事業承継とM&Aの違いとは?メリット・デメリット、最適な仲介会社の見極め方を解説

事業承継とM&Aの違いとは?メリット・デメリット、最適な仲介会社の見極め方を解説

「事業承継」と「M&A」の違いがわからないという経営者も少なくありません。どちらも会社の将来を決める大切な選択ですが、目的や手続きは大きく異なります。

事業をスムーズに承継したい経営者の方、事業拡大を検討している方に向けて本記事では、事業承継とM&Aの違いをメリット・デメリットを交えながら分かりやすく解説します。

最適な仲介会社の見極め方も紹介しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。

M&A PMI AGENTは上場企業・中堅・中小企業の「M&AからPMI支援までトータルサポート」できるM&A仲介会社です。詳しくはコンサルタントまでお気軽にご相談ください。

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1.事業承継とは? 事業承継とは、経営者の高齢化や病気、引退など様々な理由により、現経営者が事業を継続することが困難になった際に、後継者に事業を承継させることを指します。

事業を円滑に継続し、従業員の雇用や顧客との取引を維持するためには、早めかつ適切な事業承継計画の策定が重要となります。

特に、日本商工会議所 「事業承継に関する実態アンケート」調査結果によると、経営者の平均引退年齢は72.2歳(※1)である一方、帝国データバンク 全国「後継者不在率」動向調査(2023年)による後継者候補が決まっていない企業の割合は53.9%(※2)と高く、早急な対策が必要とされています。

※1日本商工会議所 「事業承継に関する実態アンケート」調査結果
※2帝国データバンク 全国「後継者不在率」動向調査(2023年)

1.1 事業承継の主な手法 事業承継には、大きく分けて以下の3つの手法があります。

1親族内承継
2従業員への承継(事業承継型MBO)
3第三者への承継

1.1.1 親族内承継 親族内承継はその名の通り、経営者の親族に事業を承継する方法です。古くから多くの企業で行われてきた手法であり、後継者が経営者の子供や親族など、経営理念や事業内容を深く理解している点がメリットとして挙げられます。承継する後継者の育成期間を十分に取ることができるのも特徴です。

一方で後継者となる人材がいない場合や、親族間の関係性によっては、円滑な事業承継が難しいケースもあります。また、親族内承継の場合、経営のマンネリ化や、外部からの新たな視点を取り入れにくいといったデメリットも存在します。

例えば、中小企業基盤整備機構の調査によると、親族内承継を行った企業のうち、約2割が「後継者教育の不足」を課題に挙げています。

1.1.2 従業員への承継(事業承継型MBO) 従業員への承継は、経営者一族以外で、長年会社に貢献してきた従業員に事業を承継する方法です。

特に、経営陣や幹部社員など、事業内容や経営方針を深く理解している人材に承継することで、社内体制や従業員の雇用を維持しやすくなるというメリットがあります。

また、後継者となる従業員は、経営者としての自覚や責任感が高まり、モチベーション向上や人材育成にも繋がることが期待されています。

一方で、後継者となる従業員にとって多額の資金が必要となるケースや、経営経験の不足などが課題となる可能性があります。

また、後継者となる従業員と、他の従業員との関係性にも配慮する必要があるでしょう。

例えば、事業承継型MBOを実施する場合、後継者となる従業員は、金融機関から融資を受ける際に、経営計画や資金繰り計画などをしっかりと作成し、金融機関からの信頼を得ることが重要となります。

1.1.3 第三者への承継 第三者への承継は、親族や従業員ではなく、全く関係のない第三者に事業を承継する方法です。この第三者には、他の会社の経営者や、事業会社、投資ファンドなどが含まれます。第三者への承継には、大きく分けて「M&A」と「事業譲渡」の2つの方法があります。

M&A

M&Aとは、企業の合併・買収のことで、他の会社と合併したり、他の会社に自社の株式を譲渡したりすることで、事業を承継する方法です。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社の事業の一部または全部を、他の会社に譲渡する方法です。

