会社売却・事業売却を成功させるための5つのポイント
会社売却は、人生における大きな転換点。だからこそ、正しい知識と戦略が必要です。この記事では、会社売却と事業売却の違い、M&Aとの関係性など、基礎知識を押さえながら、成功へと導くための5つのポイントを分かりやすく解説します。
さらに、会社売却の手順、よくある質問への回答も網羅。 あなたの会社にとって、そしてあなた自身にとって、最良の選択をするための羅針盤となるはずです。
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会社売却(株式譲渡) 会社売却は、会社の発行済み株式の全部または過半数を売却することで、会社の経営権を含むすべての権利義務を譲渡することを指します。会社の資産、負債、契約、従業員など、すべてがそのまま買い手企業に移転します。株式譲渡とも呼ばれます。
事業売却(事業譲渡) 事業売却は、会社から特定の事業だけを切り離し、その事業に関する資産、負債、契約、従業員などを買い手企業に譲渡することを指します。会社自体は残りますが、売却した事業に関する権利義務は買い手企業に移転します。事業譲渡とも呼ばれます。
どちらの方法が適切かは、会社の規模や経営状況、売却目的などによって異なります。専門家のアドバイスを受けながら、最適な方法を選択することが重要です。
1.2 M&Aでの会社・事業の売却の違い M&A(Mergers and Acquisitions)とは、企業の合併・買収を指す言葉です。会社売却も事業売却も、M&Aの一形態として捉えることができます。
会社売却(株式譲渡) | 事業売却(事業譲渡) | |
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対象 | 会社の発行済み株式 | 特定の事業に関する資産、負債、契約など |
譲渡内容 | 会社のすべての権利義務 | 売却した事業に関する権利義務 |
メリット |
手続きが比較的簡素 買収後の事業統合がスムーズ |
選択と集中が可能 不要な負債やリスクを排除できる |
デメリット |
潜在的な負債リスク 従業員の雇用維持問題 |
事業の切り分けが複雑 従業員の雇用維持問題 |
合併 | 複数の会社が対等な立場で合併し、全く新しい会社を設立する |
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株式交換 | ある会社の株式と別の会社の株式を交換することによって、実質的に経営統合を行う |
会社分割 | 会社を分割して、他の会社に事業を承継させる |
2. 会社売却のメリット 会社売却には、経営者や株主にとって様々なメリットがあります。主なメリットとして、以下の3つが挙げられます。
2.1 資金調達 会社売却を行うことで、まとまった資金を調達することができます。この資金は、以下のような様々な用途に活用できます。
事業承継 | 後継者への事業承継資金として活用 |
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負債の返済 | 会社売却によって得た資金で、既存の借入金を返済 |
私的資産の形成 | 売却益を元手に、私的資産を形成 |
新たな事業への投資 | 売却益を、新規事業や他の企業への投資資金に活用 |
2.2 事業承継 後継者問題の解決策として、会社売却が選ばれるケースも増えています。後継者が見つからない場合や、後継者へのスムーズな事業承継を望む場合、会社売却は有効な手段となります。
後継者不足の解消 | 後継者が見つからない場合でも、事業を存続させることが可能 |
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円滑な事業承継 | 既存の経営ノウハウや顧客基盤を活かし、スムーズに事業を承継 |
従業員の雇用維持 | 会社売却によって、従業員の雇用を維持できる可能性が高まる |
2.3 経営リスクの軽減
- 会社経営には、常に様々なリスクが伴います。市場環境の変化、競争の激化、法規制の強化など、予測できない事態が発生する可能性も少なくありません。
経営責任からの解放 | 会社売却により、経営者としての責任や負担から解放される |
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市場リスクの回避 | 市場環境の悪化による業績悪化のリスクを回避 |
競争激化への対応 | 大手企業との競争激化に備え、売却を選択する |
会社売却は、資金調達、事業承継、経営リスクの軽減など、様々なメリットをもたらす可能性があります。しかし、会社売却はあくまでも経営戦略の一つであり、すべての企業にとって最適な選択肢とは言えません。
