事業再生ファンドの役割・仕組み・M&Aスキームを徹底解説!~再生の道筋~
「事業再生ファンドってどんなもの?」「M&Aを使った事業再生って具体的にどうやるの?」そんな疑問をお持ちの経営者・ビジネスパーソンの方へ。
本記事では、事業再生ファンドの役割・仕組みから、M&Aスキーム、実際の成功事例まで、分かりやすく解説します。事業再生の成功には、ファンドの活用が有効な手段となりえます。本記事を通して、事業再生とファンドの活用に関する理解を深め、企業の成長戦略にお役立てください。
M&A PMI AGENTは上場企業・中堅・中小企業の「M&AからPMI支援までトータルサポート」できるM&A仲介会社です。詳しくはコンサルタントまでお気軽にご相談ください。
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- 目次
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1. 事業再生ファンドとは
1.1 事業再生ファンドの定義
1.2 事業再生ファンドの目的
2. 事業再生ファンドの役割
2.1 資金供給
2.2 経営支援
2.3 M&Aの活用
3. 事業再生ファンドの仕組み
3.1 ファンドの組成
3.2 投資先企業の選定
3.3 再生計画の策定と実行
3.4 Exit(イグジット)
4. M&Aスキーム
4.1 M&Aによる事業再生
4.2 主なM&Aスキーム
5. 事業再生ファンドの事例
5.1 事例1:中堅製造業A社の事例
5.2 事例2:老舗旅館B社の事例
5.3 事例3:ベンチャー企業C社の事例
6. 事業再生ファンドのメリット・デメリット
6.1 事業再生ファンドを利用するメリット
6.2 事業再生ファンドを利用するデメリット
7. 事業再生ファンドの事例
7.1 株式会社〇〇の事例
7.2 株式会社△△の事例
8. まとめ
事業再生ファンドとは、経営不振に陥った企業やその可能性のある企業に投資を行い、経営支援や資金提供を通じて企業価値の向上を図り、最終的には投資回収を目指す投資ファンドです。再生対象となる企業の株式や債権を取得し、経営陣と協力しながら事業の立て直しを図ります。
1.2 事業再生ファンドの目的
事業再生ファンドの目的は、投資家への利益還元と投資先企業の再生という2つの側面を持ちます。具体的には以下の点が挙げられます。
投資家への利益還元 | ファンド運用による収益を投資家に分配すること |
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投資先企業の再生 | 経営不振企業の再建を通じて、雇用や経済活動を維持・発展させること |
これらの目的を達成するために、事業再生ファンドは単なる資金提供者ではなく、経営のプロフェッショナルとして、投資先企業の経営に深く関与していくことが特徴です。
2. 事業再生ファンドの役割 2.1 資金供給 事業再生ファンドの役割としての「資金供給」は、経営困難に直面している企業の再生を支援するために不可欠な要素です。以下にその意味と具体的な役割について説明します。
1. 資金供給の基本的な意味 資金供給とは、事業再生ファンドが経営難にある企業に対して、必要な資金を提供することです。この資金は、事業の再建、運営の安定化、再生計画の実行などに使われ、企業の再生を促進します。
2. 資金供給の目的
運転資金の確保 | 経営危機にある企業は、資金繰りが悪化している場合が多いです。ファンドからの資金供給により、日常の運営に必要な運転資金を確保し、企業の活動を継続することができます。 |
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債務のリスケジュールや返済 | 企業が抱える債務を再編成したり、一部を返済するために資金が必要です。これにより、利払い負担の軽減や財務構造の改善が可能になります。 |
再建計画の実行 | 事業再生には新たな投資や改革が必要です。例えば、新製品の開発、設備投資、人材確保などのためには資金が不可欠です。ファンドはこれらの再建計画を実行するための資金を提供します。 |
3. 資金供給の形態
エクイティ投資(株式投資) | 事業再生ファンドが企業の株式を取得し、資本を注入する方法です。これにより、企業は資本を増強し、財務体質を強化することができます。また、株主としてファンドが経営に関与し、再生計画の実行を支援します。 |
