M&A・非上場株式・非公開会社の譲渡手法を承継範囲で比較

M&A・非上場株式・非公開会社の譲渡手法を承継範囲で比較

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公開日:2024年8月13日
最終更新日:2026年8月9日

非上場株式を発行する非公開会社でも、M&Aによる会社売却や買収を検討できます。実行にあたっては、譲渡制限、株主構成、株価算定、税務、デューデリジェンスなどを確認し、必要に応じて専門家へ相談することが重要です。

本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の法律・税務・会計上の助言ではありません。具体的な取引を行う際は、弁護士、税理士、公認会計士などに確認してください。

1. 非公開会社で非上場株式を扱うM&Aの基本

非上場会社の株式は証券取引所で売買されません。しかし、株主と買い手が株式譲渡契約を締結すれば、相対取引として会社売却を検討できます。

実務上の重要事項は、定款に定められた譲渡制限です。必要な承認を得ずに株式を移転した場合、買い手が会社に対して株主としての権利を主張できない可能性があります。

1-1. 非上場企業と非公開会社は同じ意味ではない

非上場企業とは、株式が証券取引所に上場していない企業です。一方、非公開会社とは、会社法上、発行する株式の全部に譲渡制限を付している株式会社を指します。

したがって、非上場でも譲渡制限のない株式を発行する会社はあり得ます。判断にあたっては、定款、登記事項証明書、株式の発行状況を確認します。

1-2. 非上場株式でも会社売却を検討できる仕組み

非上場株式は市場価格がないだけで、譲渡そのものが一律に禁止されているわけではありません。株式譲渡では、株主が株式を譲渡し、買い手が対価を支払って経営権を取得します。

事業譲渡は事業や資産を個別に移し、第三者割当増資は買い手が新株を引き受けます。株式交換は、一定の要件のもとで買い手会社の株式などを対価として完全子会社化する方法です。

1-3. 定款と株主名簿で譲渡制限を確認する方法

最初に、定款の譲渡制限条項と登記事項証明書を確認します。次に、株主名簿、株券の発行の有無、過去の株式譲渡記録を照合します。

名簿が古い場合は、株式取得の根拠資料を集めて株主を確認します。株券を紛失している場合は、自己判断で譲渡せず、弁護士や司法書士などに対応を確認してください。

1-4. 買い手と売り手が確認すべきM&Aの利点

売り手には、後継者不足の解消、創業者利益の確保、従業員や取引先の事業継続などの可能性があります。買い手には、事業拡大、人材、顧客基盤、許認可などを得られる可能性があります。

一方で、簿外債務、未払残業代、経営者への依存、従業員の離職などは共通のリスクです。メリットだけでなく、買収後に誰が何を引き継ぐかまで確認します。

【文脈】非上場会社と非公開会社の違い 2. 非上場会社のM&A手法を承継範囲で比較する

スキームは、何を引き継ぐかによって選びます。会社全体を承継する場合は株式譲渡、特定の事業を切り出す場合は事業譲渡、資金を受け入れながら資本関係を構築する場合は第三者割当増資が選択肢になります。

手法

対価の受取先

承継範囲

主な注意点

株式譲渡

株主

会社の権利義務全体

簿外債務・過去のリスク

事業譲渡

会社

合意した事業・資産・契約

契約承諾・転籍同意

第三者割当増資

会社

新株発行による持分

希薄化・発行価額

株式交換

株主

完全子会社化

株主構成・対価株式

2-1. 株式譲渡で会社の権利義務を承継する

株式譲渡は、株主が保有株式を買い手に譲渡し、議決権を移す方法です。会社の同一性を保ちやすく、契約や従業員、許認可を引き継ぎやすい点が特徴です。

ただし、買い手は過去の税務、法務、労務上の問題も引き継ぐ可能性があります。買収前のデューデリジェンスでリスクを確認し、価格調整や補償条項への反映を検討します。

2-2. 事業譲渡で対象資産と契約を選別する

事業譲渡では、対象となる設備、在庫、顧客、知的財産、契約、従業員などを個別に定めます。不要な事業や債務を買い手が引き継がずに済む場合がある点が特徴です。

一方、契約相手の承諾、許認可の再取得、従業員の転籍同意などが必要になる場合があります。資産や契約を一件ずつ移すため、株式譲渡より手続きが増えることがあります。

2-3. 第三者割当増資で資金と経営権を受け入れる

第三者割当増資では、買い手が新株を引き受け、払い込んだ資金が会社に入ります。既存株主への売却代金ではないため、創業者が直接資金を得る株式譲渡とは異なります。

発行後の議決権比率、既存株主の希薄化、発行価額の妥当性を確認します。有利な条件での発行は、既存株主との紛争や税務上の問題につながる可能性があります。

2-4. 株式譲渡と事業譲渡の手取り額を比べる

株式譲渡では、原則として株主が対価を受け取ります。個人株主の譲渡益に対する税率は、所得の種類や取引条件などによって異なるため、具体的な税額は税理士へ確認してください。

