【会社相続×事業承継】手続きの流れを分かりやすく解説!上手に会社を引き継ぐ方法とは?

【会社相続×事業承継】手続きの流れを分かりやすく解説!上手に会社を引き継ぐ方法とは?

「会社相続」と「事業承継」の違い、分かりますか?どちらも会社の今後を決める大切な手続きですが、混同しやすい部分も。

もし、会社を引き継ぐことになったら、手続きの流れや必要な準備・注意すべき点などを事前に理解しておくことが重要です。

この記事では、会社相続と事業承継の違いから、具体的な手続きの流れ・円滑に進めるためのポイントまで分かりやすく解説していきます。

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この記事を読めば、会社をスムーズに承継するために必要な知識を体系的に理解することができます。

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1. 会社相続と事業承継の違い 1.1 そもそも会社相続とは?
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会社相続とは、会社の経営者であるオーナー経営者が亡くなった場合に、その所有している会社の株式などの財産が民法で定められた相続人に引き継がれることを指します。つまり、会社経営の継続の有無に関わらず、あくまでも「財産」として相続が発生するということです。

いつ会社相続が起きるのか?

会社相続は、オーナー経営者が亡くなったタイミングで発生します。これは、オーナー経営者が遺言を残していた場合でも同様です。遺言の内容に従って相続手続きが進められます。

普通の事業承継と会社相続は何が違う?

「事業承継」と「会社相続」は、混同されがちですが明確な違いがあります。以下の表で詳しく見てみましょう。

項目 事業承継 会社相続
定義 会社の経営権や事業を後継者に引き継ぐこと 会社の所有株式などの財産を相続人に引き継ぐこと
目的 事業の継続・発展 財産の承継
対象 経営権、事業内容、顧客、従業員など 株式、不動産、預貯金など
タイミング 経営者の年齢や健康状態、後継者の育成状況などを考慮して、計画的に行われる 経営者の死亡時に自動的に発生

つまり、事業承継は「事業」を誰に、どのように引き継ぐかという視点で、会社相続は「財産」を誰に、どのように引き継ぐかという視点で捉えることができます。

会社相続が発生した場合、相続人は「会社の経営を続ける」「会社を売却する」「会社を廃業する」のいずれかの選択肢を選ぶことになります。この選択によって、その後の手続きや影響が大きく変わるため、注意が必要です。

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2. 会社相続と事業承継のメリット・デメリット 2.1 会社相続のメリット・デメリット
会社相続のメリット
メリット 解説
事業の継続 会社を相続することで、長年培ってきた顧客との信頼関係やブランド力、従業員の雇用などを維持したまま、事業を継続することができます。これは、新規事業を立ち上げるよりも低いリスクで事業を継続できる方法と言えます。
経営ノウハウの継承 先代経営者から後継者へ、長年の経験で培われた経営ノウハウや技術、人脈などを直接引き継ぐことができます。これは、外部から後継者を招聘する場合には難しいメリットです。
社会的な信用 長年事業を営んできた会社には、地域社会からの信頼や実績が積み重ねられています。会社を相続することで、その信用や実績を引き継ぎ、事業を有利に進めることができます。
会社相続のデメリット
デメリット 解説
相続税の負担 会社の株式は相続財産となるため、相続税の課税対象となります。場合によっては多額の相続税が発生し、事業資金を圧迫する可能性もあります。
後継者への負担 後継者は、先代経営者からの期待や事業の責任、従業員や取引先との関係など、大きなプレッシャーと責任を背負うことになります。
経営状況の悪化 市場環境の変化や競争の激化などにより、会社の業績が悪化している場合、相続した会社を引き継いでも、経営の立て直しが難しい可能性があります。