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デットファイナンス(債務投資) | ファンドが企業に対して融資を行う形態です。通常、融資条件は企業の状況に応じて柔軟に設定され、長期的な返済計画が設けられることが多いです。 |
メザニンファイナンス | 株式と債務の中間的な形態であるメザニン投資(例:劣後ローン、優先株)を通じて資金を提供します。これにより、資本の調達コストを抑えながら、必要な資金を確保することが可能です。 |
4. 資金供給の効果
企業の安定化 | ファンドからの資金供給により、企業は短期的な資金不足を解消し、安定的な事業運営が可能になります。 |
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信用力の回復 | 外部からの資金供給が行われることで、企業の信用力が向上し、取引先や金融機関からの信頼が回復することがあります。 |
成長機会の創出 | 資金供給を通じて、新たな成長戦略や事業展開が可能となり、企業の再生を加速させることができます。 |
5. ファンドのリターン
投資回収と利益
事業再生が成功した場合、ファンドは株式の売却益や融資の利息などを通じてリターンを得ます。また、再生企業の成長に伴い、ファンドの持ち分価値も上昇します。
資金供給は、事業再生ファンドが企業再生の成功を支援するための中核的な役割を果たし、企業の再生計画を実現するための重要な手段です。
2.2 経営支援 事業再生ファンドの「経営支援」は、経営難に直面している企業の再生を成功させるために、資金提供だけでなく、経営面での専門的なサポートを提供する役割です。以下にその詳細を説明します。
1. 経営支援の基本的な意味 経営支援とは、事業再生ファンドが再生対象企業に対して、経営の立て直しや改善を目的とした具体的な助言や支援を行うことです。これには、経営戦略の策定、業務プロセスの改善、財務管理の強化、人材マネジメントの最適化などが含まれます。
2. 経営支援の目的
経営体制の強化 | 経営難に陥った企業は、しばしば経営管理が不十分であったり、戦略の欠如が問題となっています。事業再生ファンドは、経営体制を強化し、企業が持続可能な成長を実現できるよう支援します。 |
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業務改善 | 企業の業務プロセスを見直し、効率化を図ることで、コスト削減や生産性向上を実現します。これにより、企業の競争力を回復させます。 |
成長戦略の策定と実行 | 企業が再び成長軌道に乗るための新たな戦略を策定し、その実行を支援します。これには、新市場への進出、新製品の開発、事業拡大などが含まれます。 |
3. 経営支援の具体的な内容
経営戦略の策定と実行支援 | 再生企業の現状を分析し、将来に向けた経営戦略を策定します。戦略の実行に際しては、ファンドが持つ業界知識やネットワークを活用してサポートを行います。 |
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経営陣の強化 | 必要に応じて、新たな経営陣を招聘したり、既存の経営陣に対する教育やトレーニングを提供します。また、経営陣が適切な意思決定を行えるよう支援します。 |
財務管理の強化 | 企業の財務状況を改善するために、キャッシュフローの管理、コスト構造の見直し、資金調達の戦略的な計画を策定し、実行をサポートします。 |
ガバナンスとリスク管理 | 企業のガバナンス体制を強化し、リスク管理のフレームワークを構築することで、経営の透明性と安定性を向上させます。 |
業務プロセスの改善 | 企業の生産性や効率を高めるために、業務フローの改善やITシステムの導入支援を行い、オペレーションの最適化を図ります。 |
4. 経営支援の成果
企業の競争力回復 | 経営支援を通じて企業が持つ課題を解決し、競争力を取り戻すことが期待されます。これにより、企業は市場での地位を強化し、持続的な成長が可能になります。 |
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企業価値の向上 | 経営支援が成功すれば、企業の収益性や財務健全性が向上し、企業価値の増大が実現します。これにより、事業再生ファンドは投資のリターンを得ることができます。 |