会社売却を検討する際は、専門家のアドバイスを受けながら、自社の状況に合わせて慎重に判断することが重要です。
3. 会社売却のデメリット 会社売却は多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。会社売却を検討する際には、メリットだけでなく、これらのデメリットも十分に理解しておくことが重要です。
3.1 経営権の喪失 会社を売却するということは、経営権を手放すことを意味します。売却後も経営に携わることができるケースもありますが、基本的には買収企業の意向に沿って経営が行われることになります。
これまでのように自分の思い通りに会社を経営することができなくなるため、経営者にとっては大きなデメリットと言えるでしょう。
特に、創業から長年経営に携わってきたオーナー経営者にとっては、精神的な葛藤が大きい可能性があります。
3.2 従業員の雇用問題 会社売却によって、従業員の雇用が不安定になる可能性があります。買収企業によっては、事業の効率化やコスト削減のために、人員整理や配置転換を行う場合があります。
特に、重複する部門や業務を抱えている場合、人員削減の対象となる可能性が高くなります。従業員の雇用を守るためには、買収企業との交渉の中で、雇用に関する条件を明確に定めることが重要です。
また、従業員に対して、会社売却の背景や今後の見通しについて、丁寧に説明する必要があります。
従業員の雇用問題で起こりうる具体的なケース
事業の重複や効率化による人員削減
買収企業が、買収対象企業と重複する事業や部門を抱えている場合、事業の効率化やコスト削減のために、人員削減が行われる可能性があります。
特に、間接部門や管理部門など、事業のコア業務に直接関わらない部門は、人員削減の対象となりやすい傾向があります。
事業縮小に伴う配置転換や退職勧奨
買収企業が、買収対象企業の事業の一部を縮小する場合、それに伴って従業員の配置転換や退職勧奨が行われる可能性があります。配置転換は、従業員の職種や勤務地が変更となる可能性があり、従業員にとって大きな負担となる場合があります。
また、退職勧奨は、従業員が自らの意思で退職することを促すものであり、従業員は退職金などの条件を考慮して、退職するかどうかを判断することになります。
企業文化の違いによるミスマッチ
買収企業と買収対象企業の企業文化が大きく異なる場合、従業員は新しい環境に馴染めず、ミスマッチが起こる可能性があります。
企業文化の違いは、仕事に対する価値観やコミュニケーションスタイル、人事評価制度など、様々な面で現れる可能性があります。ミスマッチが起こると、従業員のモチベーションやパフォーマンスが低下するだけでなく、離職率の増加にもつながる可能性があります。
また、買収企業に対しては、従業員の雇用維持に関する確約を求めることも可能です。従業員に対しては、会社売却の背景や今後の見通しについて、丁寧に説明する必要があります。
また、従業員の不安や疑問に寄り添い、適切な情報提供を行うことが大切です。
3.3 会社の機密情報漏洩リスク
- 会社売却のプロセスでは、財務状況や顧客情報、技術情報など、会社の機密情報を買い手企業に開示する必要があります。しかし、情報管理が不十分な場合、これらの機密情報が外部に漏洩するリスクがあります。
会社売却のプロセスで特に注意すべき機密情報
機密情報の種類 | 内容 | 漏洩した場合のリスク |
---|---|---|
財務情報 | 決算書、試算表、資金繰り表など |
|
顧客情報 | 顧客名簿、取引先情報、契約内容など |
|
技術情報 | 特許技術、ノウハウ、設計図面など |
|
3.4 売却後の事業の継続が保証されない 会社を売却した後、買い手企業が必ずしも事業を継続するとは限りません。事業の採算性や将来性などを考慮して、事業の縮小や廃止、あるいは売却を行う可能性もあります。
売却後の事業の継続を望むのであれば、買い手企業の事業計画をよく確認しておくことが重要です。また、従業員の雇用維持や事業の継続を条件に、売却交渉を進めることも有効な手段です。
ただし、買い手企業が必ずしもこれらの条件を受け入れるとは限らない点に留意する必要があります。
3.5 売却価格が期待通りにならない 会社の売却価格は、会社の業績や資産価値、将来性、市場環境など、様々な要因を考慮して決定されます。そのため、売却を希望する側の希望価格で売却できるとは限りません。
特に、買い手企業との交渉がうまくいかなかった場合や、市場環境が悪化した場合には、希望価格よりも低い価格で売却せざるを得ない可能性があります。
