【M&A支援機関登録制度】登録要件から活用方法まで徹底解説!
「M&A支援機関登録制度」について、その概要から登録要件・活用方法まで網羅的に解説します。
中小企業庁が推進するこの制度は、M&Aの質の向上と、中小企業の円滑な事業承継を目的としています。本記事では、制度を活用するメリット、登録要件を満たすための具体的な方法、そしてM&A成約に向けたサポート体制や専門家ネットワークなど、活用方法の詳細を分かりやすく解説。
これからM&A支援機関への登録を検討している方、制度を活用してM&Aを成功させたいと考えている方は必見です。
- 当社も中小企業庁 M&A支援機関登録制度に登録されている、「M&A支援事業者」です。
M&A PMI AGENTは上場企業・中堅・中小企業の「M&AからPMI支援までトータルサポート」できるM&A仲介会社です。詳しくはコンサルタントまでお気軽にご相談ください。
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- 目次
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1. M&A支援機関登録制度とは
1.1 M&A支援機関登録制度の概要
1.2 創設の背景
1.3 制度の目的
1.4 対象となる支援機関
1.5 登録制度の内容
2. M&A支援機関登録制度が創設された背景
2.1 中小企業のM&Aを取り巻く状況の変化
2.2 M&A支援機関の増加と課題
2.3 中小M&Aガイドラインの策定
2.4 M&A支援機関登録制度の創設
3. M&A支援機関登録制度のメリット
3.1 支援機関側のメリット
3.2 中小企業側のメリット
3.3 メリットをまとめると
4. M&A支援機関制度の登録要件
4.1 ①中小M&Aガイドラインの遵守を宣言すること
4.2 ②中小M&Aガイドラインを遵守していることについての宣言を、自社のホームページに掲載すること
4.3 ③FA・仲介業者において定める料金表(料金を定めた規定類等)を提出すること
4.4 ④登録後の遵守事項の履行を誓約する
4.5 ⑤顧客中小企業者等による情報提供窓口への相談などの行動を制約しないこと
4.6 ⑥登録を希望するFA・仲介業者は、秘密保持義務条項の規定内容に関わらず、顧客中小企業者等による情報提供窓口への相談等の行動を制約しないこと
5. M&A支援機関登録制度の活用方法
5.1 M&A成約に向けたサポート体制
5.2 専門家ネットワークの活用
5.3 情報提供
5.4 M&A支援機関登録制度の利用を検討するメリット
5.5 M&A支援機関登録制度の利用を検討する際の注意点
5.6 M&A支援機関の選び方
6. まとめ
M&A支援機関登録制度は、中小企業庁が中小企業のM&Aを推進するために令和3年8月に創設した制度です。中小企業が安心してM&Aに取り組めるよう、一定の基準を満たしたM&A支援機関を登録し、その情報を公開しています。
1.2 創設の背景
近年、中小企業の間で事業承継を目的としたM&Aが注目されています。しかし、M&A支援機関の質にはばらつきがあり、中小企業が適切な機関を選択することは容易ではありませんでした。
そこで、中小企業庁は、信頼できるM&A支援機関を明確化し、中小企業が安心してM&Aに取り組める環境を整備するために、本制度を創設しました。
1.3 制度の目的
M&A支援機関登録制度の目的は、以下のとおりです。
中小企業が安心してM&Aに取り組める環境を整備する | |
中小M&Aガイドラインの普及を促進する | |
M&A支援機関の質の向上を図る |
1.4 対象となる支援機関
本制度の対象となるM&A支援機関は、中小企業に対してM&Aの仲介業務やFA業務を行う事業者です。具体的には、以下の様な事業者が該当します。
M&A仲介会社 | |
ファイナンシャルアドバイザー(FA) | |
銀行、証券会社、保険会社等の金融機関 | |
税理士、公認会計士、弁護士等の士業 |
これらの事業者は、中小企業庁が定める登録要件を満たすことで、M&A支援機関として登録することができます。
1.5 登録制度の内容
M&A支援機関登録制度では、中小企業庁が定める登録要件を満たしたM&A支援機関を登録し、その情報を中小企業庁のウェブサイトなどで公開しています。登録要件には、以下の様な項目があります。
項目 | 内容 |
---|---|
中小M&Aガイドラインの遵守 | 中小企業庁が策定した「中小M&Aガイドライン」を遵守していること |
