譲渡企業の探し方ガイド!ロングリスト・ショートリストの違いや作成方法
「譲渡企業ってどうやって探せばいいの?」「ロングリストとショートリストって何が違うの?」そんな悩みをお持ちのあなたへ。譲渡企業の探し方から、ロングリスト・ショートリスト作成の違い、具体的な作成方法までを網羅的に解説します。
この記事を読めば、譲渡企業選定の全体像を掴み、スムーズにM&Aを進めるための道筋が見えてきます。理想の企業との出会いを成功させ、未来に向けた事業展開を実現しましょう。
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- 目次
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1. 譲渡企業の探し方
1.1 専門機関を利用する
1.2 インターネットで探す
1.3 その他
2. ロングリスト・ショートリストの違いとは?
2.1 ロングリストとは?
2.2 ショートリストとは?
3. ロングリストの作成方法
3.1 情報収集
3.2 スクリーニング
4. ショートリストの作成方法
4.1 絞り込みの基準
4.2 現場視察
5. 譲渡企業選定のポイントとは?
5.1 企業文化の一致
5.2 従業員との相性
5.3 事業計画の実現可能性
6. まとめ
手数料は発生しますが、成約まで導くためのノウハウや経験が豊富であるため、初めてM&Aを行う企業にもおすすめです。
しかし、多くのM&A仲介会社は、成約までが業務となっており、残念ながら成約後に重要なPMI業務までを支援している企業がほとんどありません。
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M&A仲介会社を利用するメリット
豊富な案件情報から、条件に合った企業を探せる | |
専門知識を持つアドバイザーが、成約までサポートしてくれる | |
秘密保持契約を締結しているため、情報漏洩のリスクが低い |
M&A仲介会社を利用するデメリット
手数料が発生する | |
仲介会社によって、得意な業種や規模が異なる | |
成約後のPMI支援・トラブル対応まで行わない企業が多い |
銀行
銀行は、顧客企業に対してM&Aの仲介サービスを提供しています。特に、地方銀行は地域の中小企業の事業承継問題解決を支援するため、積極的にM&Aの仲介を行っています。取引のある銀行に相談してみるのも良いでしょう。銀行を利用するメリット
取引のある銀行であれば、企業の財務状況を把握しているため、スムーズに手続きを進められる | |
M&Aの資金調達も相談できる |
銀行を利用するデメリット
仲介できる案件数が限られている場合がある |
公的機関
経済産業省や中小企業庁などの公的機関も、事業承継を支援するためにM&Aに関する情報提供や相談窓口を設けています。これらの機関は、無料で相談に乗ってもらえるため、まずは気軽に相談してみるのも良いでしょう。公的機関を利用するメリット
無料で相談できる | |
中立的な立場でアドバイスをもらえる |
公的機関を利用するデメリット
仲介は行っておらず、あくまで情報提供や相談にとどまる |
事業承継マッチングサイトを利用するメリット
- ・無料で利用できるサイトが多い
- ・全国の案件情報を閲覧できる
- ・譲渡企業に直接問い合わせができる
事業承継マッチングサイトを利用するデメリット
- ・掲載されている情報が古い場合がある
- ・競合企業が多い
M&A情報サイト
M&A情報サイトは、M&Aに関するニュースや解説記事・セミナー情報などを掲載しています。譲渡企業の情報は掲載されていない場合もありますが、M&Aの基礎知識や最新動向を把握するのに役立ちます。主なM&A情報サイト MARR Onlineは、株式会社レコフデータが運営するM&A情報・データサイトです。
1.3 その他
会計事務所
会計事務所は企業の財務状況に精通しているため、M&Aの候補企業探しや財務デューデリジェンスなどで力を発揮します。顧問税理士がいる場合は、相談してみるのも良いでしょう。弁護士
弁護士は、M&A契約書の作成やレビュー、法的デューデリジェンスなどを専門に行います。M&Aは法的にも複雑な手続きが多いため、弁護士のサポートを受けることが重要です。2. ロングリスト・ショートリストの違いとは? 2.1 ロングリストとは?