持続可能な成長基盤の確立 | 再生が成功した企業は、再度経営危機に陥ることなく、持続的な成長を続けるための基盤を築くことができます。 |
5. ファンドと経営陣の協力
パートナーシップの強化
事業再生ファンドは、企業の経営陣と緊密に協力しながら支援を行います。ファンドは、単なる外部の投資家としてではなく、経営パートナーとして企業と一体となって再生を目指します。
事業再生ファンドの「経営支援」は、企業再生のプロセス全体を成功に導くために欠かせない要素です。資金提供だけではなく、経営の立て直しを支援することで、企業が再び健全な成長軌道に乗ることを可能にします。
2.3 M&Aの活用
非中核事業の売却
M&Aを活用して非中核事業を売却することには、いくつかの戦略的な意味と目的があります。以下にその主な理由を説明します。【関連】新しい仲介サービス「Hands on M&A」誕生!業績向上までサポートします。
1. 経営資源の集中
経営資源の最適化
企業が持つ経営資源(人材、資本、時間など)を、最も利益を生み出すコア事業(中核事業)に集中させることができます。非中核事業に資源を分散させるよりも、コア事業に集中することで競争力を強化し、成長を加速させることができます。
2. 財務の健全化
資金調達
非中核事業を売却することで、企業は現金を手に入れることができます。これにより、負債の返済、投資の強化、株主への還元(配当や株式買戻し)など、財務の健全化を図ることができます。 収益性の向上: 利益率が低い、または損失を出している非中核事業を手放すことで、全体の収益性を改善することができます。
3. リスクの軽減
市場や技術のリスク
非中核事業が属する市場や技術に大きなリスクがある場合、それを売却することで企業全体のリスクを軽減できます。特に不安定な市場や技術の変遷が激しい分野においては、売却は有効なリスク管理手段となります。
4. 企業価値の向上
投資家の評価向上
非中核事業の売却によって、企業はよりシンプルで理解しやすい事業構造を持つことになります。これにより、投資家や市場からの評価が高まり、株価の上昇や資金調達の円滑化が期待できます。
5. 戦略的提携の一環
シナジー効果の追求
他の企業にとっては、売却された非中核事業が中核事業になる場合もあります。これにより、相手企業との戦略的提携や、M&A後のシナジー効果を追求することが可能になります。
非中核事業の売却は、企業全体の成長戦略の一環として、より大きな成功を収めるための重要な手段です。コア事業に集中することで、企業の競争力や市場でのポジションを強化することができます。
スポンサー企業の探索
事業再生ファンドの役割として「スポンサー企業の探索」が重要な要素となっています。以下にその意味と具体的な役割について説明します。1. スポンサー企業の役割 スポンサー企業は、事業再生において再生対象企業を支援するためのパートナー企業です。具体的には、資金提供、経営ノウハウの提供、事業運営の支援、または新たな成長戦略の実行など、再生プロセスにおいて重要な役割を担います。
2. スポンサー企業の探索の重要性 最適なスポンサー企業を探すことの意義: 事業再生ファンドにとって、適切なスポンサー企業を見つけることは再生の成功に直結します。スポンサー企業は、再生対象企業に新たな資源やノウハウを提供し、再生プロセスをスムーズに進めるための重要なパートナーとなります。
3. スポンサー企業の探索プロセス
業界知識とネットワークの活用 | 事業再生ファンドは、ターゲット企業の業界や市場に精通している必要があります。また、広範なビジネスネットワークを活用して、再生対象企業にとって最適なスポンサー企業を見つけます。 |
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スポンサー企業の選定基準 | 再生対象企業のニーズに応じて、スポンサー企業の選定基準が異なります。たとえば、業界での経験、資金力、経営能力、技術力、マーケットでの影響力などが考慮されます。 |
交渉と合意 | 適切なスポンサー企業が見つかった後、ファンドはスポンサーと再生対象企業との間で交渉を行い、再生プロジェクトの条件や役割分担について合意を形成します。 |
4. スポンサー企業探索の結果
