資金調達コストを徹底比較!計算方法とコストを抑えるための注意点

資金調達コストを徹底比較!計算方法とコストを抑えるための注意点

資金調達を検討する際に、避けては通れないのが「資金調達コスト」。このコストを深く理解していないと思わぬ負担を抱え、事業の成長を阻害してしまう可能性もあります。

本記事では、資金調達コストの基礎知識から、融資や株式発行といった資金調達方法別の計算方法、そしてコストを抑えるための具体的な方法まで、図解を用いながら分かりやすく解説します。

さらに、資金調達における注意点も詳しく解説することで、読者が安全かつ最適な資金調達を実現できるようサポートします。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIのエキスパート。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。



1. 資金調達コストとは?
1.1 資金調達コストの定義

資金調達コストとは、企業が事業に必要な資金を調達する際にかかる費用のことを指します。資金調達には、大きく分けて「融資」と「株式発行」の2つの方法がありますが、いずれの方法においても、資金提供者に対して何らかの形でコストを支払う必要があります。

このコストには、金利や手数料のように直接的に発生する費用だけでなく、株式発行による希薄化のように間接的に発生するコストも含まれます。企業は、これらのコストを正しく理解し、資金調達方法を適切に選択する必要があります。


1.2 資金調達コストが発生する場面

資金調達コストは、以下のような場面で発生します。

1.2.1 融資を受ける場合
銀行融資利息、保証料、事務手数料など
ベンチャーキャピタルからの融資利息、手数料、株式取得による議決権の付与など
1.2.2 株式を発行する場合
IPO(新規株式公開)引受手数料、証券会社への報酬、印刷費など
第三者割当増資既存株主の持ち株比率が低下することによる希薄化、新たに発行する株式の割引発行によるコストなど

これらのコストは、資金調達方法、資金調達規模、企業の信用力などによって大きく変動します。そのため、資金調達を検討する際には、事前に複数の金融機関や投資家から見積もりを取り、比較検討することが重要です。


2. 資金調達方法別の計算方法
2.1 融資
2.1.1 銀行融資の利息
金利の種類固定金利、変動金利、準固定金利など
金利の決定方法金融機関所定の基準金利に、企業の信用リスクなどを加味して決定
2.1.1.2 銀行融資の保証料
保証料率保証会社の審査により決定
保証料の支払い方法一括払い、分割払いなど
2.1.1.3 銀行融資の事務手数料
事務手数料率金融機関や融資金額によって異なる
2.1.2 ベンチャーキャピタルの株式による出資
株式の希薄化出資を受けることで、既存株主の株式価値が希薄化する可能性がある
経営への影響力ベンチャーキャピタルは、経営に関する助言やサポートを行う場合がある

2.2 株式発行
2.2.1 IPOコスト
引受手数料証券会社に対して支払う手数料
監査法人費用監査法人による会計監査費用
印刷費目論見書などの印刷費用
2.2.2 第三者割当増資(ディスカウント)
ディスカウント率市場環境や調達金額によって変動

3. 資金調達コスト比較
3.1 資金調達方法によるコストの違い

資金調達コストは、その方法によって大きく異なります。一般的に、調達コストが低い順に並べると、以下のようになります。

資金調達方法 メリット デメリット コスト目安
創業融資(日本政策金融公庫) 低金利、無担保・保証人なしの制度も充実 審査が厳しい、融資までに時間がかかる場合がある 0~3%程度
銀行融資 低金利、高額な資金調達が可能 審査が厳しい、担保や保証人が必要な場合が多い 1~5%程度
ベンチャーキャピタルからの投資 資金調達に加え、経営ノウハウや人脈などのサポートも期待できる 株式の希薄化、経営への関与が強くなる場合がある 株式によるリターン(投資額の数倍~数十倍)
エンジェル投資家からの投資 ベンチャーキャピタルよりも少額から調達が可能、経営への関与は比較的少ない 投資家を見つけるのが難しい、株式の希薄化 株式によるリターン(投資額の数倍~数十倍)
IPO 巨額の資金調達が可能、企業の知名度や信用力向上 コストがかかる、上場後の情報開示義務やコンプライアンス体制の強化が必要 調達額の5~10%程度
第三者割当増資 比較的短期間で資金調達が可能、株主を限定できる 株式の希薄化、既存株主の同意が必要な場合がある 発行する株式の数や価格による

