M&Aアドバイザリー契約、解約前に知っておくべきこと!違約金やトラブル回避のポイント
M&Aアドバイザリー契約の解約は、違約金やその後のM&Aプロセスに大きな影響を与える可能性があり、慎重に進める必要があります。この記事では、解約を検討する際に知っておくべきポイントを、契約期間、違約金の有無、トラブル事例などを交えて解説します。
スムーズな解約を実現し、不要なリスクを回避するために、契約書の内容確認はもちろん、アドバイザーとのコミュニケーション、弁護士への相談の重要性についても理解することができます。M&Aアドバイザリー契約解約に関する不安や疑問を解消し、適切な対応策を学ぶことで、今後の事業展開をよりスムーズに進めることができるでしょう。
「M&Aは何から始めればいいかわからない」という経営者からも数多くのご相談をいただいています。M&Aを成功に導くはじめの一歩は無料のオンライン相談から。お気軽にご相談ください。
365日開催オンライン個別相談会
編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。
1. M&Aアドバイザリー契約を解約したいケース
M&Aアドバイザリー契約を解約したいと考える理由は様々ですが、主なケースは以下の通りです。
1.1 M&Aプロセスが長期化している当初想定していたよりもM&Aプロセスが長期化し、時間的コストや機会損失が大きくなっている場合、解約を検討するケースがあります。例えば、市場環境の変化や買収対象企業の業績悪化、デューデリジェンスの遅延、交渉の難航などが原因で、想定外の長期化に陥ることがあります。
また、買収対象企業との条件交渉がまとまらず、時間だけが過ぎていくケースも考えられます。このような状況下では、当初のM&A戦略を見直し、契約を継続すべきか、解約すべきかを判断する必要があります。
M&Aアドバイザーとの間で、戦略や方針、実行方法などに相違が生じ、当初想定していたサポートが受けられない場合、解約を検討するケースがあります。
例えば、アドバイザーが提示するM&A候補先が自社の戦略と合致しない、アドバイザーの対応が遅い、コミュニケーションが不足している、あるいは、アドバイザーの専門性が不足していると感じた場合などが挙げられます。このような状況では、アドバイザーを変更するか、契約を解約するかの選択を迫られます。
方向性の違いが生じる具体的な例としては、以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
買収対象の選定基準 | 財務状況重視 vs 将来性重視 |
デューデリジェンスの深度 | 簡易的な調査 vs 詳細な調査 |
交渉戦略 | 強気な交渉 vs 穏便な交渉 |
PMI(買収後の統合プロセス)への関与 | 積極的な関与 vs 消極的な関与 |
M&Aを進める中で、自社の経営戦略の見直しや市場環境の急激な変化などにより、M&A自体を中止せざるを得ない状況になる場合があります。例えば、新型コロナウイルス感染症の拡大のような予期せぬ事態が発生した場合や、自社の業績が想定以上に悪化した場合などが考えられます。
また、デューデリジェンスの結果、買収対象企業に重大な問題が発覚し、M&Aを中止せざるを得ないケースもあります。このような状況では、M&Aアドバイザリー契約も解約する必要が生じます。M&A中止の判断は、企業にとって大きな決断となるため、慎重な検討が必要です。
M&Aを中止する理由の例としては、下記のようなものが挙げられます。
- 買収対象企業の業績悪化
- 想定外の負債の発覚
- コンプライアンス違反
- シナジー効果が見込めない
- 社内体制の不備
- 資金調達の問題
- 株主総会での承認が得られない
2. M&Aアドバイザリー契約の解約条項
M&Aアドバイザリー契約を解約する際には、契約書に記載されている解約条項を綿密に確認することが不可欠です。契約内容によって解約の条件や手続きが異なるため、事前にしっかりと把握しておくことで、後々のトラブルを回避できます。特に、違約金に関する条項は注意深く確認しましょう。
2.1 契約期間と解約予告期間M&Aアドバイザリー契約には、契約期間と解約予告期間が定められていることが一般的です。契約期間は、アドバイザーがM&Aの助言を行う期間を指し、数ヶ月から数年までと契約によって様々です。
解約予告期間は、契約を解約する際に事前に通知する必要がある期間を指し、通常は1ヶ月から3ヶ月程度です。
契約期間満了前に解約する場合、この解約予告期間を守って通知する必要があります。契約書に解約予告期間に関する規定がない場合、民法の規定に基づき、相当の期間を置いて解約の意思表示をする必要があります。
M&Aアドバイザリー契約を解約する際に、違約金が発生するケースがあります。違約金の発生条件や金額は契約によって異なるため、契約書をよく確認することが重要です。特に、契約期間満了前にクライアント側の都合で解約する場合、違約金が発生する可能性が高くなります。一方で、アドバイザー側の重大な契約違反や義務不履行があった場合は、クライアント側が違約金を請求せずに解約できる場合もあります。