事業譲渡では、対価は会社に入り、法人税等の課税関係が生じる可能性があります。その後に株主へ資金を移す方法によっては、配当など別の課税関係が生じることがあります。

売却価格が同じでも、仲介手数料、税金、専門家費用、引継ぎ条件によって手取りは変わります。価格だけでなく、税引後の残額や契約条件を比較します。

3. 非上場株式M&Aの進め方と承認手続きを時系列で確認する

M&Aは、準備、相手探し、基本合意、デューデリジェンス、最終契約、クロージングの順に進めるのが一般的です。譲渡承認手続きは、契約交渉と並行して早めに確認します。

  1. 売却目的・買収目的と希望条件を整理する

  2. 株主構成、定款、財務資料を確認する

  3. 秘密保持契約を締結して候補先と面談する

  4. 基本合意後にデューデリジェンスを実施する

  5. 最終契約、承認決議、決済、名義書換を行う

3-1. 売却準備で定款と少数株主を整理する

売却前に、株主名簿と実際の保有者を照合します。親族、元役員、退職従業員などの少数株主がいる場合は、保有株式の集約方針を検討します。

連絡不能の株主や株券紛失を放置すると、買い手が求める株式の取得が難しくなる可能性があります。過去の株式譲渡契約、相続資料、株主総会議事録も確認します。

3-2. 譲渡承認請求から名義書換までの実務

譲渡制限株式を譲渡する場合、株主は譲渡先と株式数を記載した譲渡承認請求書を会社へ提出します。請求方法や記載事項は、定款と会社法上の手続きに従います。

承認機関は、取締役会設置会社では原則として取締役会、非設置会社では原則として株主総会です。定款で別の承認者を定めている場合は、その定めを確認します。

承認後、売り手と買い手が株式譲渡契約を締結し、対価を決済します。その後、株主名簿記載事項の書換を請求し、名義変更を完了させます。

3-3. 基本合意から最終契約までの交渉事項

基本合意では、譲渡価格、スキーム、対象株式、独占交渉期間、役員処遇、スケジュールなどを確認します。法的拘束力を持つ条項と、拘束力を持たない合意事項を区分して記載します。

最終契約では、表明保証、補償、価格調整、前提条件、競業避止、個人保証解除、クロージング後の引継ぎなどを定めます。口頭の約束は、契約書への反映を検討します。

3-4. クロージング前の確認事項

株主名簿が古い場合や、未承認の過去譲渡が見つかった場合は、株主の確定や必要な手続きに時間を要する可能性があります。必要に応じて、決済日や契約上の補償条件を見直します。

主要取引先との契約に支配権変更条項がある場合は、M&A後に承諾が必要となることがあります。経営者保証についても、解除時期と金融機関の手続きを確認します。

  • 定款・譲渡承認決議・株式譲渡契約書

  • 株主名簿・株券または不発行確認書

  • 対価の振込確認・株式の引渡し

  • 主要契約の承諾・許認可の確認

  • 役員変更・個人保証解除の確認

【文脈】非上場株式M&Aの相談開始から名義書換までの時系列を示すプロセス図です 4. 非上場株式の価値評価と税務・DDの確認事項

非上場株式には市場価格がないため、株価算定では複数の方法を検討します。企業価値から有利子負債などを調整して株式価値を求める場合があるため、両者を混同しないことが重要です。

4-1. 収益性と資産価値から非上場株式を評価する

類似会社比較法は、類似する上場会社の倍率を参考にします。DCF法は、将来キャッシュフローを現在価値に割り引き、将来性を評価する方法です。

純資産価額方式は、資産から負債を差し引く方法です。類似業種比準方式や配当還元方式は、相続・贈与などの税務評価で用いられることが多く、M&A価格と一致するとは限りません。

中小企業では、時価純資産に営業利益などを加味する考え方が交渉の参考になる場合もあります。ただし、業種、成長性、顧客集中、経営者依存などによって評価は変動します。

4-2. 株式譲渡益とみなし配当の税務を整理する

個人株主が第三者へ株式を譲渡する場合、一般に譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引いた利益が課税対象となります。取得費が不明な場合の取扱いには要件があるため、税理士に確認してください。

法人株主の譲渡益は、他の所得と合算して法人税等を計算します。発行会社が自己株式を取得する場合は、資本金等の額を超える部分がみなし配当となる可能性があります。

低額譲渡や高額譲渡では、売り手と買い手の関係や取引条件により、贈与、給与、受贈益などの扱いが変わる可能性があります。価格の根拠資料を残し、契約前に税理士へ確認します。

