企業概要書(IM)でM&Aを有利に進める!作成ポイントとは?|目的・記載内容・注意点
M&Aで会社を売却することを検討する上で、企業概要書(IM)の作成は非常に重要です。しかし、初めてM&Aに臨む経営者の中には、その重要性を理解していない方も少なくありません。
企業概要書は、単なる会社案内とは異なり、M&Aを成功に導くための戦略的な資料です。
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1. M&Aにおける企業概要書(IM)とは?
1.1 M&Aにおける企業概要書(IM)の重要性
そのため、企業概要書(IM)の内容が充実しているかどうかで、M&Aのプロセスがスムーズに進むか、あるいは遅延したり、場合によっては破談に繋がったりする可能性もあります。
特に、近年はコロナ禍の影響もあり、事業承継問題を抱える中小企業の増加や業界再編の動きを受けて、M&Aの件数は増加傾向にあります。東京証券取引所の発表によると、2022年のM&Aの件数は過去最多を更新しており、今後も増加していくことが予想されます。
このような状況下において、企業概要書(IM)は、M&Aを成功させるために必要不可欠な資料と言えるでしょう。
1.2 企業概要書(IM)と会社案内の違い 企業概要書(IM)と会社案内は、どちらも企業の概要を説明する資料ですが、その目的や記載内容が異なります。主な違いは以下の通りです。
このように、企業概要書(IM)は、M&Aを目的とした、より機密性の高い情報を含む資料であるのに対し、会社案内は、不特定多数のステークホルダーに向けて、企業の魅力を伝えるための広報資料としての役割を担います。
企業概要書(IM)は、会社案内の内容をベースに、M&Aに特化した情報を加筆していくケースが多いですが、目的やターゲットの違いを明確に意識して作成することが重要です。
また、企業概要書(IM)は、ノンネームシートと呼ばれる、企業名を伏せた状態で作成される場合もあります。これは、情報漏洩のリスクを最小限に抑えながら、幅広い買い手候補にアプローチするためです。
ノンネームシートには、企業名や所在地などの特定しやすい情報は記載せず、事業内容や財務状況などの概要のみを記載します。買い手候補企業は、ノンネームシートの内容に興味を持った場合、秘密保持契約を締結した上で、詳細な企業概要書(IM)を受け取ることになります。
2. M&Aにおける企業概要書(IM)を作成する目的
買収対象企業の事業内容や経営状況の把握 企業概要書(IM)には、事業内容・財務状況・組織体制・経営戦略など、買収対象企業に関する基本的な情報が網羅的に記載されています。
買い手企業は、これらの情報を基に、買収対象企業の事業の収益性や成長性、経営の効率性などを分析し、投資の可否を判断します。
デューデリジェンスの準備 デューデリジェンスとは、買収対象企業の価値を精査するために、財務状況・法務状況・事業状況などを詳細に調査するプロセスです。
企業概要書(IM)は、デューデリジェンスの初期段階において、調査項目を特定するためのベースライン情報として活用されます。
あらかじめ企業概要書(IM)の内容を確認しておくことで、デューデリジェンスを効率的に進めることができます。
買収後の統合プロセス(PMI)の計画立案 M&A後の統合プロセス(PMI)をスムーズに進めるためには、買収対象企業の現状と課題を正確に把握しておく必要があります。
企業概要書(IM)は、PMIにおける組織統合、システム統合、事業統合などの計画を立案するための基礎資料となります。
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2.2 売り手企業側の目的 売り手企業にとって、企業概要書(IM)は、自社の魅力を効果的にアピールし、優良な買い手企業からの買収を成功させるための重要なツールとなります。具体的には、以下の様な目的で作成されます。
自社の魅力をアピールし、買い手企業の関心を惹きつける 企業概要書(IM)は、自社の強みや魅力を効果的にアピールすることで、買い手企業の関心を惹きつけ、M&A交渉を有利に進めることを目的として作成されます。