第三者への承継は、親族や従業員に適切な後継者候補がいない場合や、早期に事業承継を進めたい場合などに有効な手段となります。また、事業を承継することで、新たなノウハウや技術、人材を獲得できる可能性もあります。

一方で、第三者への承継は、自社の経営理念や社風が大きく変わる可能性があり、従業員の雇用維持が難しいケースもある点は理解しておく必要があります。

また、第三者との交渉や契約手続きが複雑になる場合があり、専門家のサポートが必要となるでしょう。例えば、M&Aにおいては、買収後の統合プロセス(PMI)が重要となります。

PMIがうまくいかないと、従業員のモチベーション低下や顧客の離反に繋がりかねません。そのため、M&Aを実施する際は、PMIを適切に進めるための計画策定や専門家によるサポートが不可欠です。

2. M&Aとは? M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略で、日本語では「企業合併・買収」と訳されます。広義には、企業の合併や買収だけでなく、企業が連携して事業を行うための資本提携や業務提携なども含まれます。

M&Aは、企業が成長戦略の一環として、あるいは事業再編や事業承継などを目的として行われます。近年では、オープンイノベーションやグローバル化の進展などを背景に、M&Aの件数は増加傾向にあります。経済産業省の調査によると、1985年の260件から2021年度のM&A件数は4,280件と急速に拡大し過去最高を記録しました。

2.1 M&Aの種類 M&Aは、その手法によって、いくつかの種類に分けられます。主な種類としては、以下のものがあります。

2.1.1 株式譲渡

株式譲渡とは?

買収対象企業の株式を譲り受けることで、その企業の経営権を取得する方法です。株式譲渡は、M&Aの中でも一般的な手法であり、手続きが比較的簡易であるというメリットがあります。

買収対象企業の株主総会での特別決議が不要な場合もあるため、スピーディーな買収が可能です。

株式譲渡の例
A社がB社の発行済み株式の100%を取得することで、B社を完全子会社化する
C社がD社の発行済み株式の20%を取得することで、D社に資本参加する

2.1.2 事業譲渡

事業譲渡とは?

事業譲渡とは、買収対象企業の事業の一部または全部を譲り受けることで、その事業を承継する方法です。事業譲渡は、買収対象企業の特定の事業のみを取得したい場合に有効な手法です。

買収対象企業の負債などを承継しないため、リスクを抑えて買収することができます。ただし、事業譲渡は、株式譲渡に比べて手続きが複雑で時間がかかる場合があるというデメリットがあります。また、税金面で不利になる可能性もあるため注意が必要です。

事業譲渡の例
E社がF社のサプリ製造事業部門を譲り受ける
G社がH社の飲食店事業を譲り受ける

2.2 M&Aのメリット・デメリット M&Aには、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリットデメリット
企業側
  • 事業の拡大・成長:M&Aによって、既存事業の規模を拡大したり、新たな市場に進出したりすることができます。例えば、A社が競合他社であるB社を買収することで、市場シェアを拡大することができます。
  • 新規事業への進出:M&Aによって、自社では保有していない技術やノウハウを持つ企業を買収することで、新規事業に参入することができます。例えば、C社がAI技術を持つベンチャー企業D社を買収することで、AI関連事業に参入することができます。
  • 競争力の強化:M&Aによって、競合他社を買収したり、優れた技術やブランドを持つ企業を買収したりすることで、競争力を強化することができます。例えば、E社が業界2位のF社を買収することで、業界トップの地位を獲得することができます。
  • 経営資源の補完:M&Aによって、自社に不足している経営資源(人材、技術、資金など)を補完することができます。例えば、G社が優秀なエンジニアを多数抱えるH社を買収することで、技術力を強化することができます。
  • 事業承継:後継者問題を抱える企業にとって、M&Aは事業承継の有効な手段となります。例えば、後継者不在に悩むI社が、J社に株式を譲渡することで、事業を承継することができます。
  • 買収コストの負担:M&Aには、多額の資金が必要となる場合があります。買収資金が不足する場合には、借入を行う必要があり、企業の財務状況が悪化する可能性があります。また、買収価格が割高だった場合、後に減損損失を計上する可能性もあります。
  • 組織文化の違いによる統合の難しさ:M&A後には、買収企業と譲渡企業の組織文化の違いが、統合の妨げとなる場合があります。従業員間の反発や摩擦が生じ、組織のパフォーマンスが低下する可能性もあります。
  • 従業員の反発:M&Aによって、雇用が不安定になることを懸念し、従業員が反発する場合があります。優秀な人材が流出してしまう可能性もあります。
  • 買収後の業績悪化リスク:M&A後には、想定していたシナジー効果が得られず、業績が悪化するリスクがあります。市場環境の変化や競争の激化などにより、買収後の事業計画が達成できない可能性もあります。