2.2.1 成功報酬の扱いM&Aが成立した場合にアドバイザーに支払われる成功報酬についても、解約条項で規定されていることが多いです。契約期間中にM&Aが成立した場合、成功報酬の支払い義務が生じますが、解約によってM&Aが不成立となった場合、成功報酬の扱いも契約内容によって異なります。
例えば、解約時点でのM&Aの進捗状況に応じて、成功報酬の一部が支払われる場合や、全く支払われない場合などがあります。また、クライアント側の都合で解約した場合でも、既にアドバイザーが一定の成果を上げていた場合は、その成果に対する報酬が支払われるケースもあります。これらの規定は契約によって様々であるため、事前に確認しておくことが重要です。
M&Aアドバイザーは、業務遂行のために交通費、宿泊費、資料作成費などの実費を支出することがあります。これらの実費は、契約に基づきクライアントが負担するのが一般的です。契約解約時に、既に発生した実費や、解約によって発生する実費(例えば、既に予約済みの出張のキャンセル料など)の精算方法についても、契約書で明確に定めておく必要があります。以下に実費精算に関する一般的なパターンをまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
交通費 | 電車、タクシー、飛行機などの交通費。領収書の提出が必要な場合が多い。 |
宿泊費 | M&A関連の出張時の宿泊費。ホテルのグレードなどに上限が設定されている場合もある。 |
資料作成費 | M&Aに関する資料作成にかかった費用。印刷費、製本費などが含まれる。 |
デューデリジェンス費用 | デューデリジェンスを実施する場合の専門家への費用。弁護士、会計士などへの報酬が含まれる。 |
その他 | 上記以外の費用。契約書に明記されていない費用の発生については、事前にクライアントとの合意が必要となる。 |
これらの費用は、契約解除の理由や時期に関わらず、クライアントが負担するケースが多いですが、契約書によっては、クライアントの責めに帰すべき事由による解約の場合に限り、クライアントが負担するといった規定が設けられている場合もあります。また、実費の範囲や上限額についても契約で定められていることが一般的です。
契約書に記載のない費用が発生する場合は、事前にアドバイザーとクライアントの間で合意しておくことが重要です。これらの点を確認せずに契約を締結してしまうと、後々思わぬ費用負担が発生する可能性があるため、注意が必要です。
M&Aアドバイザリー契約の解約をめぐっては、様々なトラブルが発生する可能性があります。事前にトラブル事例を理解しておくことで、未然に防いだり、適切な対応をとったりすることができます。以下、代表的なトラブル事例を紹介します。
3.1 違約金の金額をめぐる争いM&Aアドバイザリー契約の解約において、最も多いトラブルが違約金の金額をめぐる争いです。契約書に違約金の金額が明確に記載されていない場合や、記載されている金額が妥当でないと判断される場合に、紛争に発展することがあります。
例えば、成功報酬型の契約で、M&Aが成立しなかった場合でも、アドバイザーが既に相当の業務を遂行していた場合、その業務に見合った費用を請求されるケースがあります。契約書に「M&Aが成立しなかった場合の報酬」に関する条項が曖昧だと、想定外の金額を請求され、トラブルに発展する可能性があります。
また、契約解除の理由がどちらにあるかによっても、違約金の金額が変わる可能性があります。例えば、依頼側の都合で契約を解除する場合と、アドバイザー側の重大な過失によって契約を解除する場合では、違約金の金額が異なるケースが考えられます。
成功報酬の扱いは特に注意が必要です。M&Aが成立直前に破談になった場合、アドバイザー側は多大な労力を費やしているため、成功報酬の一部または全額を請求することがあります。契約書に成功報酬の算定方法や支払時期が明確に記載されていない場合、トラブルに発展する可能性が高くなります。
3.1.2 実費精算実費精算に関しても、領収書の提出が義務付けられていなかったり、精算範囲が曖昧であったりすると、トラブルの原因となります。例えば、交通費や宿泊費、資料作成費などがどこまで認められるか、事前に明確にしておく必要があります。
3.2 守秘義務違反M&Aアドバイザリー契約では、守秘義務が課せられます。解約後もこの義務は継続するため、アドバイザーがM&Aに関する情報を漏洩した場合、重大なトラブルに発展する可能性があります。特に、競合他社に情報が漏洩した場合、企業の存続に関わる事態になりかねません。
また、依頼側も、アドバイザーから提供された情報や、M&Aに関する社内情報を不用意に開示しないよう注意が必要です。守秘義務違反は、金銭的な損害賠償請求だけでなく、企業の信用失墜にもつながるため、厳格な管理体制が必要です。
トラブル事例 | 内容 | 対策 |
---|---|---|
違約金に関する紛争 | 契約書に違約金の金額や算定方法が明確に記載されていない場合、紛争が発生しやすい。 | 契約前に、違約金に関する条項を詳細に確認し、不明点があれば弁護士に相談する。 |