売却価格が自身の希望価格を下回る可能性があることを理解した上で、売却交渉に臨む必要があります。また、複数のアドバイザーから企業価値算定(バリュエーション)を取得し、相場を把握しておくことも重要です。
これらのデメリットを踏まえた上で、会社売却のメリットとデメリットを比較検討し、最終的な決断を下すようにしましょう。
4. 会社売却を成功させるための5つのポイント
- 会社売却を成功させるには、事前の準備や綿密な戦略が不可欠です。ここでは、会社売却を成功に導くための5つの重要なポイントを紹介します。
4.1 適切な売却価格の算定 会社売却における最初の関門は、自社の適切な売却価格を把握することです。売却価格が安すぎると損失を招き、逆に高すぎると買い手が見つかりません。適正な価格設定は、売却活動の成否を大きく左右します。
会社売却価格を算定する方法には、主に以下の3つの方法があります。
インカムアプローチ インカムアプローチは、将来の収益を現在価値に割り引いて算出する方法です。将来のキャッシュフロー予測に基づき、事業価値を算定します。安定した収益を上げている企業に適した方法と言えます。
マーケットアプローチ マーケットアプローチは、類似企業の取引事例を参考に算出する方法です。同業種や類似規模の企業のM&A事例を分析し、自社の価値を算定します。市場の動向を反映した評価が可能となります。
アセットアプローチ アセットアプローチは、会社の純資産価値をベースに算出する方法です。会社の総資産から負債を差し引いた純資産価値を算定します。企業価値が純資産価値に近い企業に適した方法と言えます。
これらの算定方法を組み合わせることで、より精度の高い売却価格を算出することができます。ただし、市場環境や会社の状況によって価格は変動するため、専門家の意見を参考にしながら、柔軟に対応することが重要です。
4.2 信頼できるアドバイザーの選定 会社売却は、複雑な手続きや専門知識が求められるため、信頼できるアドバイザーの存在が不可欠です。経験豊富な専門家のサポートを受けることで、売却プロセスをスムーズに進めることができます。 会社売却のアドバイザーには、主に以下の専門家が存在します。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、会社売却に関するあらゆるサポートを提供する専門機関です。買い手候補の探索から、価格交渉、契約締結まで、売却プロセス全体をサポートします。豊富な経験と専門知識を持つため、売却を成功させるために欠かせない存在と言えるでしょう。金融機関
銀行や証券会社などの金融機関も、会社売却のアドバイザーとして機能します。M&A仲介会社と同様に、買い手候補の探索や価格交渉などをサポートします。金融機関は、資金調達の面でも強みを発揮します。弁護士・会計士
弁護士は、会社売却に関する契約書の作成や法的アドバイスを提供します。会計士は、財務デューデリジェンスや企業価値評価などを担当します。これらの専門家は、売却プロセスにおける法的・会計的な側面をサポートします。4.3 財務状況の透明性確保 会社売却において、買い手は会社の財務状況を詳細に調べる「デューデリジェンス」を行います。この過程で、財務状況に不明瞭な点があると、買い手の不信感を招き、交渉が難航する可能性があります。
そのため、事前に財務状況を整理し、透明性を確保しておくことが重要です。
財務状況の透明性を確保するためには、以下の点に注意する必要があります。
正確な財務諸表の作成
最新の会計基準に基づき、正確な財務諸表を作成する必要があります。過去の財務諸表についても、修正が必要な場合は適切な処理を行いましょう。重要な契約書の整備
取引先との契約書や従業員との雇用契約書など、重要な契約書を整理・保管しておきましょう。契約内容によっては、売却に影響を与える可能性もあります。リスクと機会の情報開示
訴訟リスクや環境規制など、会社が抱える潜在的なリスクや将来の成長機会に関する情報を、適切に開示する必要があります。財務状況の透明性を高めることで、買い手からの信頼を獲得し、スムーズな交渉を進めることができます。また、予期せぬ問題発生を未然に防ぐことにもつながります。
4.4 買い手企業との適切な交渉 買い手企業との交渉は、会社売却プロセスにおいて最も重要な局面の一つです。売却価格だけでなく、従業員の雇用維持や事業の継続性など、自社にとって重要な条件を満たすために、戦略的な交渉が求められます。
買い手企業との交渉を有利に進めるためには、以下の点に注意する必要があります。
交渉のポイントを明確にする 売却価格はもちろんのこと、従業員の雇用維持や事業の継続性など、自社にとって譲れないポイントを明確にしておく必要があります。