再生の成功率向上 | 適切なスポンサー企業を見つけることで、再生対象企業は経営の立て直しや成長戦略の実行が可能となり、事業再生の成功率が高まります。 |
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シナジー効果 | スポンサー企業のリソースやノウハウが加わることで、再生企業は新たな成長機会を得ると同時に、双方にとってメリットのあるシナジー効果が生まれることも期待されます。 |
カーブアウト
「カーブアウト」(Carve-Out)は、事業再生ファンドが企業再生に取り組む際の重要な手法の一つです。以下にその意味と役割について説明します。1. カーブアウトとは カーブアウトとは、大きな企業やコングロマリットの一部門、子会社、または特定の事業を分離し、独立した企業として売却、上場、または新たな企業体として運営することを指します。この手法は、分離された事業の価値を最大化するために行われます。
2. カーブアウトの目的
非中核事業の切り離し | カーブアウトは、企業全体の成長戦略において中核とはならない、または他の事業とシナジー効果が少ない事業を分離するために用いられます。これにより、企業はコア事業に集中でき、経営資源の効率的な活用が可能になります。 |
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事業再生の一環 | 経営が悪化した企業において、収益性の低い部門や、コア事業と競合するような事業を切り離すことで、全体の財務健全化や事業の再編を図ることができます。 |
企業価値の向上 | カーブアウトされた事業は、新たな独立企業として運営されることで、その潜在的価値が引き出され、企業全体の価値が向上することが期待されます。 |
3. 事業再生ファンドの役割
カーブアウトの企画・実行支援 | 事業再生ファンドは、企業の財務・事業分析を行い、どの事業をカーブアウトすべきかを判断し、そのプロセスを企画・実行します。具体的には、対象事業の評価、適切な買い手の選定、交渉、分離後の運営計画の立案などを行います。 |
---|---|
新たな企業体の設立支援 | カーブアウトされた事業が新しい独立企業としてスタートする際には、事業再生ファンドが資金提供や経営ノウハウの提供を行い、立ち上げを支援します。また、カーブアウト後の経営陣を組織する際にもサポートを行います。 |
投資回収の戦略立案 | カーブアウト後の事業が成長した段階で、再生ファンドはその事業を売却するか、上場を通じて投資を回収する戦略を立てます。 |
4. カーブアウトのメリット
柔軟な運営と成長の可能性 | カーブアウトされた事業は、独立した企業として市場の変化に迅速に対応できるようになり、成長の機会が広がります。 |
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経営資源の効率化 | 親会社は、コア事業にリソースを集中させることができ、全体の経営効率を向上させることができます。 |
5. カーブアウトの事例 例: ある大手企業が特定の非中核事業部門をカーブアウトし、その部門を独立企業として売却するか、株式を公開することで資金調達を行い、親会社の負債削減や新たな成長投資に充てる、といった戦略が考えられます。
カーブアウトは、企業の再生や成長戦略において、重要なリストラクチャリング手段であり、事業再生ファンドが企業価値を最大化するために積極的に活用する手法です。
役割 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
資金供給 | 再生に必要な資金を供給 | 株式投資、融資、ハイブリッド型 |
経営支援 | 経営陣と協力し、再生計画の策定と実行を支援 | 経営戦略の見直し、事業構造の改革、コスト削減、財務管理の強化、人材育成 |
M&Aの活用 | M&Aを戦略的に活用し、企業の再生を促進 | 非中核事業の売却、スポンサー企業の探索、カーブアウト |
【関連】カーブアウトとは?手順・手法・課題からメリット・デメリットまで、M&Aを成功させるスキームを解説
3. 事業再生ファンドの仕組み
事業再生ファンドは、投資家から集めた資金を元手に、経営不振に陥った企業の再生を支援します。その仕組みは、大まかに以下の4つの段階に分けられます。
3.1 ファンドの組成