事業内容や実績・財務状況・将来展望などを分かりやすく伝えることで、買い手企業が自社に魅力を感じ、買収したいと思えるような内容にする必要があります。
適正な企業価値を理解してもらう 企業概要書(IM)は、自社の事業内容、財務状況、将来性などを客観的に示すことで、買い手企業に適正な企業価値を理解してもらうことを目的として作成されます。
企業価値評価の根拠となる情報を明確に示すことで、買い手企業との価格交渉をスムーズに進めることができます。
円滑なM&Aプロセスを実現する 企業概要書(IM)は、買い手企業に自社情報を正確かつ効率的に伝えることで、M&Aプロセスを円滑に進めることを目的として作成されます。
買い手企業からの質問や要求に迅速に対応することで、相互理解を深め、信頼関係を築きながら、M&A交渉を進めることができます。
作成の目的を明確にすることで、より効果的な企業概要書(IM)を作成することができます。M&Aを検討する際は作成ポイントを押さえ、自社の状況に合わせて作成する必要があるでしょう。
3. M&Aにおける企業概要書(IM)に記載すべき内容 企業概要書(IM)に記載する内容は、M&Aの目的に応じて異なりますが、基本的には以下の内容を網羅することが重要です。
3.1 基本情報
これらの情報は、買い手企業が売り手企業を基本的な情報を理解するために必要不可欠です。特に、従業員数や資本金は、企業規模を判断する上で重要な指標となります。また、連絡先は、その後のやり取りをスムーズに行うために必ず記載しましょう。
3.2 事業内容 事業概要
事業内容は、企業価値を評価する上で最も重要な要素の一つです。詳細かつ具体的に記載することで、買い手企業の理解を深め、投資判断を後押しします。
例えば 顧客ターゲットや販売チャネルを明確にすることで、市場におけるポジショニングを具体的に示すことができます。また、主要な顧客や取引先との関係性についても触れると、事業の安定性をアピールできます。
さらに、競合との差別化ポイントを明確に示すことも重要です。独自の技術やノウハウ、ブランド力など、競争優位性を示す情報を盛り込みましょう。
製品・サービス
製品・サービスは、事業内容を具体的に示す重要な要素です。特に、主要製品・サービスについては、詳細な説明を加えることで、買い手企業の理解を促進します。
例えば 特許取得済み技術や独自のサービス内容など、競争優位性を明確に示すことが重要です。また、売上高や顧客満足度などの具体的な数値データを含めることで、説得力が増します。
市場
ポジショニングは、競合との関係性を明確にすることで、自社の強みをアピールすることができます。主要な競合企業を挙げ、それぞれの強みと弱みを分析することで、自社の優位性を明確に示しましょう。
3.3 財務情報
財務情報は、企業の収益力や安定性を判断する上で重要な要素です。過去3〜5期分の財務諸表を掲載することで、買い手企業は時系列で財務状況を把握することができます。
例えば 一時的な要因によるものなのか、構造的な問題によるものなのかを説明することで、買い手企業の懸念を払拭することができます。将来の収益計画を提示することで、買い手企業に対して、成長への期待感を与えることができます。
収益計画は、現実的な数値に基づいて作成することが重要です。市場動向や競合状況などを踏まえ、実現可能な計画を立てましょう。
3.4 組織体制
組織体制は、企業の意思決定プロセスや人材の質を判断する上で重要な要素です。組織図は、階層構造や部門間の関係性を示すものであり、企業の意思決定プロセスを理解する上で役立ちます。
役員一覧は、経営陣の経歴や専門性を示すものであり、企業のリーダーシップを判断する材料となります。従業員数は、企業規模や人材構成を示すものであり、企業の人的資源を評価する上で重要です。
部門別や雇用形態別の内訳を示すことで、より詳細な情報提供を心がけましょう。また、従業員の平均年齢や勤続年数などの情報も、企業文化や人材の定着率を把握する上で役立ちます。
3.5 経営戦略・強み 経営戦略