買い手のニーズを理解する 買い手企業がなぜ自社を買収したいのか、そのニーズを理解することが重要です。買い手のニーズを満たす提案をすることで、交渉を有利に進めることができます。
複数の買い手候補と交渉する 複数の買い手候補と交渉することで、競争原理が働き、より有利な条件を引き出すことができます。ただし、安易な情報開示は避け、守秘義務契約を締結するなど、情報管理を徹底する必要があります。
交渉は、感情的にならず、冷静かつ論理的に進めることが重要です。信頼できるアドバイザーのサポートを受けながら、自社にとって最善の条件で合意を目指しましょう。
4.5 従業員への丁寧な説明 会社売却は、従業員にとっても大きな影響を与える出来事です。従業員の不安や動揺を最小限に抑えるために、売却の意 decision や今後の見通しについて、誠実かつ丁寧に説明する必要があります。
従業員への説明を適切に行うためには、以下の点に注意する必要があります。
適切なタイミングで説明する 売却の噂が広まってから説明するのでは、従業員の不安を煽ることになりかねません。可能な限り早い段階で、正確な情報を伝えることが重要です。
従業員の立場に立った説明をする 売却によって、従業員の雇用や待遇がどのように変わるのか、具体的な説明が必要です。抽象的な説明ではなく、従業員が理解しやすい言葉で伝えることが重要です。
質問や意見交換の機会を設ける 説明会や個別面談など、従業員が質問や意見を伝えられる機会を設けることが重要です。従業員の不安や疑問に真摯に耳を傾け、誠実に対応することで、信頼関係を維持することができます。
従業員は会社の大切な財産です。会社売却を成功させるためには、従業員の理解と協力を得ることが不可欠です。丁寧な説明とコミュニケーションを心がけ、従業員との信頼関係を築きましょう。
5. 会社売却の手順 5.1 準備段階の注意点とポイント 会社売却の準備段階は、その後のプロセス全体に影響を与える重要なプロセスです。しっかりと準備を行うことで、売却活動をスムーズに進め、有利な条件で成約できる可能性が高まります。
POINT1売却目的の明確化 まず、なぜ会社を売却するのか、その目的を明確にしましょう。資金調達、事業承継、経営からの引退など、理由は様々ですが、目的が明確でなければ、適切な売却戦略を立てることができません。
また、売却活動中に想定外の事態が発生した場合でも、目的を再確認することで、冷静な判断が可能になります。
POINT2売却対象の決定 会社全体を売却するのか、事業の一部を売却するのかを決定します。事業の一部を売却する場合、どの事業を売却対象とするのか、明確に区分する必要があります。
この際、財務状況や将来性などを考慮し、売却対象を慎重に決定することが重要です。
POINT3売却時期の検討 会社売却は、適切なタイミングで行うことが重要です。会社の業績が好調な時期に売却することで、高値で売却できる可能性が高まります。
また、税金や法律などの専門家に相談し、売却時期による影響を考慮することも重要です。
POINT4財務状況の棚卸し 買い手企業は、買収対象企業の財務状況を詳細に調査します。そのため、事前に自社の財務状況を把握し、問題点があれば改善しておく必要があります。
具体的には、過去3〜5期分の決算書の確認、資産や負債の洗い出し、収益構造の分析などを行います。これらの情報が整理されていることで、買い手企業からの信頼を得ることができ、スムーズな売却活動に繋がります。
POINT5企業価値評価 会社の売却価格を決定するために、企業価値評価を実施します。企業価値評価には、DCF法、類似会社比較法、純資産法など、様々な方法があります。
信頼できる専門家に依頼し、自社の事業内容や市場環境などを考慮した適切な方法で評価してもらうことが重要です。
詳細な評価額算定根拠資料を作成しておくことで、その後の価格交渉を有利に進めることが可能となります。
POINT6売却資料の作成 買い手企業に自社の魅力を伝えるための売却資料を作成します。会社概要、事業内容、財務状況、将来展望などを分かりやすくまとめることが重要です。
また、買い手企業が求める情報が網羅されているかどうかも重要なポイントです。これらの情報が不足していると、買い手企業からの印象が悪くなり、売却活動が難航する可能性があります。
そのため、専門家のアドバイスを受けながら、魅力的な売却資料を作成することが重要です。
POINT7アドバイザーの選定 会社売却は、複雑な手続きや専門知識が必要となるため、M&A仲介会社などの専門家のサポートを受けることが一般的です。
M&A仲介会社は、企業価値評価、買い手候補の探索、交渉の代理、契約書の作成など、売却活動全般をサポートします。M&A仲介会社の選定は、会社売却の成否を大きく左右する重要な要素の一つです。