事業再生ファンドは、まず投資家から資金を集め、ファンドを組成するところから始まります。投資家には、金融機関、事業会社、年金基金など様々な機関投資家が名を連ねます。
機関投資家 | 事業再生ファンドは、高い収益が見込める一方で、投資リスクも高いため、主に資金力のある機関投資家が投資を行います。 |
---|---|
ファンドの設立 | 集めた資金は、事業再生を目的としたファンドとして運用されます。ファンドには、投資期間や投資方針などが定められています。 |
3.2 投資先企業の選定
ファンドが組成されると、次は投資先となる企業の選定を行います。事業再生ファンドは、単なる投資ではなく、企業の再生を目的としているため、投資先企業の選定は慎重に行われます。財務状況の悪化だけでなく、事業内容や将来性なども考慮し、再生の可能性が高い企業を選定します。
due diligence(デューデリジェンス) | 投資先企業の選定にあたっては、財務状況、事業内容、法務、税務など多岐にわたる調査(デューデリジェンス)を実施します。 |
---|---|
再生可能性の評価 | デューデリジェンスの結果に基づき、事業再生の可能性を評価します。具体的には、事業計画の見直しや、財務リストラクチャリングなどによって、収益力や財務体質の改善が見込めるかどうかを判断します。 |
3.3 再生計画の策定と実行
投資先企業を決定したら、事業再生ファンドは、その企業の経営陣と協力し、具体的な再生計画を策定します。再生計画には、事業の選択と集中、コスト削減、新規事業の展開など、多岐にわたる対策が含まれます。再生計画の策定後は、計画に沿って実行に移していきます。
再生計画の内容 | 具体的な内容 |
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財務リストラクチャリング |
|
事業再生 |
|
3.4 Exit(イグジット)
事業再生ファンドは、投資した企業の再生が完了した後、株式売却やIPOなどを通じて投資資金を回収します。これをExit(イグジット)と呼びます。Exitによって得られた利益は、ファンドの投資家に分配されます。
株式公開(IPO) | 再生した企業を株式市場に上場することで、株式を売却し資金を回収します。 |
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株式売却 | 他の企業に株式を売却することで、資金を回収します。事業再生ファンドと同じように、企業再生を目的としたファンドに売却するケースもあります。 |
M&A | 他の企業に事業を売却することで、資金を回収します。再生した事業とシナジーが見込める企業に売却することで、より高値での売却が期待できます。 |
事業再生ファンドは、このように段階的なプロセスを経て、経営不振に陥った企業の再生を支援します。それぞれの段階において、専門的な知識やノウハウを駆使することで、企業の再生を成功に導きます。
4. M&Aスキーム
事業再生において、M&Aは強力な手段となりえます。ここでは、M&Aによる事業再生とその主なスキームについて解説します。
4.1 M&Aによる事業再生
M&Aによる事業再生とは、業績不振企業が、健全企業に吸収合併されたり、事業の一部を譲渡したりすることで、経営の再建を図る方法です。これにより、以下の様なメリットが期待できます。
経営資源の統合によるシナジー効果 | |
新規事業への進出 | |
ブランド力・技術力の獲得 | |
事業規模の拡大による競争力強化 | |
4.2 主なM&Aスキーム
株式譲渡
株式譲渡とは、文字通り、対象会社の株式を譲り渡すことで、経営権を移転する方法です。比較的、手続きが簡便で、短期間で実行できる点がメリットとして挙げられます。
メリット | デメリット |
---|---|
手続きが簡便 | 潜在的な負債リスク |
短期間での実行が可能 | 株主の同意が必要 |
事業譲渡
事業譲渡とは、対象会社の事業の一部または全部を、他の会社に譲渡する方法です。必要な資産や負債を選択して譲渡できるため、事業再生に適したスキームと言えるでしょう。
メリット | デメリット |
---|---|
必要な資産・負債のみの譲渡が可能 | 手続きが複雑 |
債務超過の会社でも利用可能 | 関係官庁への許認可が必要な場合がある |
5. 事業再生ファンドの事例
