営への影響 | 金融機関からの融資は、財務制限条項などが課される場合があります。また、株式による調達の場合は、経営権の希薄化も考慮する必要があります。 |
5.2 各資金調達方法のメリット・デメリット
主な資金調達方法のメリット・デメリットを以下の表にまとめました。
資金調達方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
銀行融資 |
|
|
政府系金融機関の融資(日本政策金融公庫など) |
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補助金・助成金 |
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ベンチャーキャピタル |
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エンジェル投資家 |
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事業再生ADR |
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私的整理 |
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上記以外にも、ファクタリング、クラウドファンディング、アセットベースドファイナンスなど、様々な資金調達方法があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の状況に最適な方法を選択することが重要です。専門家への相談も有効な手段です。資金調達方法の選択は経営再建の重要なステップであり、慎重な検討が必要です。
6. 経営再建の資金調達 最新事例
資金調達を成功させ、経営を再建した企業の事例を紹介します。これらの事例から、自社に適した資金調達方法や、再建計画のヒントを見つけることができるでしょう。
6.1 事例1 製造業A社:リスケジュールと補助金活用による再建
地方都市に拠点を置く老舗製造業A社は、主力製品の需要低迷と海外メーカーとの価格競争激化により、業績が急速に悪化していました。資金繰りが逼迫し、倒産の危機に瀕していたA社は、メインバンクである地方銀行とリスケジュール交渉を行い、返済期限の延長に成功しました。
同時に、経済産業省の「事業再構築補助金」に申請し、採択されました。補助金を活用して新たな生産ラインを導入し、高付加価値製品の開発に着手。これらの施策により、A社は業績を回復させ、経営再建を果たしました。
メインバンクとのリスケジュール交渉による返済負担の軽減 | |
事業再構築補助金の活用による設備投資と新製品開発 | |
人員配置の見直しとコスト削減 | |
取引先との連携強化による受注確保 |
6.2 事例2 小売業B社:私的整理による再建
大手スーパーマーケットチェーンの傘下にあった小売業B社は、消費者の購買行動の変化や競合他社の台頭に伴い、赤字が続いていました。親会社からの支援も打ち切られ、資金繰りが悪化したB社は、私的整理を選択しました。主要取引先である仕入業者や金融機関と協議を重ね、債務の減免や返済猶予を取り付けました。私的整理後、B社は独立した経営体制を構築し、地域密着型の店舗運営に注力することで、黒字化を達成しました。
6.2.1 B社の具体的な取り組み主要取引先との協議による債務の減免と返済猶予 | |
不採算店舗の閉鎖と効率的な店舗運営への転換 | |
地域ニーズに合わせた商品ラインナップの強化 | |
オンライン販売の導入による新たな顧客層の開拓 |
6.3 事例3 IT企業C社:ベンチャーキャピタルからの資金調達による再建
革新的な技術を持つIT企業C社は、開発費用が嵩み、資金繰りが悪化していました。資金調達を模索していたC社は、ベンチャーキャピタルからの出資を受けることに成功しました。調達した資金を元に、C社は製品開発を加速させ、市場シェアを拡大。最終的には株式上場を果たし、経営再建を成し遂げました。
6.3.1 C社の具体的な取り組みベンチャーキャピタルからの資金調達による開発費用の確保 | |
優秀なエンジニアの採用と開発体制の強化 | |
マーケティング戦略の見直しによる顧客獲得 | |
事業提携による販路拡大 |
6.4 事例4 飲食業D社:事業再生ADRによる再建
多店舗展開をしていた飲食業D社は、新型コロナウイルスの影響で売上が激減し、経営危機に陥りました。D社は、事業再生ADRを利用することで、債権者との合意形成を図り、再建計画を策定。金融機関からの追加融資と債務の減免を受け、事業規模を縮小しながらも、黒字化を目指した経営再建を進めています。
6.4.1 D社の具体的な取り組み事業再生ADRの活用による債権者との合意形成 | |
不採算店舗の閉鎖と人員削減によるコスト削減 | |