料金表の提出 | M&A支援業務に関する料金表を中小企業庁に提出していること |
実績報告 | M&A支援業務の実績を中小企業庁に報告すること |
登録されたM&A支援機関は、中小企業庁のウェブサイトで検索することができます。中小企業は、この制度を利用することで、信頼できるM&A支援機関を容易に見つけることができます。
2. M&A支援機関登録制度が創設された背景 2.1 中小企業のM&Aを取り巻く状況の変化
近年、日本社会における中小企業のM&Aは増加傾向にあります。その背景には、後継者不足、少子高齢化による人手不足、市場競争の激化など、様々な要因が存在します。
従来、中小企業の事業承継といえば、親族内承継が一般的でした。しかし、核家族化や就労意識の多様化が進み、親族に事業を継ぐ意思や能力を持つ人材を見つけることが難しくなってきています。また、少子高齢化による労働人口の減少は、中小企業にとって深刻な人手不足を引き起こしており、事業の継続を困難にする一因となっています。
さらに、グローバル化やIT技術の進展に伴い、市場競争は激しさを増しており、中小企業は、従来のビジネスモデルや経営手法では生き残ることが難しくなってきています。こうした状況下、中小企業にとって、M&Aは、事業の存続・発展のための重要な選択肢として認識されるようになってきました。
2.2 M&A支援機関の増加と課題
中小企業のM&Aニーズの高まりを受け、M&A仲介会社やFAなど、M&Aを支援する事業者が増加しました。しかし、その一方で、支援の質や料金体系の不透明さ、顧客とのトラブルなどが問題視されるようにもなりました。
一部の悪質な事業者による不適切な対応は、中小企業にとって大きなリスクとなり、M&Aに対する不信感にもつながりかねません。
2.3 中小M&Aガイドラインの策定
こうした問題意識から、中小企業庁は、2019年12月に「中小M&Aガイドライン」を策定しました。このガイドラインは、中小企業のM&Aに関する基本的な考え方や、M&Aプロセスにおける各関係者が留意すべき事項をまとめたものです。具体的には、以下の3つの柱で構成されています。
柱 | 内容 |
---|---|
1. 顧客企業の利益を最優先に考えること | M&A支援機関は、自らの利益よりも、顧客である中小企業の利益を最優先に考え、誠実かつ公正に業務を行う必要があります。 |
2. 適切な情報提供と説明を行うこと | M&A支援機関は、顧客に対して、M&Aに関する正確かつ適切な情報を提供し、顧客が理解しやすいように丁寧に説明する必要があります。 |
3. 料金体系を明確にすること | M&A支援機関は、顧客に対して、料金体系を明確に提示し、顧客が納得した上で契約を締結する必要があります。 |
2.4 M&A支援機関登録制度の創設
中小M&Aガイドラインの策定を受け、中小企業庁は、2021年8月に「M&A支援機関登録制度」を創設しました。この制度は、中小M&Aガイドラインを遵守し、一定の基準を満たしたM&A支援機関を登録することで、中小企業が安心してM&Aに取り組める環境を整備することを目的としています。
具体的には、M&A支援機関登録制度では、以下の要件を満たすM&A支援機関を登録しています。
中小M&Aガイドラインの遵守を宣言していること | |
自社のホームページに、中小M&Aガイドラインを遵守している旨を掲載していること | |
FA・仲介業者において定める料金表(料金を定めた規定類等)を提出すること | |
登録後の遵守事項の履行を誓約すること | |
顧客中小企業者等による情報提供窓口への相談等の行動を制約しないこと |
M&A支援機関登録制度は、中小企業にとって、信頼できるM&A支援機関を選択するための有効な指標となることが期待されています。また、M&A支援機関にとっても、登録制度に登録されることで、自社の信頼性を高め、顧客獲得につなげることが期待されています。
3. M&A支援機関登録制度のメリット 3.1 支援機関側のメリット
社会的信頼の向上
M&A支援機関登録制度に登録することで、企業は「国から認められた信頼できる機関」として認められます。これは、特にM&A市場において新規参入や知名度の低い企業にとって大きなメリットとなります。
なぜなら、顧客はM&Aのような重要な取引を安心して任せられる相手を求めているからです。登録制度は、第三者機関である国が一定の基準を満たしていると保証するものであり、顧客からの信頼獲得を後押しします。
事業機会の拡大