事業再生ファンドの活用事例は多岐にわたります。ここでは、具体的な企業名を挙げて説明することはできませんが、業種や規模、再生スキームなど、特徴的な事例をいくつか紹介します。
5.1 事例1:中堅製造業A社の事例
企業概要
項目 | 内容 |
---|---|
業種 | 自動車部品製造 |
従業員数 | 約300名 |
売上高 | 約50億円 |
課題 | 主要取引先の業績悪化による受注減、競争激化による収益力低下 |
事業再生ファンドによる支援内容
資金供給 | 運転資金および設備投資資金の提供 |
---|---|
経営支援 | 事業再生計画の策定支援、新規取引先の開拓支援、コスト削減のコンサルティング |
M&Aの活用 | 事業の選択と集中を目的とした、関連会社の売却 |
結果
事業再生ファンドの支援により、A社は新規事業の立ち上げや事業構造改革を断行し、3年後には黒字化を達成しました。その後、ファンドは株式を売却し、A社は再上場を果たしました。
5.2 事例2:老舗旅館B社の事例
企業概要
項目 | 内容 |
---|---|
業種 | 旅館業 |
従業員数 | 約50名 |
売上高 | 約10億円 |
課題 | 施設の老朽化、旅行需要の変化による顧客減少、後継者不足 |
事業再生ファンドによる支援内容
資金供給 | 施設改修資金の提供 |
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経営支援 | 新規顧客ターゲットに向けたサービス開発、マーケティング戦略の策定、従業員研修 |
M&Aの活用 | 大手ホテルチェーンとの資本業務提携によるブランド力向上と経営ノウハウの導入 |
結果
事業再生ファンドの支援により、B社は老朽化した施設を改修し、新たな顧客層を獲得することに成功しました。また、ホテルチェーンとの提携により、経営の効率化も実現し、5年後には黒字転換を果たしました。
5.3 事例3:ベンチャー企業C社の事例
企業概要
項目 | 内容 |
---|---|
業種 | ITサービス |
従業員数 | 約20名 |
売上高 | 約3億円 |
課題 | 急成長に伴う資金繰り悪化、組織体制の未整備、競合企業の出現 |
事業再生ファンドによる支援内容
資金供給 | 事業拡大のための資金提供 |
---|---|
経営支援 | ガバナンス体制の構築支援、人材採用・育成支援、事業計画の見直し |
M&Aの活用 | 競合企業の買収による市場シェア拡大 |
結果
事業再生ファンドの支援により、C社は組織体制を強化し、事業基盤を安定化させることができました。また、競合企業の買収により、市場での優位性を築き、その後、IPOを実現しました。
これらの事例はあくまで一例であり、事業再生ファンドの支援内容は、企業の状況や課題によって大きく異なります。しかし、いずれの事例においても、事業再生ファンドは資金供給だけでなく、経営支援やM&Aの活用を通じて、企業の再生に貢献しています。
6. 事業再生ファンドのメリット・デメリット
事業再生ファンドの活用を検討する際には、そのメリットだけでなく、デメリットについても理解しておくことが重要です。ここでは、事業再生ファンドを利用するメリットとデメリットについて詳しく解説します。
6.1 事業再生ファンドを利用するメリット
事業再生ファンドには、資金調達、経営ノウハウ、M&Aなど、多岐にわたるメリットが存在します。これらのメリットを最大限に活かすことで、企業は再建への道を力強く歩むことができます。
豊富な資金供給
事業再生ファンドは、経営難に陥っている企業に対して、多額の資金を供給することができます。銀行融資が困難な状況でも、事業再生ファンドは、企業の将来性や再生計画を評価し、資金を提供します。これにより、企業は、運転資金の確保や設備投資など、事業再生に必要な資金を調達することができます。
専門的な経営支援
事業再生ファンドは、単に資金を提供するだけでなく、経営のプロフェッショナルによる専門的な経営支援を提供します。財務、リストラ 、事業ポートフォリオの見直し、業務効率化など、多岐にわたる分野において、専門知識と豊富な経験に基づいたアドバイスやサポートを受けることができます。これにより、企業は、経営体制を強化し、事業の立て直しを図ることができます。
M&Aの活用
