PER(株価収益率)とは?PBRの違いも解説!M&Aでわかる企業価値の目安とは?【初心者向け】

PER(株価収益率)とは?PBRの違いも解説!M&Aでわかる企業価値の目安とは?【初心者向け】

「PER」や「PBR」って、投資の世界でよく聞くけど、実際にはどんな意味?M&Aでの企業価値にも関係するってホント? この記事では、初心者の方にもわかりやすく、PERとPBRの基本的な考え方からそれぞれの指標の見方、目安となる数値、そしてM&Aにおける活用方法まで解説していきます。トヨタ自動車やソフトバンクなど、身近な企業を例に挙げながら、投資の世界で重要な指標である「PER」「PBR」を理解し、企業分析に役立てましょう。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。



1. PER(株価収益率)とは

PER(株価収益率:Price Earnings Ratio)は、企業の収益力に対する株価の水準を測る指標の一つです。一言で言えば、「株価が1株当たり純利益の何倍になっているか」を表しています。投資家はPERを見ることで、その企業の株価が割高か割安かを判断する材料とします。


1.1 PER(株価収益率)の基本的な考え方

PERは、以下の計算式で算出されます。

PER = 株価 ÷ 1株当たり純利益

例えば、ある企業の株価が2,000円、1株当たり純利益が200円だった場合、PERは10倍(2,000円 ÷ 200円)となります。これは、投資家が1株当たり200円の利益を得るために、2,000円の株価を支払っていることを意味します。


1.2 PER(株価収益率)の見方

PERは、一般的に以下の3つの視点から評価されます。

PERの水準 評価 説明
低いPER 割安 株価に対して企業の収益力が高いことを示唆しており、割安と判断されることが多いです。
高いPER 割高 株価に対して企業の収益力が低いことを示唆しており、割高と判断されることが多いです。
適切なPER - 業種や企業の成長性、市場環境によって異なるため、一概には判断できません。
1.2.1 PERを見る上での注意点
PERは過去の業績に基づいて算出されるため、将来の収益を保証するものではありません。
企業の会計基準や財務状況によって、PERが影響を受ける可能性があります。
業種や企業の成長ステージによって、PERの適正水準は異なります。

1.3 PER(株価収益率)の目安

PERの目安は、業種や市場環境によって異なりますが、一般的には以下の通りです。

業種 PERの目安
成長産業(IT、バイオなど) 20倍以上
成熟産業(食品、電力など) 10倍~20倍
不況産業(鉄鋼、造船など) 10倍以下

ただし、PERはあくまでも目安の一つであり、投資判断においては、他の指標と合わせて総合的に判断することが重要です。


2. PBR(株価純資産倍率)とは

PBR(Price Book-value Ratio)は、株価純資産倍率と訳され、企業の純資産価値に対して、その企業の株価が何倍になっているかを示す指標です。株価を1株あたりの純資産で割ることで算出されます。


2.1 PBR(株価純資産倍率)の基本的な考え方

PBRは、企業の解散価値をイメージする指標として用いられます。もしも企業が解散することになれば、保有資産を売却し、負債を返済した後に残るお金が株主に分配されます。この時、1株あたりに分配される金額が純資産価値であり、PBRは現在の株価がその純資産価値に対して何倍になっているかを表しているのです。


2.2 PBR(株価純資産倍率)の見方

PBRの数値が1倍を上回っている場合、その企業の株価は純資産価値よりも高く評価されていることを意味します。投資家は、その企業の将来的な収益成長や資産価値の上昇に期待して、現在の純資産価値以上の価格で株を購入していると考えられます。

逆に、PBRが1倍を下回っている場合、株価は純資産価値よりも低く評価されていることになります。これは、その企業の将来性に対する不安や、資産の収益性が低いと見なされている可能性を示唆しているかもしれません。ただし、業種や企業の置かれている状況によっては、一時的にPBRが低くなる場合もあるため、注意が必要です。