経営戦略は、企業の将来的な方向性を示すものであり、買い手企業にとって重要な判断材料となります。短期・中期・長期の経営計画を具体的に示すことで、企業のビジョンや目標を明確に伝えることができます。
また、事業の成長戦略を具体的に示すことで、将来的な収益拡大の可能性をアピールすることができます。
例えば 新規事業展開や海外進出など、具体的な計画を盛り込みましょう。具体的な数値目標を設定することで、計画の達成度合いを測ることができるようになります。売上高や利益目標だけでなく、顧客獲得数や市場シェアなどの目標を設定するのも良いでしょう。
各戦略を実行するために必要な経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を明確にすることで、計画の実行可能性を高めることができます。人材採用計画や設備投資計画などを具体的に示すことが重要です。
強み
強みは、他の企業との差別化要因であり、企業価値を高める上で重要な要素です。競争優位性を明確に示すことで、買い手企業に対して、自社の魅力を効果的にアピールすることができます。
例えば 独自の技術やノウハウ、強力なブランド力、幅広い顧客基盤、優れたコスト競争力など、具体的な強みを挙げましょう。強みを裏付ける客観的なデータや事例を提示することで、説得力を高めることができます。
市場シェアや顧客満足度などのデータ、受賞歴やメディア掲載実績などを盛り込みましょう。知的財産権は、企業の技術力やブランド力を示すものであり、重要な無形資産です。
保有する知的財産権を具体的に示すことで、企業価値を高めることができます。特許取得状況や商標登録状況などを記載しましょう。
知的財産権の内容や権利範囲を具体的に説明することで、買い手企業の理解を促進することができます。
3.6 M&Aに関する希望条件
M&Aに関する希望条件を明確に伝えることで、その後の交渉をスムーズに進めることができます。希望するスキームや対価、時期などを具体的に示すことで、買い手企業との認識の齟齬を防ぐことができます。
また、その他に希望する条件があれば、具体的に記載しましょう。
例えば 従業員の雇用維持や経営陣の処遇などに関する希望があれば、明確に伝えることが重要です。これらの情報は、あくまでも初期段階での希望条件です。
交渉の過程で、条件が変更される可能性があることを理解しておきましょう。買い手企業の意向も踏まえながら、柔軟に交渉を進めることが重要です。これらの情報を盛り込むことで、買い手企業に対して、自社の魅力やM&Aへの意欲を効果的に伝えることができます。
ただし、企業概要書(IM)はあくまで概要を伝えるための資料です。詳細な情報については、別途、資料を作成するなどして、買い手企業の求めに応じて提供する必要があることを理解しておきましょう。
4. 企業概要書(IM)の作成における注意点・確認ポイントとは?
4.1 正確性と客観性を意識する 企業概要書(IM)は、買い手企業が投資判断を行う上で重要な資料となるため、記載内容は正確かつ客観的である必要があります。
売上や利益などの数値データはもちろんのこと、事業内容や将来展望についても、根拠に基づいた記述を心がけましょう。
誤解を招くような表現や曖昧な表現は避け、第三者が見ても理解できるような明確な記述を心がけることが重要です。
過去のデータや実績に基づいた記述を心がける
例えば、将来的な売上目標を記載する場合、過去の売上実績や市場の成長率などを根拠として示すことが重要です。具体的な数字やデータに基づいた記述は、買い手企業の信頼獲得に繋がります。
また、競合企業との比較や市場におけるポジショニングなども客観的なデータに基づいて説明することで、自社の強みをより効果的にアピールすることができます。
情報の鮮度を保つ
企業概要書(IM)は、作成時点の情報だけでなく、M&Aプロセスが進む中で最新の情報に更新していく必要があります。
特に、財務状況や顧客との契約状況など、変化しやすい情報はこまめな更新が重要です。情報が古くなると、買い手企業からの信頼を失ってしまう可能性もあるため、注意が必要です。