M&Aは、企業にとって大きなメリットがある一方、リスクも伴います。そのため、M&Aを成功させるためには、事前の綿密な計画と準備が重要となります。M&Aに関する専門知識を持った専門家やアドバイザーのサポートを受けることも有効です。

3. 事業承継とM&Aの違い 3.1 目的の違い 事業承継とM&Aは、どちらも企業の存続をかけた重要な経営判断ですが、その目的は大きく異なります。

事業承継M&A
主な目的
  • 経営者の高齢化や病気等による経営の空白化を防ぎ、円滑な事業の引継ぎを実現する
  • 雇用を維持し、企業の社会的責任を果たす
  • 長年培ってきた企業文化や技術・ノウハウを次世代へ継承する
  • 企業の成長戦略の一環として、シナジー効果による企業価値の向上を目指す
  • 新規事業への進出や市場シェアの拡大
  • 経営資源の獲得(人材、技術、顧客基盤など)

事業承継では、「企業の存続と発展」、「従業員の雇用維持」、「地域社会への貢献」といった要素が重視されます。例えば、地域に根ざした老舗企業や中小企業では、長年培ってきた顧客との信頼関係や従業員の雇用を守るために、事業承継が重要な経営課題となります。

一方、M&Aは、「企業価値の最大化」や「競争優位性の確保」 を目的とする場合が多いです。近年では、IT技術の進化やグローバル化の進展に伴い、企業は競争環境の変化に迅速に対応していく必要があり、M&Aは有効な戦略の一つとして注目されています。

例えば、急成長中のベンチャー企業が、更なる事業拡大のために、資金力や販売網を持つ大手企業とM&Aを行うケースなどが挙げられます。

3.2 対象の違い 事業承継とM&Aでは、その対象となる範囲も異なります。

事業承継M&A
対象 事業全体または事業の一部を承継(後継者不在の場合は会社全体を承継する場合もある) 株式や事業の一部または全部を取得・売却

事業承継では、現経営者から後継者へ、事業全体や事業の一部、あるいは会社全体を譲渡します。後継者は、親族や従業員、あるいは第三者である場合もあります。重要な点は、事業を承継することで、その事業が継続されるという点です。

一方、M&Aでは、企業の合併や買収を通じて、株式や事業の一部または全部が対象となります。M&Aでは、対象となる事業が必ずしも存続するとは限りません。買収された側の企業の事業が、買収側の企業に統合され廃止されるケースも少なくありません。

例えば、A社がB社をM&Aで買収した場合、B社の事業の一部がA社の既存事業と重複する場合、効率化のためにB社の当該事業が廃止されることがあります。

3.3 手続きの違い 事業承継とM&Aでは、手続きの複雑さや期間が大きく異なります。

事業承継M&A
手続き
  • 親族内承継:遺産相続手続き、株式譲渡
  • 従業員への承継:株式譲渡、経営権の移譲
  • 第三者への承継:M&Aと同様の手続きが必要となる場合もある
  • デューデリジェンス(企業価値評価、財務状況、法務調査など)
  • 基本合意、最終契約の締結
  • 株式譲渡または事業譲渡の実行
期間
  • 数ヶ月〜数年
  • 数ヶ月〜数年(規模や交渉の複雑さによる)

