M&Aのバイアウト|MBO・EBO・LBOの違いと選び方・実務

M&Aのバイアウト|MBO・EBO・LBOの違いと選び方・実務

本ページの更新日について

公開日:2024年7月2日
最終更新日:2026年8月14日

バイアウトは、誰が経営権を取得するかと、買収資金をどう調達するかで仕組みが変わります。MBO・EBO・LBOの違いを、事業承継や非上場化の判断に役立つ形で整理します。

1. M&AバイアウトのMBO・EBO・LBOを二軸で比較

バイアウトとは、株式を取得して会社の経営権を得る取引です。M&Aに含まれる概念ですが、経営陣や従業員など、対象会社に関係する買い手が主体になる点に特徴があります。

分類の軸は二つあります。一つは買い手の属性、もう一つは資金調達方法です。MBOやEBOは買い手を示し、LBOは借入を活用する調達方法を示します。

手法

主な買い手

資金調達・目的

MBO

現経営陣

自社株式を取得し、承継や非上場化を実現

EBO

従業員

従業員主体で承継し、雇用や企業文化を維持

MEBO

経営陣と従業員

共同取得により社内承継を実現

MBI

外部経営者

外部の経営能力を導入して改革

LBO

経営陣・ファンドなど

対象会社の資産やキャッシュフローをもとに借入

【文脈】M&Aにおけるバイアウトの全体像を 1-1. バイアウトとM&Aを分ける取引目的と買い手

M&Aは、合併や買収など企業間の資本・事業取引全般を指します。一方、バイアウトは株式取得による経営権の移転に焦点を置きます。

外部企業が買い手となるM&Aに対し、バイアウトでは経営陣、従業員、投資ファンドなどが買い手になります。実務では会社売却をバイアウトと呼ぶ場合もあるため、文脈の確認が必要です。

1-2. 経営陣が株式を取得するMBOの仕組み

MBOは、現経営陣が自社や親会社の株式を取得し、経営権を引き継ぐ方法です。後継者不在の中小企業、親会社からの独立、上場企業の非上場化で利用されます。

経営陣だけで資金を用意できない場合は、SPCを設立し、自己資金、出資、金融機関の融資を組み合わせます。成立には、後継者の経営能力と返済可能な事業計画が必要です。

1-3. 従業員承継を実現するEBOとMEBOの違い

EBOは従業員が株式を取得し、経営を引き継ぐ方法です。社内事情や顧客との関係を理解する人材が承継するため、雇用や企業文化を維持しやすい特徴があります。

MEBOは経営陣と従業員が共同で取得します。EBOより経営責任の所在を明確にしやすい一方、参加者が増えるほど出資割合や意思決定の設計が複雑になります。

1-4. 買収資金を借入で補うLBOの基本構造

LBOは、買い手の属性ではなく資金調達の仕組みです。買収目的会社であるSPCが出資と融資を受け、対象会社の株式を取得します。

買収後は、対象会社が生む営業キャッシュフローを借入金の返済に充てます。したがってMBOやEBOでも、LBOを組み合わせることが可能です。

2. 事業承継や非上場化に適した手法の選び方

手法は目的から逆算して選びます。社内に経営候補がいるならMBOやEBO、外部の改革人材が必要ならMBI、安定収益を返済に回せるならLBOを検討します。

  • 後継者不在で社内に候補者がいる:MBOまたはEBO

  • 親会社から事業を切り出す:MBO、MBI、PEファンドの組み合わせ

  • 上場廃止を目指す:MBO

  • 従業員の共同承継を重視する:EBOまたはMEBO

  • 借入を活用して改革する:LBO

ただし、手法は単独で選ぶものではありません。買い手の能力、株式取得価格、既存借入、個人保証、買収後のPMIまで一体で検討します。

2-1. 後継者不在の中小企業にMBOを選ぶ条件

MBOに適するのは、社内に承継意欲と経営能力を持つ候補者がいる会社です。売上や顧客だけでなく、資金調達、採用、金融機関との交渉まで担えるかを確認します。

年商や利益だけで判断するのは危険です。既存借入を含む返済額を試算し、返済後にも運転資金と設備投資資金が残ることが条件になります。

2-2. 親会社からのカーブアウトで使う買収手法

カーブアウトでは、事業部門を親会社から分離し、経営陣がMBOする方法が代表的です。社内に適任者がいなければ、MBIやPEファンドを組み合わせます。

独立後の契約承継、ブランド使用、ITシステム、人事、経理、資金繰りを確認します。親会社の共通機能に依存しているほど、スタンドアローン化の費用が増えます。

2-3. 上場廃止を目的に進めるMBOの留意点

上場企業のMBOでは、経営陣が買い手と売り手双方に関係するため、利益相反が生じます。買付価格の公正性、少数株主への情報開示、第三者評価が重要です。

株式公開買付けなどの手続きでは、株主が納得できる説明と公正な条件設計が求められます。非上場化後の成長計画も、買付価格を検討する材料になります。

2-4. 安定収益と改革余地でLBO適性を判断する

LBOに向くのは、景気変動が比較的小さく、継続的な営業キャッシュフローを生む会社です。長期契約、保守収入、安定した顧客基盤は返済計画を立てやすくします。

一方、既存借入、設備投資負担、運転資金の変動を確認します。改革余地があっても、改善効果が返済開始時期に間に合わなければ、LBOは過大な負担になります。

【文脈】後継者不在 3. MBO・EBO・LBOの利点と返済負担を比較

内部の人材が買い手になる手法は、事業の継続性を保ちやすい反面、資金力と経営能力が課題になります。LBOは資金調達の幅を広げますが、返済負担が対象会社の経営を縛ります。