2.2 事業承継のメリット・デメリット
事業承継のメリット
メリット 解説
事業の継続 事業承継は、会社や事業を継続させるための手段であるため、長年培ってきた顧客との関係やブランド、従業員の雇用などを守ることができます。
雇用維持 事業承継によって事業が継続することで、従業員の雇用を維持することができます。これは、地域経済への貢献にもつながります。
円滑な経営の引継ぎ 事前に後継者を決め育成することで、経営の引継ぎをスムーズに行うことができます。後継者は、先代経営者から指導や助言を受けることで、経営者としてのスキルを身につけることができます。
事業承継のデメリット
デメリット 解説
後継者問題 適切な後継者が見つからない場合もあり、事業承継が困難になる可能性があります。後継者不足は、多くの企業が抱える課題です。
資金調達 事業承継には、株式の取得資金や事業資金など、多額の資金が必要となる場合があります。資金調達がうまくいかないと、事業承継が滞ってしまう可能性があります。
経営環境の変化への対応 市場環境や顧客ニーズの変化に対応していくためには、常に経営改革や事業転換などの対応が必要となります。しかし、変化への対応が遅れると、事業の継続が難しくなる可能性があります。

3. 会社相続・事業承継の種類

会社相続と事業承継には、大きく分けて「親族内承継」と「第三者承継(M&A)」の2つの種類があります。それぞれの特徴を理解した上で、自社にとって最適な方法を選択することが重要です。


3.1 親族内承継

親族内承継は経営者の親族や従業員など、会社と関係の深い人物に事業を承継する方法です。長年の経営で培ってきた企業文化やノウハウを引き継ぎやすいというメリットがあります。

親族への事業承継

親族への事業承継は、経営者の子供や兄弟姉妹など、血縁関係のある親族に事業を承継する方法です。後継者が経営に精通している場合や、親族間で経営方針の共有がしやすい場合に適しています。

メリット:信頼関係に基づいた円滑な承継・経営理念やノウハウの継承・従業員の雇用維持
デメリット:後継者となる親族の経営能力不足・親族間での感情的なトラブル・後継者候補の選定が難しい

従業員への事業承継

従業員への事業承継は、長年会社に貢献してきた従業員に事業を承継する方法です。後継者となる従業員は、会社の経営状況や業界について精通しており、従業員の信頼も厚いため、スムーズな事業承継が期待できます。従業員持株制度などを活用することで、従業員が自社株を取得しやすくなるため、事業承継を円滑に進めることができます。

メリット:会社への貢献意欲の高い人材の確保・社内事情に精通した承継・従業員のモチベーション向上
デメリット:後継者となる従業員の経営能力不足・資金調達の課題・後継者候補の選定が難しい


3.2 第三者承継(M&A)

第三者承継(M&A)とは、親族や従業員ではなく、全く関係のない第三者に事業を承継する方法です。後継者問題の解決・事業の拡大・経営の効率化などを目的として行われます。

M&Aの種類

M&Aには、大きく分けて「合併」「買収」「事業譲渡」の3つの種類があります。

種類 内容 メリット デメリット
合併 2つ以上の会社が、対等の立場で1つの会社に統合されること 対等な立場での統合、シナジー効果による企業価値向上 統合プロセスが複雑、文化や経営方針の違いによる摩擦
買収 ある会社が、他の会社の株式や事業を取得し、支配権を獲得すること 迅速な事業拡大、競争相手の排除、技術やノウハウの獲得 買収コストが高い、買収後の統合が難しい、レピュテーションリスク
事業譲渡 ある会社が、特定の事業を他の会社に譲渡すること 事業の選択と集中、不要な事業の整理、経営資源の効率化 譲渡価格の決定が難しい、従業員の雇用問題、取引相手の選定
M&Aのメリット・デメリット
メリット:後継者問題の解決、事業の拡大、経営の効率化、資金調達の選択肢の増加
デメリット:企業文化や経営方針の違いによる摩擦、従業員の雇用不安、高額な費用