実績や専門性、相性を考慮し、自社にとって最適なアドバイザーを選びましょう。アドバイザーには、証券会社系、銀行系、独立系など様々なタイプがあります。
それぞれの特徴を理解した上で、自社のニーズに合ったM&A仲介会社を選ぶことが重要です。例えば、上場企業の買収を希望する場合は、証券会社系のアドバイザーが強みを発揮する可能性があります。
一方、中小企業の事業承継を目的とした売却の場合は、独立系のアドバイザーの方が親身に相談に乗ってくれるかもしれません。
5.2 交渉段階の注意点とポイント 交渉段階では、買い手企業との条件交渉が主な作業となります。この段階では、事前に綿密な準備と戦略を立てておくことが重要です。交渉をスムーズに進めるためのポイントは以下の点が挙げられます。
秘密保持契約の締結 交渉を開始する前に、買い手企業との間で秘密保持契約を締結します。秘密保持契約は、交渉過程で開示される企業情報や売却条件などの機密情報を、買い手企業が第三者に漏洩することを禁じるものです。
これにより、万が一交渉が不成立に終わった場合でも、自社の機密情報が外部に漏れるリスクを最小限に抑えることができます。
買い手企業の選定 M&A仲介会社が提示する複数の買い手候補の中から、自社の条件に合った企業を選定します。この際、企業規模や業種、経営理念、企業文化など、様々な観点から総合的に判断することが重要です。
短期的には高値で売却できる企業が魅力的に見えるかもしれませんが、従業員の雇用維持や企業文化の継承などを重視する場合は、長期的な視点で判断する必要があります。
従業員や顧客との関係を大切にしている企業であれば、買収後も良好な関係を維持できる可能性が高いため、重要な選定基準となります。
条件交渉 買い手企業と、売却価格や支払方法、従業員の雇用維持、事業の継続性など、具体的な条件交渉を行います。この交渉は、自社の主張を一方的に押し通すのではなく、買い手企業との妥協点を探りながら、双方にとって納得できる条件を導き出すことが重要です。
そのためには、事前に譲れる条件と譲れない条件を明確にしておくことが重要です。また、交渉が行き詰まった場合には、アドバイザーに間に入ってもらい、調整役を担ってもらうことも有効な手段です。
デューデリジェンスの実施 買い手企業は、最終的な買収判断を行う前に、デューデリジェンス(Due Diligence)を実施します。デューデリジェンスとは、買収対象企業の財務状況、法務状況、事業内容などを詳細に調査する作業のことです。
この調査結果に基づいて、最終的な買収価格や契約条件が決定されます。デューデリジェンスでは、膨大な量の資料提出や質問への対応が必要となります。事前にしっかりと準備しておくことで、スムーズな調査協力体制を構築し、買い手企業からの信頼獲得に繋げることが重要です。
また、調査過程で問題点が見つかった場合は、早期に解決策を提示することで、交渉決裂のリスクを低減することができます。
5.3 契約締結・事業譲渡の注意点とポイント 交渉が成立したら、最終的な契約を締結し、事業譲渡を行います。この段階では、契約内容をしっかりと確認し、後々のトラブルを避けることが重要です。
最終契約書の締結
これまでの交渉内容を基に、売却価格、支払方法、契約違反時のペナルティなどの条件を盛り込んだ最終契約書を作成します。
契約書は、法的に複雑な内容を含むため、専門家のサポートを受けながら、内容を十分に理解した上で署名することが重要です。
特に、表明保証条項や解除条項など、自社に不利な条項が含まれていないか、注意深く確認する必要があります。
株主総会決議
株式会社の場合、会社売却には株主総会の承認が必要となります。そのため、事前に株主総会を開催し、売却に関する議案を提出する必要があります。
株主に対して、売却の目的や内容、今後の見通しなどを丁寧に説明し、理解と同意を得ることが重要です。反対意見を持つ株主がいる場合は、事前に個別に交渉を行い、合意形成を図る努力が必要です。
事業譲渡の実行
契約に基づき、事業の資産、負債、契約、従業員などを買い手企業に譲渡します。事業譲渡の手続きは複雑で、専門的な知識が必要となるため、弁護士や税理士などの専門家のサポートを受けることが重要です。
譲渡の手続きが完了したら、従業員に対して、雇用契約の移転や今後の処遇について、丁寧に説明する必要があります。従業員の不安を取り除き、スムーズな事業引継ぎを実現することが、売却後の事業継続にも大きく影響します。
6. 会社売却に関するよくある質問 6.1 会社売却にかかる期間は? 会社売売却にかかる期間は、規模や業種、買い手企業との交渉状況によって大きく異なります。一般的には、6ヶ月から1年程度かかるケースが多いですが、早ければ3ヶ月程度で完了する場合もあれば、複雑な案件では数年かかる場合もあります。