テイクアウトやデリバリーの導入による新たな収益源の確保 | |
衛生管理の徹底による顧客の信頼回復 |
企業 | 業種 | 主な資金調達方法 | 再建のポイント |
---|---|---|---|
A社 | 製造業 | リスケジュール、補助金 | 新製品開発、コスト削減 |
B社 | 小売業 | 私的整理 | 地域密着、オンライン販売 |
C社 | IT企業 | ベンチャーキャピタル | 製品開発、市場シェア拡大 |
D社 | 飲食業 | 事業再生ADR、追加融資 | コスト削減、新たな収益源 |
これらの事例はあくまで一例です。自社の状況に合った資金調達方法を選択し、適切な再建計画を策定することが重要です。
7. 活用できる制度
経営再建を成功させるためには、資金調達だけでなく、様々な支援制度を活用することも重要です。これらの制度は、資金調達を円滑に進めるためのサポートや、経営改善に向けたアドバイス、法的整理の支援など、多岐にわたるサービスを提供しています。以下、代表的な制度を紹介します。
7.1 中小企業再生支援協議会
中小企業再生支援協議会は、地域経済の活性化と中小企業の再生を目的とした公的機関です。経営再建に悩む中小企業に対し、専門家による相談や再生計画策定の支援、金融機関との調整などを無料で行っています。 協議会には、弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士など、様々な分野の専門家が登録しており、企業の状況に応じた適切なアドバイスを受けることができます。
主な支援内容は以下の通りです。
経営相談 | |
再生計画策定支援 | |
金融機関との調整 | |
事業再生に関するセミナー・研修の実施 |
相談は無料で、秘密厳守となっていますので、安心して相談することができます。 経営悪化の兆候が見られたら、早期に相談することが重要です。
7.2 事業再生実務家協会
事業再生実務家協会は、事業再生の専門家が集まる団体です。弁護士、公認会計士、税理士、金融機関担当者など、事業再生に精通した専門家が会員となっており、企業の再建をサポートしています。
主な活動内容は以下の通りです。
事業再生に関する調査・研究 | |
事業再生に関する研修・セミナーの開催 | |
事業再生に関する情報提供 | |
事業再生専門家の育成 |
事業再生実務家協会は、事業再生に関する情報をウェブサイトで公開しており、再生事例や専門家リストなども掲載されています。 再生に向けた情報収集や、適切な専門家を探す際に役立ちます。
7.3 信用保証協会
信用保証協会は、中小企業の金融円滑化を支援する公的機関です。中小企業が金融機関から融資を受ける際に、保証人となることで、融資を受けやすくする役割を担っています。 経営再建のために新たな融資が必要な場合、信用保証協会の保証を利用することで、融資がスムーズに進めやすくなります。
信用保証協会は、都道府県ごとに設置されており、各地域の経済状況や企業の特性に合わせたきめ細やかな支援を行っています。
7.4 商工会議所・商工会
商工会議所・商工会は、地域の中小企業を支援する団体です。経営相談や経営指導、各種セミナーの開催など、様々なサービスを提供しています。 経営再建についても相談が可能であり、専門家によるアドバイスや情報提供を受けることができます。
商工会議所・商工会は、地域に密着した活動を行っており、地域の特性に合わせたきめ細やかな支援を受けることができます。
制度名 | 概要 | 主な支援内容 | 対象 |
---|---|---|---|
中小企業再生支援協議会 | 地域経済の活性化と中小企業の再生を目的とした公的機関 | 専門家による相談、再生計画策定支援、金融機関との調整など | 中小企業 |
事業再生実務家協会 | 事業再生の専門家が集まる団体 | 事業再生に関する調査・研究、研修・セミナーの開催、情報提供など | 事業再生に取り組む企業、専門家 |
信用保証協会 | 中小企業の金融円滑化を支援する公的機関 | 中小企業が金融機関から融資を受ける際の保証 | 中小企業 |
商工会議所・商工会 | 地域の中小企業を支援する団体 | 経営相談、経営指導、各種セミナーの開催など | 地域の中小企業 |
これらの制度を積極的に活用することで、経営再建をよりスムーズに進めることができるでしょう。 各制度の特徴を理解し、自社の状況に合った制度を選択することが重要です。
8. 経営再建のための資金調達計画の立て方
経営再建を成功させるためには、綿密な資金調達計画が不可欠です。計画を立てる際には、現状分析、資金需要の予測、資金調達先の選定という3つのステップを踏むことが重要です。
8.1 現状分析