立場

期待できる利点

主な負担・リスク

売り手

承継、株式売却、個人保証の整理

価格の妥当性、税務、契約条件

買い手

経営の自由度、企業価値向上

資金調達、経営責任、返済

従業員

雇用や文化の継続

待遇変更、出資損失、経営不安

金融機関

融資収益

業績悪化、債務不履行

3-1. MBOで経営の継続性を保つ利点と限界

MBOでは現経営陣が事業を理解しているため、取引先や従業員への影響を抑えやすくなります。株主から短期的な利益を求められにくくなり、中長期の改革にも取り組めます。

反面、経営陣の資金力が不足すると借入が膨らみます。また、売り手と買い手が重なるため、価格を低く設定する動機が生じる利益相反にも注意が必要です。

3-2. EBOで従業員承継を進める資金面の課題

EBOは、従業員の納得感と事業継続性を高めやすい手法です。顧客や現場を知る人材が株主となるため、承継後の離職や取引先の不安を抑えられる場合があります。

一方、従業員が株式取得資金を用意するのは容易ではありません。経営経験の不足、株主間の意見調整、意思決定の遅れを防ぐため、代表者と議決権の設計が必要です。

3-3. LBOの成長投資効果と過剰債務リスク

LBOは少ない自己資金で買収できる可能性があります。買収後に業務効率化や販路拡大を進め、企業価値を高められれば、投資効果を大きくできます。

しかし、返済と利息の支払いが優先されます。売上減少や金利上昇が起きると、採用、設備投資、研究開発、配当が制約され、過剰債務が改革そのものを妨げます。

3-4. 株式取得比率で変わる支配権と少数株主対応

議決権の過半数を取得すると、原則として株主総会の普通決議を左右できます。取締役の選任など、通常の会社運営に関する経営支配が可能になります。

3分の2以上を取得すると、定款変更や組織再編などの特別決議を単独で成立させやすくなります。取得できない少数株主への説明、株式買取請求などの対応も確認します。

4. SPC融資から株式取得まで進む資金調達手順

バイアウトの資金調達は、必要資金の算定から始めます。株式取得対価だけでなく、税金、専門家費用、運転資金、PMI費用を含めた総額を計画します。

  1. 株式取得価格と諸費用を算定する

  2. SPCを設立する

  3. 出資と金融機関融資を組み合わせる

  4. SPCが株式を取得する

  5. 買収後のキャッシュフローで返済する

融資契約では、返済条件だけでなく財務制限条項、担保、保証、資金使途を確認します。買収後の資金繰りを月次で管理できる体制も必要です。

4-1. 買収価格と手数料を含めた必要資金の算定

必要資金には株式取得対価、アドバイザー費用、税金、登記費用、借換費用が含まれます。さらに、買収直後の運転資金、設備投資、PMI費用も見積もります。

売り手が受け取る金額と、買い手が必要とする資金は一致しません。手数料や税金、引継ぎ条件を差し引いた手取り額まで確認すると、交渉の基準が明確になります。

4-2. SPCを使って買収資金を調達する仕組み

SPCは、買収を目的に設立する会社です。経営陣やファンドがSPCに出資し、SPCが金融機関から融資を受け、売り手から対象会社の株式を取得します。

買収後はSPCと対象会社を合併させる設計が一般的です。対象会社の営業キャッシュフローを返済原資にするため、会計・税務・法務の専門家による確認が欠かせません。

4-3. 金融機関融資で確認される返済原資と担保

金融機関は、事業計画、過去の財務情報、営業キャッシュフロー、既存借入、担保価値を確認します。買収後の経営陣が計画を実行できるかも融資判断に影響します。

契約には財務制限条項が設定される場合があります。経営者保証の有無、保証範囲、担保設定、期限の利益を失う条件を、契約前に確認してください。

4-4. LBO返済余力を確認する簡易チェック項目

返済計画は、計画どおりに進むケースだけでなく、売上減少や金利上昇を想定します。設備投資や運転資金の増加後も、返済に回せる現金が残るかを確認します。

  • 返済後に月次の運転資金が残るか

  • 金利上昇時も返済可能か

  • 売上減少時に財務制限条項へ抵触しないか

  • 設備投資を止めずに事業を維持できるか

【文脈】LBOの資金調達から買収後の返済までを示す構造図 5. 株式評価からPMIまで進めるバイアウト実務

実行では、目的、企業価値、取得条件、契約、クロージング、買収後のPMIを順に確認します。価格だけでなく、経営権の範囲と買収後の実行計画を先に固めることが重要です。