上記はあくまでも目安であり、実際の資金調達コストは、企業の業績や財務状況、資金調達市場の動向などによって大きく変動します。


3.2 ケーススタディ

具体的なケーススタディとして、以下のような例を挙げてみましょう。

3.2.1 ケース1:飲食店開業
資金調達方法銀行融資
調達金額500万円
金利3%
返済期間5年

この場合、毎月の返済額は約9万円、5年間の総返済額は約540万円となります。つまり、資金調達コストは40万円となります。

3.2.2 ケース2:ITベンチャー企業の資金調達
資金調達方法ベンチャーキャピタルからの投資
調達金額1億円
株式比率20%

この場合、企業価値が5億円と評価されたことになります。数年後、企業が成長し、企業価値が10億円になったタイミングで株式を売却した場合、投資家は2倍のリターンを得ることになります。この場合、資金調達コストは株式の価値上昇分で賄われることになります。

このように、資金調達方法によってコスト計算は大きく異なります。そのため、自社の状況や資金ニーズに合わせて最適な方法を選択することが重要です。


4. 資金調達コストを抑える方法
4.1 資金調達時期の検討 企業価値向上による調達コスト削減
具体的な数値目標を達成し、事業の成長性を明確に示す
競合との差別化ポイントを明確化し、独自の強みをアピールする
市場の成長性や将来展望を示し、投資家にとって魅力的な投資先であることを理解してもらう
資金需要の予測と計画的な調達
事業計画に基づいた資金繰り計画を作成し、いつ、どれくらいの資金が必要になるのかを明確にする
複数の資金調達シナリオを検討し、予期せぬ事態にも対応できる柔軟性を確保する

4.2 事業計画の精査
4.2.1 実現可能性と収益性の両立
市場規模や成長性を明確に示し、ビジネスチャンスの大きさをアピールする
競合との差別化ポイントを明確にし、競争優位性を具体的な根拠と共に示す
売上目標や利益目標を現実的な数値で設定し、実現可能性を担保する
収益化までの道筋を明確化し、投資家にとってのリターンを具体的に示す
4.2.2 明確なKPI設定と達成戦略
各KPIの目標値を具体的かつ数値で設定する
目標達成のための具体的な戦略・戦術を明確にする
KPI達成度合いを定期的にモニタリングし、必要に応じて軌道修正を行う体制を構築する

4.3 交渉術
4.3.1 資金調達目的の明確化と訴求
資金使途の内訳を明確にし、それぞれの項目における必要性を具体的に説明する
資金調達によって実現できることを、数値目標などを交えながら具体的に示す
投資家にとってのメリットを明確化し、投資意欲を高める
4.3.2 企業価値評価と条件交渉
類似企業の財務データや市場環境などを考慮し、自社の企業価値を算出する
複数の評価方法を用いることで、多角的な視点から企業価値を分析する
投資家との交渉においては、根拠に基づいた主張を行い、納得感のある合意形成を目指す
4.3.3 誠実な情報開示とコミュニケーション
最新の財務諸表や事業報告書などを整備し、投資家の求めに応じて速やかに開示する
事業上のリスクや課題についても包み隠さず説明し、対応策を提示する
投資家とのコミュニケーションを密に取り、疑問点や懸念点には真摯に対応する

5. 資金調達における注意点

資金調達は、事業成長の大きなカギとなる一方、安易に進めると後々リスクとなる可能性も孕んでいます。資金調達における注意点を、資金調達の計画段階から実行、その後の事業運営まで、時系列に沿って解説します。