4.2 機密情報の取り扱い 企業概要書(IM)には、当然ながら会社の機密情報が多く含まれます。そのため、情報管理には細心の注意を払う必要があります。具体的には、以下の点が挙げられます。
アクセス権の制限
企業概要書(IM)へのアクセスは、関係者だけに限定し、パスワード設定など適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。不用意に第三者に閲覧されないよう、厳重な情報管理体制を構築しましょう。
NDAの締結
企業概要書(IM)を買い手企業に開示する際には、事前に秘密保持契約(NDA)を締結しておくことが重要です。NDAには、情報の目的外利用の禁止や第三者への開示の禁止などを盛り込むことで、情報漏洩のリスクを低減することができます。特に、M&Aのような重要な取引においては、法的な拘束力を持つNDAの締結が不可欠です。
開示範囲の検討
企業概要書(IM)に記載する情報は、M&Aの目的に応じて、開示範囲を検討する必要があります。全ての情報を網羅的に開示するのではなく、買い手企業の必要性が高い情報に絞り込むことで、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。
また、段階的に情報開示を行う方法もあり、初期段階では概要レベルの情報のみを開示し、交渉が進むにつれて詳細な情報を開示していく方法も有効です。
4.3 専門家のアドバイスを受ける 企業概要書(IM)の作成は、専門性の高い知識が求められるため、M&Aに精通した専門家のアドバイスを受けることが重要です。具体的には、以下のような専門家に相談することをおすすめします。
これらの専門家は、企業概要書(IM)の内容に関するアドバイスはもちろんのこと、M&Aプロセス全体に関するサポートも期待できます。専門家のサポートを受けることで、M&Aをスムーズかつ有利に進めることができるでしょう。
例えば M&Aアドバイザーは、買い手企業探しや条件交渉など、M&Aプロセス全体をサポートしてくれる役割を担います。
弁護士は、NDAなどの契約書作成や法務デューデリジェンスなどを担当し、法的な側面からM&Aを支援します。
公認会計士は、財務デューデリジェンスや企業価値評価などを担当し、財務的な側面からM&Aを支援します。
税理士は、M&Aに伴う税務申告や税務上のリスクなどを分析し、税務的な側面からM&Aを支援します。
このように、それぞれの専門家の知見を借りることで、企業は安心してM&Aプロセスを進めることができます。
5. まとめ M&Aにおける企業概要書(IM)は、買い手企業に対して自社の魅力を効果的に伝え、円滑な交渉を進めるために非常に重要な資料です。
作成にあたっては、基本情報や事業内容、財務状況などを網羅的に記載するだけでなく、経営戦略や強み、M&Aへの希望条件など、買い手企業が知りたい情報を盛り込むことが重要です。
また、情報公開には最新の注意を払い、弁護士や会計士などの専門家のアドバイスを受けることで、より安全かつ効果的にM&Aを進めることができます。
企業概要書は、単なる会社案内とは異なり、M&Aを成功に導くための戦略的な資料です。
- 本記事では、M&Aにおける企業概要書の役割から、記載すべき内容、作成時の注意点までを具体的に解説します。この記事を読むことで、M&Aのプロセスにおける企業概要書の重要性を理解し、より有利な条件でM&Aを進めるためのノウハウを習得することができます。
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- 目次
-
1. M&Aにおける企業概要書(IM)とは?
1.1 M&Aにおける企業概要書(IM)の重要性
1.2 企業概要書(IM)と会社案内の違い
2. M&Aにおける企業概要書(IM)を作成する目的
2.1 買い手企業側の目的
2.2 売り手企業側の目的
3. M&Aにおける企業概要書(IM)に記載すべき内容
3.1 基本情報
3.2 事業内容
3.3 財務情報
3.4 組織体制
3.5 経営戦略・強み
3.6 M&Aに関する希望条件
4. 企業概要書(IM)の作成における注意点・確認ポイントとは?