  • 目的と後継者候補を確定する

  • 財務・法務・税務デューデリジェンスを行う

  • 企業価値と株式取得条件を設計する

  • 基本合意、最終契約、クロージングを進める

  • PMIで組織、収益、資金繰りを統合する

5-1. 目的設定と後継者候補の適性を確認する

事業承継、非上場化、カーブアウト、経営改善のどれを優先するかを明確にします。目的が曖昧なままでは、株式取得比率や資金調達方法も決まりません。

候補者は、業務実績だけでなく、経営判断、人材採用、資金繰り、金融機関との交渉力を確認します。本人の意思と、従業員・取引先の社内合意も必要です。

5-2. 企業価値評価と株式取得条件を設計する

企業価値は、財務情報、保有資産、収益力、事業計画などから評価します。非上場会社では、評価方法によって株価が変わるため、第三者の検証を受けると透明性を確保できます。

株式取得比率、価格、支払時期、表明保証、資金調達条件を設計します。簿外債務、税務リスク、契約の承継などをデューデリジェンスで確認します。

5-3. 利益相反と少数株主に配慮して契約を進める

MBOでは、経営陣が会社の情報を持ちながら買い手になるため、利益相反が生じます。特別委員会、第三者評価、十分な情報開示などで手続きの公正性を高めます。

少数株主には、価格の根拠、将来計画、売却後の扱いを説明します。上場企業では、金融商品取引法や取引所規則など、個別の法的確認が必要です。

5-4. 買収後のPMIで返済と経営改革を両立する

PMIでは、組織体制、権限、会計、IT、人事、取引先対応を整えます。従業員への説明が遅れると、離職や顧客離れが起き、返済原資のキャッシュフローを損ないます。

改革施策は、売上拡大、原価低減、在庫圧縮などに分解します。月次の予実管理と資金繰りを行い、返済を優先しすぎて成長投資を止めないバランスが必要です。

【文脈】バイアウト実務を 6. M&AバイアウトのMBO・EBO・LBOに関するFAQ 6-1. MBOとEBOは後継者の立場でどう選ぶか

経営陣が継続して経営するならMBO、従業員が主体となって承継するならEBOです。経営能力、資金力、議決権設計、社内合意を比較して決めます。

6-2. LBOでは個人保証が必要になるのか

個人保証の要否は、金融機関の融資条件、対象会社の信用力、担保、事業計画によって異なります。保証範囲と解除条件を、融資契約の締結前に確認してください。

6-3. 株式の過半数と3分の2超の違いは何か

過半数は、株主総会の普通決議を左右する目安です。3分の2以上は、定款変更や組織再編などの特別決議を単独で成立させやすくします。

6-4. バイアウト後に返済できない場合の対応策

早期に返済計画を見直し、金融機関と返済条件を協議します。追加出資、資産売却、事業売却、経営改善を組み合わせ、事業継続を優先します。

7. おすすめ商品: 手取りを重視するならM&A PMI AGENTの特徴と選び方

会社売却や事業譲渡では、売却価格だけでなく、仲介手数料、税金、実費、引継ぎ条件を差し引いた手取り額を確認する必要があります。同じ譲渡価格でも、料金体系によって最終的な手残りは変わります。

手取りを重視するならM&A PMI AGENTは、初回相談、着手金、中間金が無料で、最低報酬は500万円〜です。オンライン面談中心で、他社の手数料、最低報酬、成功報酬の計算方法、テール条項などを契約前に比較できます。

買い手候補への打診から条件交渉、DD、最終契約、クロージングまで支援し、ビジネスDD、PMI、企業再生、経営改善にも対応します。売却価格だけでなく、税金やスキーム、引継ぎ条件を含めて手取り額を整理したい経営者に適しています。

仲介契約前であれば、すでに他社から提案書や見積りを受け取っている場合も比較相談が可能です。最低報酬や成功報酬の計算基準は案件ごとに異なるため、契約条件を確認して判断します。

8. まとめ

バイアウトは、経営権を取得するM&Aの一形態です。MBOは経営陣、EBOは従業員、MEBOは両者、MBIは外部経営者が買い手となり、LBOは借入を活用する資金調達方法です。

選択では、事業承継、カーブアウト、非上場化、経営改善という目的を定め、候補者の能力、株式取得比率、既存借入、個人保証、返済後のキャッシュフローを確認します。

最初の行動は、企業価値と必要資金を把握し、複数の資金調達・契約条件を比較することです。買収後のPMIまで含めた計画を作り、法務・税務・財務の専門家と実行可能性を検証してください。

M&Aを成功させ、譲渡価格(手取り額)の最大化を目指すには?

\ 業界の専門知識を持ったM&Aエージェントに任せましょう /

詳細を確認する

編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT

代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。

メニュー