5.1 資金調達計画段階での注意点
5.1.1 無理のない資金調達計画を

資金調達は、あくまで事業を成長させるための手段です。返済能力を超えた借入や、過剰な株式の発行は、企業の財務状況を悪化させ、経営を圧迫する可能性があります。現在の事業状況や将来の収益予測を踏まえ、返済可能な範囲で、必要な資金を調達することが重要です。

調達額 返済期間 金利 毎月の返済額
500万円 5年 3% 約8.9万円
1,000万円 7年 5% 約15.3万円

上記はあくまで一例ですが、このように返済シミュレーションを行い、無理のない返済計画を立てましょう。返済額が事業の収益に見合っているか、資金繰りに無理が生じないかを慎重に検討することが重要です。

5.1.2 資金調達目的の明確化

資金調達を行う目的を明確化し、投資家や金融機関に具体的に説明できるようにしておきましょう。設備投資、人材採用、マーケティングなど、資金の使い道が明確であるほど、資金調達を成功させる可能性が高まります。

5.1.3 複数の資金調達方法を検討

資金調達には、銀行融資、ベンチャーキャピタルからの投資、助成金・補助金など、様々な方法があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の事業ステージや資金ニーズに合った最適な方法を選択することが重要です。


5.2 資金調達実行段階での注意点
5.2.1 契約内容の徹底的な確認

資金調達の実行段階では、契約内容を徹底的に確認することが非常に重要です。特に、金利、返済期間、担保、株式の議決権などの条件は、後々の経営に大きく影響を与える可能性があります。不明点があれば、必ず専門家に相談し、納得した上で契約を締結しましょう。

項目 注意点
金利 固定金利と変動金利の違い、金利改定のタイミングなどを確認する。
返済期間 返済期間が長すぎると、金利負担が大きくなる可能性がある。
担保 担保を提供する場合、そのリスクを十分に理解しておく。
株式の議決権 株式を発行する場合、議決権の比率によって経営への影響力が変わる。
5.2.2 資金調達後の計画変更への対応

資金調達後に、当初の事業計画を変更せざるを得ない場合もあります。契約内容によっては、計画変更に制約が生じたり、違約金が発生する可能性もあるため、事前に確認しておくことが大切です。


5.3 資金調達後の注意点
5.3.1 資金調達後の情報開示

資金調達後も、事業の進捗状況や財務状況などの情報を、投資家や金融機関に定期的に開示する必要があります。透明性の高い情報開示を行うことで、信頼関係を維持し、将来的な資金調達を円滑に進めることができます。

5.3.2 専門家との継続的な関係構築

資金調達後も、弁護士、税理士、会計士などの専門家と継続的な関係を構築しておくことが重要です。事業の成長段階に応じて、専門家のアドバイスを受けることで、リスクを最小限に抑えながら、事業を安定的に成長させることができます。


5.4 資金調達における専門家への相談

資金調達は、企業にとって重要な意思決定の一つです。そのため、資金調達に関する知識や経験が豊富な専門家に相談することが重要です。専門家は、企業の状況に合わせて、最適な資金調達方法や注意点などをアドバイスしてくれます。

金融機関:銀行、信用金庫、日本政策金融公庫など
ベンチャーキャピタル
ファイナンシャルアドバイザー
弁護士
税理士

資金調達は、事業を成長させるための大きなチャンスとなります。しかし、注意点を押さえずに進めると、後々大きなリスクを抱える可能性もあります。資金調達を検討する際は、本記事で紹介した注意点を踏まえ、慎重に進めるようにしてください。


6. まとめ

資金調達は事業成長の重要なステップですが、コストやリスクを理解しておくことが重要です。資金調達コストは、調達方法や企業の状況によって大きく異なります。

銀行融資は一般的にコストが低いですが、審査が厳しく担保や保証人が求められる場合もあります。一方、ベンチャーキャピタルからの資金調達は、株式による調達となるためコストは高くなる傾向にあります。

資金調達コストを抑えるためには、事業計画を精査し、資金調達の時期や方法を慎重に検討する必要があります。また、専門家へ相談することで、より有利な条件で資金調達を進めることができるでしょう。

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