4.1 正確性と客観性を意識する
4.2 機密情報の取り扱い
4.3 専門家のアドバイスを受ける
5. まとめ
- M&Aにおいて、企業概要書(IM)は非常に重要な役割を果たします。企業概要書(IM)は、M&Aの初期段階で買い手企業に対し、売り手企業の事業内容・財務状況・経営戦略などを理解してもらうための資料です。
そのため、企業概要書(IM)の内容が充実しているかどうかで、M&Aのプロセスがスムーズに進むか、あるいは遅延したり、場合によっては破談に繋がったりする可能性もあります。
特に、近年はコロナ禍の影響もあり、事業承継問題を抱える中小企業の増加や業界再編の動きを受けて、M&Aの件数は増加傾向にあります。東京証券取引所の発表によると、2022年のM&Aの件数は過去最多を更新しており、今後も増加していくことが予想されます。
このような状況下において、企業概要書(IM)は、M&Aを成功させるために必要不可欠な資料と言えるでしょう。
1.2 企業概要書(IM)と会社案内の違い 企業概要書(IM)と会社案内は、どちらも企業の概要を説明する資料ですが、その目的や記載内容が異なります。主な違いは以下の通りです。
企業概要書(IM) | 会社案内 | |
---|---|---|
目的 | 買い手企業に、売り手企業の事業内容・財務状況・経営戦略などを理解してもらい、買収を検討してもらうこと | 顧客や取引先、就職活動者などに対して、企業の事業内容や魅力を広く知ってもらうこと |
記載内容 | 事業内容の詳細・財務情報・経営戦略・M&Aに関する希望条件など、M&Aに関するより詳細かつ具体的な情報 | 企業理念、事業内容、商品・サービスの紹介、企業文化など、企業のイメージを伝えるための情報 |
ターゲット | M&Aの買い手候補企業 | 顧客、取引先、就職活動者、一般消費者など |
企業概要書(IM)は、会社案内の内容をベースに、M&Aに特化した情報を加筆していくケースが多いですが、目的やターゲットの違いを明確に意識して作成することが重要です。
また、企業概要書(IM)は、ノンネームシートと呼ばれる、企業名を伏せた状態で作成される場合もあります。これは、情報漏洩のリスクを最小限に抑えながら、幅広い買い手候補にアプローチするためです。
ノンネームシートには、企業名や所在地などの特定しやすい情報は記載せず、事業内容や財務状況などの概要のみを記載します。買い手候補企業は、ノンネームシートの内容に興味を持った場合、秘密保持契約を締結した上で、詳細な企業概要書(IM)を受け取ることになります。
2. M&Aにおける企業概要書(IM)を作成する目的
- 企業概要書(IM)は、買い手企業、売り手企業双方にとって、それぞれの目的を達成するためのツールと言えるでしょう。ここでは、それぞれの立場における企業概要書(IM)作成の目的について解説します。
買収対象企業の事業内容や経営状況の把握 企業概要書(IM)には、事業内容・財務状況・組織体制・経営戦略など、買収対象企業に関する基本的な情報が網羅的に記載されています。
買い手企業は、これらの情報を基に、買収対象企業の事業の収益性や成長性、経営の効率性などを分析し、投資の可否を判断します。
デューデリジェンスの準備 デューデリジェンスとは、買収対象企業の価値を精査するために、財務状況・法務状況・事業状況などを詳細に調査するプロセスです。
企業概要書(IM)は、デューデリジェンスの初期段階において、調査項目を特定するためのベースライン情報として活用されます。
あらかじめ企業概要書(IM)の内容を確認しておくことで、デューデリジェンスを効率的に進めることができます。
買収後の統合プロセス(PMI)の計画立案 M&A後の統合プロセス(PMI)をスムーズに進めるためには、買収対象企業の現状と課題を正確に把握しておく必要があります。
企業概要書(IM)は、PMIにおける組織統合、システム統合、事業統合などの計画を立案するための基礎資料となります。