成功報酬の支払い | M&Aが不成立の場合でも、アドバイザーが一定の業務を遂行していれば、成功報酬の一部を請求される可能性がある。 | 成功報酬の発生条件や算定方法を契約書に明記し、M&A不成立の場合の取り扱いについても明確にしておく。 |
実費精算のトラブル | 実費の範囲や精算方法が曖昧な場合、トラブルが発生しやすい。 | 実費の範囲や精算方法、領収書の提出義務などを契約書に明記する。 |
守秘義務違反 | アドバイザーがM&Aに関する情報を漏洩した場合、重大な損害が発生する可能性がある。 | 守秘義務条項を契約書に盛り込み、違反した場合の罰則規定を設ける。 |
これらのトラブルを避けるためには、契約前に契約書の内容を詳細に確認し、不明点があれば弁護士に相談することが重要です。特に、違約金、成功報酬、実費精算、守秘義務に関する条項は、トラブルになりやすい部分なので、慎重に確認する必要があります。また、アドバイザーとのコミュニケーションを密に取り、信頼関係を構築することも重要です。万が一、トラブルが発生した場合には、速やかに弁護士に相談し、適切な対応をとるようにしましょう。
4. M&Aアドバイザリー契約解約をスムーズに進めるためのポイントM&Aアドバイザリー契約の解約は、思わぬトラブルに発展する可能性があるため、慎重に進める必要があります。円滑な解約を実現するためのポイントは以下のとおりです。
4.1 アドバイザーとの早期のコミュニケーション解約を検討し始めたら、まずはアドバイザーにその旨を伝え、早期に話し合いを開始することが重要です。解約の理由、今後のM&Aの方向性、契約内容の確認など、オープンなコミュニケーションを図ることで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
特に、契約内容に不明点があれば、この段階で解消しておくべきです。曖昧なまま放置すると、後に大きな問題に発展する可能性があります。例えば、成功報酬の支払い条件や、契約解除に関する違約金の有無などをしっかりと確認しましょう。また、話し合いの内容や決定事項は、書面に残しておくことが重要です。口約束だけでは、言った言わないの水掛け論になる可能性があります。
口頭での合意だけでは、後々トラブルに発展する可能性があります。解約条件、違約金の有無や金額、今後の手続きなど、すべての合意事項は書面に残しましょう。書面を作成する際には、双方の認識に齟齬がないか、内容を慎重に確認することが重要です。また、日付を明記し、双方が署名捺印することで、法的効力も高まります。契約書作成にあたっては、弁護士などの専門家のアドバイスを受けることも有効です。
4.3 弁護士への相談M&Aアドバイザリー契約は専門性の高い契約です。解約に関する法的知識が不足していると、不利な条件で解約させられてしまう可能性もあります。契約内容に不明点があったり、アドバイザーとの交渉が難航したりする場合は、弁護士に相談することを強くおすすめします。
弁護士は、契約内容を客観的に分析し、適切なアドバイスを提供してくれます。また、アドバイザーとの交渉を代理で行ってもらうことも可能です。弁護士費用はかかりますが、将来的なトラブルや損失を考えると、早期に専門家に相談することは非常に重要です。
ポイント | 詳細 | メリット |
---|---|---|
早期のコミュニケーション | 解約の意向を早めに伝え、理由や今後のM&Aの方向性などを話し合う | トラブルの未然防止、円滑な解約手続き |
書面での合意 | 解約条件、違約金、今後の手続きなど、全ての合意事項を書面に残す | 言った言わないの水掛け論防止、法的効力の確保 |
弁護士への相談 | 契約内容の不明点やアドバイザーとの交渉が難航する場合は弁護士に相談する | 専門家のアドバイス、不利な条件での解約防止 |
M&Aアドバイザリー契約の解約は、企業にとって重要な意思決定です。上記3つのポイントを踏まえ、慎重かつ適切な対応を行うことで、スムーズな解約を実現し、将来的なリスクを最小限に抑えることができます。特に、M&Aアドバイザーとの関係構築は、契約締結時から重要です。良好な関係を築いておくことで、解約時にも円滑なコミュニケーションが可能となります。
また、契約内容をしっかりと理解しておくことも重要です。契約書に記載されている解約条項、違約金、通知期間などを事前に確認し、疑問点があればアドバイザーに確認しておきましょう。これらの準備を怠ると、後々大きな損失を被る可能性があります。契約締結時から、解約の可能性も視野に入れ、準備を進めておくことが大切です。
5. まとめ
M&Aアドバイザリー契約の解約は、契約内容をよく理解し、適切な手順を踏むことが重要です。契約期間、解約予告期間、違約金の有無などを事前に確認し、アドバイザーとのコミュニケーションを密にすることで、トラブルを回避できます。
特に、違約金については、成功報酬の扱い、実費精算など、契約書に明記されている内容を理解しておくことが大切です。解約に関する疑問や不安がある場合は、弁護士に相談することで、よりスムーズな解約手続きを進めることができます。早期の対応と適切な準備によって、M&Aアドバイザリー契約の解約を円滑に進め、不要なリスクを軽減しましょう。