2.3 PBR(株価純資産倍率)の目安

PBRの目安は、業種や市場環境によって異なります。一般的には、成長性の高い企業や、収益性の高い資産を保有する企業はPBRが高くなる傾向があります。逆に、成熟した産業や、収益性の低い資産が多い企業はPBRが低くなる傾向があります。

PBR 評価
1倍未満 割安の可能性:資産価値に対して株価が低い。
1倍~2倍 適正水準:多くの企業がこの範囲に収まる。
2倍以上 割高の可能性:将来的な成長に期待が高まっている。

ただし、PBRはあくまでも目安の一つであり、PBRだけで企業価値を判断することはできません。他の指標と組み合わせて総合的に判断することが重要です。


3. PERとPBRの違い

PERとPBRは、どちらも企業価値を評価する上で重要な指標ですが、その視点や計算方法が異なります。それぞれの違いを理解することで、より多角的に企業を分析することができます。


3.1 PERとPBRの違いを理解する

PERとPBRの最も大きな違いは、企業の何を基に評価しているかという点にあります。

指標 評価の基準 特徴
PER(株価収益率) 企業の収益力(利益) 投資家が企業の1株あたり利益に対して、何倍の価格を支払っているかを示す。
PBR(株価純資産倍率) 企業の資産価値(純資産) 投資家が企業の1株あたり純資産に対して、何倍の価格を支払っているかを示す。

3.2 PERとPBRの使い分け

PERとPBRは、それぞれ異なる視点で企業を評価する指標であるため、その特性を理解した上で使い分けることが重要です。主な使い分けは以下の通りです。

3.2.1 PERが有効なケース
収益が安定している企業
成長性の高い企業

PERは収益を重視した指標であるため、収益が安定している企業や、将来的に収益の拡大が見込める成長性の高い企業を評価する際に有効です。例えば、製造業や小売業など、安定した収益基盤を持つ企業を比較する際に適しています。

3.2.2 PBRが有効なケース
資産価値が高い企業
解散価値を重視する場合

PBRは資産価値を重視した指標であるため、不動産や金融資産など、保有資産価値が高い企業を評価する際に有効です。また、企業が解散した場合に株主に戻ってくる資産の目安となるため、投資のリスクを測る指標としても活用されます。例えば、不動産投資会社や銀行など、資産規模の大きい企業を比較する際に適しています。


3.3 PERとPBRの注意点

PERとPBRはあくまでも企業を評価する上での指標の一つであり、これらの数値だけで投資判断を下すことは危険です。PERやPBRを見る際には、以下の点に注意する必要があります。

3.3.1 業種や企業の特性を考慮する

PERやPBRの値は、業種や企業の特性によって大きく異なります。例えば、成長産業やハイテク産業は一般的にPERが高くなる傾向があります。また、同じ業種内でも、企業の成長段階や経営戦略によってPERやPBRは大きく異なる場合があります。

3.3.2 他の指標と組み合わせて分析する

PERやPBRだけで企業を評価するのではなく、ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)などの収益性指標、財務状況を示す指標などと組み合わせて分析することで、より多角的に企業を評価することができます。

3.3.3 将来の見通しを考慮する

PERやPBRは過去のデータに基づいた指標であるため、将来の企業業績や成長性を反映しているわけではありません。投資判断を行う際には、将来の事業計画や市場環境なども考慮する必要があります。例えば、新規事業への投資やM&Aなど、将来の収益に影響を与える可能性のあるイベントを考慮する必要があります。


4. M&Aにおける企業価値の評価

M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略で、日本語では企業の合併・買収を意味します。企業が成長戦略の一環として、他の企業を合併または買収する場合、その対象となる企業の価値を適切に評価することが非常に重要になります。


4.1 M&Aにおける企業価値とは?

M&Aにおける企業価値とは、買収対象となる企業の経済的な価値を指します。企業価値は、将来の収益力や資産価値、ブランド力、人材、技術力など、さまざまな要素を総合的に考慮して評価されます。M&Aでは、この企業価値をベースに、買収価格が決定されます。

企業価値は、株式時価総額のように単純に算出できるものではありません。株式時価総額は、株式市場における評価であり、必ずしも企業の真の価値を反映しているとは限りません。M&Aでは、より詳細な分析に基づいた企業価値評価が求められます。