ロングリストとは、M&Aの候補となりうる企業を幅広くリストアップしたものです。この段階では、あくまで候補となる企業を網羅的に洗い出すことが目的です。そのため、具体的な条件で絞り込むことはせず、後々の比較検討の材料となるような基本的な情報を収集します。
ロングリストの項目例
ロングリストには、一般的に以下の項目を含めます。
項目 | 説明 |
---|---|
企業名 | 対象企業の名前 |
業種 | 対象企業の属する業界 |
所在地 | 対象企業の本社所在地 |
従業員数 | 対象企業の従業員数 |
売上高 | 対象企業の年間売上高 |
営業利益 | 対象企業の年間営業利益 |
特徴・強み | 対象企業独自の強みや市場での競争優位性 |
情報源 | 情報を入手した媒体や機関 |
ショートリストとは、ロングリストの中からより具体的な条件で絞り込みを行い、M&Aの可能性が高いと判断した企業をリストアップしたものです。ロングリストで収集した情報に加え、財務状況や経営状況などを詳細に分析し、自社のM&A戦略に合致する企業を選定します。
ショートリストの項目例
ショートリストには、ロングリストの項目に加え、以下の項目を含めることがあります。
項目 | 説明 |
---|---|
財務状況の詳細 | 過去数年間の売上高、利益率、自己資本比率などの財務指標 |
経営陣の情報 | 経営者の経歴や年齢、後継者計画の有無 |
事業内容の詳細 | 主要製品・サービス、顧客層、市場シェア、競合環境など |
PMI上の課題・シナジー効果 | M&A後の統合プロセスにおける課題や想定されるシナジー効果 |
企業文化・価値観 | 企業理念や行動指針、組織風土など |
譲渡理由・条件 | 譲渡を検討している理由や希望条件 |
これらの情報をもとに、自社との相性やM&A後の統合プロセスにおける課題などを検討し、最終的な候補を絞り込んでいきます。
3. ロングリストの作成方法 3.1 情報収集譲渡企業候補となる企業のリストアップは、M&Aプロセスにおける最初のステップであり、その後の成否を大きく左右する重要なプロセスです。
数多くの企業の中から、自社のニーズと条件に合致する最適な候補を見つけ出すためには、多岐にわたる情報源を活用し、幅広く情報を収集することが重要となります。
情報収集の方法は大きく分けて「公開情報」を用いる方法と「非公開情報」を用いる方法の2つがあります。
公開情報を用いる方法
公開情報を用いる方法とは、インターネットや書籍・データベースなど、誰でもアクセス可能な情報源から情報を得る方法です。この方法は、手軽に情報収集ができるというメリットがある一方、情報が断片的になりやすく、網羅性に欠けるというデメリットもあります。
主な情報源としては、以下のようなものがあります。
インターネット検索エンジン | |
M&A仲介会社のウェブサイト | |
事業承継マッチングサイト | |
経済新聞や業界紙などの報道機関 | |
企業のホームページやIR情報 | |
官公庁の統計データ |
これらの情報源を活用することで、譲渡を検討している企業の業種・規模・地域・財務状況・経営状況などを把握することができます。
非公開情報を用いる方法
非公開情報を用いる方法とは、M&A仲介会社や金融機関・コンサルティング会社など、専門性の高い機関から情報を得る方法です。これらの機関は独自のネットワークやノウハウを持っているため、公開情報だけでは得られないような、より詳細かつ最新の情報を入手することができます。
また、これらの機関に相談することで、自社のM&A戦略に最適な企業の紹介や、交渉のサポートを受けることも可能です。
情報収集によって候補企業のリストが作成できたら、次は、自社のM&Aの目的や戦略に合致する企業を絞り込む「スクリーニング」という作業を行います。
スクリーニングでは、事前に設定した評価基準に基づいて候補企業を客観的に評価し、優先順位を付けていきます。
主なスクリーニング基準としては、以下のようなものがあります。
業種・事業内容