M&A支援機関登録制度に登録することで、新たな事業機会の拡大も期待できます。例えば、国や地方自治体が主催するM&A関連のセミナーやイベントに優先的に参加できる場合があります。
また、登録機関向けの補助金や助成金制度が用意されている場合もあり、企業の事業成長を後押しします。さらに、他の登録機関とのネットワークを構築する機会も得られ、ビジネスチャンスの拡大につながる可能性も広がります。
3.2 中小企業側のメリット
安心してM&Aを進められる
中小企業にとって、M&A支援機関登録制度は、安心してM&Aを進められる環境を提供します。登録機関は、中小M&Aガイドラインを遵守し、顧客の利益を最優先に考えた質の高いサービス提供が義務付けられています。
また、料金体系も明確化されているため、予期せぬ追加費用が発生する心配もありません。さらに、万が一トラブルが発生した場合には、中小企業庁が設置する相談窓口に相談することも可能です。
質の高いサービスを受けられる
登録機関は、豊富な知識と経験を持つM&Aの専門家です。企業価値評価、相手企業の探索、交渉、契約締結、事業統合など、M&Aのプロセス全体をサポートします。
中小企業は、登録機関の専門知識を活用することで、円滑かつ効率的にM&Aを進めることができます。また、M&Aに関する疑問や不安を解消するための相談にも応じてくれます。
補助金の活用
M&A支援機関登録制度に登録されたFA・仲介事業者によるFA業務又は仲介業務に係る費用の一部は「事業承継・引継ぎ補助金」の補助対象となります。
この補助金を活用することで、中小企業はM&Aにかかる費用を抑制することができます。補助金の申請手続きは、支援機関がサポートしてくれるため、安心して手続きを進めることができます。
3.3 メリットをまとめると
M&A支援機関登録制度は、支援機関と中小企業の双方にとって多くのメリットがあります。支援機関は社会的信頼やブランド価値を高め、事業機会を拡大することができます。
一方、中小企業は安心してM&Aを進め、質の高いサービスを受け、補助金を活用することができます。
立場 | メリット |
---|---|
支援機関側 |
|
中小企業側 |
|
4. M&A支援機関制度の登録要件
M&A支援機関に登録するためには、以下の要件を満たす必要があります。
4.1 ①中小M&Aガイドラインの遵守を宣言すること
M&A支援機関に登録するためには、中小M&Aガイドラインの行動指針に沿って業務を行わなければなりません。
具体的には、依頼者との契約に基づいて義務を履行することや、依頼者の意思の尊重しつつ自らの利益を実現するように高い職業倫理を持つことなどが求められます。
中小M&Aガイドラインの各事項の遵守の宣言については、後述の登録申請時に申請フォームを通じて要件の充足を確認します。
4.2 ②中小M&Aガイドラインを遵守していることについての宣言を、自社のホームページに掲載すること
また、誰でも閲覧できるホームページで、中小M&Aガイドラインを遵守している旨を掲載した上で登録申請を行います。
宣言を掲載する際は、遵守事項一覧の各事項をチェックしたもの、あるいは同等の内容を掲載しなくてはなりません。
もしホームページを解説していない場合は、遵守の宣言に関する資料を会社概要や事業概要パンフレット等に追加し、当該資料を登録事務局まで送付する必要があります。
4.3 ③FA・仲介業者において定める料金表(料金を定めた規定類等)を提出すること
対象事業者は、報酬体系を明確にしたうえで、登録申請時に料金表を提出しなければなりません。
もし料金表などの定めがない場合は、直近の契約料金や事前見積もりとその算出方法・理由・考え方を示した資料で代替が可能です。但しし、算定根拠等が不明瞭な場合は、資料として認められない場合もあります。
4.4 ④登録後の遵守事項の履行を誓約する
M&A支援機関登録制度には、登録するために求められる要件とは別に、登録後に遵守すべき事項が定められています。そのため、登録後の遵守事項を履行することを誓約しなければなりません。
4.5 ⑤顧客中小企業者等による情報提供窓口への相談などの行動を制約しないこと
M&A仲介会社やFAは業務を行うにあたり、顧客との間で秘密保持契約を締結しています。したがって、M&Aに関する情報を外部に漏らすことは契約内容に抵触する恐れがあります。
しかし、顧客である中小企業の利益を守るために、M&A支援機関登録制度の情報提供窓口へ相談することを制限してはいけません。したがって、秘密保持義務契約に関係なく相談が行えるようにしなければなりません。