M&Aは、一般的に事業承継よりも複雑で時間のかかる手続きが必要となります。デューデリジェンスや契約交渉など、専門的な知識が求められる場面も多く、専門家である税理士・会計士・弁護士やM&A仲介会社を活用することが一般的です。

一方、事業承継、特に親族内承継の場合、手続きは比較的簡易になる傾向があります。しかし、後継者への株式譲渡や経営権の移譲など、専門的な知識が必要となる場合もあるため、注意が必要です。

事業承継とM&Aの違いを理解した上で、自社の状況に最適な方法を選択することが重要です。

4. 事業承継とM&A、それぞれのメリット・デメリット 4.1 事業承継のメリット・デメリット 4.1.1 メリット
経営の継続性事業承継は、既存の経営資源や顧客基盤を引き継ぐため、事業をスムーズに継続できます。長年培ってきた企業の信用やブランド力を維持できる点は大きなメリットです。例えば、創業100年の老舗旅館が事業承継によって営業を継続できれば、長年旅館を利用してきた顧客は安心して宿泊することができます。
従業員の雇用維持事業承継によって、従業員の雇用を維持できる可能性が高まります。従業員の生活を守り、企業文化やノウハウを次世代に継承していくことができます。特に、地域密着型の企業にとって、従業員の雇用維持は地域社会への貢献にもつながります。
地域経済への貢献長年地域に根差して事業を行ってきた企業にとって、事業承継は地域経済の活性化に貢献することにも繋がります。雇用維持だけでなく、取引先との関係も維持することで、地域経済への影響を最小限に抑えられます。例えば、地域の中小企業が事業承継によって廃業を回避できれば、その企業と取引のある他の企業の業績悪化を防ぐことにもつながります。
円滑な承継時期の選択自身の体力や経営状況などを考慮しながら、後継者に事業を承継するタイミングを比較的自由に選択できます。後継者への教育期間を設けるなど、計画的な事業承継を進められます。後継者がまだ若いうちから経営に参画させることで、スムーズな事業承継を実現できる可能性が高まります。

4.1.2 デメリット
後継者問題適切な後継者が見つからない場合、事業承継が困難になります。特に親族内承継の場合、経営能力や適性に関わらず、親族に承継しなければならないというプレッシャーが生じるケースもあります。経営者自身の高齢化が進み、後継者探しが難航するケースも少なくありません。帝国データバンクの調査によると、後継者不在率は年々上昇しており、2023年には53.9%に達しています。
承継資金問題後継者が事業を承継する際に、多額の資金が必要になる場合があります。特に、株式を買い取る場合や相続税の納税が必要な場合、資金調達が課題となることがあります。金融機関からの融資を受けるためには、事業計画や返済計画をしっかりと立てる必要があります。
経営の革新性の欠如親族内承継や従業員への承継の場合、従来の経営方針や企業文化が引き継がれるため、経営の革新性が阻害される可能性があります。外部の視点を取り入れた大胆な改革や新規事業展開が難しくなるケースもあります。変化の激しい現代社会において、企業が生き残っていくためには、常に新しい技術やアイデアを取り入れていくことが重要です。

4.2 M&Aのメリット・デメリット 4.2.1 メリット
後継者問題の解決M&Aは、親族や従業員以外でも、経営能力や事業への熱意を持った第三者に事業を譲渡できるため、後継者問題を解決する有効な手段となります。後継者不足に悩む企業にとって、事業を存続させる道が開けます。例えば、後継者が見つからず廃業を考えていた中小企業が、M&Aによって事業を存続できたというケースは少なくありません。
事業の迅速な売却・事業拡大事業承継と比較して、事業の売却や事業拡大をスピーディーに進めることができます。短期間で資金調達や事業統合を進めたい場合、M&Aは有効な選択肢となります。例えば、新規事業の立ち上げに必要な資金を、M&Aによって短期間で調達するといったケースが考えられます。
シナジー効果異なる企業文化や技術を持つ企業同士がM&Aを行うことで、シナジー効果による新たな価値創造が期待できます。経営資源やノウハウを共有することで、単独では実現できなかった事業展開や市場開拓が可能になります。例えば、製造業のA社とIT企業のB社がM&Aを行うことで、A社の製品にB社のIT技術を融合させた新たな製品を開発できる可能性があります。
従業員の雇用維持の可能性M&Aは、事業を売却する側にとって、従業員の雇用を維持できる可能性を高める効果もあります。買収企業の事業計画によっては、既存の従業員を引き継いでもらうことで、雇用を守ることができます。特に、専門性の高いスキルや知識を持つ従業員は、買収企業にとっても貴重な人材となる可能性があります。