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2.2 売り手企業側の目的 売り手企業にとって、企業概要書(IM)は、自社の魅力を効果的にアピールし、優良な買い手企業からの買収を成功させるための重要なツールとなります。具体的には、以下の様な目的で作成されます。
自社の魅力をアピールし、買い手企業の関心を惹きつける 企業概要書(IM)は、自社の強みや魅力を効果的にアピールすることで、買い手企業の関心を惹きつけ、M&A交渉を有利に進めることを目的として作成されます。
事業内容や実績・財務状況・将来展望などを分かりやすく伝えることで、買い手企業が自社に魅力を感じ、買収したいと思えるような内容にする必要があります。
適正な企業価値を理解してもらう 企業概要書(IM)は、自社の事業内容、財務状況、将来性などを客観的に示すことで、買い手企業に適正な企業価値を理解してもらうことを目的として作成されます。
企業価値評価の根拠となる情報を明確に示すことで、買い手企業との価格交渉をスムーズに進めることができます。
円滑なM&Aプロセスを実現する 企業概要書(IM)は、買い手企業に自社情報を正確かつ効率的に伝えることで、M&Aプロセスを円滑に進めることを目的として作成されます。
買い手企業からの質問や要求に迅速に対応することで、相互理解を深め、信頼関係を築きながら、M&A交渉を進めることができます。
作成の目的を明確にすることで、より効果的な企業概要書(IM)を作成することができます。M&Aを検討する際は作成ポイントを押さえ、自社の状況に合わせて作成する必要があるでしょう。
3. M&Aにおける企業概要書(IM)に記載すべき内容 企業概要書(IM)に記載する内容は、M&Aの目的に応じて異なりますが、基本的には以下の内容を網羅することが重要です。
3.1 基本情報
会社名 | |
設立年月日 | |
本社所在地 | |
代表者名 | |
資本金 | |
従業員数 | |
事業年度 | |
主要取引銀行 | |
連絡先(担当者名、電話番号、メールアドレス) |
3.2 事業内容 事業概要
事業内容の詳細 | 製品・サービス、顧客ターゲット、販売チャネル、市場シェアなど |
---|---|
事業の沿革 | 設立からの事業展開、主要な出来事など |
例えば 顧客ターゲットや販売チャネルを明確にすることで、市場におけるポジショニングを具体的に示すことができます。また、主要な顧客や取引先との関係性についても触れると、事業の安定性をアピールできます。
さらに、競合との差別化ポイントを明確に示すことも重要です。独自の技術やノウハウ、ブランド力など、競争優位性を示す情報を盛り込みましょう。
製品・サービス
主要製品・サービスの一覧 | |
各製品・サービスの説明(特徴、競争優位性、価格、販売実績など) | |
製品・サービスの開発体制 |
例えば 特許取得済み技術や独自のサービス内容など、競争優位性を明確に示すことが重要です。また、売上高や顧客満足度などの具体的な数値データを含めることで、説得力が増します。
市場
市場規模と成長性 | |
市場におけるポジショニング | |
主要な競合企業 |
- 市場環境は、事業の将来性を評価する上で重要な要素です。市場規模や成長性を示すことで、買い手企業に対して、将来的な収益拡大の可能性をアピールすることができます。市場規模は、客観的なデータに基づいて示すことが重要です。
ポジショニングは、競合との関係性を明確にすることで、自社の強みをアピールすることができます。主要な競合企業を挙げ、それぞれの強みと弱みを分析することで、自社の優位性を明確に示しましょう。
3.3 財務情報
項目 | 内容 |
---|---|
売上高 | 過去3〜5期分の売上高を記載 |
営業利益 | 過去3〜5期分の営業利益を記載 |
経常利益 | 過去3〜5期分の経常利益を記載 |
当期純利益 | 過去3〜5期分の当期純利益を記載 |