M&Aは、自社の経営資源やノウハウを活かし、新たな成長を目指す有効な手段となります。綿密な計画と準備、専門家との連携が成功の鍵となります。


4. 会社相続・事業承継の手続きの流れ

会社相続・事業承継の手続きは、大きく分けて「準備段階」「手続き段階」「相続税の申告と納付」の3つの段階に分かれます。それぞれの段階における具体的な内容は以下の通りです。


4.1 準備段階

会社相続・事業承継をスムーズに進めるためには、事前の準備が非常に重要となります。準備段階では、主に以下の様な手続きや検討が必要です。

現状の把握

まずは、会社の経営状況・財務状況・株主構成などを把握することから始めます。具体的には、以下の様な項目を調査します。

会社の業績(売上高、利益率、借入金など)
会社の資産・負債状況
会社の株主構成(誰がどれだけの株式を保有しているか)
会社の経営体制(取締役、監査役など)

これらの情報を収集・分析することで、会社相続・事業承継における課題や問題点を明確化することができます。

後継者の決定

会社相続・事業承継において、誰が後継者となるのかを決めることは非常に重要です。後継者は、必ずしも血縁者である必要はありません。従業員や外部の人材など、経営能力や人望のある人材を後継者として選定することも可能です。後継者を誰にするかによって、会社相続・事業承継の手続きや方法が大きく変わる可能性もあるため、慎重に検討する必要があります。

事業承継計画の作成

後継者が決定したら、具体的な事業承継計画を策定します。事業承継計画には、以下の様な項目を盛り込む必要があります。

事業承継の時期
事業承継の方法
後継者への株式の譲渡方法
後継者への経営権の移譲方法
事業承継後の経営方針

事業承継計画をしっかりと策定することで、円滑な事業承継を実現することができます。


4.2 手続き段階

後継者が決定し、事業承継計画が策定されたら具体的な手続きに移ります。手続き段階では、主に以下の様な手続きが必要となります。

株式の評価・譲渡

会社相続・事業承継においては、株式の評価と譲渡が重要な手続きとなります。株式の評価方法は、会社の規模や業種によって異なりますが、一般的には「類似会社比較法」「DCF法」「純資産価額法」などが用いられます。株式の譲渡方法は、贈与・売買・相続など、様々な方法があります。後継者への株式の譲渡方法によって、贈与税や所得税などの税金が発生する場合があるため注意が必要です。

遺言書の作成

会社経営者が亡くなった際に相続争いを避けるためにも、遺言書の作成は非常に重要です。遺言書には、会社の株式を誰にどのように相続させるのか、後継者を誰にするのかなどを明確に記載しておく必要があります。遺言書がない場合、法定相続分に従って遺産分割が行われることになりますが、会社の株式が分散してしまう可能性もあり、後継者不在による経営の混乱を招く可能性もあります。

会社法・税法上の手続き

会社相続・事業承継においては、会社法や税法上の手続きも必要となります。例えば、後継者を代表取締役に就任させる場合には、株主総会での決議・登記が必要となります。また、株式の譲渡や相続が発生した場合には、税務上の手続きも必要となります。手続きの内容は、会社の規模や業種、事業承継の方法などによって異なるため、専門家である税理士や司法書士などに相談することをおすすめします。


4.3 相続税の申告と納付

会社経営者が亡くなった場合、相続税の申告と納付が必要となります。相続税は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡日)の翌日から10か月以内に申告と納付を行わなければなりません。相続税の申告には、相続税申告書や相続財産の名目書きなど多くの書類が必要となります。また、相続税の計算は複雑なため、税理士に依頼することをおすすめします。

これらの手続きは、あくまでも一般的な流れであり、会社の規模や業種、事業承継の方法などによって異なる場合があります。専門家である税理士や司法書士などに相談しながら、適切な手続きを進めるようにしましょう。


5. 会社相続・事業承継を成功させるためのポイント

会社相続・事業承継を成功させるためには、事前の綿密な準備と計画、そして適切な専門家との連携が不可欠です。スムーズな事業承継を実現するために、以下のポイントを事前に抑えておきましょう。