自社の事業とのシナジー効果が見込めるか、競争関係にある企業ではないか、市場の成長性は高いかなどを考慮します。例えば、異業種への進出を考えているのであれば、自社の技術やノウハウを生かせる分野や、顧客基盤を共有できる分野の企業を候補にすることが考えられます。
規模
買収可能な規模の企業であるか、統合後の企業規模は適切かなどを考慮します。企業規模は、売上高や従業員数・資産規模など、様々な指標で測ることができます。重要なのは、自社の経営資源とのバランスを考慮し、無理のない統合を実現できる規模の企業を選ぶことです。
地域
自社の事業展開エリアとの関連性、物流や人材の確保のしやすさなどを考慮します。例えば、全国展開を目指しているのであれば、拠点となる地域に候補企業が存在することが重要となります。また、海外進出を視野に入れているのであれば、進出先の国や地域に精通した企業を選定する必要があります。
財務状況
収益性・安全性・成長性などを分析し、健全な経営状態であるか将来性が見込めるかなどを判断します。財務状況の分析には、財務諸表を用いるのが一般的です。
具体的には、売上高や利益率・自己資本比率・キャッシュフローなどを分析し、企業の収益力や財務体質を評価します。これらの情報をもとに、候補企業の財務状況が健全であるか、将来的な収益が見込めるかなどを判断します。
項目 | 内容 |
---|---|
業種・事業内容 | 自社の事業との関連性、市場の成長性、競合状況など |
規模 | 売上高、従業員数、資産規模、買収可能な範囲など |
地域 | 自社の事業展開エリアとの関連性、物流や人材の確保のしやすさなど |
財務状況 | 収益性、安全性、成長性、財務リスクなど |
これらの基準に加えて、自社のM&Aの目的や戦略に応じて、独自の基準を設定することも重要です。例えば、技術力向上を目的とする場合は、特許取得数や研究開発投資額などを基準にスクリーニングを行うことも考えられます。
重要なのは、自社のニーズに合致した最適な企業を選定するために、多角的な視点から評価することです。
ロングリストで候補を絞り込んだら、いよいよショートリストの作成です。ここでは、より具体的な判断基準に基づいて、最終的な候補を絞り込んでいきます。現場視察なども経て、経営者との面談に進む企業を決定します。
4.1 絞り込みの基準ショートリスト作成段階では、より深く企業を理解し、自社との相性を慎重に見極める必要があります。具体的な絞り込みの基準としては、以下の点が挙げられます。
経営者の年齢
後継者不在の問題を解消するためにM&Aを検討する場合、譲渡企業の経営者の年齢は重要な要素となります。経営者の年齢が高齢である場合、事業承継後にスムーズな経営体制の移行や、従業員との関係構築が課題となる可能性があります。
従業員数
譲渡企業の従業員数は、事業規模や組織体制を把握する上で重要な指標となります。従業員数が多い場合、事業統合後の組織再編や従業員の雇用維持が課題となる可能性があります。
企業文化
企業文化の一致は、M&A後の統合プロセスをスムーズに進める上で非常に重要です。企業理念・価値観・行動規範などが大きく異なる場合、従業員間の摩擦や組織文化の衝突が生じ、事業統合が困難になる可能性があります。
4.2 現場視察ショートリストに掲載された企業に対しては、実際に現場視察を行うことが重要です。現場視察では、企業の雰囲気や従業員の働く様子、設備の状態などを実際に確認することで、より深く企業を理解することができます。また、経営者や従業員と直接面談することで、企業文化や社風を肌で感じることができます。
項目 | 内容 |
---|---|
目的 |
|
注意点 |
|
現場視察を通して得られた情報は、ショートリストの評価項目に加点要素として加味したり、最終的な企業選定の判断材料にしたりすることができます。現場視察では企業を多角的に評価し、自社との適合性を判断する上で非常に有効な手段です。
5. 譲渡企業選定のポイントとは?譲渡企業を最終決定するにあたっては、財務状況や事業計画だけでなく以下の3つのポイントを総合的に判断することが重要です。
これらの要素を見誤ると、M&A後、想定外の課題に直面し、事業計画の頓挫や従業員の離職を招きかねません。