4.2 M&AにおけるPER、PBRの活用方法

PERやPBRは、株式投資における指標として知られていますが、M&Aにおいても企業価値を評価する際の目安として活用されます。

4.2.1 PER(株価収益率)

PERは、企業の収益力に対する市場の評価を示す指標です。PERが高い企業は、市場から高い成長が期待されていることを意味します。M&Aにおいては、買収対象企業のPERと、類似する業種・規模の企業のPERを比較することで、買収価格の妥当性を判断する材料の一つとなります。

PERが類似企業よりも高い場合割高な買収となる可能性があるため、将来の収益成長に見合った価格設定になっているか慎重に検討する必要があります。
PERが類似企業よりも低い場合割安な買収となる可能性があるため、買収のチャンスと捉えられる可能性があります。ただし、PERが低い理由を分析し、企業価値が低く評価されている要因が、業績悪化や将来リスクなどを反映したものではないかを確認する必要があります。
4.2.2 PBR(株価純資産倍率)

PBRは、企業の純資産に対する市場の評価を示す指標です。PBRが高い企業は、市場から高い資産価値を評価されていることを意味します。M&Aにおいては、買収対象企業のPBRと、類似する業種・規模の企業のPBRを比較することで、買収価格の妥当性を判断する材料の一つとなります。

PBRが類似企業よりも高い場合割高な買収となる可能性があるため、将来の収益成長や資産の有効活用によって、現在のPBRに見合った価値を生み出せるかを検討する必要があります。
PBRが類似企業よりも低い場合割安な買収となる可能性があるため、買収のチャンスと捉えられる可能性があります。ただし、PBRが低い理由を分析し、企業価値が低く評価されている要因が、含み損を抱えているなど、資産内容に問題がないかを確認する必要があります。

4.3 企業価値評価の目安とは?

M&Aにおける企業価値評価には、一般的に以下の3つのアプローチが用いられます。

4.3.1 1. インカムアプローチ

インカムアプローチは、企業の将来の収益力を現在価値に割り引いて算出する方法です。代表的な手法としては、DCF法(割引キャッシュフロー法)があります。

  • DCF法:将来のフリーキャッシュフローを現在価値に割り引いて、企業価値を算出する方法です。将来予測に基づくため、予測の精度が重要となります。
4.3.2 2. マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、類似企業の株価やM&A事例などを参考に、企業価値を算出する方法です。代表的な手法としては、類似会社比較法や類似取引比較法があります。

類似会社比較法類似する業種・規模の上場企業のPER、PBR、EBITDA倍率などの市場取引情報を参考に、対象企業の企業価値を算出する方法です。
類似取引比較法過去に成立したM&A事例における買収価格や倍率などを参考に、対象企業の企業価値を算出する方法です。
4.3.3 3. アセットアプローチ

アセットアプローチは、企業の純資産を時価に評価して、企業価値を算出する方法です。代表的な手法としては、時価純資産法があります。

時価純資産法企業の保有する資産と負債を時価で評価し、純資産額を算出することで、企業価値を算出する方法です。不動産や金融商品など、時価評価しやすい資産が多い企業で有効な手法です。

これらの評価方法を単独で用いるのではなく、複数の方法を組み合わせて、より精度の高い企業価値評価を行うことが一般的です。また、M&Aの目的や状況、対象企業の特性などを考慮して、最適な評価方法を選択することが重要となります。


5. まとめ

今回はPERとPBRの違いについて解説しました。PERは利益に着目した指標であり、PBRは資産に着目した指標です。どちらも企業価値を評価する上で重要な指標ですが、それぞれ異なる視点を持っているため、使い分けることが大切です。

M&Aにおいては、これらの指標を参考にしながら、企業の将来性や収益力、リスクなどを総合的に判断し、企業価値を評価します。ソフトバンクによるARMホールディングスの買収のように、PER、PBRなどの指標だけでは測れない要素も考慮する必要があるでしょう。

投資判断は自己責任で行いましょう。

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