【関連】事業承継の進め方ガイド|後継者と考える引継ぎ、コスト対策まで徹底解説!
5.1 自社株対策

会社相続において、特に重要なのが「自社株対策」です。自社株の評価額が高額になる場合、相続税の負担が大きくなり、後継者の資金繰りを圧迫する可能性があります。最悪の場合、事業継続を断念せざるを得ない事態も招きかねません。

自社株対策として、以下のような方法が考えられます。

後継者への生前贈与
従業員持株会による自社株の分散
種類株式の発行による評価額の抑制

これらの対策を検討する際は、それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。また、相続税法は改正される可能性もあるため、最新の情報を収集しておくことも大切です。


5.2 後継者育成

事業を円滑に承継するためには、後継者の育成が欠かせません。後継者は、経営者としての資質や能力を身につける必要があります。経営理念やビジョン・事業ノウハウの継承はもちろんのこと、財務管理・人材マネジメント・顧客対応など、多岐にわたる知識と経験を積む必要があります。

後継者育成は、一朝一夕にできるものではありません。時間をかけて、計画的に取り組むことが重要です。具体的には、以下の様な方法があります。

社内でのOJTによる実務経験の積ませ
外部研修への参加による経営知識の習得
経営者との同行やミーティングへの参加による経営感覚の養成

後継者の個性や能力に合わせた育成計画を立て、長期的な視点で育成に取り組むことが重要です。


5.3 事業計画の作成

事業承継は、単に経営者の交代を意味するものではありません。後継者が中心となり新たな時代に対応した事業戦略を描き、企業価値を高めていくことが重要です。そのためには、将来を見据えた明確な事業計画の策定が不可欠となります。

事業計画には、以下の様な項目を盛り込むと良いでしょう。

事業承継後の経営理念・ビジョン
市場分析とターゲット顧客の明確化
競争優位性と差別化戦略
具体的な事業展開計画と数値目標
財務計画と資金調達計画

事業計画は、金融機関からの融資を受ける際にも重要な資料となります。実現可能性の高い、説得力のある事業計画を策定しましょう。


5.4 専門家への相談

会社相続・事業承継は、複雑な手続きや専門知識が求められるため、専門家への相談が不可欠です。税理士・弁護士・司法書士・中小企業診断士など、それぞれの専門家に相談することで、適切なアドバイスやサポートを受けることができます。

専門家を選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。

会社相続・事業承継に精通していること
自社の状況やニーズを理解し、親身になって相談に乗ってくれること
費用体系が明確であること

複数の専門家に相談し、比較検討した上で、信頼できる専門家を選ぶことが重要です。また、専門家との連携を密にすることで、スムーズな事業承継を実現することができます。


6. 事業承継に必要な資金は?
費用 内容
相続税の納付 相続財産に相続税が発生する場合、所定の期限内に納付する必要があります。
自社株の買取資金 経営権を集中させるため、または他の相続人への財産分与のため、自社株を買い取る際に資金が必要となります。
事業承継後の設備投資資金 事業をさらに発展させるために、新しい設備投資が必要となる場合があります。
運転資金 事業承継後、円滑に事業を運営していくために必要な運転資金を確保する必要があります。

7. まとめ

会社相続と事業承継は、会社の将来を左右する重要なプロセスです。円滑な事業承継のためには、事前の準備と適切な手続きが不可欠です。 まず、会社相続と事業承継の違いを理解し、自社にとって最適な方法を選択する必要があります。親族内承継、従業員承継、M&Aなど、様々な選択肢があります。 次に、相続税や贈与税の負担を軽減するための自社株対策、後継者の育成、事業計画の作成など、早めに行動することが重要です。 これらの手続きは複雑で専門知識を必要とする場合が多いため、税理士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。 専門家のサポートを受けながら、適切な準備と手続きを進めることで、会社を円滑に次世代へ引き継ぎ、持続的な成長を目指しましょう。



編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったPMIのエキスパート。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。

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