4.2.2 デメリット
企業文化の衝突異なる企業文化を持つ企業同士の統合は、組織運営や意思決定において摩擦が生じやすく、従業員のモチベーション低下や離職に繋がる可能性があります。例えば、意思決定のスピードや顧客対応の仕方が異なる企業同士が統合した場合、従業員が混乱し、業務効率が低下する可能性があります。ト
高額なコストM&Aは、仲介手数料やデューデリジェンス費用など、多額のコストが発生する可能性があります。特に、大規模なM&Aの場合、専門家への報酬や調査費用などが膨らむ傾向があります。M&Aを実施する際には、事前に費用対効果を慎重に見極める必要があります。
情報漏洩リスクM&Aのプロセスでは、企業の機密情報を開示する必要があり、情報漏洩のリスクが伴います。厳格な情報管理体制を構築し、機密情報の保護に努める必要があります。情報漏洩は、企業の信用を失墜させ、経済的な損失をもたらす可能性があります。

5. 事業承継・M&Aにおける仲介会社の種類と役割 事業承継やM&Aを検討する際には、専門知識や経験豊富な仲介会社に相談することが一般的です。それぞれの仲介会社によって得意分野や役割が異なるため、自身のニーズに合ったパートナーを選ぶことが重要となります。

5.1 M&A仲介会社 M&A仲介会社は、企業の合併・買収(M&A)を専門に扱う仲介会社です。買い手企業と売り手企業の間に入り、条件交渉や契約締結、クロージングまでの一連のプロセスをサポートします。

5.1.1 M&A仲介会社の主な役割
買い手企業・売り手企業の発掘
企業価値評価(バリュエーション)
条件交渉の仲介
デューデリジェンス(DD)の調整
契約書作成のサポート
クロージング(最終合意)

M&A仲介会社の中には、特定の業界や規模の企業に特化した専門性の高いブティック型の会社や、国内外の幅広いネットワークを持つ大手総合証券会社系など、さまざまなタイプがあります。

5.1.2 M&A仲介会社を選ぶポイント
実績や経験豊富な専門家がいるか
自社の業界や規模に精通しているか
ネットワークや情報量が豊富か
費用体系が明確で、納得できるものか
担当者との相性や信頼関係が築けるか
成約後もサポートしてくれるか

M&A仲介会社を選ぶ際には、実績や経験はもちろんのこと、自社の業界や規模に精通しているか、ネットワークや情報量が豊富か、費用体系が明確で納得できるものか、担当者との相性や信頼関係が築けるか、といった点も重要な選定基準となります。

また、自社の業界や規模に精通しているかについては、M&A仲介会社のウェブサイトや会社案内などで、得意とする業界や企業規模を確認することができます。

5.2 事業承継支援会社 事業承継支援会社は、事業承継を専門に扱うコンサルティング会社です。

後継者問題を抱える経営者に対して、事業承継プランの策定から、後継者の育成、事業承継の手続きまで、総合的な支援を行います。

5.2.1 事業承継支援会社の主な役割
事業承継プランの策定支援
後継者候補の選定・育成
自社株対策・相続対策
従業員への事業承継(MBO)支援
第三者への事業承継(M&A)支援

事業承継支援会社には、税理士法人、会計事務所、コンサルティング会社など、さまざまなバックグラウンドを持つ企業が存在します。

M&Aの相談を行う場合には、「お付き合いのある、いつもの税理士さんに」という選び方ではなく、「M&A業務の経験のある税理士さんに」という経験値を基準に選びましょう。