総資産 | 直近の決算期における総資産を記載 |
自己資本 | 直近の決算期における自己資本を記載 |
負債総額 | 直近の決算期における負債総額を記載 |
- 財務諸表は、監査済みのものがあれば、それを提出するのが望ましいです。監査済みの財務諸表がない場合は、税理士によるレビュー済みのものを提出するなど、信頼性を担保する努力が必要です。
例えば 一時的な要因によるものなのか、構造的な問題によるものなのかを説明することで、買い手企業の懸念を払拭することができます。将来の収益計画を提示することで、買い手企業に対して、成長への期待感を与えることができます。
収益計画は、現実的な数値に基づいて作成することが重要です。市場動向や競合状況などを踏まえ、実現可能な計画を立てましょう。
3.4 組織体制
組織図 | |
役員一覧(氏名、役職、略歴など) | |
従業員数(部門別、雇用形態別など) |
役員一覧は、経営陣の経歴や専門性を示すものであり、企業のリーダーシップを判断する材料となります。従業員数は、企業規模や人材構成を示すものであり、企業の人的資源を評価する上で重要です。
部門別や雇用形態別の内訳を示すことで、より詳細な情報提供を心がけましょう。また、従業員の平均年齢や勤続年数などの情報も、企業文化や人材の定着率を把握する上で役立ちます。
3.5 経営戦略・強み 経営戦略
短期・中期・長期の経営計画 | |
事業の成長戦略 |
また、事業の成長戦略を具体的に示すことで、将来的な収益拡大の可能性をアピールすることができます。
例えば 新規事業展開や海外進出など、具体的な計画を盛り込みましょう。具体的な数値目標を設定することで、計画の達成度合いを測ることができるようになります。売上高や利益目標だけでなく、顧客獲得数や市場シェアなどの目標を設定するのも良いでしょう。
各戦略を実行するために必要な経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を明確にすることで、計画の実行可能性を高めることができます。人材採用計画や設備投資計画などを具体的に示すことが重要です。
強み
競争優位性(技術力、ブランド力、顧客基盤、コスト競争力など) | |
知的財産(特許、商標、意匠など) | |
その他、強みとなる要素 |
例えば 独自の技術やノウハウ、強力なブランド力、幅広い顧客基盤、優れたコスト競争力など、具体的な強みを挙げましょう。強みを裏付ける客観的なデータや事例を提示することで、説得力を高めることができます。
市場シェアや顧客満足度などのデータ、受賞歴やメディア掲載実績などを盛り込みましょう。知的財産権は、企業の技術力やブランド力を示すものであり、重要な無形資産です。
保有する知的財産権を具体的に示すことで、企業価値を高めることができます。特許取得状況や商標登録状況などを記載しましょう。
知的財産権の内容や権利範囲を具体的に説明することで、買い手企業の理解を促進することができます。
3.6 M&Aに関する希望条件
希望するスキーム(株式譲渡、事業譲渡など) | |
希望する対価(現金、株式など) | |
希望する時期 | |
その他、希望する条件 |
また、その他に希望する条件があれば、具体的に記載しましょう。
例えば 従業員の雇用維持や経営陣の処遇などに関する希望があれば、明確に伝えることが重要です。これらの情報は、あくまでも初期段階での希望条件です。
交渉の過程で、条件が変更される可能性があることを理解しておきましょう。買い手企業の意向も踏まえながら、柔軟に交渉を進めることが重要です。これらの情報を盛り込むことで、買い手企業に対して、自社の魅力やM&Aへの意欲を効果的に伝えることができます。
ただし、企業概要書(IM)はあくまで概要を伝えるための資料です。詳細な情報については、別途、資料を作成するなどして、買い手企業の求めに応じて提供する必要があることを理解しておきましょう。
4. 企業概要書(IM)の作成における注意点・確認ポイントとは?
