経営再建のためのコスト削減戦略|効果的な10の施策

経営再建のためのコスト削減戦略|効果的な10の施策

経営再建の取り組みにおいて、コスト削減は重要な役割を果たします。しかし、闇雲にコストを削減するだけでは、事業の成長を阻害し、再建を遠ざける可能性もあるため、戦略的なアプローチが不可欠です。この記事では、経営再建を成功させるための効果的なコスト削減戦略を、固定費と変動費の両面から10個の具体的な施策として解説します。

オフィス関連費、人件費、通信費、広告宣伝費、設備投資費といった固定費の削減策に加え、仕入コスト、在庫管理、物流コスト、水道光熱費、消耗品費といった変動費の削減策についても、実用的な方法を紹介します。

この記事を読むことで、経営再建におけるコスト削減の重要性を理解し、自社に最適なコスト削減策を立案、実行するための具体的なノウハウを習得できます。結果として、健全な財務体質の構築と持続的な成長を実現するための道筋が見えてくるでしょう。

【無料】経営再建のオンライン無料相談会
「経営再建(赤字解消)してからM&Aしたい」という経営者からも数多くのご相談をいただいています。M&Aを成功に導くはじめの一歩は無料のオンライン相談から。お気軽にご相談ください。

365日開催オンライン個別相談会

編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建などを10年経験。3か月の経営支援サポートで、9か月後には赤字の会社を1億円の利益を計上させるなどの実績を多数持つ専門家。



1. 経営再建とコスト削減の密接な関係

経営再建とは、業績が悪化し経営危機に陥っている企業が、再び収益を上げ、健全な経営状態へと戻るための取り組みです。この再建プロセスにおいて、コスト削減は非常に重要な役割を果たします。なぜなら、業績悪化の要因が何であれ、支出を抑え、収益性を改善することは、企業の存続と成長に不可欠だからです。コスト削減は、単なる一時的な支出抑制策ではなく、企業体質を強化し、持続的な成長を実現するための戦略的な取り組みであるべきです。

【関連】経営再建 とは? 倒産寸前の会社を再生させる方法を徹底解説!

1.1 なぜ経営再建にコスト削減が不可欠なのか

経営再建においてコスト削減が不可欠な理由は、主に以下の3点に集約されます。

キャッシュフローの改善業績が悪化した企業は、資金繰りが逼迫しているケースがほとんどです。コスト削減によって支出を抑えることで、キャッシュフローを改善し、資金不足による倒産リスクを軽減できます。確保した資金は、新たな事業展開や設備投資など、将来への投資に活用できます。
収益性の向上コスト削減は、売上高を変動させずに利益を増加させる直接的な方法です。固定費、変動費の両面から無駄を省き、効率的な経営を実現することで、収益性を改善し、企業価値を高めることができます。特に、損益分岐点を下げることは、経営の安定化に大きく貢献します。
経営体質の強化コスト削減は、単に支出を抑えるだけでなく、業務プロセスや組織構造の見直しを促す効果があります。無駄な業務を排除し、効率的なオペレーションを構築することで、組織全体の生産性向上に繋がり、より強固な経営基盤を築くことができます。また、コスト意識の浸透は、社員の意識改革にも繋がり、企業文化の改善にも寄与します。
【関連】事業再生におけるコスト削減のアプローチ

1.2 コスト削減だけで再建は成功するのか

コスト削減は経営再建に不可欠な要素ですが、それだけで再建が成功するとは限りません。コスト削減はあくまでも守りの戦略であり、事業の成長や売上拡大といった攻めの戦略と並行して進める必要があります。以下の表は、コスト削減と売上拡大のバランスの重要性を示しています。

戦略メリットデメリット
コスト削減のみ短期的には効果が出やすい、キャッシュフローの改善従業員のモチベーション低下、将来の成長力の低下
売上拡大のみ市場シェアの拡大、企業の成長投資コストの増加、リスクの増大
コスト削減と売上拡大の両立安定的な成長、持続可能な経営実行の難しさ、綿密な計画が必要

真の経営再建を実現するためには、コスト削減によって得られた資金やリソースを、新規事業の開発、既存事業の強化、人材育成、研究開発といった成長戦略に投資していく必要があります。例えば、デジタルマーケティングへの投資による売上拡大や、新製品開発による競争力強化などが挙げられます。

コスト削減と成長戦略をバランス良く組み合わせることで、持続的な成長を実現し、真の経営再建を達成することが可能になります。また、ステークホルダー(株主、従業員、取引先など)との良好な関係を維持することも重要です。透明性の高いコミュニケーションを図り、理解と協力を得ながら再建を進めることで、よりスムーズかつ効果的な再建を実現できるでしょう。


2. 固定費削減の施策5選

固定費は、売上高に関わらず一定額発生する費用であるため、経営再建においては削減対象の中心となります。固定費削減には、短期的な効果が期待できるものから、中長期的な視点で取り組むものまで様々な施策があります。以下に、代表的な5つの施策を紹介します。


