のれん代償却期間と仕訳方法、会計処理を徹底解説!これさえ見ればOK!

のれん代償却期間と仕訳方法、会計処理を徹底解説!これさえ見ればOK!

「のれん代ってそもそも何?」「償却期間はどう決まるの?」「仕訳はどうすればいいの?」そんな疑問をお持ちの経営者や経理担当者の方必見!

この記事では、のれん代の基礎知識から、償却期間、具体的な仕訳方法まで、実務に役立つ情報を網羅的に解説します。

M&Aで企業の買収を検層する前に、必要最低限の知識として身につけておくことをオススメ致します。

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1. のれん代とは? 1.1 のれん代の定義
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のれん代とは、企業が他の企業を買収する際、買収価格が被買収企業の純資産価値を上回る部分につけられる会計上の金額のことです。
簡単に言うと、買収価格から取得した資産(建物や機械設備など)や負債(借入金など)を差し引いた金額がのれん代となります。

例えば A社が純資産価値5,000万円のB社を8,000万円で買収した場合、買収価格8,000万円から純資産価値5,000万円を差し引いた3,000万円がのれん代として計上されます。
こののれん代は、目に見える形のない資産、つまりブランド力や顧客基盤、技術力、従業員のノウハウといった被買収企業がこれまで築き上げてきた無形資産に価値があると判断されたために発生します。

1.2 のれん代が発生するケース のれん代は、主に企業の合併や買収(M&A)の際に発生します。具体的には、以下の様なケースが挙げられます。

事業の拡大 既存事業の拡大や新規事業への参入を目的として、既に市場で一定の地位を築いている企業を買収する場合、その企業の持つブランド力や顧客基盤、販売網などを評価して、のれん代を支払うことがあります。

技術やノウハウの取得 独自の技術やノウハウを持つ企業を買収する場合、その技術やノウハウを獲得することで、自社の競争力を高めることを目的として、のれん代を支払うことがあります。

例えば、製薬会社が新しい医薬品を開発したベンチャー企業を買収する場合などが挙げられます。

優秀な人材の確保 高度な技術や専門知識を持つ人材を獲得するために、その人材が所属する企業を買収する場合、その人材の持つ能力や経験を評価して、のれん代を支払うことがあります。

特に、IT業界やコンサルティング業界など、人材が重要な経営資源となる業界では、このようなケースが多く見られます。

これらのケース以外にも、市場における競争優位性を築くために、将来的な収益獲得の可能性を期待して、のれん代を支払うケースもあります。

のれん代は、企業会計上、無形固定資産として計上されます。無形固定資産とは、特許権や商標権、ソフトウェアなど、形のない資産のことを指します。のれん代も、これらの無形固定資産と同様に、将来にわたって収益を生み出す源泉となることが期待されます。

しかし、のれん代は、他の無形固定資産とは異なり、その価値を客観的に測定することが困難です。そのため、企業会計上、一定のルールに基づいて償却していくことになります。

償却とは、取得原価を一定期間にわたって費用として配分していく会計処理のことです。 のれん代の償却については、後の章で詳しく解説します。

2. のれん代の会計処理方法 2.1 資産計上と償却 企業が事業価値を見込んで支払った対価のうち、取得した個別資産や負債の公正価値(※)を超える部分は、のれん(営業権)として無形資産に計上されます。

公正価値:市場参加者間で取引が行われる場合に想定される取引価格
のれんは、将来にわたって収益を生み出すと考えられるため、その収益獲得期間に応じて、毎期費用として認識されます。これを「償却」といいます。

つまり、のれん代は一括で費用計上するのではなく、複数年にわたって分割して費用計上していくことになります。

2.2 償却期間 のれんの償却期間は、以下のいずれかを選択することになります。

法定償却期間原則として20年以内の任意償却となります。
任意償却期間企業がのれんから経済的利益を得られると合理的に見積もることができる期間とします。ただし、その期間が20年を超える場合には、20年とします。

企業は、将来の経済環境の変化や事業計画の見直し等に応じて、償却期間を適切に見直す必要があります。

2.3 償却方法 のれんの償却方法は、以下のいずれかを選択します。

定額償却 償却期間を通じて、毎期同じ金額を償却する方法です。計算式は以下の通りです。

償却額 = のれんの取得原価 ÷ 償却期間
定率償却 毎期、その期首における償却残高に対して一定の率を乗じて償却する方法です。計算式は以下の通りです。

償却額 = 期首簿価 × 償却率
定率法は、毎期同じ割合で償却していくため、償却期間の早期に多くの償却費を計上することができます。

償却方法は、企業の状況や事業計画に応じて、いずれか適切な方法を選択する必要があります。

3. のれん代の仕訳例 のれん代の仕訳例として、具体的な事例を挙げながら解説していきます。仕訳の理解を深めるために、取得時と償却時の事例をそれぞれ確認していきましょう。

3.1 取得時の仕訳 A社がB社を1億円で買収したとします。この時、B社の純資産の時価が8,000万円だった場合、2,000万円がのれん代として計上されます。この場合の仕訳は以下のようになります。

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
事業用資産 8,000万円 現金 1億円
のれん 2,000万円
借方取得した事業用資産(B社の純資産)を資産として計上します。
借方のれんを無形固定資産として計上します。
貸方買収のために支払った金額を現金で計上します。

3.2 償却時の仕訳 上記と同じく、A社がB社を買収し、2,000万円ののれん代を計上した場合を考えます。償却期間を10年、償却方法を定額償却とした場合、毎年の償却額は200万円(2,000万円 ÷ 10年)となります。この場合の仕訳は以下のようになります。

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
のれん償却費 200万円 のれん 200万円

借方のれん償却費を費用として計上します。
貸方償却した金額分ののれんを減額します。
これらの仕訳例は一般的なケースであり、実際の処理は企業の状況や会計基準によって異なる場合があります。詳細については、専門家にご相談ください。

4. 負ののれん代とは?
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負ののれん代とは、企業の買収や合併において、取得価額が企業の純資産価値を下回る場合に生じる費用のことです。
これは、買収価格が企業の実態よりも高い場合に生じる「正ののれん代」とは対照的であり、企業の買収に伴う損失として考えられます。負ののれん代が生じると、買収企業は取得した企業の純資産よりも多く支払うことになるため、その差額が負ののれん代として費用計上されることになります。

負ののれん代は、合併や買収後の業績への影響や財務諸表における処理など、企業経営において重要な要素となります。

5. まとめ 今回は、M&Aなどで企業結合を行う際に発生する「のれん代」について、その会計処理方法や仕訳方法を解説しました。のれん代は、取得原価が被取得会社の純資産時価純額を超過する部分として認識され、原則として20年以内の期間で償却していくことになります。

償却方法は、定額法と定率法から選択できますが、いずれの方法を選択した場合でも、会社の財政状態や経営成績を適切に開示するために、その根拠を明確にすることが重要です。


編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったPMIのスペシャリスト。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。

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