段階 | 期間(目安) | 内容 |
---|---|---|
準備段階 | 1~3ヶ月 |
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交渉段階 | 2~6ヶ月 |
|
契約締結・事業譲渡 | 1~3ヶ月 |
|
6.2 会社売却の費用は? 会社売却にかかる費用は、主にアドバイザー報酬と、その他費用の二つに分けられます。
アドバイザー報酬 アドバイザー報酬は、M&A仲介会社や金融機関、コンサルティング会社などに支払う報酬です。一般的には、成功報酬型を採用しているケースが多く、売却金額に応じて一定の料率で支払われます。
報酬体系 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
レーマン方式 | 売却金額に応じて、段階的に料率が設定される方式。 | 最も一般的な報酬体系 |
タイムチャージ方式 | アドバイザーの作業時間に応じて報酬が支払われる方式。 | 主に、財務デューデリジェンスやバリュエーション業務で採用される。 |
固定報酬方式 | あらかじめ決められた固定報酬が支払われる方式。 | 小規模な案件で採用される場合がある。 |
その他費用 その他費用としては、弁護士費用、会計監査費用、デューデリジェンス費用などが挙げられます。
弁護士費用 | 契約書作成や法的アドバイスなど |
---|---|
会計監査費用 | 財務諸表監査など |
デューデリジェンス費用 | 買収監査など |
6.3 どんな会社が売却できるのか? 株式会社や合同会社などの法人形態であれば、基本的にはどんな会社でも売却できます。ただし、買い手側のニーズや、会社の魅力によって、売却のしやすさや価格は大きく変動します。
会社売却で重視される要素
収益性 | 安定した収益を上げている企業は、買い手にとって魅力的です。 |
---|---|
成長性 | 将来的な成長が見込める企業も、高値で売却できる可能性があります。 |
安定性 | 顧客基盤やブランド力が強固な企業は、安定した経営が見込めるため、買い手から評価されます。 |
上記以外にも、経営陣の能力や従業員のスキル、財務状況の健全性なども、会社売却において重要な要素となります。
6.4 誰に相談すればいいの? 会社売却は、専門性の高い知識や経験が必要となるため、一人で進めることは非常に困難です。そのため、信頼できる専門家に相談することが重要になります。
会社売却の相談相手
M&A仲介会社 | 買い手候補の探索から契約交渉、クロージングまで、M&Aに関するあらゆるサポートを提供しています。案件経験が豊富で、幅広いネットワークを持っているため、最適な買い手を見つけ、高値で売却できるよう尽力してくれます。 |
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金融機関 | 銀行や証券会社なども、M&Aの仲介業務を行っています。取引先企業や投資ファンドなど、独自のネットワークを持っている場合もあるため、相談してみる価値はあります。 |
コンサルティング会社 | 経営戦略や財務戦略などの専門的なアドバイスを提供しています。会社売却に向けた事業リストラや、企業価値向上のサポートなども期待できます。 |
税理士・公認会計士 | 税務や会計に関する専門家です。会社売却に伴う税金対策や、財務デューデリジェンスなどを依頼することができます。 |
弁護士 | 契約書の作成やレビュー、法的アドバイスなどを提供しています。会社売却は、多額の金銭が動くため、法的なトラブルに巻き込まれないよう、弁護士に相談することをおすすめします。 |
会社売却を検討する際には、複数の専門家に相談し、自社にとって最適なパートナーを選び出すことが重要です。
7. まとめ 会社売却は、資金調達、事業承継、経営リスクの軽減など、さまざまなメリットをもたらす一方、経営権の喪失や従業員の雇用問題など、考慮すべきデメリットも存在します。
成功の鍵は、適切な売却価格の算定、信頼できるアドバイザー選び、財務状況の透明性確保、買い手との適切な交渉、従業員への丁寧な説明など、多岐にわたります。
これらのポイントを押さえ、慎重かつ計画的に進めることで、会社売却を成功に導くことができるでしょう。
M&A仲介会社や金融機関など、専門家のサポートも活用しながら、納得のいく会社売却を実現してください。
編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったPMIのスペシャリスト。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。