2.1 家賃などのオフィス関連費用の削減

オフィス関連費用は、固定費の中でも大きな割合を占めることが多く、効果的な削減が期待できる項目です。具体的な施策として、オフィスの縮小・移転やリモートワークの導入などが挙げられます。

2.1.1 オフィスの縮小・移転

賃貸面積を減らすことで、家賃、光熱費、設備維持費などを削減できます。都心部から郊外への移転も有効な手段です。また、シェアオフィスやコワーキングスペースの活用も、コスト削減に繋がります。物件選びの際には、交通の便や周辺環境も考慮し、従業員のモチベーション低下を防ぐことが重要です。

2.1.2 リモートワークの導入

リモートワークを導入することで、オフィススペースを縮小でき、家賃や光熱費などの削減に繋がります。また、通勤費用の削減や、従業員のワークライフバランスの向上にも貢献します。情報セキュリティ対策やコミュニケーションツールの整備など、導入にあたっては careful な準備が必要です。


2.2 人件費の適正化

人件費は、多くの企業にとって最大の固定費です。経営再建においては、人件費の適正化が不可欠となります。ただし、人件費削減は従業員のモチベーションに直結するため、慎重に進める必要があります。

2.2.1 採用活動の見直し

新規採用を抑制したり、中途採用に切り替えることで、人件費の増加を抑えることができます。採用活動にかかる費用も削減可能です。必要な人材を必要なタイミングで確保できるよう、採用計画を綿密に立てることが重要です。

2.2.2 業務効率化による残業代の削減

業務プロセスを見直し、無駄な作業を省くことで、残業時間を削減し、人件費の削減に繋げることができます。RPA (Robotic Process Automation) やITツールを活用した業務効率化も有効です。従業員の負担を軽減し、生産性を向上させることが重要です。


2.3 通信費の見直し

通信費は、固定費の中でも見直しやすい項目です。契約プランの見直しや、不要な回線の解約などで、コスト削減が期待できます。

2.3.1 格安SIMの導入

大手キャリアから格安SIMに乗り換えることで、通信費を大幅に削減できます。UQモバイルや楽天モバイルなど、様々な格安SIMが登場しており、企業向けのプランも充実しています。通信速度やサービス内容を比較検討し、自社に最適なプランを選択することが重要です。

2.3.2 不要な回線の解約

使用頻度の低い固定電話回線や、不要なモバイル回線を解約することで、通信費を削減できます。使用状況を定期的に見直し、最適な回線数を維持することが大切です。


2.4 広告宣伝費の最適化

広告宣伝費は、売上増加に繋がる重要な投資ですが、経営再建時には、費用対効果を厳しく評価し、最適化を図る必要があります。

2.4.1 効果測定に基づいた費用対効果の高い施策への投資

Web広告やSNS広告など、効果測定が容易な施策に重点的に投資することで、費用対効果を高めることができます。アクセス解析ツールなどを活用し、データに基づいた費用配分を行うことが重要です。費用対効果の低い施策は、思い切って中止することも検討すべきです。

2.4.2 Web広告の活用

Web広告は、ターゲットを絞り込み、効率的に広告配信を行うことができるため、費用対効果の高い施策と言えます。Google広告やYahoo!広告など、様々なプラットフォームがあり、自社のビジネスに最適なプラットフォームを選択することが重要です。リスティング広告、ディスプレイ広告、動画広告など、様々な広告フォーマットがあり、目的に合わせて使い分けることが効果的です。


2.5 設備投資費の抑制

設備投資は、事業継続に不可欠ですが、経営再建時には、新規投資を抑制し、既存設備の有効活用を図る必要があります。

2.5.1 リース契約の活用

設備を購入する代わりにリース契約を活用することで、初期投資を抑えることができます。リース期間終了後の設備の処分についても、リース会社が対応してくれるため、手間がかかりません。リース料は経費計上できるため、節税効果も期待できます。

2.5.2 既存設備のメンテナンス強化による長寿命化

既存設備のメンテナンスを強化することで、設備の寿命を延ばし、新規投資を抑制することができます。定期的な点検や部品交換を行うことで、故障のリスクを低減し、安定稼働を維持することができます。予防保全を徹底することで、長期的なコスト削減に繋がります。


3. 変動費削減の施策5選

変動費は、売上高や生産量に応じて増減する費用です。固定費に比べて削減効果が現れやすいというメリットがある一方、売上高に直結するため、削減には慎重な検討が必要です。以下、5つの施策を紹介します。


3.1 仕入コストの削減

仕入コストは、製造業や小売業など、商品を仕入れて販売するビジネスにおいて、最も大きな変動費の一つです。効果的に削減できれば、利益率の大幅な改善が見込めます。

3.1.1 サプライヤーとの価格交渉

既存のサプライヤーとの価格交渉は、仕入コスト削減の第一歩です。市場価格の調査や競合他社の仕入価格の情報収集を行い、現状の価格が適正かどうかを判断した上で交渉に臨みましょう。長期的な取引関係を維持しつつ、価格の見直しを提案することが重要です。また、取引量を増やすことによるボリュームディスカウントも交渉材料となります。