現状分析では、財務状況、事業の収益性、市場環境など、企業の現状を客観的に把握します。財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)を分析し、財務状況の健全性を評価します。また、SWOT分析を用いて、強み、弱み、機会、脅威を分析することで、経営課題を明確化し、再建計画の方向性を定めます。現状分析を徹底的に行うことで、資金調達額の算定根拠が明確になり、金融機関や投資家からの信頼獲得にも繋がります。
8.1.1 財務諸表の分析財務諸表を分析することで、企業の収益性、安全性、効率性、成長性を把握できます。これらの指標を分析することで、資金繰りの問題点や改善点を明らかにします。
8.1.2 SWOT分析SWOT分析では、企業の内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を分析し、経営戦略を策定する際に役立ちます。経営再建においては、弱みを克服し、機会を活かすための戦略を立案する上で重要なツールとなります。
8.1.3 事業の収益性分析各事業の収益性、市場シェア、競争優位性などを分析し、どの事業に投資を集中させるか、どの事業を縮小または撤退させるかを判断します。収益性の高い事業に資金を集中投下することで、早期の業績回復を目指します。
8.2 資金需要の予測
資金需要の予測では、再建計画を実行するために必要な資金の総額と、その資金がいつ、どの程度の期間必要になるかを予測します。設備投資、運転資金、借入金の返済など、資金の用途を明確にすることが重要です。資金需要を過小評価すると、再建計画の実行が滞る可能性があるため、余裕を持った予測が重要です。
8.2.1 設備投資老朽化した設備の更新や、新規事業への投資に必要な資金を算出します。投資計画の妥当性や投資効果についても検討します。
8.2.2 運転資金事業を運営するために必要な運転資金を予測します。売上高の予測に基づいて、仕入、人件費、販売費、一般管理費などを算出します。
8.2.3 借入金返済既存の借入金の返済計画を策定します。返済スケジュールと返済額を明確にすることで、資金繰りの逼迫を防ぎます。
8.3 資金調達先の選定
資金需要の予測に基づき、最適な資金調達方法と調達先を選定します。資金調達方法には、金融機関からの融資、補助金・助成金の活用、投資家からの資金調達、事業再生ADRなど、様々な方法があります。それぞれのメリット・デメリットを比較検討し、企業の状況に最適な方法を選択します。資金調達先の選定においては、調達コストだけでなく、返済条件や経営への関与度合いなども考慮する必要があります。
資金調達方法 | メリット | デメリット | 適している状況 |
---|---|---|---|
銀行融資 | 金利が比較的低い、手続きが比較的簡便 | 担保や保証人が必要となる場合がある、審査が厳しい | 一定の担保能力があり、返済能力も見込める場合 |
政府系金融機関の融資 | 低金利、長期返済が可能 | 審査基準が厳格、手続きに時間がかかる場合がある | 政策的に支援対象となる事業を展開している場合 |
ベンチャーキャピタル | 多額の資金調達が可能、経営ノウハウの提供を受けられる | 株式の希薄化、経営への関与が生じる | 高い成長性が見込まれる事業を展開している場合 |
補助金・助成金 | 返済不要 | 申請手続きが煩雑、採択率が低い | 特定の要件を満たす事業を展開している場合 |
これらのステップを踏まえ、資金調達計画書を作成します。計画書には、資金調達額、調達方法、調達先、資金の用途、返済計画などを記載します。作成した計画書は、金融機関や投資家との交渉に活用します。綿密な資金調達計画を策定することで、経営再建の成功確率を高めることができます。
9. まとめ
経営再建を成功させるためには、適切な資金調達と綿密な計画が不可欠です。業績悪化の兆候を早期に察知し、資金調達なしでの再建が困難と判断した場合は、迅速な行動が必要です。資金調達の目的は、短期的な資金繰り改善だけでなく、中長期的な成長戦略への投資も含まれます。そのため、銀行融資、政府系金融機関融資、補助金・助成金、投資家からの資金調達、事業再生ADR、私的整理など、様々な資金調達方法を検討する必要があります。
企業の状況、成長段階、再建計画の内容によって最適な資金調達方法は異なります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社に最適な方法を選択することが重要です。例えば、短期的な資金繰り改善には銀行融資が適していますが、中長期的な成長戦略にはベンチャーキャピタルからの投資が有効な場合もあります。中小企業再生支援協議会や事業再生実務家協会などの支援制度も活用し、専門家のアドバイスを受けることも検討しましょう。
資金調達計画を立てる際には、現状分析に基づいた資金需要の予測、そして資金調達先の選定が重要です。本記事で紹介した事例や制度を参考に、自社に最適な資金調達計画を策定し、経営再建を成功に導きましょう。早期の専門家への相談も、再建成功の可能性を高める重要な要素となります。