- M&Aを成功に導くためには、企業概要書(IM)の内容の充実度が非常に重要になります。しかし、内容と同じくらい重要なのが、記載上の注意点や確認ポイントを押さえておくことです。
4.1 正確性と客観性を意識する 企業概要書(IM)は、買い手企業が投資判断を行う上で重要な資料となるため、記載内容は正確かつ客観的である必要があります。
売上や利益などの数値データはもちろんのこと、事業内容や将来展望についても、根拠に基づいた記述を心がけましょう。
誤解を招くような表現や曖昧な表現は避け、第三者が見ても理解できるような明確な記述を心がけることが重要です。
過去のデータや実績に基づいた記述を心がける
例えば、将来的な売上目標を記載する場合、過去の売上実績や市場の成長率などを根拠として示すことが重要です。具体的な数字やデータに基づいた記述は、買い手企業の信頼獲得に繋がります。
また、競合企業との比較や市場におけるポジショニングなども客観的なデータに基づいて説明することで、自社の強みをより効果的にアピールすることができます。
情報の鮮度を保つ
企業概要書(IM)は、作成時点の情報だけでなく、M&Aプロセスが進む中で最新の情報に更新していく必要があります。
特に、財務状況や顧客との契約状況など、変化しやすい情報はこまめな更新が重要です。情報が古くなると、買い手企業からの信頼を失ってしまう可能性もあるため、注意が必要です。
4.2 機密情報の取り扱い 企業概要書(IM)には、当然ながら会社の機密情報が多く含まれます。そのため、情報管理には細心の注意を払う必要があります。具体的には、以下の点が挙げられます。
アクセス権の制限
企業概要書(IM)へのアクセスは、関係者だけに限定し、パスワード設定など適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。不用意に第三者に閲覧されないよう、厳重な情報管理体制を構築しましょう。
NDAの締結
企業概要書(IM)を買い手企業に開示する際には、事前に秘密保持契約(NDA)を締結しておくことが重要です。NDAには、情報の目的外利用の禁止や第三者への開示の禁止などを盛り込むことで、情報漏洩のリスクを低減することができます。特に、M&Aのような重要な取引においては、法的な拘束力を持つNDAの締結が不可欠です。
開示範囲の検討
企業概要書(IM)に記載する情報は、M&Aの目的に応じて、開示範囲を検討する必要があります。全ての情報を網羅的に開示するのではなく、買い手企業の必要性が高い情報に絞り込むことで、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。
また、段階的に情報開示を行う方法もあり、初期段階では概要レベルの情報のみを開示し、交渉が進むにつれて詳細な情報を開示していく方法も有効です。
4.3 専門家のアドバイスを受ける 企業概要書(IM)の作成は、専門性の高い知識が求められるため、M&Aに精通した専門家のアドバイスを受けることが重要です。具体的には、以下のような専門家に相談することをおすすめします。
M&Aアドバイザー | |
弁護士 | |
公認会計士 | |
税理士 |
例えば M&Aアドバイザーは、買い手企業探しや条件交渉など、M&Aプロセス全体をサポートしてくれる役割を担います。
弁護士は、NDAなどの契約書作成や法務デューデリジェンスなどを担当し、法的な側面からM&Aを支援します。
公認会計士は、財務デューデリジェンスや企業価値評価などを担当し、財務的な側面からM&Aを支援します。
税理士は、M&Aに伴う税務申告や税務上のリスクなどを分析し、税務的な側面からM&Aを支援します。
このように、それぞれの専門家の知見を借りることで、企業は安心してM&Aプロセスを進めることができます。
5. まとめ M&Aにおける企業概要書(IM)は、買い手企業に対して自社の魅力を効果的に伝え、円滑な交渉を進めるために非常に重要な資料です。
作成にあたっては、基本情報や事業内容、財務状況などを網羅的に記載するだけでなく、経営戦略や強み、M&Aへの希望条件など、買い手企業が知りたい情報を盛り込むことが重要です。
また、情報公開には最新の注意を払い、弁護士や会計士などの専門家のアドバイスを受けることで、より安全かつ効果的にM&Aを進めることができます。
編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったPMIのエキスパート。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。