成約後の円滑な事業統合とシナジー創出のためにも、デューデリジェンスや経営陣との面談を通じて、譲渡企業への深い理解を深めるようにしましょう。
企業文化のミスマッチは、M&A後の統合プロセスにおける大きな障壁となり、従業員のモチベーション低下や離職、顧客離れに繋がる可能性があります。
例えば 意思決定のスピード感、コミュニケーションスタイル、あるいは顧客との関係構築方法などが大きく異なる場合、統合後の事業運営に支障をきたす可能性があります。従って、譲渡企業の企業理念や行動規範、社内制度などを事前に精査し、自社との適合性を慎重に見極める必要があります。企業文化の適合性を評価するポイント
経営理念やビジョン、価値観が、自社とどの程度共有されているか | |
組織風土やコミュニケーションスタイルに、大きな違いはないか | |
人事評価制度や報酬体系が、自社のそれと整合性を取れるか | |
顧客との関係性に対する考え方が、自社と類似しているか |
5.2 従業員との相性
M&A後の事業を支えるのは、他でもない従業員です。従業員との相性が悪ければ、優秀な人材の流出・生産性の低下・組織内の摩擦といった問題が生じ、事業統合は困難を極めます。
文化や価値観の異なる組織に統合されることに対する従業員の不安や抵抗は、想像以上に大きいものです。そのため、従業員との事前面談や意見交換会などを積極的に実施し、相互理解を深めることが重要となります。
従業員との相性を確認するポイント
従業員の年齢層やスキル、経験値が、自社と近しいか | |
従業員の働き方やモチベーション、エンゲージメントレベルはどうか | |
労働組合の有無や活動状況、従業員の会社への帰属意識はどうか | |
自社のビジョンや戦略に対する、従業員の理解と共感を得られるか |
5.3 事業計画の実現可能性
M&Aはあくまで手段であり、目的は事業計画の達成です。譲渡企業の現状や課題を正しく理解し、自社の経営資源を活用してシナジーを創出し、事業計画を実現できるかどうかの見極めが重要となります。
そのためには、市場分析、競合分析、収益構造分析などを綿密に行い、事業計画の妥当性や実現可能性を多角的に評価する必要があります。
事業計画の実現可能性を評価するポイント
項目 | 評価ポイント |
---|---|
市場環境 |
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競争優位性 |
|
シナジー効果 |
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統合リスク |
|
これらのポイントを踏まえ、譲渡企業の選定を進めることが、M&A後の成功確率を高める鍵となります。
6. まとめ譲渡企業探しは、企業の未来を大きく左右する重要なプロセスです。本記事では、譲渡企業探しの方法として、専門機関の活用やインターネット検索などを具体的に解説しました。
そして、効率的かつ効果的な企業選定のために、ロングリストとショートリストの作成方法を紹介しました。ロングリストでは、業種、規模、地域、財務状況といった客観的な指標を基に候補を幅広くピックアップします。
一方、ショートリストでは、経営者の年齢や従業員数、企業文化といった、より詳細な情報を加味して絞り込みを行います。これらの情報を元に、現場視察などを通して、企業文化の一致、従業員との相性、事業計画の実現可能性といったポイントを踏まえて、最終的な譲渡先を選定することが重要です。
譲渡企業探しは、単に条件に合致すれば良いというものではありません。自社のビジョンや価値観と合致し、共に成長していけるパートナー企業を見つけることが、M&A後の成功、ひいては企業の未来を創造する上で最も重要な要素と言えるでしょう。
編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったPMIのエキスパート。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。