4.6 ⑥登録を希望するFA・仲介業者は、秘密保持義務条項の規定内容に関わらず、顧客中小企業者等による情報提供窓口への相談等の行動を制約しないこと
上記以外にも、反社会的勢力と該当しないことや経済産業省が管轄する補助金交付の停止、指名停止措置を受けていないことなどが登録要件として求められます。
5. M&A支援機関登録制度の活用方法 5.1 M&A成約に向けたサポート体制
M&A支援機関登録制度に登録された支援機関は、中小企業のM&A成約に向けたサポート体制を構築しています。具体的には、M&Aに関する相談から、相手企業の探索・デューデリジェンス・契約交渉・クロージングまで、一連のプロセスをサポートします。また、M&A後の統合プロセスについても、アドバイスやサポートを提供しています。
5.2 専門家ネットワークの活用
M&Aは、企業価値評価、財務、税務、法律など、専門的な知識が求められるプロセスです。M&A支援機関登録制度に登録された支援機関は、弁護士、公認会計士、税理士などの専門家と連携し、質の高いサービスを提供しています。これらの専門家ネットワークを活用することで、中小企業は、安心してM&Aを進めることができます。
5.3 情報提供
M&A支援機関登録制度に登録された支援機関は、中小企業向けに、M&Aに関するセミナーや個別相談会などを開催し、情報提供を行っています。また、M&Aに関する最新情報や事例などを、ホームページやメールマガジンなどで発信しています。これらの情報提供を通じて、中小企業は、M&Aに関する知識や理解を深めることができます。
5.4 M&A支援機関登録制度の利用を検討するメリット
M&A支援機関登録制度を利用することで、中小企業は、以下のようなメリットを得られます。
安心してM&Aを進めることができる | |
質の高いサービスを受けることができる | |
M&Aに関する知識や理解を深めることができる |
5.5 M&A支援機関登録制度の利用を検討する際の注意点
M&A支援機関登録制度を利用する際には、以下の点に注意する必要があります。
登録支援機関によって、サービス内容や料金体系が異なる | |
すべての登録支援機関が、自社にとって最適な支援機関であるとは限らない |
M&A支援機関登録制度を利用する際には、複数の登録支援機関を比較検討し、自社にとって最適な支援機関を選ぶことが重要です。また、契約前に、サービス内容や料金体系などを十分に確認することが大切です。
5.6 M&A支援機関の選び方
M&A支援機関を選ぶ際には、以下の点を考慮すると良いでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
実績 | M&Aの成約実績が豊富であるか、自社と同じ業界のM&A実績があるかなどを確認しましょう。 |
専門性 | 企業価値評価、財務、税務、法律など、M&Aに必要な専門知識を持ったスタッフがいるかを確認しましょう。 |
料金体系 | 料金体系が明確であるか、成功報酬の金額や支払い条件などを確認しましょう。 |
サポート体制 | M&Aの相談から、クロージング、M&A後の統合プロセスまで、親身になってサポートしてくれるかを確認しましょう。 |
M&A支援機関登録制度は、中小企業が安心してM&Aを進めるための制度です。登録支援機関のサポートを受けることで、M&Aを成功に導く可能性を高めることができます。M&Aをご検討されている方は、ぜひM&A支援機関登録制度の利用を検討してみてください。
6. まとめ
この記事では、M&A支援機関登録制度について、創設の背景から登録要件・活用方法・注意点まで詳しく解説しました。M&A支援機関登録制度は、中小企業庁が創設した制度であり、M&Aを検討している中小企業に対して、適切なアドバイスやサポートを提供できる機関を登録・公表することで、M&Aの円滑化を図ることを目的としています。
登録要件としては、中小M&Aガイドラインの遵守、料金表の提出、秘密保持義務など、信頼できるM&A支援機関としての要件が定められています。制度を活用することで、M&A成約に向けたサポート体制の構築や専門家ネットワークの活用、情報収集などが期待できます。
M&Aは、企業の成長戦略において重要な選択肢の一つです。本制度の活用を検討することで、より安全かつ円滑なM&Aの実現を目指しましょう。
編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったPMIのスペシャリスト。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。