事業再生ファンドは、M&Aの専門知識やネットワークを駆使し、企業の事業再生を支援します。企業の事業の一部を売却することで、負債の削減や経営資源の集中を図ったり、他企業との合併により、シナジー効果を生み出し、企業価値の向上を目指したりすることができます。M&Aは、事業再生において有効な手段となりえます。
ステークホルダーとの交渉支援
事業再生ファンドは、金融機関や取引先など、様々なステークホルダーとの交渉を支援します。事業再生計画の内容について、ステークホルダーに対して丁寧に説明し、理解と協力を得るための交渉を行います。これにより、企業は、ステークホルダーとの良好な関係を維持しながら、事業再生を進めることができます。
6.2 事業再生ファンドを利用するデメリット
事業再生ファンドは多くのメリットがある一方、理解しておくべきデメリットも存在します。これらのデメリットを事前に認識しておくことで、ファンドとの関係を適切に構築し、事業再生を成功に導くことが可能となります。
高いリターン要求
事業再生ファンドは、投資家から集めた資金を運用し、高いリターンを追求する金融機関です。そのため、投資先企業に対しては、高いリターン目標を設定し、その達成を求めます。企業は、ファンドの要求に応えるために、厳しい経営努力を求められることになります。
経営の自由度制限
事業再生ファンドは、投資先企業の経営に深く関与し、その経営方針や事業計画に影響力を持つことになります。企業は、ファンドの意向を無視して、独自に経営を進めることは難しく、経営の自由度が制限される可能性があります。ファンドとの間で、経営方針や事業計画について、十分な協議と合意形成を行うことが重要です。
情報開示の必要性
事業再生ファンドは、投資判断を行うために、企業に対して、詳細な経営情報や財務情報の開示を求めます。企業は、自社の経営状況や財務状況について、透明性を持って開示する必要があります。機密情報の保護など、情報開示の範囲や方法については、ファンドと事前に協議しておくことが重要です。
Exit(イグジット)戦略
事業再生ファンドは、投資した資金を回収するために、一定期間後に、株式売却やIPOなどを通じて、投資先企業からExit(イグジット)することを目指します。Exit(イグジット)戦略によっては、企業の経営戦略に影響を与える可能性があります。ファンドのExit(イグジット)戦略について、事前に理解しておくことが重要です。
7. 事業再生ファンドの事例
ここでは、有名な事業再生ファンドの事例を2つ紹介します。これらの事例から、事業再生ファンドがどのように企業の再建を支援しているのかを具体的に理解することができます。
7.1 株式会社〇〇の事例
項目 | 内容 |
---|---|
企業名 | 株式会社〇〇 |
業種 | 製造業 |
課題 | 売上減少、過剰債務 |
事業再生ファンドの支援内容 |
|
結果 | 黒字化達成、再上場 |
7.2 株式会社△△の事例
項目 | 内容 |
---|---|
企業名 | 株式会社△△ |
業種 | 小売業 |
課題 | 競争激化、収益力低下 |
事業再生ファンドの支援内容 |
|
結果 | 収益力回復、事業拡大 |
これらの事例からわかるように、事業再生ファンドは、企業の状況に合わせて、最適な支援策を講じることで、企業の再建を支援しています。資金調達、経営支援、M&Aなど、多岐にわたる手段を駆使し、企業が再び成長軌道に乗ることができるよう、尽力しています。
8. まとめ
事業再生ファンドは、経営難に陥った企業に資金と経営ノウハウを提供することで、その再生を支援する役割を担っています。資金供給、経営支援、M&Aなど、様々な手法を用いることで、企業の再建を目指します。
事業再生ファンドの活用には、資金調達や経営ノウハウの提供など、多くのメリットがある一方、経営権の制限や高額な手数料などのデメリットも存在します。そのため、事業再生ファンドの利用を検討する際には、メリットだけでなくデメリットも理解した上で、慎重に判断することが重要です。
事業再生は、企業にとって、そして日本経済全体にとっても重要な課題です。事業再生ファンドは、その課題解決の一翼を担う存在として、今後もその役割が期待されています。
編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったPMIのスペシャリスト。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。