4-3. 財務・税務・法務DDで簿外債務を確認する

財務DDでは、売上の実在性、運転資金、借入、未払費用、在庫、固定資産、関連当事者取引などを調べます。税務DDでは、申告漏れ、消費税、繰越欠損金などを確認します。

法務DDでは、契約、訴訟、知的財産、許認可、労務、個人情報、担保などを確認します。未払残業代、退職給付、保証債務も確認対象となる場合があります。

問題が見つかった場合は、買収価格の減額、クロージング前の是正、補償上限、表明保証保険などへの反映を検討します。発見したリスクを契約条件に反映することが重要です。

4-4. 専門家へ相談する時期と役割を分ける

FAや仲介会社は、候補先探索、条件交渉、進行管理を支援します。弁護士は契約や譲渡承認などを確認し、税理士や公認会計士は株価算定、税務、財務DDなどを担当します。

司法書士は商業登記などの手続きを支援します。相談は最終契約直前ではなく、売却や買収を検討し始めた段階で行うと、株主整理や資料整備の時間を確保しやすくなります。

【文脈】非上場株式の企業価値評価とデューデリジェンスの関係を整理する図解です 5. M&A後のPMIと非公開会社の経営統合を進める

クロージングはM&Aの終点ではなく、統合の開始です。PMIでは、事業を止めないことを優先し、従業員、取引先、金融機関、会計、権限、システムなどを段階的に整えます。

5-1. 従業員と取引先への説明時期を設計する

情報管理のため、説明対象と時期をあらかじめ決めます。クロージング前は主要な関係者に限定し、決済後は雇用継続、待遇、代表者変更、事業方針などを説明します。

従業員には雇用条件を具体的に示し、主要取引先には契約や支払条件への影響を伝えます。説明が遅れると、不安から離職や契約見直しにつながる可能性があります。

5-2. 個人保証と金融機関対応をクロージングで整える

売り手経営者の個人保証、担保、借換え条件を一覧化します。買い手が新たな保証を差し入れる場合や、金融機関の承諾時期を確認します。

保証解除をクロージング条件、または買い手の契約上の義務として定める方法があります。解除確認書を取得するまで、売り手が責任を負う可能性を残さないよう条件を確認します。

5-3. PMI計画で会計・権限・業務を統合する

買収直後は、資金管理、決裁権限、会計報告、コンプライアンスを優先します。営業方法や人事制度は、現場の混乱を避けるため、事業継続への影響を見ながら統合します。

統合計画には、担当者、期限、成果指標を記載します。月次決算の早期化、承認権限の明文化、顧客情報の管理方法などを課題として設定する方法があります。

5-4. 売り手と買い手の準備書類を最終確認する

定款、株主名簿、決算書、税務申告書、契約書、許認可、議事録を整理します。加えて、譲渡承認請求書、承認議事録、株式譲渡契約書、名義書換請求書を確認します。

書類ごとに作成者、提出先、確認期限を一覧化します。決済日当日は、送金、株券、印鑑、登記書類、保証解除書類を照合します。

6. よくある質問(FAQ) 6-1. 非上場株式は譲渡制限があっても売却できますか

売却を検討できます。ただし、定款で指定された承認機関の承認が必要となる場合があります。承認前に手続きを進めず、譲渡承認請求から名義書換までの流れを確認してください。

6-2. 株式譲渡承認は誰の決議が必要ですか

取締役会設置会社では原則として取締役会、非設置会社では原則として株主総会が承認します。定款に別の定めがある場合は、その内容を確認してください。

6-3. 非上場株式の売却価格はどう決めますか

純資産、収益力、類似会社の倍率、将来キャッシュフローなどを組み合わせて評価します。税務評価額はM&A価格と異なる場合があるため、企業価値評価と交渉条件を分けて検討します。

6-4. 株主名簿が古い場合でもM&Aを進められますか

進められる場合もありますが、株主の確認を先行させます。過去の譲渡、相続、株券の所在を確認しないまま進めると、決済延期や補償問題につながる可能性があります。

7. M&A仲介会社を選ぶ際の確認事項

会社売却では、提示された譲渡価格がそのまま手元に残るとは限りません。仲介手数料、税金、実費、DD費用、引継ぎ条件などを確認し、手取り額や契約条件を比較する必要があります。

仲介会社へ相談する場合は、初回相談の扱い、着手金、中間金、成功報酬、最低報酬、契約期間、テール条項などを事前に確認してください。料金やサービス内容は会社や契約によって異なるため、書面で確認することが重要です。

候補先への打診、条件交渉、基本合意、DD、最終契約、クロージングまで、どの範囲を支援するのかも確認します。仲介会社だけでなく、必要に応じて弁護士、税理士、公認会計士などにも相談してください。

8. まとめ

非上場株式を発行する非公開会社でも、M&Aによる会社売却や買収を検討できます。最初に定款、譲渡制限、株主名簿、株券の有無を確認し、承認機関を特定します。

次に、株式譲渡、事業譲渡、第三者割当増資などを、承継範囲、税負担、買い手のリスクで比較します。株価算定とDDを行い、発見した問題を価格、表明保証、補償、クロージング条件へ反映します。

まずは株主名簿と定款を用意し、直近数期の決算書、税務申告書、主要契約、借入・保証資料を整理してください。具体的な手続きや税務については、弁護士、税理士、公認会計士、FAなどへ早めに相談することをおすすめします。

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