3.1.2 複数社からの見積もり比較

複数のサプライヤーから見積もりを取り、価格や条件を比較検討することも重要です。価格だけでなく、品質、納期、サービスなども考慮し、総合的に判断しましょう。新規サプライヤーとの取引は、既存サプライヤーとの関係に影響を与える可能性もあるため、慎重に進める必要があります。


3.2 在庫管理の最適化

過剰在庫は、保管コストや陳腐化リスクを増大させるため、経営の大きな負担となります。適切な在庫管理は、変動費削減に大きく貢献します。

3.2.1 在庫管理システムの導入

在庫管理システムを導入することで、リアルタイムな在庫状況の把握、需要予測、発注管理の自動化が可能になります。適切なシステムを選ぶことで、在庫管理にかかる手間やコストを削減し、過剰在庫や欠品を防止できます。freee在庫管理やロジザードZEROなどのクラウド型在庫管理システムは、導入コストが比較的低く、中小企業にもおすすめです。

3.2.2 ジャストインタイム方式の導入

ジャストインタイム方式は、必要なものを必要な時に必要な量だけ仕入れることで、在庫を最小限に抑える生産管理方式です。保管スペースの削減、在庫の陳腐化リスクの低減など、様々なメリットがあります。しかし、サプライヤーとの密接な連携が不可欠であり、導入には綿密な計画が必要です。


3.3 物流コストの削減

物流コストは、輸送費、保管費、梱包費など、様々な要素から構成されます。輸送ルートの見直しや配送方法の変更など、工夫次第で削減できる可能性があります。

3.3.1 配送ルートの最適化

配送ルートを最適化することで、輸送距離の短縮、輸送時間の削減、燃料費の削減につながります。配送ルート最適化システムや地図アプリなどを活用し、効率的な配送ルートを検討しましょう。

3.3.2 共同配送の検討

他社と共同で配送を行うことで、輸送効率の向上、コスト削減を実現できます。ただし、配送スケジュールや配送ルートの調整が必要となるため、共同配送を行うパートナー企業との綿密な連携が不可欠です。


3.4 水道光熱費の削減

水道光熱費は、事業規模に関わらず発生するコストです。こまめな節水・節電を心がけることで、着実に削減効果を高めることができます。

3.4.1 節水・節電対策の徹底

従業員への節水・節電の意識付けを徹底し、こまめな消灯、不要な水の使用を控えるなどの対策を講じましょう。ポスター掲示や社内報などを活用して啓発活動を行うことも効果的です。

節水節電
トイレの節水コマ設置使っていない機器の電源を切る
食器洗浄機の効率的な利用エアコンの設定温度を適切に保つ
水漏れ箇所の早期発見・修理LED照明への交換
3.4.2 省エネ機器の導入

LED照明、省エネエアコン、高効率給湯器など、省エネ機器の導入は、初期投資が必要ですが、長期的には大きなコスト削減効果が見込めます。補助金制度などを活用することで、導入コストを抑えることも可能です。


3.5 消耗品費の削減

消耗品費は、少額ながらも積み重なると大きな金額になるため、削減努力を怠らないようにしましょう。

3.5.1 リサイクル品の活用

トナーカートリッジ、コピー用紙など、リサイクル可能な消耗品は積極的に活用しましょう。環境負荷の低減にも貢献できます。

3.5.2 大量購入による割引

消耗品を大量購入することで、割引価格で購入できる場合があります。保管スペースに余裕がある場合は、大量購入を検討してみましょう。ただし、過剰在庫にならないように注意が必要です。

【関連】経営再建のための資金繰り戦略|窮地を乗り越えるための虎の巻

4. まとめ

経営再建において、コスト削減は不可欠な要素です。コスト削減は短期的な利益向上だけでなく、企業の財務体質を強化し、将来への投資余力を生み出すためにも重要です。この記事では、固定費と変動費の両面から、具体的な10個のコスト削減施策を紹介しました。

固定費削減では、オフィス関連費用、人件費、通信費、広告宣伝費、設備投資費に着目し、リモートワーク導入やWeb広告活用など、具体的な方法を解説しました。変動費削減では、仕入コスト、在庫管理、物流コスト、水道光熱費、消耗品費を対象に、サプライヤーとの価格交渉や在庫管理システム導入などを提案しました。これらの施策は、単独で実施するだけでなく、組み合わせて相乗効果を狙うことで、より大きな効果を発揮します。

コスト削減は、一時的なものではなく、継続的に取り組むことが重要です。PDCAサイクルを回し、効果検証と改善を繰り返すことで、持続的な経営改善を実現できるでしょう。重要なのは、闇雲にコストを削減するのではなく、企業の成長戦略と整合性をとりながら、戦略的に実施することです。これにより、健全な財務体質を維持しつつ、持続的な成長を実現できるでしょう。

メニュー