そのような支援先が見つからない場合は、事業承継支援会社やM&A仲介会社などに相談するとご紹介いただける場合があります。

5.2.2 事業承継支援会社を選ぶポイント
事業承継に関する専門知識や経験が豊富か
自社の状況やニーズに合わせた提案をしてくれるか
税務・法律・財務など、幅広い分野に対応できるか
費用体系が明確で、納得できるものか
担当者との相性や信頼関係が築けるか

事業承継支援会社を選ぶ際には、事業承継に関する専門知識や経験が豊富か、自社の状況やニーズに合わせた提案をしてくれるか、税務・法律・財務など、幅広い分野に対応できるか、費用体系が明確で納得できるものか、担当者との相性や信頼関係が築けるか、といった点も重要な選定基準となります。

例えば、事業承継支援会社が過去にどのような事業承継案件を手がけてきたのか、実績や経験を具体的にヒアリングすることが重要です。

また、自社の状況やニーズに合わせた提案をしてくれるかについては、事業承継支援会社が自社の事業内容や経営状況、後継者候補の有無などをしっかりと把握し、最適な事業承継プランを提案してくれるかを確認することが重要です。

5.3 金融機関 銀行や信用金庫などの金融機関も、事業承継やM&Aの仲介業務を行っています。金融機関は、長年の取引を通じて顧客企業の財務状況や経営状況を把握しているため、適切なアドバイスや資金調達のサポートを提供することができます。

5.3.1 金融機関の主な役割
事業承継・M&Aに関する情報提供
買い手企業・売り手企業の紹介
事業計画策定のサポート
融資・資金調達の支援

金融機関は、事業承継やM&Aに特化した専門部署を設けている場合もあります。また、自行で対応できない場合は、外部の専門家ネットワークを紹介してくれることもあります。

また、都市銀行や地銀だけではなく地域密着型の金融機関である信用金庫なども、事業承継に力を入れており、地元企業のM&Aや事業承継を支援しています。

5.3.2 金融機関を選ぶポイント
事業承継やM&Aに関する専門知識を持った担当者がいるか
自社の業界や規模に精通しているか
融資や資金調達の面で有利な条件を提示してくれるか
担当者との相性や信頼関係が築けるか

金融機関を選ぶ際には、事業承継やM&Aに関する専門知識を持った担当者がいるか、自社の業界や規模に精通しているか、融資や資金調達の面で有利な条件を提示してくれるか、担当者との相性や信頼関係が築けるか、といった点も重要な選定基準となります。

例えば、金融機関の担当者が、事業承継やM&Aに関する資格や経験を持っているかを確認することが重要です。また、自社の業界や規模に精通しているかについては、金融機関が、自社の属する業界の市場動向や競合状況などを把握しているかを確認することが重要です。

事業承継やM&Aは、企業の将来を左右する重要な決断です。それぞれの仲介会社の特徴を理解し、自社のニーズに合ったパートナーを選ぶことが、成功への第一歩となります。

参考:中小企業庁:事業承継ガイドライン
6. 最適な仲介会社の見極め方 事業承継やM&Aを成功させるには、適切な仲介会社選びが重要です。数多くの仲介会社が存在する中で、以下のポイントを踏まえて、自社にとって最適なパートナーを見つけましょう。

6.1 実績と専門性 仲介会社を選ぶ際には、実績と専門性を重視することが重要です。実績豊富な会社は、過去の経験から得たノウハウやネットワークを駆使し、スムーズな事業承継やM&Aを支援することができます。また、特定の業界や規模に特化した専門性の高い会社を選ぶことで、より的確なアドバイスやサポートを受けることができます。

6.1.1 実績の確認ポイント
成約件数や金額などの実績データ
過去の成約事例(業界、規模、スキームなど)
顧客からの評判や口コミ

6.1.2 専門性の確認ポイント
専門分野(業界、規模、スキームなど)
専門スタッフの有無(公認会計士、税理士、弁護士など)
専門知識や経験に基づいたコンサルティングの提供

例えば、M&Aの成約件数が多くても、そのほとんどが特定の業界や規模の案件ばかりであれば、自社のニーズに合致しない可能性があります。自社の事業内容や規模、希望するスキームなどを考慮し、より専門性の高い仲介会社を選ぶようにしましょう。

例えば、中小企業の事業承継に強みを持つ中小企業再生支援協議会に登録されている仲介会社や、特定の業界に特化したブティック型のM&Aアドバイザリー会社などがあります。

これらの専門性の高い仲介会社は、独自のネットワークやノウハウを持っていることが多く、より有利な条件でM&Aを進めることができる可能性があります。

6.2 費用体系の透明性 仲介会社によって費用体系は異なり、不明瞭な料金設定をしている会社も存在します。そのため、事前に見積もりを依頼し、費用内訳や支払い条件などを明確に確認することが重要です。また、成功報酬の有無や算定方法についても確認しておきましょう。

6.2.1 費用の確認ポイント
着手金契約時に支払う費用
中間金手続きの進捗に応じて支払う費用
成功報酬成約時に支払う費用
その他費用デューデリジェンス費用、弁護士費用など

特に、成功報酬については、算定方法や支払時期が明確になっているかどうかに注意が必要です。一般的には、M&Aの成約金額に対して一定の料率を乗じた金額が成功報酬となりますが、仲介会社によっては、最低報酬額を設定している場合や、成約金額以外の要素(例えば、買収後のシナジー効果など)を考慮して成功報酬を決定する場合があります。

そのため、契約前に成功報酬の算定根拠や支払条件について、十分に確認しておくことが重要です。また、着手金や中間金についても、いつ、どのようなタイミングで、いくら発生するのかを明確に確認しておきましょう。

仲介会社によっては、着手金を低く設定して顧客を獲得しようとするケースもあるため注意が必要です。着手金が安い場合は、その後の手続きの進捗に応じて高額な中間金が発生する可能性もあります。そのため、トータルコストで比較検討することが重要です。

6.3 担当者との相性 事業承継やM&Aは、長期にわたる複雑なプロセスとなるため、担当者との信頼関係が不可欠です。相談しやすく、誠実に対応してくれる担当者を選ぶようにしましょう。面談の際に、担当者の対応やコミュニケーション能力、熱意などを確認することが重要です。

6.3.1 担当者の確認ポイント
コミュニケーション能力
誠実さ
熱意
相談しやすさ

事業承継やM&Aは、経営者の人生や会社の将来を左右する重要な決断です。そのため、安心して相談できる担当者を選ぶことが重要になります。信頼できる担当者かどうかを見極めるためには、面談の際に、以下の様な点を確認すると良いでしょう。

質問に対して、分かりやすく丁寧に説明してくれるか
自社の立場に立って、親身になって相談に乗ってくれるか
レスポンスが早く、こまめに連絡を取ってくれるか
専門知識や経験が豊富で、的確なアドバイスをしてくれるか

また、会社の経営理念や企業文化、コンプライアンス体制なども考慮して、総合的に判断することが大切です。複数の仲介会社を比較検討し、自社にとって最適なパートナーを選びましょう。

7. まとめ 事業承継とM&Aは、どちらも企業の存続と成長を左右する重要な経営判断です。事業承継は、現経営者が築き上げてきた事業を後継者に引き継ぎ、長期的な安定と発展を目指すための手段です。

一方、M&Aは、企業の合併や買収を通じて、経営資源の統合や事業シナジーの創出による急成長を目指すものです。

どちらの手法を選択するかは、企業の現状や経営者のビジョン、後継者の有無などによって異なります。重要なのは、それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の状況に最適な方法を選択することです。

事業承継やM&Aを成功させるためには、専門知識を持った仲介会社選びが欠かせません。実績や専門性はもちろんのこと、費用体系の透明性や担当者との相性も重要な選定基準となります。

信頼できるパートナーと二人三脚で、円滑かつ確実な事業承継・M&Aを実現しましょう。

編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったPMIのスペシャリスト。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。

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